人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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妹(自称)

「テメェかぁ!! ()()()()()()()怪物進呈(パス・パレード)しやがった████*1はぁ!!?」

 

 遠征帰りで休憩中のロキ・ファミリアから貸し与えられたテントの中、突如として隕石のごとく現れた少女によって出入り口に向かって投げられたタケミカヅチ・ファミリアの団長、カシマ・ 桜花が真横に向かってブラーがかかりつつ吹き飛んでいくのを、ベル一行も、タケミカヅチ・ファミリアの面々も、神であるヘスティアやヘルメスも、それどころかLv4であるアスフィでさえ反応することができず、直後の壁が崩れる音でようやく全員がテントから出てそちらに目を向ける。

 そこには、手足が尋常ではない方向にねじ曲がった桜花と、既に桜花にマウントポジションをとった状態で拳を振り下ろす、少なくとも見た目はリリルカよりも年下に見える少女の姿があった。テントとの位置関係から考えて、投げ飛ばされてからすぐに一度、他のテントに当たらないようキャッチされて進行方向を変えられたようだ。

 

「「桜花」殿!!?」

 

「あ〜……」

 

 突然生死の境を彷徨い始めた昔馴染みであり団長の姿に悲鳴を上げるヤマト・命とヒタチ・千草。そして、その少女に心当たりがあるのか、「こりゃやっちまったな!」という感情と「人死が出る前に止めてくれ」という感情の籠もった声とともに周囲を見渡すリリルカ。

 やがて気が済むまで殴ったのか、少女は懐から何やらポーション瓶を取り出し、桜花に対してその中身を乱雑に振りかける。

 なんとか止めなければと駆け寄ってきたベルたちは中身の液体が桜花にかかると同時に、折れていた手足も砕けていた顎や頬も綺麗に治っていくのを目にする。

 

「き、傷が……っていうか、体が……?」

 

「おいおい、相当質の良いハイポーション……いや、それ以上じゃねえの?」

 

「へ、ヘルメス様。あれ間違いなく『人魚の生き血』ですよ……!」

 

「あぁ、間違いないね……」

 

 全員が治った桜花を目にし、命と千草は桜花へ近づこうとしたとき。少女は桜花を殴るのを再開した。

 

「「「エェエエエエエエエッ!!?」」」

 

「えっ、えぇ!? 『人魚の生き血』を使って治してまでまだ殴るんですか!?」

 

「ちょっとキミィ!!? 今彼目を覚ましてたよね!? 目を開けたの見て殴るの再開したよねぇ!?」

 

「お願いやめて! 桜花が死んじゃう! いや死なないけど心が! 心が死んじゃう!」

 

 少女の凶行にアスフィが羽交い締めにかかるが、少女は止まる素振りがなく、腕が止められたからと今度はストンピングし始める。

 

「ちょっ、力強っ……Lv4()の力でも止まらないんですけど!?」

 

「ッ、リリ!! この子のこと知ってそうだったよね!? お願い止めてあげて!!」

 

「えっ、リリとしても若干スッキリしてるくらいなんですけど……まぁベル様の頼みなら…………リーフィ」

 

「はいお姉ちゃん! なんでしょうか!?」

 

 ベルに言われ、ようやくリリルカが少女に近づいていき、後ろから声をかけた瞬間少女の態度は急変した。

 悪鬼の如き形相を見せていた表情は年相応(?)の可愛らしいものに変わり、全身を血みどろにしながらリリルカに笑顔を見せる。

 体を急転させたために後ろから羽交い締めにしていたアスフィが瓦礫に向かってふり飛ばされたが怪我はなさそうだ。

 

「えー……と。そのくらいにしておいていいと思いますよ?」

 

「はーい。それじゃ去勢だけしておくんでちょっと待ってくださいね」

 

「「「やめてあげてマジで!!」」」

 

 男性陣から全力のストップがかかり、今度こそ本当に桜花の上から少女が降りる。

 ところどころというか、体の5割ほどが血に染まってはいるが、全身が白でコーディネートされた赤目の少女は、ひと目でどこのファミリアの所属なのか見て取れる。

 そして、今日初めて両者に会った他人である命や千草でさえ、ハッキリとリリルカに似ているとわかる容姿をした少女だった。

 

「えーと、彼女の名前はリリーフィア・アーデ。リリの妹分にあたる子で、ピュグマリオン・ファミリア所属の……配達員、でしたっけ?」

 

「はい、フィーは配達部門をやっています!」

 

「あぁ、冒険者じゃないからギルドには登録してないのか……いいなその言い訳、うちでも使おうかな」

 

 リリルカの妹分ことリリーフィアが紹介されると、ヘルメスがまたなにか良からぬことを企む。

 

「えぇ、と……ちなみにレベルはおいくつで……?」

 

「Lv4です!」

 

 リリーフィアは人を魅了*2する笑顔でそう言ったあと、グリンと顔を桜花を介抱しているタケミカヅチ・ファミリアの2人へ向ける。

 

「で……あちらの2人が残りの下手人で……?」

 

「ちょ、まだやるんですか!?」

 

「あのふたりは女の子だよ!?」

 

「何言ってるんですか兎っぽい人! なんで女性と男性で差をつける必要があるんですか!」

 

 まぁそれはそう。リリルカは頷いていた。というか、(リリルカが関係すると)過度に暴力的なこと以外は、リリーフィアはリリルカをモデルにしたという由縁に違わずリリルカとほぼ同じ思考回路を持っている。

 多分、リリルカが最初から強者として生まれていたらあんな感じだったんだろうなという感じである。

 

「それに、彼はこの行為を肯定してくれますよ。仲間を守るために怪物進呈した、その行為を間違ってるとは思わないって断言したんですよね? なら、また怪物進呈をしてリリお姉ちゃんを危険に晒すかもしれない相手をここで潰すことは、やってること同じじゃないですか! 自分がやるのは良くて他人がやるのはダメなんて道理が通りませんよ!」

 

 いやそれはやりすぎ。

 

「大体仲間に注がれるかもしれないヘイトを自分が被ろうとか考えてたのかもしれないですけど、『判断したのは自分です、自分が償いますから2人は赦してください』の一言も言えない時点で仲間思いもクソもありませんよ。角を立てないって単語が頭にないんですかね?」

 

「出現から今に至るまで角しか立ててない人がなんか言ってる……」

 

「まぁ角も無限個あれば円になるからね……」

 

「と、ところでリーフィはなんでリヴィラの町に? 普段は上で仕事してますよね?」

 

「Lv4が配達員……」

 

「俺が言えたことじゃねえけど、マジの力の無駄遣いってこんな感じなんだな……」

 

 リリルカが話の流れを変えようとしたら別の問題が浮上した。

 

「あぁ、今キプロス様が18階層まで降りてきてるので、フィーは荷物持ちしてたんです!」

 

 更にヤベェ話が浮上した。

 

「えっ……またとんでもないもの作ってるんじゃないでしょうね……?」

 

「アイズ様のランクアップの時に閃いたって言ってました。潜り始めて5日で完成が見えてきているので、パポス様(まえ)の時よりは酷いことにはならないかと。ただ、フィーは何十往復もさせられました!」

 

 リリーフィアはリリルカと同じく、《縁下力持(アーテル・アシスト)》のスキルを持っている。素材持ちをさせられたのだろうということは察せられたが、何十往復?

 

「……もう嫌な予感がします……他にはどなたが?」

 

「いつもの戦闘組の皆様が来ておりますよ。ヒガントーナ様はほぼつきっきりですね。今回はキプロス様ひとりではどうにもならないらしくて……」

 

「もう嫌な予感がします!!」

 

 ピュグマリオンひとりで作れない人形って、なんだ。これ以上爆弾が増えるのか。リリルカは頭痛がしてきた。

 

「ちょっと、なんの騒ぎ?」

 

「あっ、アルゴノゥトくん、やっほーさっきぶりー」

 

 流石にロキ・ファミリアの天幕の中で騒いでいれば当然様子を見に来る者もいる。やってきたのはロキ・ファミリアのLv5なアマゾネス姉妹、ヒリュテ姉妹である。

 彼女らがやってくると、ヘスティアは妹のティオナ・ヒリュテに、リリーフィアが姉のティオネ・ヒリュテに対して威嚇し始める。

 ヘスティアはティオナのベルに対する好感を感じ取ったため。そしてリリーフィアは、ティオネがリリルカをフィンの伴侶にと強く勧めたことを覚えていたためだ。

 

「落ち着きなさいよ。流石に私も恋する乙女を団長に勧める気はないわ」

 

「!! ガルルルルル……」

 

「ちょ、ティオネ様!? ヘスティア様の威嚇がこっちに向いたじゃないですか!!」

 

「ティオナさん。ロキ・ファミリアの方は大丈夫ですか?」

 

 ベルがそう問いかける。そもそも、何故ロキ・ファミリアがここにいたか。それは59階層での戦いのあと、深層で『毒の墓場』とさえ言われる有毒モンスター、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)と遭遇してしまったのである。

 毒妖蛆の吐く毒液は上級冒険者の《耐異常》さえ貫通する強い毒性を持つ。それによって、ロキ・ファミリアのLv4以下の冒険者や、同行していたヘファイストス・ファミリアの上級鍛冶師が毒に侵されてしまっていた。

 

「うん。元々30階層でピュグマリオン・ファミリアの子と会って、ここまで解毒薬の輸送してもらったから、体調自体はみんな良くなったよ」

 

「リヴィラの街と違ってぼったくり価格にならないから助かるわ……何故か毒妖蛆の解毒薬も安くなってるし」

 

 勿論理由はピュグマリオン・ファミリアのモンスター牧場である。毒妖蛆の解毒薬には毒妖蛆の体液が必要なのだが、人魚方式で無限回収されているため大量の解毒薬がディアンケヒト・ファミリアによって調合されていた。

 ここまでのことでわかるように、現在オラリオの物資は非常に潤っている。ピュグマリオン商会の便利な魔石製品類や即席食品に、モンスター牧場から取れた素材によって作られる薬。

 そして、これらを運ぶためのサポーターの価値もまた、中堅から上位の中層以降へ行くファミリアでは高まっていた。最近でサポーターの育成、派遣に目をつけているのが金稼ぎにがめついヘルメス。なにせ、主神であるヘルメスは旅や流通を司る神であり、同時に学術やヒツジの群れを司る。彼の権能である旅や流通に関する知識を教導するのはお手の物である。

 

「もういっそ、ピュグマリオン・ファミリアがリヴィラの街の代わりに街作ってくれないかしら」

 

「それはフィーたちに利がないでしょう? 慈善団体じゃないんですから」

 

 ちなみに、ギルドから提案されたこともあるのだが、その場合後腐れないようにリヴィラの民を皆殺しにするがいいかと聞いたところ、提案は棄却されたという。

 

*1
オラリオ特有の罵倒。程度で言うなら宗教の敬虔な信者の眼の前で聖典に唾吐いて踏みにじったあと眼の前で信者の一番大切な人物に戒律全部破らせる程度の侮辱を意味する。

*2
権能的な意味でなく一般的な意味で




リリーフィア・アーデ

Lv4

力 : C654
耐久 : E477
器用 : D564
敏捷 : A869
魔力 : F354
拳撃D
拳闘G
鉄拳I

魔法
《クロックワーク・オレンジ》
・高揚魔法。
・全基本アビリティに高域補正。
・狂化付与。
・解除後に強い倦怠感の付与。
・詠唱式【貴女の刻印(キズ)は私のもの。私の刻印(キズ)は見ないふり】

《ヒドゥンワーク・レモン》
・付与魔法。
・接触、刻限、起動で爆破。
・詠唱式【置き去りした心、誰も気づかない】
・爆散鍵【さよなら王子様】

《ファイヤワークス・パイナップル》
・結界魔法。
・時間設定で爆破。
・詠唱式【爪先と踵を切り落とせ】

スキル
人形生命(アイボリー・ハート)
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・耐久に高域補正。
・同スキル所持者同士での念話解放。
・精神異常、生理的異常の無効。
・神威耐性。
・魔石摂食により経験値獲得。
・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。

人形聖女(サンドリヨン)
・単独行動時に力、器用、敏捷に高域補正。
・狂化付与時に更に超域補正。
・発展アビリティ《変装》《掏摸(すり)》《隠密》《詐欺》の発現。

縁下力持(アーテル・アシスト)
・一定以上の装備過重時に能力補正。補正は重量に比例。




魔法部分に隠されたギミックを見つけてみよう。
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