人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか 作:仙託びゟ
今でこそオラリオを出てオラリオ外で活動しているアルテミス・ファミリアだが、元々はオラリオで小規模ながら活動をしていた。何故オラリオを出ることになったかと言えば、
それ故に、多少情報が古いとは言えどもピュグマリオンたちに常識を教えるのは、その堅物な性格もあり最適な神物と言えた。
そして3日後。アルテミスは匙を投げた。
「アフロディーテ、アレは確かに常識に疎かったが、だからといって常識を知ったとしても別に自重はしないタイプだ。諦めろ」
アフロディーテは白目を剥いた。
アルテミスから知識を得たピュグマリオンは、手始めに昔作ってコレクションにしていた人形を何点か纏めて売り払い、大量消費した資金を回収することにした。
基本は完成度重視主義で、昔の作品よりも今の作品により愛着を持つ性格なピュグマリオンではあるが、されとて昔の作品に愛着がないわけではなく、村で作っていた作品はすべてメイルストラにも持ち込んでおり、定期的な手入れも欠かしていなかった。とはいえ、ガラテアという最優先すべき
売却するのは主に村にいた頃に作った人形と、メイルストラに来てから作ったものでも初期の作品だったが、メイルストラでは既に人形の名工と名の売れているピュグマリオンの初期の作品となれば、今より技術が多少拙い*1出来ではあるが、それでも美神の眷属を一瞬でも魅了したという偉業レベルと同等かそれ以上の品々だ。
ピュグマリオンは自身の技量につけられる価値に関しては正しく理解していたが、その反面ネームバリューからくるブランド性に関しては自覚が薄かったために、今よりも明らかに拙い出来の人形についた値段の数々を見たときはしばらく開いた口が塞がらなかった。
最終的にオークションにかけられたものも含め、3年で貯めていた3000万ヴァリスを余裕で超える5000万ヴァリス超の資金を手に入れたピュグマリオンは、遂にアフロディーテにオラリオ行きを打ち明けた。
これに反対し駄々をこねたのは案の定アフロディーテと、メリーのモデルになった
ちなみに、出立直前にピュグマリオンのステイタスを更新したアフロディーテが、2つ目の魔法が発現していたことでひっくり返ったのは余談である。
「では次の者! 通行許可証はあるか?」
「これでいいだろうか」
「ふむ……ふむ? あぁいや、確かに通行許可証だが、保証神がアルテミス様なのは珍しいな……潔癖なあの方が男の保証神になるとは……男嫌いというわけでもないからあり得なくはないのか。よほど誠実なのか……? 名前は……『キプロス』でいいのか?」
「あぁ。正確には姓なんだが、名前で呼ばれるのは好ましくないんだ」
他国からのスパイ対策として、オラリオの門では恩恵の有無などをチェックしている。具体的には、どの神に恩恵を貰っているのかとそのレベルだ。
いくら戦闘力がクソ雑魚であると言ってもその実情が相手にはわからない以上、この時代のオラリオには『
そのため、ピュグマリオン、アフロディーテ、アルテミス、ガラテアの間では、満場一致でピュグマリオンのステイタスを隠す方向で決まった。その対策がこの、通行許可証である。
恩恵チェックの目的はスパイ対策――あるいは暗黒期直前の今『
そういうわけで、アルテミスは――メリーの自称姉との約束である頻繁な帰省を守るために必要な馬のリビングドールのテストも兼ねて――猟犬のリビングドールを2体作って受け渡すことを条件に、ピュグマリオンの保証神となったのだ。*2
なお、アフロディーテは普通に信用が足りないので保証神にはなれなかった。日頃の行いである。
「オラリオへはなにをしに?」
「僕は人形職人を営んでいてね。インスピレーションを受けるためにやってきたんだ。世界でここより刺激的な街はないだろう?」
「ははっ! 違いない!」
ピュグマリオンは、極力嘘を吐かない形で質問に答えていく。真実の一部を隠したり、伝えても差し障りない範囲だけ開示することで、仮に近くに神がいたり、あとから神の追及を受けたときに躱せるようにしておく。
実際、キプロスもピュグマリオンの名前の一部*3であるし名前を呼ばれると不都合なのも本当、アフロディーテに言ったように刺激を受けるのも目的のひとつだ。
「それと、これはお近づきの印に贈らせてもらうよ。主神殿に渡してくれ」
「え、あ、うん。渡しておこう。ガネーシャ様
門番をやっていたガネーシャ・ファミリアの団員に贈り物*4を渡し、ピュグマリオンは高価な素材もあることを理由にセキュリティの高い宿として、ガネーシャ・ファミリア
一方、ガラテアたちであるが、こちらは正面突破を試みていた。
「
「都市外で作られたファミリアですから。私はLv2で、こちらのふたりはLv1。必要であれば、神の前で証言しますが」
「う〜ん……昨今の情勢が情勢だ。すまんが、ガネーシャ様に会わせるからついてきてくれ」
ガネーシャ・ファミリアの
「俺が、ガネーシャだ!!」
そうである。
「これはご丁寧(?)に。私はピュグマリオン・ファミリア団長、我が
「御前、お目汚しを容赦願います。我が
「私、メリーさんなのです!」
「そうか。そして俺がガネーシャだ!!」
いつものノリに突入し始めているガネーシャではあったが、その裏ではしっかりと彼女たちの言葉について考えていた。
「お前たちの言葉に嘘はないのはこの俺ガネーシャが確認した! そこで質問なのだが、そちらの主神は別行動なのか?」
「はい。
ガネーシャの脳裏に、友神*5の姿が思い浮かび、おおよそ彼女たちの主神の
「そうか……お前らも苦労しているな……」
「いえ、我が
「
「なのです!」
今度は
なにせ、ピュグマリオンなる神の名をガネーシャは、とんと聞いたことがなかったのだ。ガネーシャは筋金入りの陽キャであり、神々の集まりでは役割的にも性格的にも中心にいることが多い。そもそも勘違いが原因とは言え父親に顔を焼かれながらも象の仮面をプレゼントされただけで赦す*6くらいには寛容な神格者であるため、他の神々からはイジられつつも慕われており、そんな神々の口からそれなりに色々な情報が入ってくる。
例えば、あの
まぁ、実際はそもそも神ではないのだから当然だが。
「そもそも、神ピュグマリオンは何が目的でオラリオにやってきた? やはりダンジョンか? それにしてはファミリアとしては小規模なようだが……」
ガネーシャに代わり質問したのはシャクティだ。本来、ガネーシャはこういった聞き取りには向かない性格であるため、一種の『優しい警官と怖い警官』の役割として、尋問役はシャクティが担っている。
「
「なるほど……聞けば聞くほどソーマ・ファミリアに似た方針のようだな」
ガラテアはそんなシャクティの呟きに、ピュグマリオンと同類がこのオラリオにもいるのかと些末なことを考えていた。
実際、ピュグマリオンとソーマは似ている。ほぼ同類と言っていいだろう。
「とはいえ、
「(嘘はない……活動方針や派閥の規模を考えてもほぼ無害と考えていいか……これなら、ソーマのところのほうがよほど害悪だ……)そして俺はガネーシャだ!」
「どうした急に」
自身の思考から自己紹介へ繋げてしまったために発せられたガネーシャの唐突な叫びに、シャクティが思わずタメ口でツッコんでしまっていた。
「と言うわけで、無事オラリオに入ることができました」
「そうか、ご苦労だった」
宿で合流したピュグマリオンと眷属たちは、互いに経緯を報告していた。ここまでの行動は、おおむね目立ちすぎてもおらず、問題はないとピュグマリオンは判断する。
「それで、ギルドへはもう登録したのか?」
「いえ、それについては明日に回し、先に情報収集を行っていました。現状把握は急務ですし、ギルド登録後はほとんどの冒険者が迷宮に潜るようですから、不自然に思われないことを考えれば我々も迷宮へ降りることになります。そうなると自然、情報収集も遅れることになりますので」
アルテミスから得た情報はゼウス/ヘラ・ファミリアが健在だった過去のものであり、現在のオラリオは抑止力としてのゼウス/ヘラ・ファミリアを失ったために治安が悪化の一途を辿っている。
ピュグマリオンの安全を第一に考えるなら、情報収集は真っ先に行うべきことだった。
「
「構わない、言ってみてくれ」
ガラテアが再び、ピュグマリオンの立場を確固としたものにするために、象牙色の脳細胞を回転させる。
「
ナーフしました
3年間の貯金:5000万ヴァリス→3000万ヴァリス
今回の臨時収入:1億ヴァリス超→5000万ヴァリス超