人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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エピローグ
人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか


 結論から言えば、ロキ、ディオニュソス両者にピュグマリオンの正体がバレた。

 

「あ、そうなんだ」

 

「『あ、そうなんだ』ちゃうわ!! なんやねん自分!!」

 

「いや、もう隠す必要も実質ないしな……」

 

 場所は『象牙座工房(グラン・ギニョール)』。この場にいるのは部屋の主であるピュグマリオンと、ファミリア団長であるガラテア。

 来客であるロキ・ファミリアから主神ロキ、団長フィンと副団長リヴェリア、そして正体バレの元凶であるレフィーヤである。

 その他に、光のディオニュソス*1と光のフィルヴィス*2。勝手についてきたヘルメスとアスフィ。別件で来ていたデメテルとハトホル。

 そして追加でもう一柱。

 

「おーいーアフロさんこれどうなってんー?」

 

「あらあら、かわいらしくなっちゃって」

 

「仕方ないじゃない。オラリオなんて長居するものじゃないのよ」

 

 ぬいぐるみミニアフロさん*3である。

 ピュグマリオンによって作られた遠隔操作人形(デフォルメアフロディーテ型)に意識を飛ばしているアフロディーテの本体は、エニュオ封印の後早々にオラリオを出てメイルストラへと帰還中であった。

 

「それになんやねんと言われてもな……しいて言うならアフロディーテ・ファミリアの平団員でレベルは先日上がってLv9というくらいしか……」

 

「なんでオラリオ最高レベルが平団員やっとんねん!! 言うとくけどこれ現最高やなくて過去最高レベルやからな!? ヘラんとこの『女帝』とタメやぞ!?」

 

「あとあなた団員からの満場一致で今団長扱いになってるからね? いや、オラリオに来ることはないからあってないようなものだけど」

 

 知らない間にアフロディーテ・ファミリア団長になっていたピュグマリオン。まぁオッタルが団長を務められるのだから問題はないのだろう。ただでさえアフロディーテ・ファミリアはオラリオ外のファミリアなのだし。

 

「まぁ、数字がLv9というだけで耐久以外の戦闘能力はLv1の中堅と同じ程度だからね。気にしなくていいよ」

 

「ちゅーか話してるんやから人形作んのやめぇや!!」

 

「無駄よロキ。この子、私との初対面の時も人形作りやめなかったもの」

 

「エレボスと会った時も人形作りながらだったしね」

 

「オイ待てやなんやそれ知らんぞ」

 

「襲いに来たから返り討ちにしたんだよね、ザルド」

 

 嘘はない。ロキは唸った。もはやコイツの発言の『嘘はない』を信用する気になれなくなっているのだ。

 

「……エエわ、本題や本題。今レフィーヤと『白巫女(マイナデス)』はどないなっとんのや」

 

「うん? 見たまんまだよ。『千の妖精(サウザンド・エルフ)』が『白巫女』に恩恵を与えている状態」

 

「明らかに弱体化しとんのは?」

 

「正確には彼女はフィルヴィス・シャリアじゃなくなったからじゃない? 僕の魔法は蘇生魔法でも延命魔法でもないよ。人形に魂と恩恵を与える魔法。フィルヴィス・シャリアという人形を創るのに、死んだフィルヴィス・シャリアの魂を流用して人格と記憶を保持しただけだよ」

 

 「沼男だか船の修理だか、あったよね」とピュグマリオンは言うが、レフィーヤは心穏やかではなかった。確かにやると決めたのはレフィーヤだが、当時のレフィーヤは精神的にかなり追い詰められていたのだ。

 さらに言えば、現在レフィーヤは無理なレベル拡張の副作用がモロに出て、軽度の記憶障害に陥っていた。と言っても、記憶障害に関しては最終決戦中とかその前後の魔本の中身とかの一部の記憶が飛んだだけだが。

 そのため、彼女の認識的にはいつの間にかとんでもない爆弾持ちになっていたことになる。人間に恩恵を与える人間? 嘘でしょ? ていうか後からベートさんに言われて知ったんですけど私一時的にLv7になれるんですか?

 ちなみに、フィルヴィスの新たなステータスはLv1になったこと、《エインセル》が消えて空きスロットが増えていたこと、そして《人形生命(アイボリー・ハート)》と新たなスキル《屍体人形(キョンシー)》があること以外はおおむね元と同じだった。

 

「と、ところで、もしかしなくともピュグマリオン・ファミリアって全員君の作った人形ってことでいいのかい……?」

 

「まぁね。僕は自分で作った人形にしか恩恵を与えられないし」

 

「……ちなみにレベルって……」

 

「ガラテアがLv7、幹部はLv6が11人、Lv5が1人、あとは名ありが大体Lv4で、名無しはLv2かな? Lv1のままだとトラブルがあったときに鎮圧しにくいからね。いやぁ、劣化ベヒーモスじゃあガラテアのランクアップには不十分だったようだ」

 

「怖っ。フィンたちがLv7になってへんかったら完全に戦力上回られとったやん……いや、ちょっと前までうちより圧倒的に戦力上やったんかい……」

 

 クノッソス最終決戦によって、ロキ・ファミリアの四幹部はランクアップしてLv7になった。Lv6据え置きだったアイズが膨れたという。

 さらに、ヒリュテ姉妹がLv6に。アナキティとラウル、レフィーヤ、セレニア、アリシア、ナルヴィがLv5になり、ロキ・ファミリアの戦力は膨れ上がった。

 一方、ライバルであるフレイヤ・ファミリアもヘディンがLv7に。そして、オッタルがLv8の大台に乗って、オラリオ最強*4を維持。意地を見せつけたと言える。

 それ以外では、ベル・クラネルがLv5にランクアップして『神会(デナトゥス)』を驚かし、二つ名も『大白鐘楼(ホワイト・ベル)』に変わったという。

 二つ名更新最短記録というなんとも微妙な記録を得たベルである。

 

「……待ってくれ。その……『万魔所蔵図書館(アカシックレコード)』も人形……なんだよな?」

 

「そうだね?」

 

「……ハイエルフなのでは?」

 

「そうだが?」

 

 リヴェリアがすごい顔をしながらロキを見る。ロキが首を振る。嘘はない。一応ヘルメスとかディオニュソスも見てみるが、首を振る。嘘はない。

 

「……どういうことだ?」

 

「大精霊級にハイエルフとして認められたからね。パラケルススは間違いなく世界最新のハイエルフ始祖だよ」

 

 リヴェリア、絶句。

 こんなことが魔法大国に知られたらとんでもないことになるに違いない。紆余曲折の末に魔法大国が滅ぼされてしまう。絶対にバレないようにしなければならない。

 なんなら材料とかにもっと国際問題が隠されているのだが、リヴェリアは賢いので深堀りはしなかった。

 

「……んで、うちから見てピュグマリオンは間違いなく下界の子(にんげん)なんやけど……神威纏ってるのはなんでか聞いてもええか?」

 

「あぁ、スキルがね……」

 

 Lv9になった際に増えていたスキル、《偽神降誕(デミウルゴス)》。効果は『発展アビリティ《神威》の発現』、そして『発展アビリティに依らない技術の昇華』というもの。

 現在作っている人形はその効果を確かめ、ガラテアに適応する前の試しでもある。

 

「……で、なんやその人形。うちへの嫌がらせか?」

 

「ん? いや、ないよりある方がいいだろう?」

 

「グギギギギギギギギ…………いや、もうこの際乳はエエわ……なんで背ぇちっさいねん!! 当てつけか!?」

 

 今回ピュグマリオンが作っていたのは、かねてより作ろうとしてうまくいかなかった、デメテルをモデルにした人形。そこにハトホルの要素を追加し、ピュグマリオンなりのアレンジを加えた結果、ヘスティアをさらに下回る135C(セルチ)という背丈にデメテル並の胸を搭載したとんでもねぇ違法建築に落ち着いたのである。

 

「前々から思ってたけどさぁ……ピュグマリオン・ファミリアって背小さい子多いよね……そういう趣味なの?」

 

「まぁ背丈は低いほうが好みというのはあるな。それと、子供というのはこれから成長、変化していく美の象徴だと考えているからね。あと、僕の恋愛対象は人形全般だね。とはいえ、ガラテア以外にそういう目を向ける気はないけど」

 

 ヘルメスがツッコむが惚気返され、性格のせいで非モテなヘルメスと40代独身小人族(素人童貞)が被弾した。

 

「……これ、素材は何を使ってるんですか……?」

 

「ん? ベヒーモス・オルタナティヴからドロップした骨」

 

「「「!!?」」」

 

「さて、詠唱するからしばらく喋らなくなるぞ」

 

 ギョッとする一同。その骨を加工すればどれだけの業物な武器防具が作れるというのか。それなのに、ピュグマリオン曰く()()()()かつ()()()で作っている人形の材料……ヘファイストス辺りが発狂しそうな内容である。

 

「《ディア・ガラテア》」

 

 ピュグマリオンが詠唱を終えるとともに、その背中に恩恵を刻み終わる。

 ちなみに、レフィーヤのときは《錬金術》と『ディア・ガラテア』が反応して自動的にレフィーヤの血液を背中に刻んでいたという。なお、こちらの文字はエルフの古代文字であるらしく、レフィーヤもギリギリ読めるとのこと。

 魔法の発動とともに人形が光り輝き、それが収まると白色だった人形が人としての肌色を持ち、まぶたを開く。周りからは驚きの歓声が上がった。

 生まれたのは見慣れた色彩の少女。デメテルを思わせるウェーブの長髪に、下向きに湾曲した水牛のような巨大な角。小柄な肉体に、不釣り合いな大きな胸。

 

「……ごきげんよう、主人(マスター)。わたくしは名前をいただけるのかしら?」

 

「そうだな……ならば、エンキドゥ。獣の王から分かたれた獣を従える畜産の人形、エンキドゥだ」

 

「かしこまりました。わたくしはエンキドゥ。主人(マスター)に力を捧げ、御身に報いましょう」

 

「じゃあとりあえず魔石食べてレベル上げだな。あっちに用意してあるから」

 

「ねぇやっぱ無法すぎないそれ?」

 

 ヘルメスがツッコミを入れるが、これがピュグマリオン・ファミリアのデフォルトである。

 隣室へ()けていくエンキドゥを見送って、フィンが彼女について尋ねる。

 

「彼女はどんな力を持たせたんだい?」

 

「神ミアハの薬を混ぜ込んだ塗料を塗って、ベヒーモス・オルタナティヴの毒を制御できる形に落とし込んだ。土にいい影響を与え害虫を殺し、獣を落ち着け病を遠ざける。女神デメテルと女神ハトホルに影響を受けた、豊穣と畜産の能力が主かな。そのまま毒も使えるし、身体能力も高いから戦闘もできなくはないよ」

 

「やっぱデタラメやな……んで、なにしとるん?」

 

「僕のもうひとつの魔法でね、完成品に手を加えて、元からその技術、その素材で作っていたらというようにして完成度を上げるんだ。これでガラテアの完成度を上げる」

 

 エンキドゥは素材が規格外とは言え、話しながら作り、追句の詠唱も普段よりずっと少なかったにも関わらずあの完成度だった。ピュグマリオンも、技術の昇華に手応えを感じている。

 ピュグマリオンは満を持して、ガラテアに『ウェヌス・クレメンティア』を施した。

 

「《ウェヌス・クレメンティア》」

 

「ほら聞いた!? 魔法に私の名前入ってるの! 私の眷属()よ!?」

 

「ぐぬぬ……不覚にもちょっと羨ましいんやけど……」

 

「アスフィ、マーキュリーなんちゃらみたいな魔法発現しない? スキルでもいいから」

 

 自慢するアフロディーテ。神々の間では、眷属が自身の名を冠するスキルや魔法を持つというのはひとつのステータスである。

 アーディのスキルのように『加護』という形で現れている場合はむしろ神からの想いが強いので小程度、オッタルや命のように詠唱式の中に存在が示唆されているなら中程度。スキルや魔法の名前に神の名前や異名が現れればもはや羨望の的である。

 

 さて、そしてこの改良によってガラテアがどう進化したかと言えば。

 

「全体的な性能向上、魂がより確固たるものになり、僕が死んでも生きていられるように……恩恵も、僕が死んでも更新はできなくなるけどそのまま残ると……それと、子供が作れるようにぃぃ〜〜〜〜?」

 

 ガラテアに引きずられて奥の部屋へ消えていくピュグマリオンを、その場にいる全員が静かに見送った。

 

 

 

 このあと、ピュグマリオンの正体は本人の許可のもとオラリオ中に知れ渡ることとなる。

 そして例えば、女神フレイヤが幾夜の悪夢の末に開き直り、ヘスティア・ファミリアに『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を仕掛けたり。

 そして例えば、どこかから話を聞きつけたティオネが(子供を産めるようになった)メリーをフィンの正妻にする作戦を再開して、フィンVSアルフリッグの一騎打ちにもつれ込んだり。

 そして例えば、パポスの存在が明るみになりウラノスが緊急手術する羽目になったりするのだが。

 

 それらはいつか語ることもあるだろう。

 今は彼らの物語は、ひとまずの一区切りと言うことで締めさせてもらおう。

*1
闇は封印。

*2
闇は昇天。

*3
別名:ドヤアフロちゃん。

*4
戦力として。




人形(人間)の身で家族(ファミリア)を作るのは間違っているだろうか』
本編、完



「完結できないよおおおお」
プロットなし
書き溜めなし
完結作品なし

 そんな状況でよく完結まで持っていけたと思います。
 元々筆が止まってた別作品のリハビリ&生存報告で書き始めた手遊びなのにそっちより早く完結してやんの。生意気にタイトル回収とかしちゃってさ。
 まぁ派閥大戦編とか書けはするので番外編は出ますが、毎日投稿みてぇな勢いで投稿してたのは一旦おしまいということで。ここからは気長にお待ちください。

 皆様、賛否両論ありましたが、ピュを応援いただきありがとうございました。
 よろしければ、番外編とか別作品とかで、引き続きお付き合いください。

 そんで止まってる別作品の次回より先にダンまち新作の書きてぇ設定まとめるのやめような僕は。
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