人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか 作:仙託びゟ
ピュグマリオンの目の前に2体のモンスターがいる。
片や上層の下級モンスターとしては非常にポピュラーである
もう片方は、
総じて、アルラウネはレアモンスターではあるが2種とも冒険者には名の知れた一般的なモンスターだ。ただし明らかな相違点がある。それは例えば、女型モンスターの共通点として、
とはいえ、迷宮に潜ったことがないどころかモンスターと対面するのも初めてであるピュグマリオンには、そんなことは判別できないのだが。
問題は、そんな存在が何故か迷宮を飛び出し、ピュグマリオン・ファミリアの
ちなみに単に「どうやって」を問うのなら、両モンスターともに小人族よりもさらに小柄な体格をしているがために、バックパックに詰めて迷宮から密輸したという極単純な方法であった。
とはいえ、その極単純な方法さえ、様々な偶然が噛み合った結果である。まずひとつめに、このコボルトとアルラウネの存在を『
そして、隠れ里の『異端児』たちと出会っていなかった若い個体であるが故に人間に対する疑心もまた芽吹いておらず、キラーアントの群れに襲われていたところを助けられたという恩に加え己の目的である「空を見る」あるいは「太陽を浴びる」という夢と、自身の常識が告げる「人間はモンスターを殺す存在」という警戒心を天秤にかけても、比較的協力的に連行されてきたのだ。
「ふむ、で、何故それがここに?」
「《
「いやぁ、面白いですねぇ! 迷宮の常識を外れた存在! 厄介事の香りがしますよ!」
そう言って2体のモンスターを舐め回すように観察するのは、ガラテアたちと同じく白髪灰眼の少女。
「あ、いや、面白半分でお願いしたわけではないんですよ。ただ
「都合ですか?」
「えぇ。ワタシが任された『ピュグマリオン商会』の初めての主力商品として考えているのが調味料なのですが、ワタシではその発案はできても試作が難しかったのです。ホラ、我々リビングドールは
ワシリーサの発言は事実であり、リビングドールは総じて一部の感覚器官が鈍い傾向にある。それは、基本鋭敏な感覚を持つ獣人をモデルとしたワシリーサも例外ではなかった。
「かと言って我々の秘密を漏らさないためには、簡単に開発の場へと人を雇うことはできません。なので当初は
「ボクは犬じゃなくて狼のモンスターだ!!」
コボルトからの抗議は、モンスターが喋った事も含めスルーされた。なお、ガラテアたちはともかくピュグマリオンが理性あるモンスター――彼女らは知る由もないが、彼らをよく知る者からは『
ピュグマリオンにとってモンスターは森の村に住んでいたときに出会っていた狼や猪と同じ
「アルラウネについては?」
「元々は、コボルトくんがアルラウネくんを守っていたことから、引き離してしまっては友好的な交渉ができないと考えて一緒につれてきてもらったんですが、考えてみれば都合がいいです。アルラウネの本来のドロップアイテムは高品質なポーションの材料になりますし、アルラウネの蜜は治癒効果があることも有名です。まぁ、死んだら消えるので主にその蜜の恩恵に与るのはモンスターなのですが……流石に殺すわけにはいかないのでドロップアイテムとは参りませんが、生え変わりを採取するだけでもコンスタントに素材を手に入れることができますし、定期的に流通させられるなら医療系ファミリアに対する手札になります」
オラリオにおいて、医療系ファミリアとは生命線である。治癒魔法の使い手は希少で絶対的に数が足りていない。それを補っているのが、医療系ファミリアが生産・販売するポーション類で、これらへの依存度は
そしてこのポーションは需要がかなり高いのに対して、信頼できる派閥のポーションほど原価率もまた高い傾向にある。故に、ポーションの素材を安定供給――材料費の軽減に協力出来ればそれは医療系ファミリアへの貸しになる。
アルラウネの花弁は通常のポーションの調合途中に粉末として混ぜ込むことで品質を上昇させる効果がある。それこそ、中品質のポーションがハイポーション並の効能になるほどに。
例えば取引の際、こちらの取り分を減らす代わりに、アルラウネの花弁によってできる上品質ポーションの値段を下げるように交渉することもできる。そうすれば、医療系ファミリアからすれば本来は中品質ポーションをハイポーション並の値段で売れるところを値下げしなければならないのだが、それでも増える利幅からすれば十分なものになるし、冒険者からすれば安く高品質なポーションが手に入る。
捕らぬ狸の皮算用ではあるが、成功すれば大きくオラリオへの影響力を増すことができるのである。
「それに加えて、アルラウネくんに魔石を与えて強化種にすれば、植物の成長を促進する能力に目覚めるかもしれません。そうすれば狭い範囲で野菜や果実の品種を改良し、苗をデメテル・ファミリアに提供することで横の繋がりを増やすことも可能です。仮定に仮定を重ねてはいますが、影響力を増すという目的にはそぐうでしょう?」
「なるほど、確かに……しかし、我々は特に忌避感なく接しているが、オラリオの住人からすればかなり大きな爆弾なのでは? 彼らの願いはどちらとも空が見える場所に身を晒す必要があるが」
「幸いなことに、この『
「えぇ。外から見えないという点にはじめは渋られましたが、ガネーシャ・ファミリアが近隣にあることを告げてなんとか承諾して貰いました」
「万が一バレてしまっても、彼らに理性があることさえ隠し通せれば、どちらも上層のモンスターで危険度は低いと思われていますから、嘘を吐かないように誤魔化しながらテイムモンスターとして押し切ることはできます。ワタシとしましてはリスクをリターンが上回ると思うのですが、いかがでしょう?」
侃々諤々あったが、最終的にこのコボルトとアルラウネたちは『ピュグマリオン商会』の秘密従業員として雇うことが決定された。なお、彼らに拒否権はなかったが、好条件での雇用ではあるので文句は出ないだろう。
それと同時に、彼らと同じ理性あるモンスターの中で、交渉ができかつ有用な技能を持つモンスターを捜索することも、ガラテアたちの活動方針に加えられた。
「つきましては
「次から次へ増えるね。まぁいいさ、彼らのおかげで
こうして、ピュグマリオン・ファミリアは状況に応じて進路を修正しながらも、ピュグマリオンの人形作りに最適な環境構築という目的に向かって歩き続ける。
なお、ピュグマリオンの
追記:ランクアップの跳ね上がり方を
でもピュグマリオンが強いのは解釈違いなので、スキルにクソデメリットをつけてランクアップの跳ね上がりを抑制しました。
これからもピュグマリオンはレベルの高いだけの雑魚でお願いします。