人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか 作:仙託びゟ
先んじて『
有用な『
まずトップシークレットは『ピュグマリオンの能力』と『ガラテアたちの正体』、そして『理性あるモンスターの存在』だ。次いで『ピュグマリオンのレベル』と『企業秘密』が来る。
これらを周りに知られないようにするには、ただ隠しているだけでは不足になる。先んじて情報を封鎖したり興味をそらしたりという、情報操作能力が重要になってくると、ガラテアとワシリーサは判断した。
とはいえ、彼女たちが注文するのはそこまで。デザインなどの面は、ピュグマリオンが己の感性のおもむくままに作り上げる。だからまぁ、今でなくともいつかやらかしていただろう。ただ、思いついたのが今だっただけで。
白髪の共通点に、エルフの特徴である長い耳。しかし、では彼女がエルフに見えるのかと聞かれれば、100人が100人「見えない」と答えるだろう。
何故なら、彼女の上半身は、
ここに冒険者がいれば、違和感を覚えつつもそれを
「こんにちは、お姉様方? わたしの名前はコッペリア、悪戯好きのコッペリア。以後よろしくね?」
残念なことに『
なので、彼女の完成からしばらく経って、初めてオラリオからメイルストラへと帰省した時にアフロディーテ・ファミリアで起こった阿鼻叫喚を書くことで、その代わりとしよう。
「――待って。情報量が多すぎるわ。一回飲み込ませて……まずなに? どこから手を付ければいい? 普通の子が増えてるのは――いや象牙製の時点で普通ではないのだけど、いや、何? 喋るコボルトとアルラウネのインパクトが掻き消される衝撃って」
完全に錯乱したのかテーブルに突っ伏してぶつぶつと呟き続けるアフロディーテ。その横で、ピュグマリオンの帰省に合わせて来訪していたアルテミスが「やっぱり来なければよかった」という顔をして、ピュグマリオンが連れてきた者たちに顔を向ける。
ビクリと体を揺らした二人。本日、ぬいぐるみの中に入れられて密輸された『
ファネスの容姿は一般的なコボルトを小綺麗にした感じである。偶然からか、その毛並みはリビングドールたち同様白い。まぁこう言い表せば容易に想像がつくだろう。つまるところ、二足歩行する柴犬サイズのサモエドである。
対するアナクサの容姿は、おおよそアルラウネを想像していただければ当たらずとも遠からずに落ち着く。葉緑素を持った緑の肌に緑の髪。そして頭上に咲き誇る花。そんな異形を備えた幼女である。
実を言えば既にこのふたりは、魔石を摂取することで――当然スキルではなくモンスターとしての性質によって――強化種へと進化している。特にアナクサには植物の生育促進など望んでいた能力が開花したためワシリーサがホクホクと喜んでいた。
まぁ、そんな見た目だけならば二足歩行の犬と花の咲いた幼女と無害らしいのだが、流石に常識を破壊される存在ともなると、アフロディーテ・ファミリアやアルテミス・ファミリアからも困惑と驚愕の声が大きい。
アルテミスは次いで、残る爆弾である人工『
よくよく見てみれば、彼女の髪をかき分けて飛び出しているのはエルフの如き尖った耳。さらに、背中には本来蜘蛛にはない半透明な翅も見える。また、リビングドールの持つ共通点がひとつ、彼女にはないことがわかる。
彼女、コッペリアの瞳は青い魔石で作られていた。
「その子は、何?」
「猟犬や番犬で、僕の魔法は人の形をしている必要はないと知った。では、こういうのもありなのかな、と。ちょうど、理性あるモンスターという存在を知ったので、理性あるアラクネという題材にて作ってみた」
作ってみましたではなく。ピュグマリオンからは一片の後ろめたさも感じない。
「まぁ、いいわ。そっちの堅物がどうかは知らないけど、感情的な面では、私は認めてあげる。その子たちからは『
「なっ、正気か!?」
「当たり前よ、私が認めたんだから! それにこの子達、モンスターってところを考えなければめちゃくちゃかわいいじゃない? 海豚たち!! 貴方達もそれでいいわね!?」
「「「アフロディーテ様の仰せのままに!!」」」
吹っ切れた様子のアフロディーテに、頭痛でこめかみに手をやるアルテミス。アルテミスは、ピュグマリオンの目を真剣に見て続ける。
「アフロディーテはこう言っているが、私は反対だ。反対だが……とはいえ、他所のファミリアの方針に口出しする権利もない。そもそも、私たちが関わる義理はないんだ。私たちの関係のないところで好きにやってくれ」
「でも貴方の眷属、めっちゃワンコと戯れてるわよ?」
「ランテェェェエエエ!?」
「この毛並みがいけない! あるのがいけない!!」
アルテミス・ファミリアの中でも比較的柔軟……というよりもあまり考えが深くないランテは、あっという間にファネスを受け入れていた。
というより、先ほどアフロディーテも言っていたが、モンスターという先入観がなくなればそこにいるのは可愛らしいサモエドと幼女である。これがいかついミノタウロスやリザードマンならどうだったかはわからないが。可愛いは正義なのである。
「私、心情的には納得したって言ったけど、現実的な問題は残ってると思ってるわよ。このふたりと違ってそっちの
「あぁ、それなら彼女の魔法が都合よくね」
そう言って、ピュグマリオンはコッペリアのステイタスを見せた。ちなみに、流石にアフロディーテ・ファミリアの団員には、ピュグマリオンがリビングドールに恩恵を与えられることを教えている。
コッペリア Lv1
力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0
魔法
《スワニルダ》
・変身魔法
・擬態推奨
・詠唱式【貴方の糸を巻きましょう、私の意図を播きましょう】
・解呪式【切れる、繰る意思のほつれ】
《》
スキル
《
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・耐久に高域補正。
・同スキル所持者同士での念話解放。
・精神異常、生理的異常の無効。
・神威耐性。
・魔石摂食により経験値獲得。
・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。
《
・発展アビリティ《並列思考》《情報処理》《思考加速》《生育》の発現。
・虫の使役。
・特定種の虫の神経侵奪。
・情報網運用の効率化。
「なるほど……この変身魔法で普通の人間に変身してきたのね」
「わたしの『スワニルダ』は体格を大きく変えられるけど、わたし自身の容姿から大きく変えることはできないの」
「まぁ確かにこれなら、最悪本来の姿に戻ったとしても、そっちの姿が魔法によるものだと誤魔化せそうね……それで、こっちのレアスキルが本来の目的? 神経剥奪とか怖いこと書いてあるけど……使役とどう違うの?」
「ん〜……虫自体がわたしの体の一部になるイメージかな? 虫一匹一匹とか群れまとめて命令を出すとかじゃなくて、わたしの意識自体に虫が接続されてる感じ」
コッペリアが操っているのはハエとクモだ。それはまさに彼女の姿に影響を与えている虫である。
「えぇ……その翅ってハエの羽なの……?」
「ハエはどこにでもいる虫だ。それ故に存在を怪しまれづらい。絶対に欲しかったからむしろ本命だよ。クモに関しては使役よりも、網状の巣を作るという特性が欲しかったんだ。あと、ハエだけだと美しくないからね」
なんだかんだ受け入れられ、見たところ阿鼻叫喚になっていないようだと思った方もいるだろう。
しかし、話の流れはアフロディーテがふとした疑問を口にした時に大きく変わった。
「そういえば、なんでスキル名が『虫籠』なのかしら。読み方も『ネスト』だし……」
「それは、『虫籠』で『
アフロディーテの耳に、コッペリアの手のひらが当てられる。普通の人間よりも明らかに体温の低いひんやりとした手のひら。彼女はスキルが冠しているように彫刻ではなく
コッペリアの手のひら越しにアフロディーテが聞いたのは、体内の空洞に反響する無数の羽音と足音……
アフロディーテはしばらく部屋に引きこもったという。
ちなみにワシリーサのステイタスはこんなもんだよ。
ワシリーサ Lv1
力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0
魔法
《》
スキル
《
・疑似生命。
・疑似恩恵。
・耐久に高域補正。
・同スキル所持者同士での念話解放。
・精神異常、生理的異常の無効。
・神威耐性。
・魔石摂食により経験値獲得。
・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。
《
・発展アビリティ《直感》《超直感》《天啓》を発現する。
・発想が飛躍する。