人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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『その世界で常識の外にある力や物品により想定の外を行かれて驚く人々』
『特段裏の考えもないやつが第三勢力として警戒されてる展開』
『ロリ巨乳とかTSとかの一部にやたらギャップがある美少女』

……性癖の開示、本気だね……


白鼠姫(コマンダー・プリンセス)

「それではローズ殿、行ってくるのであります」

 

「あー……いってらっしゃい」

 

 目の前の、一見すれば子供か小人族(パルゥム)にも見える小柄な鼠人(ローデンツ)を見送って、『ギルド』の受付嬢である狼人(ウェアウルフ)、ローズはため息をつく。彼女は、ガラテアの希望によってピュグマリオン・ファミリア所属冒険者の担当として指名されていた。

 ローズは過去の経験から、冒険者相手に深く関わろうとはせず、事務的なやり取りで済ませるようにしていたのだが、それが逆にガラテアのファミリアの主神の琴線に触れたらしい。

 

 ピュグマリオン・ファミリア所属のLv4冒険者『白鼠姫(コマンダー・プリンセス)』ことクララ・ピルリパート。Lv2で冒険者登録し、『大抗争』の最中にLv3、『大抗争』後にLv4にランクアップ()()()()()()()()

 ピュグマリオン・ファミリアの共通点である白髪灰眼、身長は115C(セルチ)ほどで小柄ながら主張の激しい胸囲。比較的シンプルな装束で統一されているピュグマリオン・ファミリアの中では珍しく、軍装とドレスを合わせたような戦闘衣(バトルクロス)に、高さのあるティアラを装着している。

 その特徴としては、常にソロで探索していること。そして、()()()()()()()()を引き連れていることが挙げられる。

 普通は逆である。4〜8人程度のパーティーに、サポーターはひとりかふたり。しかし、彼女は20人近くのサポーターを率いて、最近では下層まで潜る。

 

 そして、サポーターの彼女たちもまた、ピュグマリオン・ファミリアに所属していると思われる。サポーターであるが故にギルドに登録されていないため詳しく知ることもできないのだが、見てわかる情報だけなら、少なくとも兜から飛び出た鼠の耳と尻尾から鼠人であることだけは確かか。

 

「あの……なんであんな危険なパーティーを通してしまうんですか……? 明らかに危険です……!」

 

 そんな非常識的パーティーを見送っていると、ローズは後輩の受付嬢から苦言を呈された。この後輩は、少しどころでなく担当冒険者にも、それ以外の冒険者にも入れ込みすぎる気がある。

 さて、ローズがあのパーティーを引き留めない理由は、そもそもあまり担当冒険者に干渉しないという彼女の方針もあるのだが、クララが意外なほど簡単に、それで探索ができる理由を明かしたからだ。

 

「小官の魔法は、指揮下の兵に小官の基本アビリティを共有するというものであります。すなわち、このサポーターの群れでも、小官の魔法の効果があれば小官と同レベルの軍団に化けるのでありますよ」

 

 つまり、ひとりのLv4冒険者と大勢のサポーターだと思っていたアレは、彼女の魔法のもとで大勢のLv4冒険者に変わるのである。

 条件として『自身と同じ恩恵を持っている者に限る』――つまり同ファミリアの団員でなければいけないという制限はあるため、サポーターと言えどLv1ではあるのだろうが些事だろう。

 ちなみに、基本アビリティ共有時に得られる経験値はクララ本人と同等になってしまうため、Lv1が深い階層で経験値を稼ぐということもできない。

 

 それを知っているからローズは彼女たちの行軍を止めない。というか、それで万が一死んでも自己責任なのが冒険者というものだろう。

 

「そんなだからアンタは『隠神の白妃(ハーミッツ・クイーン)』の登録したのに担当降ろされんのよ」

 

「ゔぅっ……」

 

「心配すんのはいいことだけど、冒険者にも冒険者で隠し持ってる飯の種ってもんがあんの。アンタのそれはその飯の種の情報っていう『財産』を、『ギルド』職員って立場を利用して奪い取ってるようなもんよ。その上、あっちが良心からその情報を開示して、自分の持ってる常識から外れたら大声で驚いて周りに暴露するし」

 

 その後輩にしてみれば心外な言葉の雨であったのだが、如何せん事実なので否定できず、その場に沈み込んだ。担当冒険者がいつ死ぬかなんて賭けをするような他の職員に比べれば健全な彼女なのだが。

 

「特に、腹に一物抱えたファミリアの相手なんて、一歩引いて眺めるくらいが丁度いいのよ。あっちにとっても、こっちにとってもね」

 

 自身の経験から、未熟な後輩にそう説くローズ。結局、その後輩はローズの薫陶を受け一歩引いた見方をするようになる。

 数年後、さらに冒険者に入れ込む受付嬢が現れるのだが。

 

 

 

 一方、クララ・ピルリパートたち迷宮部門が目指すのは下層。主に、到達階層を更新し新たな素材を発見するのが目的だ。

 彼女たち迷宮部門は、戦闘力を必要とするために迷宮に潜る団長や副団長、魔法部門員と異なり、明確に迷宮での行動を専門とする戦闘員である。

 迷宮外での任務のため、長期間の遠征が難しくなってきたガラテアらの代わりとなることを目的に、初期は主に魔石の大量獲得を任務として組織された。

 今現在もギルドからの買い取りに次ぐ魔石の入手先として活躍している。

 

 なにせ、ランクアップのために必要な偉業判定石として、Lv1からLv2までに中層級モンスターの魔石3つ、Lv2からLv3で中層級モンスターの魔石50*1、Lv3からLv4で下層級モンスターの魔石3つ*2、Lv4からLv5で下層級モンスターの魔石50が必要になるのだ。そこに加え、基本アビリティや発展アビリティに回す経験値も必要になる。魔石はいくらあっても足りない。

 そして、Lv5からLv6になるために提示された魔石の数は、ワシリーサによる推測では下層以下の『迷宮の孤王(モンスターレックス)』の魔石複数個か、深層級モンスターの魔石数十個。

 フレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアの戦力が『大抗争』によって進化した今、最低でも団長であるガラテアをLv6にまではしておきたいというのが、ピュグマリオンからの勅命であった。

 目指すは深層への安全な攻略ルート確立。及び、25〜27階層を縦断する階層主、アンフィス・バエナか、37階層に君臨する階層主、ウダイオスの周回討伐ルートの確立。

 

「総員、火種(フリントロック)確認!!」

 

 18階層の一角で、クララを補佐する20人の迷宮部門所属リビングドール、『王女の指先(ナッツクラッカーズ)』が、クララの号令に従い手にした武器を点検する。

 それは、オラリオの冒険者にすればあまり見たことのない武器であろう。見るものによっては杖に、あるいはそれを使っているところを見れば『魔剣』に見えるかもしれない。

 そして、ラキア王国の軍部でも研究部であったり最上層部の軍人が目の当たりにすれば最大級の驚愕とともに、そして我々現代に生きる者が目にすれば、それをこう評するだろう。

 

 『銃』と。

 

 ラキア王国で秘密裏に研究が進められている武器、銃。それをほぼ完成品に近い形で使っているとなれば、ラキア王国上層部は目を剥くだろうが、これは情報漏洩などで作られた武器ではない。ワシリーサが中層に出現するモンスター、『銃蜻蛉(ガン・リベルラ)』をヒントに開発した武器だ。

 その正体は、正確にはラキア王国の、そして現代の銃とは異なる『複合構造魔剣』である。我々の認識では、どちらかと言えば『擲弾器』に近い。

 

「敵集団確認! 撃てぇっ!!」 

 

 19階層、クララの号令によって、『王女の指先』が引き金を引く。銘を彼女たちの総称と同じく『胡桃割り(ナッツクラッカー)』とするその銃の引き金を引くことで、内部にセットされた『火種』と呼ばれる魔剣が発動する。

 その役割は、装填された『弾丸』を敵に向けて発射すること。そのためにこの魔剣には、指定された部分に接触した物体を一方向へ強力に弾き飛ばす効果が刻まれている。

 そうして発射されるのがもう一つの魔剣『弾丸』である。この魔剣は普段はウーズ素材の膜に包まれており、複数個が『胡桃割り』へ接続できる『弾倉(マガジン)』に格納されている。

 これが『火種』によって発射されると、その勢いでウーズ膜が剥がされる。そして着弾すると同時に、『弾丸』に刻まれた一度使い切りの『爆発』の魔法が発動するのだ。

 つまり、いわゆる『銃』であるラキア王国が開発中の銃と違い、『胡桃割り』は小口径高火力な『グレネードランチャー』なのである。

 なお、発射に使う『火種』も当然複数回使えば壊れる代物であるため、『弾倉』とともに再装填(リロード)が必要になる。

 そうなると当然弾切れも起こるため、『胡桃割り』の使用は制空権確保のための対空攻撃や、近距離戦が得意な敵相手に限られている。

 

「抜剣!! ()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 故に、まずは制空権を奪っている敵を散らし、あとはサーベルによる近距離戦で敵を打ち払っていく。Lv4の集団、しかも相性がいい『大樹の迷宮』のモンスター相手だ。ほとんど鎧袖一触と言っていい。

 そうして群がっていたモンスターがいなくなれば、その中心にはひとりの冒険者が横たわっていた。

 

「っ!! ……これは、死んだほうがマシな有様でありますな……」

 

 全身は焼け爛れ、四肢を、腹を貪られた冒険者は、もはや面影もない。片方だけ残された獣耳から、それが犬人(シアンスロープ)だと判別できる程度だ。

 しかし、こんな状況にもかかわらず、その冒険者は幸運なことに、あるいは不運なことに、命を保っていた。

 クララは即座に、救援用に持たされている『人魚の生き血』の使用を選択する。小瓶程度の量のそれは、当面の命を確保するには十分な量で、命を繋ぐための箇所を重点に治癒していく。

 しかし、骨や肉が残っている他の四肢と異なり、骨まで完全に失われている右腕だけは、『人魚の生き血』でも回復しないだろうとクララにも理解できた。ディアンケヒト・ファミリアによる懸命な研究を嘲笑うかのように、『欠損回復薬』は未だに完成の目処が立っていない。

 

「……さて、我々は探索を再開するであります」

 

 配達部門によって地上へ運ばれていく冒険者の()()から目を逸らし、クララは迷宮を進む。

 焼けて剥がれた戦闘衣の下にあった、生白い女の肢体に顔を赤らめながら。

 

 クララ・ピルリパート。『姫』を二つ名にいただくリビングドール。彼女は姉妹で唯一の『男心女体(トランスジェンダー)』なリビングドールであった。

*1
中層級の階層主、ゴライアスの魔石ひとつで代替可能だった。

*2
中層級の階層主、ゴライアスの魔石3つで代替可能だった。




クララ・ピルリパート Lv4

力:F332
耐久:H102
器用:H124
敏捷:E493
魔力:E401
剣術C
射撃D
指揮E

魔法
《ドロッセルマイヤー》
・付与魔法。
・多対象選択。
・対象に自身の基本アビリティを共有。
・詠唱式【語り部の娘、木像の(つわもの)、美しき姫、(かたき)なる王。我が存在はツギハギなれば、歪な我が身の欠片を分け与えん――変じよ】
・解呪式【劇は終わり、呪いは解けられた】

スキル
人形生命(アイボリー・ハート)
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・耐久に高補正。
・同スキル所持者同士での念話解放。
・精神異常、生理的異常の無効。
・神威耐性。
・魔石摂食により経験値獲得。
・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。

果割人形(マウス・プリンセス)
・発展アビリティ《指揮》《鼓舞》《戦術》《育成》の発現。
・力、耐久、器用、敏捷に中域補正。
・羞恥心、違和感により効果向上。
・己の姿に対しての羞恥心、違和感が減衰しない。



王女の指先(ナッツクラッカーズ)
所属:ピュグマリオン・ファミリア
職業:迷宮部門長補佐
種族:リビングドール
二つ名:なし
身長:118C
型番:3級品質量産型特化リビングドール鼠人モデル

Lv1

力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0

スキル
人形生命(アイボリー・ハート)
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・耐久に高補正。
・同スキル所持者同士での念話解放。
・精神異常、生理的異常の無効。
・神威耐性。
・魔石摂食により経験値獲得。
・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。

補助人形(フィンガーズ)
・発展アビリティ《伝心》《行軍》の発現。
・特定対象との発展アビリティの共有。
 対象:クララ・ピルリパート
・特定対象を補助する行動に対する高域補正。


追記
 エイナさん周り改めて修正しました。コメントくれた方ありがとうございます。
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