人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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終わり、終わりでーす。

「え、終わったのか?」

 

「終わりましたよ。対『闇派閥』」

 

 終わっていた。

 

 始まりの自爆テロから7日。Lv7、ザルドとアルフィアの死亡、主犯であるエレボスの送還を以て、後世にて『大抗争』『死の七日間』と呼ばれることになる暗黒期最大の争いは幕を閉じた。

 『邪神官』と『顔無し』は死亡が確認され、『妖魔姉妹』『白髪鬼(ヴェンデッタ)』『殺帝(アラクニア)』は行方不明。

 エレボスの狙い通り多くの冒険者上位層はランクアップし、モチベーションもアップしたことだろう。しかし、爪痕は深く深く残ることとなった。

 

「うちに関することは?」

 

「まず、ドサクサに紛れて私がLv5に。ヒガントーナ、メリー、菊、パラケルススはLv4になったことをギルドに報告しました。トップ層のファミリアは誰も詮索してこなくなりましたし、嫉妬などで詮索してきそうな下位層の冒険者の多くは今回の戦いで死ぬか引退しましたので」

 

 ピュグマリオン・ファミリアの成長速度については、もはやアンタッチャブルになっている。神殺しに関してはバレておらず――最初に送還された9柱の中に、エレボスが間引いた『闇派閥』の神もいたことで――内ゲバによる同士討ちではないかと言う意見が多数を占めている。

 無論、ヴァレッタVSガラテアも、ディース姉妹VSパラケルススも世間的にはバレていない。ピュグマリオン・ファミリアが戦線に加わったのは、チェレンたちがヴァレッタを戦闘不能にした一件だけということになっている。

 

「消耗は?」

 

「汎用個体の団員が複数体死亡。他は供出した食料品類などの補給物資分だけです。また、『ギルド』から今回の報酬として一年間の納税義務免除を言い渡されました。ロキ・ファミリア団長からも、ファミリアを代表して礼品を贈りたいと打診がありました。できるだけ希望に応えたいので、時間が空いたら面談したいとのことで、そちらは私が対応します」

 

 なお、このフィンの申し出に関しては裏はない。純然たる感謝の気持ちと、その働きに報いきれない悔しさから、個人資産を切り崩しての行動である。あるとすればトップファミリアとしての矜持か。

 さらに言えば、主神とリヴェリア、ガレスも同じく個人資産から協力する気でいる。あくまでも個人資産を使用するのは、ファミリアの資産を使うには消耗が激しかったからである。

 

「それと、『炎金の四戦士(ブリンガル)』の長男からも個人的に礼品を貰っています。宝石をくり抜いて売ったら殺すとも言われましたが……」

 

「へぇ、これはいいな。熱は感じないが確かな腕と矜持が籠もってる。いい腕だ。なるほど、覚えがあるぞ。メイルストラで見かけたことがある。なるほど、なるほど、同じ名であるだけかと思っていたけど、彼らが『巨匠(ガリバー)』だったか。既に細工師を引退した後だと聞いて惜しんでいたが、女神フレイヤに拾われていたか……これはこちらとしても返礼をしなければならないな。ある意味プレミア物だ。女神フレイヤの偶像(フィギュア)を作るとしよう。あぁ、もちろん4人分だ」

 

 ガリバー兄弟の長男、アルフリッグから贈られたのは、宝石を埋め込んだフレイヤの小彫像だった。その完成度はピュグマリオンが唸るほどであり、かつての苦い記憶を反駁しながら作った己の最愛たる女神の偶像を贈るという行為そのものに、彼からの感謝が見られる。

 なにせ、初戦で手柄をあげたのはガリバー兄弟だけであり、ガリバー兄弟はそれに関してフレイヤからお褒めの言葉をいただいている。その手柄のきっかけがピュグマリオン・ファミリアの供出した『人魚の生き血』だったのだ。

 さらに瀕死だった兄弟の命をも救われていることもあっての礼品だったが、長男は苦労人気質があるとはいえ排他的なガリバー兄弟にしては、己の敬愛する女神の彫像を贈るのは最上級の礼品だと言える。

 なお、ピュグマリオンの琴線に触れたのは完全に偶然であった。

 また、返礼品としてガリバー兄弟の手に渡ったピュグマリオン作のフレイヤのフィギュアは無事彼らのトップクラス評価を手に入れ、神ピュグマリオンは細工の神であるという噂が新たにオラリオに流れることとなった。

 

「また、アーディ・ヴァルマはディアンケヒト・ファミリアの義手を着けて復帰したようです」

 

「『人魚の生き血』では欠損回復は無理だったか」

 

「欠けた部位が残っていれば、多少傷口が歪んでいても後遺症なく繋げる、という時点ではかなり優秀でしたが、ゼロから生やすというのは無理だそうです。欠損回復薬に関しては、ディアンケヒト・ファミリアの研究にかかっていますね。続きまして報告ですが、神ガネーシャに主人(マスター)の容姿が割れたようです」

 

 ピュグマリオンが細工の神扱いを受けたことで、人形師キプロスとピュグマリオンが繋がったのだろう。入場に使った許可証の保証神が、ピュグマリオンと関わりのあるとされているアルテミスなのも、ガネーシャの勘を補強したと言える。

 まぁ、ガネーシャはまだ、ピュグマリオンは入場の際は神威を抑えていた神であるという認識なのだが。

 

「続きまして、税金免除で資金面に余裕ができたため、さらなる事業の拡張としてかねてより練っていた計画を進めようかと」

 

「おー……どれだ」

 

 ガラテアの商業計画は基本的に事後承諾、事後報告である。ピュグマリオン本人は商才がないためガラテアに任せきりなのは許容しているが、こうして言われてもパッとどのことか分からなかった。

 

 

 

「……ということですので、契約条件は、そちらは神酒(ソーマ)以外の酒造の研究への参加、酒造の監修、探索系ファミリアから商業系ファミリアへの変更、悪質な団員の追放の4点。こちらからは十分な資金と材料、道具、場所の提供、神酒他酒類販売と帳簿や団員の管理等ファミリア運営の代行です。端的に言えば、酒造りと団員のステイタス更新以外の雑事はこちらで負担し、必要なものは用意するので、ピュグマリオン・ファミリアの傘下へ下ってください、神ソーマ。無論、神酒の研究及び製造は余暇で行っていただいて結構ですし、仕事も基本は酒造りですよ」

 

「わかった、受け入れよう」

 

「ソーマ様ぁ!!!?」

 

 ソーマ・ファミリア本拠地にて、アッサリとソーマ・ファミリアのピュグマリオン・ファミリア傘下入りが決定した。ソーマにとっては今までほっぽりだして放置していたことを負担され、趣味と趣味の延長な仕事をバックアップ付きでできるというのだから文句なしの条件だった。それに加え、ガラテアは既にソーマによる()()をクリアしている。それもまた、ソーマのハードルを下げていた。

 これに反対したのは、追放(クビ)が確定した元団長ザニスと神酒中毒になっていた団員たちだった。

 

「み、認めん!! そんな横暴認めんぞ!! 私がどれだけこのファミリアに貢献してきたと……」

 

 それはマジでそう。

 

「ザニス・ルストラ。あなたが『闇派閥』と繋がりを持っていたことは既に証拠を押さえてありますし、抵抗するならここで斬り捨てる許可も、ガネーシャ・ファミリアから得ています。また、他の元団員の方々も、『ギルド』から『闇派閥』の凶行に比べたら優先度の低い犯罪を起こしていたとして捕縛命令が下っている者も多数確認しています」

 

 ガラテアがそう宣告すると同時に、ザニスの背後に回っていたメリーが、ザニスの首にシャムシールを引っ掛ける。

 

「ガネーシャ・ファミリアからの尋問に答えて牢の中で生き延びるか、ここで死ぬか、選びなさい」

 

「ぐ……ぐぐぐぐぐ……」

 

 唸るザニスだったが、Lv5とLv4相手にもはや打つ手はないようで、その場でガクリと膝を折る。

 

「名目上、ソーマ・ファミリアの新団長にはチャンドラ・イヒトを推薦します」

 

「こちらも、それで構わない」

 

「では、そのように。では、早速ですが新しい職場へ案内いたしましょう。メリーはヒガントーナが制圧した抵抗している元団員のガネーシャ・ファミリアへの引き渡しと、その後は『ギルド』へ必要書類の提出を」

 

「私、メリーさん。了解したのです」

 

 こうして、ピュグマリオン・ファミリア傘下にソーマ・ファミリアが加わり、ピュグマリオン商会で扱われる酒類がさらなる発展を遂げると同時に、オラリオの酒事情を大きく握ることとなる。

 また、酒という首根っこを押さえられたロキは顔を蒼くして口元をひくつかせるのであった。南無。




 ここからは原作とほぼ差異がないので大抗争編はカット。戦後処理と日常への変遷編に移ります。
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