人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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癒やし

「動物カフェを作らない?」

 

 そう切り出したのは、アフロディーテ・ファミリアからの出向眷属、自称姉ことメアリ・シェパードだった。

 対するガラテアはその発言を聞いて、少々考え込む。

 

「……ではジャコウネコを調達して……」

 

「あぁ違うの……動物(糞)のcafe(coffee)じゃなくて……触れ合い喫茶! 動物触れ合い喫茶よ!」

 

 そう弁解するメアリの腕には、番犬型リビングドールが収まって、やるのか? とニュアンスで伝えてくる。

 

「今のオラリオには癒しが必要だと思うのよ。町中にも犬や猫はいるけど、今は飢えてるし不衛生よ? 安心して触れ合えるかわいい動物がいたら癒されると思うのよねぇ。お姉ちゃんも、実家の羊とか恋しいわ……」

 

「なるほど、一理ありますね」

 

「それに、ピューちゃんなら飼育に手間もかからなくて餌代もいらない動物のお人形を作れるでしょ? 飼育環境も気にしなくていいから、飼うのが難しい動物も飼えると思うのよね。動物がお客さんを襲う心配もないし、普通は動物に食べさせちゃいけないメニューも出せるわ」

 

「ふむ……少し会議に出してみます」

 

 

 

「と言うわけで、皆様に集まってもらったのは他でもなく。新たに企画する動物カフェの従業獣を決めるために協力していただきたく」

 

「あの……何故リリが? 場違いでは?」

 

 リビングドール以外のメンバーもいるということで会議室に集められた面々。その中で、おずおずと手を挙げたのはソーマ・ファミリア新副団長、リリルカ・アーデだった。

 齢8歳にして大方の虐待を受けてきた彼女は要領よく頭が回り、ピュグマリオン・ファミリアに少しでも自身の有用さを見せて庇護してもらおうと書類仕事を買って出たために、ガラテアから名前を覚えられ各所の庶務に派遣されるなどしている。

 

「今回のターゲット層は女子供であり、かつ癒しを提供する店と言うことですので、身も心も荒んでいて癒しが必要そうな人物ということで神ソーマから推薦をいただきました」

 

「本当に反省してるんですかねぇあの神は!?」

 

 先日感動的な和解*1があったはずなのだが、諸々の遠因がこうな辺りやはり神は神だった。まぁあの神普通に「メンゴ☆」とか言うし。

 

「……え〜と、それで、リリの知らない方もいらっしゃるのでご紹介いただきたいのですが……」

 

「はい、まずこちらの方が、先日ピュグマリオン・ファミリアの傘下入りを希望されまして、無事傘下入りしていただきました、主に牧畜と宝石商を営む探索系兼商業系ファミリア、ハトホル・ファミリアの主神、女神ハトホルです」

 

「どーもー。よろー」

 

 155C(セルチ)ほどの背丈に、各所に着けられたイチジクのアクセサリー。無造作に結わえられた黒髪に白い肌と、特に目を引くのは顔上半分を覆う牛を模した面。

 美と愛と豊穣を司るあたりはデメテルやアフロディーテ、あとフレイヤなどと同じで、他にも治療や宝石なども司っているエジプト神群(マアトの神々)の一柱、ハトホルである。

 

「いや私もよくわからないんだけどー、なんで私ー?」

 

「牧畜を営んでいらっしゃったので」

 

「言うて流れでやらされてただけなんだけどねー。私牧畜の神格ないしー……」

 

 『お前牝牛の神だろ』。それが始まりの一言だった。

 最初探索系ファミリアか医療系ファミリアをやるつもりだったハトホルは、眷属ができるまでの余暇に、周りの神々からそんなことを言われ、乳牛と肉牛の牧畜を押し付けられたのだ。気怠げなハトホルは押しに弱かった。

 そしてあれよあれよと他の家畜の世話も押し付けられ、なんだかんだで母性と慈愛の女神であるハトホルはそんな家畜を見捨てられず、いつの間にかオラリオ唯一の牧畜ファミリアになっていたのだ。

 なお、オラリオの家畜自給率は0.5%ほどであり、ほとんどを輸入に頼っている。ハトホル牛やハトホル牛乳などは、ブランドものの感覚であった。

 そしてハトホルは、傘下入りと利権譲渡を条件に家畜の世話をリビングドールに放り投げたのである。

 

「えーと、僭越ながら提案者である、わたくしアフロディーテ・ファミリアのメアリ・シェパードから候補となる動物を提案させていただきますね……」

 

 こほんと咳払いをしてから、メアリはノームの図書館で調べてきたであろう大量の資料から模写された絵を取り出した。

 

「まずはこの子。アザラシです」

 

「なにこれ丸っ」

 

「え、丸いですね……モンスターじゃなくてですか?」

 

 丸い。一見すれば本当に丸でしかない。しかし妙に絵が上手いためにモンスターか何かに見える。はじめの感想はそんな感じだった。

 

「あ、でも顔はかわいいんですね。愛嬌ありますし」

 

「アザラシは北の海に生息する動物で、寒さに耐えるために丸々太っているんですよ」

 

「これ抱き心地良さそーねー」

 

「実物は脂でベタついているらしいですが、その辺りはピューちゃんのお人形ならなんとでもなるので」

 

「そう言えば、みなさんも生きた人形なんですよね……リリ、未だに信じ難いんですが……」

 

 ちなみに、基本的に却下されなければ採用です。とメアリが告げ、次の候補に移される。

 

「続いてはこちらのウサギ!」

 

「うーん……ウサギは家畜のイメージ強いねー」

 

「毛皮とか食肉にするイメージがつきすぎて、愛玩と言われると少々思い浮かばないですね……」

 

「でもでも、孤児院とか修道院では精神的ダメージの治療として、アニマルセラピーに利用されるのよ。ピッタリじゃない?」

 

「確かに、商会でもウサギのぬいぐるみは売れ行きがいいですね」

 

 これも却下意見がなかったため、とりあえず採用となった。

 

「続いてこちら、カピバラよ!」

 

「なんですかこいつ……ネズミ? ビーバー?」

 

「見た感じネズミっぽいけど……大きいねー……」

 

「なんか最大のネズミらしいわー。ヌボーっとしてるから見てるだけで癒し効果大ね!」

 

 その後も、猫や犬といったメジャーなものから、フクロウ、子羊、はたまたペンギンなどの案が出たが、却下される案は出なかった。

 

「でもこれだけの数、一店舗で出すのかー?」

 

「まぁ主人(マスター)の作る人形ですから、動物同士で喧嘩することはないでしょうし、スペースさえ取れればそれで問題はないでしょう」

 

「今のオラリオ、場所は取れますからね……」

 

 瓦礫の撤去は終わりが見えたオラリオ。しかし、中身(人員)は早々に戻りそうにもない。土地が遊んでいる状態と言えるのだ。

 

「幸い土地にかかる税金も一年間の免税対象です。安く手に入るでしょう」

 

「じゃああとは喫茶店部分のメニューね! 細かく詰めていきましょう!」

 

 

 

 そんなわけで、1ヶ月後*2オラリオに『ふれあい動物喫茶』なる店が誕生した。開店当初は目新しいもの好きな神々が、運営がピュグマリオン商会だったことも手伝って次々に来店し、すぐに全貌が喧伝された。

 

『なにあれ、めちゃくちゃ癒されんだけど』

 

『俺さぁ……生贄の神だから動物に懐かれないんだよ……なのに、うさちゃんがさぁ……俺の手から葉っぱ、たべてくれてさぁ……』

『泣くなよ……』

 

『フクロウがやたら羽広げてきてんのは歓迎の印だよな? な?』

 

 と、そんな感じで。

 段々と住民にも認知され始め、主に女性客や子供に人気と当初の狙い通りになっていた。

 

「え? これ鳥なの? 飛べるのこんなんで? え? 飛べないの? 鳥なのに?」

 

「なんか丸い……丸くない?」

 

「なにげに出てくるお茶とかお菓子も美味しいのよね……」

 

「足湯コーナーあるのいいわぁ……カピバラだっけ。すごい癒されるし……」

 

 真似する店は現れたが、カピバラやアザラシ、ペンギンなどの珍しい動物を仕入れることはできず、仕入れられたとしても、メジャーな動物も含め飼育や調教に苦労し、ピュグマリオン商会ほど客に懐くこともおとなしくすることもなく、さほど時間もかからず諦めて潰れていった。

 

「なぁ、アスフィがどこにいるか知らないか?」

 

「団長ならふれあい喫茶ですよ。ヘルメス様が散々無茶振りするから癒されに行ってます。週7で」

 

「毎日!?」

*1
カットされた。

*2
なお、既にピュグマリオンはヒガントーナやメリーと同質である2級品質のリビングドールなら3日で作成でき、今回の動物は1体につきおよそ1日で作り上げた。




繋ぎなので短め

ハトホルも原作キャラですが、ちょい役なので独自設定入れてます。
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