人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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時間飛んだね〜……

 『異端児』騒動が終わり、ベルはLv4に上がったうえに、アステリオスとの死闘によって既に偉業さえこなせばLv5に上がるだけの経験値を得ていた。

 『神会(デナトゥス)』ではあの死闘を讃え、多くの神が珍しくまともに考えた二つ名である『白兎の脚(ラビット・フット)』がベルに与えられ、さらにリリルカも時を同じくしてLv2にランクアップ。こちらは性格や生い立ち、(ピュグマリオン)傘下から改宗したことも含め、『黒い灰被り(ブラック・アッシュ)』の二つ名を授けられた。

 

 そんな彼女たちは、ヘスティア・ファミリアのメンバーに加え、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の際に改宗(コンバージョン)しなかったミアハ・ファミリアのナァーザと、逆にアポロン・ファミリアから改宗したダフネ・ラウロスにカサンドラ・イリオン。タケミカヅチ・ファミリアのカシマ・桜花とヒタチ・千草の計11人で連合を組んで下層である25階層まで遠征に訪れた。

 そこで冒険者を襲う強化種のモンスターとの死闘を経て、一行は一度リヴィラの街へ戻ってきたのだが、そこではある冒険者を追う討伐隊が結成されていた。

 

 討伐隊に参加していたリュー・リオンによると、なんと彼女が殺人事件の犯人疑惑を受けていたという。

 リューはクノッソス侵攻作戦で仇敵の男を発見し、それを追っていた。しかし、リヴィラの街へ逃げ込んだ男は協力者と共に殺人事件を起こし、目撃者としてリューへその罪を被せようとした。

 しかし、至る所にピュグマリオン・ファミリア配達部隊の待機班がいるリヴィラの街でそんな偽証が通じるはずもなく、ガネーシャ・ファミリアへ連絡を入れたから地上で証言の真偽を神に確かめ、その後リヴィラの街で裁けばいいという流れになった途端、男は魔導具で深層のモンスターをリヴィラの街へけしかけ、その間に逃走したのだという。

 仇敵を追うため討伐隊に参加するリューから協力を依頼され、『戦争遊戯』や『異端児』騒動での恩があるうえにお人好しなベルは協力を快諾。再び犯人が逃げたという25階層へ向かうことになる。

 

 24階層で犯人の協力者たちのうち一部を捕らえ、それ以降の階層は下層となるため、一部の冒険者が選抜隊としてさらに下へ行った犯人を追うことに。

 

 しかし、そこで犯人の協力者が大量の火炎石を爆破させて階層を大規模に破壊することで、先んじて犯人が破壊していた27階層と合わせて条件を満たした、かつてアストレア・ファミリアを全滅に追い込んだとされるジャガーノートというモンスターが27階層へ出現し、討伐隊は壊滅。

 ベルが重傷を負いながらも『人魚の生き血』によって回復しながらジャガーノートに大きなダメージを与えるが、その隙にベルとリューは犯人の使役していたモンスター、ワーム・ウェールに飲まれ、さらに下層へと連れ去られてしまった。

 

 そして、不幸というのは連続して起きるものだ。

 

「……マジかよ……ッ」

 

 ヴェルフが呻きのような声を漏らす。仕方ないだろう。今この場にいる者の中では、唯一、春姫と共にヘスティア・ファミリアへ入っていた*1元イシュタル・ファミリアのアマゾネス、『麗傑(アンティアネイラ)』アイシャ・ベルカがLv4。他の冒険者はLv2かLv1という状況。

 にも関わらず、彼らの前に現れたその巨体は下層の階層主。徘徊する迷宮の孤王(モンスター・レックス)、推定能力Lv5、アンフィス・バエナだった。

 本来は次産期間(インターバル)で現れないはずの階層主。心の支えであったベルはおらず、退路は落下してきた24階層の大樹の根によって塞がれる。絶体絶命の状況。

 

 そして、眼の前の双頭が息吹(ブレス)を放つ――

 

「ッ!! 勝機はあります!!」

 

 リリルカはバックパックから取り出した簡易結界の魔導具を起動し、注がれる息吹をなんとか弾き返す。これでアンフィス・バエナ相手でもほんの1分程度、バックパックをひっくり返す時間は稼げる。

 

「千草様は『砲身回転式重魔笛(ガトリング砲)』載せた台車押して物陰に! そこのレバー引けば固定杭が下りて反動で動かなくなります!!」

 

「は、はい!」

 

「春姫様は『ウチデノコヅチ』の、カサンドラ様は回復魔法の合間に協力してその魔導具で簡易ではない結界の作成を! その魔導具で作ればアンフィス・バエナ相手でも実用に耐えます!!」

 

「わかりました!」

 

「それから皆さんこちらに!! 耐熱油(サラマンダーオイル)を散布します!! 完全耐性まではいきませんが、気休めにはなるはずです!! 桜花様は安全な場所で大盾にこちらの濃耐熱油(イフリートオイル)を塗ってください! こちらなら完全に断熱できますが散布はできませんから!」

 

「お、おう!」

 

「前衛の方々はなんとか耐えてください! リリが魔剣を撃ち込んで、体内の燃料に誘爆させます!!」

 

 リリが戦闘用外骨格型人形(パワードスーツ)を纏い、『単騎駆け(クシャトリヤ)』を構える。下層の階層主相手に、深層級魔石100個相当の消費は完全に赤字だが、背に腹は代えられない。

 簡易結界が砕け散り、息吹が地面に届く前に全員がその場を離れることができた。

 

 『ウチデノコヅチ』でアイシャへのバフをかけ終えた春姫が、説明書通りに魔導具のセッティングを行う。アンフィス・バエナがそれを咎めて息吹を吐いてくるが、桜花が油を塗り終えた大盾でそれを逸らす。

 一時的にLv5になったアイシャを中心として、前衛はアンフィス・バエナを後衛に近づけさせないように立ち回りながら、リリルカが一撃をいれる隙を作ることに尽力する。

 リリルカが戦闘できるのは30分が限度。それまでに勝負を決める必要があった。

 

 千草が砲身回転式重魔笛で支援しながら、リリルカが言っていた体内の燃料への誘爆を狙う。弾丸の発射と弾丸からの魔法は、アンフィス・バエナの発する魔法拡散の霧『紅霧』による拡散対象であるが、発射された弾丸は物理法則に則って飛んでいっているため威力減衰されることはない。

 そして『紅霧』を突き抜けてアンフィス・バエナの鱗に突き刺さった弾丸から放たれた魔法であれば、拡散されることはない。城壁を崩すほどの威力を誇る魔剣が次々とアンフィス・バエナの体表で爆発する。

 鱗が剥げて肉が露出するが、柱のように巨大な尾を叩きつけて反撃してきた。千草はなんとかその場から逃れたものの、砲身回転式重魔笛は尾に潰され砕け散る。

 

 装甲が剥がされたアンフィス・バエナは危機と見たか、アクア・サーペントやハーピーを呼び出すことで空中の自身を狙うアイシャたちを牽制するが、呼び出されたモンスターは『紅霧』を纏っていないため、リリルカの放つ鎧のレーザーと『単騎駆け』によって撃ち抜かれ、薙ぎ払われていく。

 しかしそれを意に介さないモンスターもいる。スピードだけならLv6級と言われる『不可視のモンスター』、閃燕(イグアス)が弾丸のごとく、脅威と見たリリルカへ突っ込んでいく。

 ベルのようにすべての閃燕を斬り払うことなどできるはずもなく、鎧が阻んでダメージこそ薄いものの、リリルカは空中で大きく体勢を崩す。

 そこを狙い撃つかのように、蓄力(チャージ)を終えた結晶体のモンスター、ライト・クオーツの群れがリリルカへ熱線(レーザー)を放つ。

 

「【燃え尽きろ、外法の業】《ウィル・オ・ウィスプ》!!」

 

 その瞬間、内一体の体がヴェルフの放った魔法封じの魔法によって『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』を起こし、それに巻き込まれた他のライト・クオーツが明後日の方向へ熱線を放ち、崩落した天井の一部がアンフィス・バエナへ降り注いだ。

 

「大丈夫かリリスケ!?」

 

「助かりました!! ッ……! 好機!!」

 

 リリルカがバックパックから取り出した大型の『魔笛』をアンフィス・バエナへと向ける。

 『魔笛』の銘は『硬溝雷光(カラドボルグ=ヴィジャヤ)』。魔剣を使って魔剣を射出するという、神々が『魔笛』と名付けた武器の定義には、実は当てはまらない。

 その名の通り、電気をほぼ完全に遮断する金属『雷殺鋼(ヘラメタル)*2の外装に格納された、深層のモンスター、サンダ・スネイクの牙を削って作った2本のレールが魔石のエネルギーによってパルスパワーを放ち、生まれた電磁気力によって溝を通って加速した亜光速の弾丸を発射する。*3

 

 すなわち、レールガンである。

 

「いっけぇええええええぇぇぇぇ!!」

 

 電気を纏いながら放たれたアダマンタイト製の弾丸は運動エネルギーのみによってアンフィス・バエナへ飛来し、竜胆*4で生成されていた焼夷体液(ガソリン)に引火。体内から大爆発を起こし、息吹を吐く器官が機能不全を起こす。

 

「今です!!」

 

「【来れ、蛮勇の覇者、雄々しき戦士よ、たくましき豪傑よ、欲深き非道の英傑よ。女帝(おう)帝帯(おび)が欲しくば証明せよ、我が身を満たし我が身を貫き、我が身を殺し証明せよ。飢える我が()はヒュッポリテー】!!」

 

 満身創痍となったアンフィス・バエナに、長文詠唱を終えたアイシャが斬りかかる。

 

「《ヘル・カイオス》!!」

 

 振り下ろされた『大朴刀・ザーガ』から放たれた真紅の斬撃波は、体勢を崩して縦に並んだアンフィス・バエナの頭の両方を捉え、胴体ごとすべてを両断した。

 

 

 

 その後、カサンドラの予言によって26階層へ逃げ、25階層の崩落から逃れた一行は、椿・コルブランドや豊穣の女主人の面々、『異端児』などの援軍と合流し37階層へ。満身創痍の状態でタロスに保護されていた*5ベルとリューを発見し、無事地上へ辿り着くことができたのだった。

*1
ヘスティアは反対したが、将来的になし崩し的にハーレムにできるかもしれないと企んだリリルカによって、夜這いこそ常に失敗に終わっているものの入団することができた。

*2
近年発見され、雷を殺す性質から名付けられた。

*3
物体を一瞬だけ空間に固定し、運動エネルギーを0にする魔法を封じた魔剣によって反動を無効化している。

*4
リンドウではなく文字通りの意味。

*5
ピュグマリオンの指示で基本見守るだけ。最後の最後に気絶してからリリルカたちが来るまでの間だけ護衛していた。




完結も近づいて参りました。

追記
消した文が残ってました。
リリルカにベルが飲まれたところ見せようかなーと思ってましたが結局原作通りにした名残です。
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