人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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第二章 暗黒期/大抗争
会議初参加


 ピュグマリオン・ファミリア団長『隠神の白妃(ハーミッツ・クイーン)』ガラテア、Lv4達成。

 ピュグマリオン・ファミリア副団長『白壁』ヒガントーナ、幹部『幻白』メリー、パラケルスス・T(トリスメギストス)・ヒータル・アールヴ、イチマツ・菊Lv3達成。

 そんな報告が、ギルド長ロイマンの口からなされた。

 

「いや、おかしいだろ!」

 

 『ギルド』の一室、『闇派閥(イヴィルス)』対策会議が行われているその部屋で吠えたのは、オラリオ2大派閥の片翼を担う探索系ファミリア、フレイヤ・ファミリアの副団長、『女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)』アレン・フローメル。都市有数のLv5、第一級冒険者である。

 

「やかましいぞ駄猫。いちいち声を荒げるな」

 

「ッ………チッ!!」

 

 フレイヤ・ファミリア幹部、『白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)』ヘディン・セルランドがそれを咎めると、アレンは大きく舌打ちをして黙る。なお、この場に都市最強、Lv6の『猛者(おうじゃ)』オッタルは来ていない。不測の事態に備えて常に戦闘に出られるようにしているという建前だが、単純に頭を使う会議では役に立たないので、代わりに事務処理その他頭脳労働を担当するヘディンが代理として出ているのだ。

 

「いいじゃないか。オラリオを守る柱は多いほうがいい」

 

「そうじゃねえ、得体が知れねぇって言ってんだ。お前がLv4に上がったときはこんなに呆気なかったのかよ『勇者(ブレイバー)』? ついこの間Lv3になっておいて、ほんの1、2ヶ月でもうLv4? バカにしてんのか!」

 

 怒り任せの言葉ではあるが、それは多くの冒険者の代弁でもある。この部屋にいる冒険者の中にも、言葉に出さずともそれを感じているものはいる。ついこの間遂げられた、アイズ・ヴァレンシュタインによるランクアップ最短記録および最年少記録樹立。最年少記録はまだしも、最短記録の方はあっという間に書き換えられてしまったのだ。

 

「しかもだ! Lv3に上がった二つ名なしのふたりに関しては、Lv2でギルドに登録して十日かそこらでランクアップだぁ? ソイツは確か、当の『隠神の王妃』本人がLv3に上がった時に聞いた建前だろうが! 『外で基本アビリティが上がってて、オラリオで偉業を達成したからランクアップしました』! 予言してやるよ、今後もあそこから入ってくる冒険者はLv2で登録してすぐLv3に上がるやつばっかだろうよ!」

 

 アレンの言葉は正確には誤解がある。ガラテアたちは早すぎる理由として、そんな言い訳をしたことはない。ただ、周りが勝手に予想してそう納得していただけ。

 だが、それにも理由がある。そうでもなければ納得できないほど、彼女たちのランクアップは異例の早さであったのだ。それこそ、第三級止まりで足掻いている冒険者を嘲笑うかのように。

 

「だが事実としてレベルは上がっている。また、成長の早さに関しては恩恵を得る前の段階での練度、一度の迷宮攻略における戦闘回数、そしてスキルあるいは魔法によるものであり、他に原因はないと、我が主神、ガネーシャによる聞き取りで判明している。そもそも神の力(アルカナム)を使えば主神は送還されるし、神による規律破りでなく、人を傷つけるものでもなければ努力として許容されるべきだろう」

 

 そう返したのはオラリオの警邏、ガネーシャ・ファミリアの団長でありLv4の第二級冒険者、『象神の杖(アンクーシャ)』シャクティ・ヴァルマだ。

 神による聞き取り。神は下界の人間()の嘘を見抜くことができることは周知の事実。それはつまり、聞き取りの内容に嘘はないということでもある。

 

「ハッ。ガネーシャはソイツらが話題になった『神会(デナトゥス)』で、ソイツらの主神を庇ったんだろ? ならソイツらと口裏合わせて庇ってんじゃねえのかよ」

 

「その聞き取りはガネーシャだけでなく、神ロキと神フレイヤ、神アストレアの3柱も参加してのものだったのだが?」

 

「なっッ……!?」

 

「なんだ、知らずに言っていたのか。フレイヤ・ファミリアは主神と副団長の意思疎通もマトモにできないのか?」

 

「ハァ……駄猫、もう黙っていろ。これ以上恥を晒すな」

 

「〜〜〜〜ッ!!」

 

 流石に苛立っていたのだろう、シャクティからの反論が刺さったアレンにリヴェリアが追撃し、ヘディンがとどめを刺した。

 アレンは言い負かされた屈辱と、フレイヤから何も聞かされていなかった羞恥によって射殺さんばかりの殺意と憎悪を籠めた視線をリヴェリアに向ける。しかし、流石にこれ以上は恥の上塗りであることは理解しているため、唇を強く噛みながら黙った。

 

「ねぇねぇ輝夜、これ、本人がいる前でする話だったの?」

 

「ちょっと静かにしておいてくださいまし、団長」

 

 呑気な正義の自警団ファミリア、アストレア・ファミリアの団長でありLv3の第二級冒険者『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』ことアリーゼ・ローヴェルを、副団長のLv3、『大和竜胆』ゴジョウノ・輝夜がいつものように猫を被りながら諌める。

 そう、既にこの場には、招かれているガラテアとヒガントーナがいたのだ。いくら商業系ファミリアとは言え、既にオラリオでは有数の実力者になっている。頼らないという選択肢は、『ギルド』にはなかった。

 

「ご紹介に与りました、ピュグマリオン・ファミリア団長ガラテアです。よろしくお願いします」

 

「副団長のヒガントーナと申します。えー、ピュグマリオン・ファミリアから正式に弁明させていただきますが、我々のランクアップについて、なんら疚しいことはありません。ただ、我々のスキルや魔法などの核心に触れなければ、ランクアップの方法について詳細に述べることは不可能であるため、秘匿という形をとっているだけです」

 

 この説明は聞き取りの時にもしたものである。先のシャクティの説明にもひとつ語弊があって、正確にはガラテアは当時「恩恵を受け取る前の身体能力差」と説明した。それをシャクティたちが「恩恵を受ける前に修行をしていた」と解釈しただけである。実際は「人間の体と人形の体のスペック差」なのだが。

 ひと悶着あったが、ようやくこれで『闇派閥』対策会議が始まった。現在の検挙の情報や、具体的な対策案、『闇派閥』の目的の推測などの意見が飛び交い、白熱する。

 

「では……ここでピュグマリオン・ファミリアからもなにか意見をいただこう。なんでもいい、ここまで出てきた情報や意見を聞いて、何か思うところはないかね?」

 

 そうやってピュグマリオン・ファミリアに水を向けてきたのはロイマンだ。ガラテアは思考を巡らせる。ピュグマリオン・ファミリアの握っている情報は彼らにとって劇物だろう。『闇派閥』の本拠地である『人造迷宮(クノッソス)』の存在と位置、死神タナトスの企み、敵戦力の詳細、そのどれもを彼らは掴んでいない。

 だからこそ、ガラテアはそれを口に出せない。情報の出どころを答えられないし、下手をすれば『闇派閥』との繋がりを疑われる。

 

「では、『商人』としての立場から言わせていただきます」

 

 だから、彼女は持っていてもおかしくない情報を出すことにした。

 

「『闇派閥』の裏に、都市外の商人からの支援があるそうです」

 

「「「!!?」」」

 

「彼らの中には我々をただ『ピュグマリオン商会』という商会としてだけ見ていて、神の眷属(ファミリア)だと思っていなかった者もいましたから、そのような方々が親切に教えてくれましたよ」

 

「なんだそれは!? 何故オラリオの外の商人が……しかも『闇派閥』を支援する!?」

 

 リヴェリアが信じられないという感情を隠さずに叫ぶ。それを受け止めて、ガラテアはさらに返した。

 

「商人の目的は『ギルド』転覆ですね。『ギルド』による魔石商売の独占が気に障っているようです。『ギルド』がなくなれば、自分たちが恩恵に与れるようになると信じているのでしょう」

 

「ふ、ふざけるな……そんな、そんなことで……クソっ、愚かな……っ」

 

 頭を掻きむしりながら、ロイマンがブツブツと呪詛を吐き始める。曲がりなりにも『ギルド』の総責任者である彼にとって、その情報はかなり刺激が強かったようだ。

 

「商人は利を見る生き物ですから。『闇派閥』に投資に足る何かを見たと言うことでしょうね」

 

「……君はなにかわかるのかい? 商人が何に期待しているのか」

 

「オラリオ最強を凌ぐ強者」

 

「あ゛ぁ!!?」

 

 フィンからの質問に答えたガラテアに、今度はアレンが食いついた。しかしこれに関しては彼を責められないだろう。オラリオ最強とはまさに彼らフレイヤ・ファミリアの団長なのだから、それを超える存在が『闇派閥』についたと言われて反応しないはずがない。

 

「適当こいてんじゃねえぞテメェ!! そんなもんいるわけが――」

 

「『闇派閥』についたのは『暴喰』ザルドと『静寂』アルフィア、ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの生き残りで、最低でもLv7の元冒険者です」

 

 ガラテアからの情報に、再び沈黙が落ちる。その様子は、絶句。勢いよく食って掛かっていたアレンでさえその勢いを殺がれ、ただ信じられないような目でガラテアを見るだけだった。

 

「仮に後手に回ってあちらからの襲撃を許した場合、『猛者』含めたフレイヤ・ファミリアでLv7の片方、残り片方をオラリオの上位陣が束になって止めたとして、『闇派閥』に他にLv5がふたりいればもう止められなくなりますね」

 

 何故、とは思わなかった。ゼウス・ファミリア、ヘラ・ファミリア、その両方に、オラリオを恨むだけの理由がある。

 

「……どうしろと言うのだ……こんな、こんなもの……」

 

 ロイマンが弱音を吐く。その声音は絶望と言ったところだろうか。冷静さを保っていたフィンやヘディンの顔も強張っている。

 

「……ガラテア。ロキ・ファミリアから要請する。どんな対価を支払っても構わない。君たちが短期間でランクアップした方法を教えてくれ」

 

「フィン!? 何を……」

 

「マナー違反は承知の上だ。だが、今はそんなことを言っていられる場合じゃないだろう」

 

 フィンがガラテアに頭を下げる。そこには、大派閥としての責任が感じられた。

 しかし、それではダメなのだ。ガラテアたちのランクアップは、真の意味でガラテアたちだからこそできたこと。『手段』などではないのだから。

 

「申し訳ありませんが、聞き取り調査で話した通りです。我々のランクアップの理由で、貴方がたに適用できるのは精々長時間迷宮に潜るという根本的なものだけ。理由の本質がスキルにある以上、お教えできませんしお教えしたところで実践することもできません」

 

「テメェ、この期に及んでだんまりかよ!?」

 

「ただの事実です」

 

「それは……君たちの容姿と関係があるのか? 全員が白髪灰眼に白い肌……あるいは――レベルが上がりやすい地方なんてものの出身だったりするのかい?」

 

 フィンの推測は当たらずとも遠からず。ガラテアたちをただの人間としか見られないなら、それが想像力の限界だろう。

 

「黙秘します。そこまで行けば、もはや『闇派閥』討伐もなにも関係ない、ただの暴露ですから」

 

「あぁ……すまない。冷静さを欠いていたようだ。少なくとも、ここでする話ではなかった」

 

「しかし、たとえ実益がなくとも、そちらが勝手にやっただけのパフォーマンスだとしても、大派閥の長に頭を下げさせたというのは大きいのでしょう。それに、我々には信用がないようですから……ですので、実利で示しましょう」

 

 ガラテアが促すと、ヒガントーナがその場にいる全員に書類を配っていく。そこに書かれていたのは、ある意味では驚異の技術だった。

 

「我々の団員が目覚めたスキル『神秘鍍金(スード・スペリオルズ)』による疑似特殊武器加工『纏化(スペリオライゼーション)』。既に完成している武具防具を、あとから特殊武器(スペリオルズ)にする技術を『闇派閥』沈静化までの間、『ギルド』が認めた派閥に限り無償で提供しましょう」

 

 本来であれば鍛錬中に付与する『不壊属性(デュランダル)』などの特殊な効果を、あとから武装に纏わせるというのがこの技術だ。

 本来の『特殊武器』であれば壊れるまで永続する効果が、この『纏化』では使用するごと、あるいは時間経過や効果の使用回数で薄れてしまうが、その代わりにかけ直すことも出来るし、既に『特殊武器』である武装であっても纏化することができる。

 書類に書かれていたのは、その主な効果――『常時精神力回復』、『膂力強化』『火炎耐性』など多岐にわたる――と、その纏化に必要な素材。そして本来必要となる代金の一覧だった。

 

「我々が負担するのは素材と代金です。また、強化の所要時間は順番待ちを除けば30分程度。多くの効果は1ヶ月ほど保つ計算です。素材を我々が採りに行く以上、我々はパトロールなどの警邏活動には参加できなくなりますが、それを考えても余りある効果だと思いますが?」

 

 会議室の面々が唸る。今の自分たちでは、なんのきっかけもなければLv7には絶対に勝てない。ならば、ほんの少しの後付けの強さでも頼らないわけにはいかないのだ。

 しかし、これを認めてしまったらピュグマリオン・ファミリアの秘匿を黙認することになってしまう。フィンたち大派閥、シャクティたち警邏はそれを天秤にかけ――

 

「……わかった。君たちの献身に感謝する」

 

「構わないだろう。もとより、商業系に戦闘や警備を求めるのもおかしな話だ」

 

「私たちが頑張ればいい話よね!」

 

 彼らは、実利をとった。

 

 

 

「ザルドとアルフィアのことが知られていたか……ピュグマリオン・ファミリア、警戒度を上げておくべきかな?」




追記:新技術の開発者をピノッキオから変えるかもしれないのでその記述を削除。

ピュグマリオンに技術も狂気もなく魔法だけあった場合にできる標準的リビングドール

力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0

魔法
スロットなし

スキル
人形生命(リビング・ドール)
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・精神異常、生理的異常の無効。
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