転生したらガミラスの真田さん枠(なおロマンチスト)兼総統のお気に入りになってた件 作:夜叉烏
『ハルシュヴァルトⅡ』の外観としては、『アマテラスとランダルミーデ級を足して2で割った』感じ。ぶっちゃけハイゼラード級の面影は全くないです。辛うじて魚雷発射管郡の位置がハイゼラード級っぽいってだけで。
艦尾は肥大化しアンドロメダ級と同じエンジンノズル形状になり、前甲板に主砲を3基置く都合上、艦橋がより後部に移設されてます。後部艦底には増槽も搭載してます。
艦橋もランダルミーデ級の技術実証として、同級の艦橋が採用されてます。
個人的にランダルミーデ級、カッコいいとは思いますが艦橋がちょっと猫背みたく前屈みになってるのが好きじゃないです。アンドロメダ級みたいにピンっと立ってる感じがいいですね。
いや、でもハイゼラード級とランダルミーデ級って薄目で見たら艦橋構造を除けば似たような艦体してません?()
「ガミロンの艦、健在!」
「なぜ当たらぬのだっ!?」
メダルーサ級殲滅型重戦艦『キアルーザ』艦橋にて、帝政ガトランティス『グダバ遠征軍第2郡』大都督"獄炎"のモイド・ガストラは、必殺・回避不可能であるはずの火焔直撃砲が何一つ成果を上げていない現状に、額に青筋を浮かべながら床に剣を突き立てていた。
周りの兵は、そんな彼のとばっちりを受けないようさり気なく距離を取り、目の前のコンソールに集中している。
「何をしておる!?我が『キアルーザ』を上回るとて、たかが戦艦1隻ぞ!!」
小マゼランへ進出し、ガミラスの領宙を荒らしまわっていた彼らの前に現れた1隻の戦艦。
ガミラス艦艇と同じ目玉を有するが、これまでの識別に無い艦型、そして座乗艦『キアルーザ』を上回る巨躯を持っている。
『武勲を立てる好機は今ぞ!!ガミロンの新型艦を沈めよ!!』
新型艦とて、相手は単艦だ。多少性能が優れていようと、火焔直撃砲を1発放てば終わりだ…そう確信し、先手必勝とばかりに砲撃を開始した。
しかし…新型艦は驚くほど機敏に動き、神出鬼没の高熱エネルギーの奔流に空を切らせている。
一度目はまぐれだと思っていたが、二撃目を避けられてからは流石に偶然とは思えなかった。
(…不気味な奴だ)
ガストラはそう感じた。
というのも、彼の艦は"不気味なほど"機敏に動いているから。ぬるりとした、まるで幽鬼のような動きだ。
「…第3射急げ!腑抜けたガミロンの青虫共を滅するのだ!!」
予想外の機動には驚かされたが、敵は見苦しく逃げ回っているようにしか見えない。
気高く闘い、華々しく戦死することが美徳とされるガトランティス人にとり、敵艦の振る舞いは我慢ならなかった。
「大都督!本艦前方500に重力震…」
艦橋要員の報告が終わる間もなく、『キアルーザ』の前方に異変が生じた。
唐突に、何もない空間から1本の魚雷が現れたのである。
「…!?迎撃しろ!」
弾頭は明らかに『キアルーザ』を指向し、向かってくる。迎撃の命令を出すが、僚艦の輪胴砲塔は発砲が間に合わない。
メダルーサ級の第二の矛と呼ぶべき五連装徹甲砲塔も、宇宙空間においては指呼の間と呼ぶべき至近距離に突如出現した魚雷に照準が追い付かない。
「何をしておる!艦首魚雷、全弾撃て!!」
二又に分かれたメダルーサ級の艦首…五連装徹甲砲塔の付け根に集中装備された9門の魚雷発射管が解放され、気性の荒いガトランティスの兵器に相応しい大型重魚雷が放たれる。
本来なら対艦用だが、そうは言っていられない。一応近接信管は設定できる*1為、それで対空運用するまでだ。
無限の加速をつけながら放たれた対艦用大型魚雷の進路が敵魚雷と重なり、直後に大爆発を起こした。
距離が距離だけに、かなり至近での迎撃となった為、並みの戦艦の装甲を軽く引き裂く威力を誇る魚雷炸裂の爆炎が艦橋の窓から差し込み、艦橋要員の目を眩ませた。
その直後…。
「「「うおぉ…っ!?!?」」」
『キアルーザ』の巨体が、まるで直下地震の如き揺れに襲われた。強靭な身体を持つガトランティス兵の足腰でも立つのに苦労するほどに。
「何事か!?」
「ほ、本艦左舷前方10に重力傾斜!計測不能!!」
傾きを増す艦橋内で、剣を床に突き立てて何とか転倒せずに耐えているガストラが、部下の報告を受けて窓から外の景色を見やる。
確かに、濃い紫色の光球が、爆炎が晴れた左舷前方に出現して渦を巻いている。周囲の空間が歪み、稲妻を思わせる光がバチバチと閃いている。
メキメキメキ…バキ…ッ!!ドゴォ…ッ!!
その光球が重力源だと察したガストラだったが、軋むような音を上げていた艦体から、まるで金属を力任せに引き千切るような大音響が響き渡った。
どこか、重要な部位をやられた…そう直感した。
「左舷、転送投擲器脱落!転送システム、使用不能!!」
「何だとぉ~~っ!?!?」
二股に分かれて突き出た艦首の左側…転送投擲器が装備されている区画が、まるで猛獣に食い千切られたかのように丸ごと消滅していた。
断面は、まるで限界まで燃焼させた炭のように黒ずみ、赤い火花が散っている*2。そこから艦が粉のように崩壊していくのではないか、と思える程の損傷具合だ。
(あの、魚雷か…!!)
至近距離で炸裂し、小規模なブラックホールの如き現象を引き起こしたのは、敵の魚雷であろう。
メダルーサ級が装備する魚雷に比べればちっぽけなものだったが、中身はそれ以上に凶悪な代物だ。もし直撃していれば、艦首は疎か、艦橋まで超重力に呑み込まれて圧壊していたかもしれない。
直撃せずともメダルーサ級のような大艦を揺さぶり、重要区画を丸ごと消失させる…。
(…面白い。偉大なる大帝陛下へ献上する品として、悪くない)
しかし、ガストラの戦意は衰えない。寧ろ、恐るべき兵器を有する強大な敵と戦えることに、自然と口角が上がる。
それに加え、偉大なる大帝陛下へあの魚雷の技術を献上し、ガトランティス軍備増強に貢献する。そうなれば我が一族の地位は高まり、先代のガストラ一族に対し胸を張って報告ができるだろう。
野心、忠誠…様々な"感情"がガストラの脳裏を過る。
「…こうなれば距離を詰めてあの艦を制圧する!!空間跳躍の準備に入れ!!白兵の準備も怠るな!!」
転送投擲器をやられた以上、最早火焔直撃砲のアウトレンジ攻撃はできない。ならば、此方から距離を詰めて有視界戦闘を行うまでだ。
グダバ遠征軍第2郡は、旗艦『キアルーザ』の他、ナスカ級打撃型航宙母艦『シエスカ』、ラスコー級突撃型巡洋艦8隻、ククルカン級襲撃型駆逐艦40隻を擁する大艦隊。これに、『キアルーザ』『シエスカ』が搭載する甲殻攻撃機『デスバテーター』計36機が加わる。
多少性能で優れようが、"たかが"戦艦1隻でどうにかできる数の差ではない。
「大都督!艦隊前方10000に重力震の反応!」
「何だと…?」
部下の報告に前方を見据えた瞬間、空間が"裂けた"。鮮血を思わせる真っ赤な裂け目から、件のガミロンの新型艦が飛び出してきたではないか。
「…くはははははは!!先の言葉は撤回してやるぞ、青虫め。やるではないか!!」
勢いよく空間跳躍してきたと思いきや、前部に3基が搭載されている三連装砲塔は各々の方向を指向しており、明らかに砲戦する気満々である。
火焔直撃砲から見苦しく逃げ回るばかりだったことに苛立ちを感じていたが、ここに来て正々堂々と戦うべく正面から出張ってきた敵に対し、心からの賞賛の言葉を贈った。
彼自身、火焔直撃砲のアウトレンジ攻撃による一方的な戦闘…殲滅作業と言っていい行為を続けるのは性に合わないと感じていたところだ。
「『キアルーザ』及び『シエスカ』の航空戦力を合流させ仕掛けさせよ!残り全艦は肉薄しガミロンの首を獲る!!」
『キアルーザ』後部のV字型飛行甲板から甲殻攻撃機『デスバテーター』が発艦、『シエスカ』からも艦載機が発艦し、それぞれの航空戦力が合流し戦力を集中。
航空隊と合同で艦隊も敵艦に対し肉薄・一斉攻撃を行うのだ。無論、航空隊も味方の艦砲射撃に巻き込まれる危険が大いにあるが、そんなものなど頭の中には無い。
武勲を立て、然らずんば堂々と死ぬ。それだけだ。
『デスバテーター』隊が前面に立ちミサイル発射準備に入り、その後ろではラスコー級1、ククルカン級8で構成される8個機動戦隊が突撃を開始している。
うち1個戦隊は空母『シエスカ』が直率し、母艦自ら火器を振るおうとしていた。
『て、敵艦発砲!凄まじい勢いで砲撃を行っております!』
まるで対空砲の如く敵艦の主砲が猛射を始め、突撃を始めたばかりで射程にすら入っていないラスコー級1、ククルカン級8が数秒で火球に変わったのは、その直後だった。
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新式の420ミリ三連装陽電子収束・圧縮型衝撃波砲から連続して放たれた、衝撃波を纏った真紅の陽電子収束流。
陽電子収束器・加速器の恩恵か、以前装備していた480ミリ陽電子カノン砲よりも飛翔速度が段違いだ。
それに、アンドロメダ級より速射性能は劣るものの、概ね毎秒1発の同級に比較して毎秒約1.5発。0.5発程度の差など、極小さな瑕疵に過ぎない。
「敵巡洋艦1、駆逐艦8轟沈!」
防御力の弱い巡洋艦、駆逐艦は、アンドロメダ級を上回る威力の砲撃を叩き込まれた瞬間、艦首から艦尾までを一瞬で抉り、艦底から上部を過貫通、風船が破裂するかのように爆沈、火球へと変わった。
「うへ、この主砲凄いっすね。もう前の480ミリなんて使えないっすよ」
若干顔が上気しているアレドが、主砲の性能を褒めちぎる。
以前装備していた480ミリ陽電子カノン砲は、確かに口径は大きいし、ゼルグート級の490ミリ四連装陽電子ビームよりも貫徹力・速射・射角・射程と、ほぼ全ての性能で優れている。ガミラス最高の砲熕兵器と言っていい。
しかし、『ハルシュヴァルトⅡ』の装備する新型420ミリ砲の性能は、更にその上を行く。
それに加えて、陽電子収束流の周囲に衝撃波を纏わせることで、直撃時に敵の装甲へ歪みを生ませ、侵徹体である陽電子流が弾き逸らされるのを防ぎ、更に侵徹体が空けた破孔から衝撃波が流入することで敵艦を内側から破壊する、謂わば"徹甲榴弾"のような振る舞いを行う。
ただ敵艦に穴を空けるだけだった従来のビーム砲、カノン砲と違い、命中時の加害性も凶悪なのだ。
そんな凶悪な火線を1.5秒置きに撃ち出す砲を、『ハルシュヴァルトⅡ』は前部3基、後部2基、艦底1基…計6基搭載している。
「敵編隊近づく。数36、距離7000」
メダルーサ級、ナスカ級から発艦したデスバテーター合計36機が向かってきていた。
「航空隊を出しますか、ハルハさん?」
「いや、今回は無しで。単独で殲滅するよ。…ゲシュ=タム・ウォール、司令塔周囲に集中展開。艦体は素の装甲で防ぐよ」
「了解。ゲシュ=タム・ウォールを上部構造周辺へ集中展開します」
ズミが航空隊の発艦を進言してきたが、折角のテストの機会だ。ここは『ハルシュヴァルトⅡ』単独で相手になってやろう。
被弾に対し比較的脆弱な艦橋周辺だけは守るべく、ゲシュ=タム・ウォールを集中展開。艦体への直撃弾は、新型のエネルギー変換装甲、対磁・光波偏向フィールドで防ごうと決めた。
両者共、以前装備していたものより性能が大幅に向上している。以前、ガトランティスの標準装備である輪胴砲塔の射撃を、小石をぶつけられたかのように弾いていた時より、楽に防げる筈。
「第3砲塔、"エアバーストモード"に変更。対空戦闘始め!」
「了解!」
私の命令を受けてすぐさま設定を弄ったアレドが、主砲の標的を敵艦載機郡に変更。長槍を思わせる細長い、ガミラス砲特有の刺々しい砲身が軽やかに新たな目標を指向し、発砲。
3つの砲身から放たれた真紅の火線が捻じれるような軌跡を描いて飛翔、そのまま敵編隊のド真ん前まで到達した。
陽電子の束は敵機の合間を空しく通過するだけ…なんてことは起こらず、陽電子収束流が唐突に拡散。規模は遥かに小さいとて、その様はまるで拡散波動砲だ。
花火のように拡散した数百の火線が、デスバテーター郡が飛行する宙域を押し包んだ。直後に大量の小爆発が発生し、レーダーから全ての機影が消えた。
火線の1本1本は本来の砲撃より遥かに細く、頼りないが…所詮相手は航空機に過ぎない。
「これはいいっすね。対空戦闘の常識が変わりますよ。前みたいに実弾を込めないと撃てないなんてこともないし」
以前、貴族連中からの反対を押し切ってまで私が開発した実弾装備。対空戦闘にも対応できる近接信管付砲弾も用意していたが、ここでアレドが意見具申をしてきた。
『対空戦闘と対艦戦闘でビームと実弾を切り変えるのは面倒だし、即応性に欠け、実弾射撃は速射性も落ちる。できるなら、対空・対艦戦闘はビーム攻撃一択で実施したい』
確かに、ビーム砲撃から実弾射撃に切り替える際は、回路切り替えや揚弾、装填の手順を踏まなければならない為、どうしてもロスタイムが生じる。戦闘中は数秒の差が生死を分けることもあると考えると、このロスは痛い。
また、いくら装填機構を高性能化しても、実弾射撃はビーム砲撃程の速射性能は発揮できない。
ガミラスが誇る砲雷長アレドは、そこを嫌ったのだ。
その為、収束圧縮型衝撃波砲の設計に当たって、目標との予測距離から変換器及び陽電子収束器の設定を変更することで、陽電子流を拡散させる"エアバーストモード"の機能を追加した…という背景があった。
なお、実弾についてはエンジン停止時の非常用武装として引き続き搭載している。
「40機の艦載機が砲塔1基の一斉射で全滅…」
呆気なく塵も残らずに消えた艦載機郡が存在していた宙域をまじまじと見つめながら、ズミが呟くのが聞こえた。
「対艦戦闘!主砲及び
「分かってますよ~」
我先にと、戦術のせの字もない突撃を行い距離を詰めてくる敵艦隊。40機のデスバテーターが一瞬にして殲滅された様は見えているはずだが、怯んだ様子は見えない。
先に発射した侵食魚雷を含め、まだ数が少ない新型魚雷も発射体勢に入る。予備魚雷の数も少ない為、無駄撃ちはできればしたくない。
「撃ち方始め!同時に機関前進全速、突っ込むよ!」
「了解!」
号令一下、恐ろしい勢いで砲撃を始める主砲と、艦底の発射管から飛び出す魚雷。
後者は、ガミラス軍で運用されている魚雷の後継装備として開発、その名の通り亜光速で敵に突き刺さる、極めて雷速が速く、迎撃困難な新型魚雷だ。
弾頭は既存品と同じ熱核式だが、私の手で改良が加えられており、二段式となっている。主弾頭の炸裂が敵艦の装甲を貫徹、やや小型の副弾頭をそこへ突入させ、1秒の遅延後に炸裂させるのだ*3。
ククルカン級を率いて突撃するラスコー級が、防御火器を作動させる間もなく亜光速の槍に貫かれる。外殻を食い破った魚雷から第二の熱核弾頭が艦内へ突入、炸裂し、風船が弾けるように内側から破裂、火球へと変貌した。
魚雷の標的となった艦は、どれも回避・迎撃の動きを見せない。雷速が遥かに速い上、防御・回避の概念が薄いガトランティスということもあるのか、何もしない内に被雷・轟沈する艦ばかりだ。
そして、魚雷には負けないとばかりに咆哮する主砲。
らしくなく、恐れをなしたかのように転舵し、下腹を見せたククルカン級の艦底から上甲板を陽電子流が貫いて爆沈、艦橋毎その根本周辺を抉り取られたラスコー級が右往左往して僚艦に衝突し、諸共に沈む。
「おいおい、うちの牧場でやってる射撃大会よりも易しいんじゃないか、これ?」
最大戦速で『ハルシュヴァルトⅡ』を走らせているゲーンガ少佐が軽口を叩く。少し前まで緊張していたというのに、今は鼻歌混じりで舵を握っていた。
彼の実家は田舎で牧場を経営しているという。年に何回か、牧場経営仲間と広大な敷地を使って射撃大会を開いているとか。
因みに、ゲーンガ少佐の実家が育てているハリモア*4はズミの実家であるレストランに卸されており、両家ともに良好なビジネスパートナーになっているとズミから聞いた。
「相手、真っ直ぐ突っ込んできてるだけっすからね~。やり易くてありがたいっす」
タッチペンを走らせ、コンソールを指で叩いているアレドの言葉通り、敵は勇猛であるが、戦術的に語るところは多くない、ただの突撃を敢行しているだけだ。
ガトランティス第七機動艦隊司令官の『バルゼー』は、劇中にてエンケラドゥス守備隊が波動砲を発射しきったタイミングで座乗艦をワープアウトさせてイーターⅠを使用する、収束波動砲に対し艦隊を"面"で展開して被害を最小限に抑えるといった、ただの力押しとは言い難い指揮っぷりを見せていたが…。
ダガームをはじめマゼラン方面へ派遣されたガトランティス軍は、勢いだけで戦果や褒美に目が眩んだ、死んでも惜しくない連中なのかもしれない。
「敵空母近付く。距離8000。巡洋艦、駆逐艦の前に出てきています」
「纏めて片付けるよ。多連装ミサイル、発射始め!」
艦載機を全て喪った今、ナスカ級は最早デカいだけで火力の劣る巡洋艦。
それでも、あの空母の艦長は漢気のある人物が乗っているようだ。少しでも麾下の巡洋艦、駆逐艦の為の時間稼ぎをしようと、自らを囮にしているのだろう。
しかし、その漢気も多連装量子速射ミサイルの弾幕で打ち砕かれた。
第一砲塔両脇に1基ずつ備わる六四連装隠顕式発射管から、花火を思わせる機動を描きながら、金色の光球が複数撃ち出される。此方は、ガトランティスが運用している量子魚雷の技術を応用した速射ミサイルで、実体弾ではない*5。
金色の尾を引く無数のミサイルが手始めに飛行甲板へ降り注ぎ、軽く20発は命中。甲板上部は残らず爆炎に覆われ、この時点でオーバーキルだったが、駄目押しとばかりに艦橋の根元、鋭く突き出た艦首、エンジンノズルにまで弾着の火柱が上がる。
艦橋は倒壊、艦首は捥げて脱落、エンジンノズルからは爆炎を噴いて推進力を完全に喪失したナスカ級は完全に沈黙。艦全体から炎と黒煙を噴き出し、力が抜けたように艦首を下げて漂流し始めた。
そして、ナスカ級が身を挺して守ろうとしていたラスコー級、ククルカン級の群れにも金色の光球は襲い掛かる。輪胴砲塔及び対空ビーム砲の弾幕を打ち上げ、何発かを迎撃することには成功したが、数の力が強引に防空網を突破。
防御を軽視した艦体に容赦なく量子ミサイルが突き込まれ、風穴が開き、火の点いた紙細工のように燃え上り、引き裂かれて爆散した。
「敵空母、及び中小型艦は排除しました!」
「相手、全然当たってませんでしたね」
「確か、ガトランティスのビーム兵器は有効射程5000だと聞いておるぞ?明らかにそれ以上の距離から撃ってきたが、奴らは素人かの?」
機関長モトム少佐が冷静に言った。確か、ガトランティスとの戦闘詳報によると彼らの砲撃は距離5000を切ってから漸く当たるようになるらしく*6、また命中精度も甘い。
このことから、ガトランティスの装備する輪胴砲塔の有効射程は凡そ5000前後と判断し、その情報を元に戦闘を行っている。
ただ、速射性能だけは高く、威力もガミラス側の280・330ミリ陽電子ビームに匹敵する為、なるべくロングレンジで仕留めるか、機動戦によりばら撒かれるビームを掻い潜って一撃を叩き込む戦術が主流だ。
「マスター。敵大型戦艦、此方へ急速接近中。接触まで47秒」
「ハルハさん、残存のデカブツも適当に主砲でヤっちゃいます?」
ヴァルの報告通り、ただ1隻残ったメダルーサ級が五連装徹甲砲塔を振り立てて突撃してくる。
重戦艦を名乗る割には中々足が速い。流石は『ヤマト』が波動防壁とショックカノンのエネルギーを推力に回さないと追いつけなかった艦なだけはある。
火焔直撃砲は火を吹かない。一応直射もできる筈だが、エネルギー充填の隙はないと判断したからか。
アレドの進言を聴いた私は、しかし頭を振って宣言する。…正直、これからやる戦法は楽しみだ。
「いや、防壁を展開。突っ込むよ!」
「「「――ゑ?」」」
…あれ、なんでそんな顔して振り返るの、皆?
「え、いやほら、艦首のあれを使ってさ、敵艦を粉砕してやるんだよ…」
全長592メートルの巨体を誇る『ハルシュヴァルトⅡ』のうち、100メートルは艦首から突き出ている"超振動単分子破砕衝角"が占めている。日本刀のように僅かに艦首上方へ反り上がった刺々しい衝角が。
『亜光速で航行する宇宙戦艦であれば、肉薄からの体当たり攻撃の機会も増えるのではないか』…そう考えた私が開発した衝角である。
エネルギー変換装甲の技術を応用、衝角を構成する材質の分子間結合をエネルギー変換により強化、更に超振動させることで切断力を強化。更にその上から波動防壁で強度の上塗り。
名の通り、分子レベルで敵の装甲素材を切断・破砕することができる代物だ。
…いや、多分真田さんならこいつを突き立てたら逆に衝角がへし折れるような仕掛けを造って『ヤマト』に装備してくるかもしれない*7。油断ならない相手だ、真田さんは。
「…え!?あれ、ホントにそういう目的で装備してるんすか!?」
「え、うん。ていうか、何だと思ってたの?一応どういうものなのかは説明しといたはずだけど…」
「いや、その…ただのハルハさんの趣味かな~って。特に意味もなく『カッコいいから』ってだけで付けてるもんだとばかり…」
…否定できないのが困るなぁ。嘘ではないし。アレドの容赦ない言葉に思わず苦笑いしてしまった。
「あ~…ゲーンガ少佐。このまま最大戦速で突入して」
「マジかよ…了解」
「ゲシュ=タム・ウォール、上部構造と艦首衝角部へ集中展開。艦体はエネルギー変換装甲と偏向フィールドで守るよ」
強化した装甲もテストしたいので、艦体に防壁は敢えて張らない。
メダルーサ級の五連装徹甲砲は侮り難い威力を持つが、恐らくなら…。
「敵艦発砲!」
砲口周囲に橙色の残滓を残しながら、火焔直撃砲のエネルギーを転用した緑色の破砕エネルギーが5本、『ハルシュヴァルトⅡ』に向かって一直線に伸びてきた。
『ヤマト』のショックカノンすら上回るであろう威力の砲撃である。既存のガミラス艦ならば、艦首から艦尾まで田楽刺しにされる。
だが、『ハルシュヴァルトⅡ』に通用するかな?
ガン…ッ!!
5本の破砕エネルギーのうち3本が艦橋を守るゲシュ=タム・ウォールに阻まれて霧散。
防壁の出力低下率は0.1バーゼルもない。ほぼ無傷と言っていい。
1本が艦体左舷開口部付近の外郭へ直撃したが…エネルギー変換で強化し、偏光フィールドで防御力の上塗りをした装甲が跳ね返した。
「何か太鼓のような音がしましたが、何があったんでしょうなぁ?」
「何だろうねぇ」
モトム少佐がニヤリと笑いながら訊いてくる。絶対被弾したと分かっているだろうに、豪胆な爺さんだ。
そんなこんなで、メダルーサ級はもう目の前。艦橋の窓ガラスに人影が確認できる程の近距離だ。
連中も此方の突撃に受けて立とうとしているのか、艦首を振る様子もない。
まぁ、この近距離では回避運動も最早意味はないが。
「総員、衝撃に備えて!」
私の号令と共に、全員が何かしらに掴まった直後…想定よりも小さな揺れと共に、『ハルシュヴァルトⅡ』の衝角がメダルーサ級の艦首――五連装徹甲砲塔直下の魚雷発射管区画へ、まるで溶けかけのバターにナイフを入れるかの如く突き込まれた。
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「火炎直撃砲口、破断!!薬室内応答なし!!」
「艦首全細分区画、回路断線につき状況不明!!」
「艦首魚雷発射管郡、2、3、4、7、8番が損壊!残りも電路切断につき使用不能!!」
「艦首大砲塔、損壊!旋回・砲撃不能!!」
「敵艦接触部より亀裂が拡大中!このままでは艦が崩壊します!!」
聴きたくもない報告の数々。
結局、ガミラスの新型艦には損傷を与えることすら叶わなかった。
配下の艦艇・艦載機は有効射程に入る間もなく、恐ろしいほどの長射程・威力・速射性能を持つ敵の主砲、目にも止まらぬ速度で突き刺さる魚雷、圧倒的手数で防空網を飽和させてくる速射ミサイル攻撃に射すくめられる。
『キアルーザ』の直接砲撃で仕留めようとしたが、火焔直撃砲のエネルギーを転用した破砕ビームを驚くことに跳ね返すエネルギーフィールドのような代物。
回避不能な筈の火焔直撃砲を連続で避ける機動力。
性能もそうだが、これだけの大艦隊を相手に単独で突撃してくる敵将の度胸。
「…ふん。これほどの敵に敗れるというなら、本望…」
何の成果も上げられずに間もなく死を迎えるというにも関わらず、ガストラの顔に恐怖の色は無いどころか、ニヤリとした笑みが浮かんでいる。
彼の目は、『キアルーザ』へ自艦の衝角を突き込むというガトランティスでも類を見ない戦法*8を実行した敵艦の艦橋を…自らを敗北に追いやった敵将の姿を目に焼き付けようと、瞬きひとつせずに見つめていた。
警報音に混じってバキバキと金属が軋む大音響が響き渡り、段々と大きくなっている。
メダルーサ級の特徴である二股に分かれた艦首の根本へ突き込まれた、赤い瘴気を纏った衝角。片刃の剣を思わせるそれが、まるで生身の敵兵に刃を突き立てたかのように、綺麗に『キアルーザ』の装甲へ突き刺さっていた。
超振動させている衝角が亀裂を拡大させ、既に五連装徹甲砲塔が中心から真っ二つに裂け、艦橋にまで亀裂が迫ってきている。
周辺のモニターは砂嵐を映すだけ、コンソールからは火花や煙が上がっている。システムももうじき落ちるだろう。
「敵ながら、見事…!!」
ビシビシと皹が入っていく艦橋の窓ガラス越しに、未だ最大戦速で衝角を捻じ込んでくる敵艦を睨みつける。両手を床に突き立てた剣の柄頭に添え、激震が走る艦橋に直立した、堂々たる佇まいで。
ここも、数秒後には崩壊する。強靭な身体と心肺機能を持つガトランティス人でも、流石に乗艦を撃沈されて宇宙に放り出されれば無事では済まない。
どれだけ目を凝らしても、薄っすらと人影のような何かが複数見えただけで、名も知らぬ敵将の姿を結局確認できなかったのが心残りだった。
「
大都督として、偉大なるガトランティスの戦士としての意地と矜持から、目の前の光景から目を離すことはせず、敬愛する大帝に向けて最期にそう叫んだ瞬間、艦首に入った亀裂が一気に拡大した。
大砲塔、艦橋、後部砲塔郡、飛行甲板、エンジン…艦首から艦尾までを一筋の亀裂が瞬時に走り、『キアルーザ』の巨体は竹を鉈で割ったかのように真っ二つに叩き割られた。
綺麗に2つに分かれ、数瞬置いてそれぞれ巨大な火球に変わった『キアルーザ』の残骸。その爆炎を掻き分けるように、『ハルシュヴァルトⅡ』は「用は済んだ」と言いたげに敵艦の残骸を残して宙域を去っていった。
『ハルシュヴァルトⅡ』の試し斬りにされたガストラさんに敬礼。
一応『試作艦』『新兵器運用の為のテストヘッド』ってことにしておけばチート装備てんこ盛りでも多少は許される()
ハルハ「グロデーズ級の位相変換装甲を搭載しなかっただけ全然マシだよ、全く…」
●改ハイゼラード級航宙戦艦『ハルシュヴァルトⅡ』
・全長:592メートル(艦首衝角を除けば492メートル)
・全幅:52メートル
・主機:六重複列式ゲシュ=タム・ドライブ×1
・副機:新型ケルビン・インパルスエンジン×4
《武装》
・連装ゲシュ=ダール・バム(通称デスラー砲。収束・拡散切り替え可能。ランダルミーデ級よりも口径は小さめで、デウスーラⅢ世と同じ位だが、薬室が直列に接続されている為威力はランダルミーデ級のそれに匹敵)
・420ミリ三連装陽電子収束・圧縮型衝撃波砲×6(前甲板3基、後甲板2基、艦底1基)
・380ミリ八連装陽電子速射輪胴砲塔×6(ガトランティスの輪胴砲塔をベースに大口径化したもの。『アマテラス』での舷側ショックカノン砲塔の位置。後の改ゼルグート級、デウスーラにも副砲として搭載)
・99ミリ四連装高角パルスカノン砲×20(艦橋基部両舷)
・55ミリ八連装陽電子高射輪胴砲塔×16(艦体各所。ガトランティスからのリバースエンジニアリング品。ビームジェネレータ、陽電子加速器・収束器の改良・増設でオリジナルよりも貫徹力・速射性能共に優れる)
・六四連装多目的量子ミサイル噴進器×2(第1砲塔両脇)
・量子魚雷噴進器×12(ガトランティスからのリバースエンジニアリング品。エネルギー効率の改良により威力・射程・弾速が向上し小型化にも成功。艦首魚雷12門から換装)
・艦底部速射魚雷発射管×50(新型魚雷にも対応。新型の小型魚雷の実装により発射管の小型化に成功、装備数が増大)
・11砲身33ミリ連装量子ガトリング砲×4(艦橋左右、近接防御用)
《特殊装備》
・ゲシュ=タム・ウォール(波動防壁。被弾経始圧・有効時間・回復時間等の性能はアンドロメダ級相当)
・エネルギー変換装甲(エネルギー効率が向上し、以前と同等以上の性能を発揮できるようになった)
・耐磁性・光波偏向フィールド(エネルギー効率が向上し、以前と同等以上の性能を発揮できるようになった)
・パドル型高機動ユニット×4(グロデーズ級に装備しているものと同様のパドル状構造物。補機部分から安定翼に代えてX字状に生やしている)
・ガミラス製コスモリバースシステム(イスカンダルが黙っちゃいない代物。波動エネルギー制御デバイスとして実験後も引き続き搭載。しっかりと武装も使用できる)
・物質転送器×2(デスラー砲口後方)
・艦首超振動単分子破砕衝角(艦首上部。全長100メートルの刺々しい片刃の剣のような衝角。分子単位で物質を切断・破砕する。ランダルミーデ級と違って艦首下部の衝角は無い)
・次元空間曲率変異スプレッド発射器×4(通称:ミラーリング・スプレッド。空間を変異させてワームホールを人為的に発生、膨大なエネルギーを別次元の時空へ相転移させる。波動砲、レギオネル・カノーネといった天体破壊級決戦兵器でも無効化可能。またワームホールの消滅時に周囲へ衝撃波を撒き散らす為、カウンター兵器としても機能する。重力子スプレッドの上位互換的性能)
《備考》
ハルハが開発した各種装備を搭載した結果、『ガミラス版ヤマト』どころじゃない性能を有することになったハイゼラード級(ここ重要)
ランダルミーデ級テストヘッドとしての側面も持ち合わせ、同級よりやや小型とはいえ連装デスラー砲を備えている他、被弾経始率等の性能がアンドロメダ級に匹敵する波動防壁や、新型ケルビン・インパルスエンジンの恩恵による新型エネルギー変換装甲、対磁・光波偏向フィールドの装備で防御力の上塗りをしまくった艦体、グロデーズ級と同じ原理の高機動ユニットを4基と、ガミラスに無い新装備が満載されている。
デスラー砲は後のランダルミーデ級に比して小口径だが、それぞれ2基の薬室を直列に接続している為、威力は寧ろそれ以上。これは改ガイデロール級の直列薬室デスラー砲の技術実証の為実装されたもの。また非実体式の整流板が備わり、拡散数を増大させることで面制圧性能も高められている。
また、薬室直後にはガミラス製コスモリバースシステムが波動エネルギー制御デバイスとして搭載され、『2202』で『アンドロメダ改』と『銀河』がやっていた波動砲をCRSで強化させる併せ技を単艦で行うことができる。
主砲は新式の420ミリ3連装陽電子収束・圧縮型衝撃波砲で、ランダルミーデ級や改ゼルグート級、デウスーラシリーズにも搭載予定の代物。砲塔内部に新式ビームジェネレータを、砲身根本・中間部に陽電子収束器・加速器を搭載しており、アンドロメダ級の40.6センチ砲を上回る威力を持ち、速射性能は僅かに劣るものの対空運用もできる他、陽電子砲のエアバーストモードも実装された。
機関は新式の六重複列式ゲシュ=タム・ドライブを搭載。初期の二重複列式にあった冷却問題は解消され、ハイゼラード級の艦体後部上下に備えられていたインテークは廃されている。波動コア及びコアブロックの設計・製造もハルハが口を出し、出力・耐久面は最早既存のゲシュ=タム・ドライブと比較することも烏滸がましいレベルで、全盛期イスカンダルが手掛けた波動エンジンに匹敵する性能なんじゃないか…とはハルハ談。
唯一の欠点は、様々な兵装を全部乗せしたことで元のハイゼラード級どころか、ゼルグート級を除く既存ガミラス艦全てを凌駕する巨体になったことであるが…それはほんの小さな瑕疵に過ぎないし、メリットの方が多すぎる。
ぶっちゃけ、運と縁の力と真田さんを以てしても、『2199』時点のヤマトが対抗するのは無理な性能をしている。
ヤマト「主砲撃て!」
ハルⅡ「防壁どころか素の装甲で全然防げるし見てから回避余裕です」
ヤマト「じゃあ波動砲!」
ハルⅡ「波動流を別時空に相転移させて無力化するしそもそも撃たせません」
ヤマト「…装甲なら負けないし」
ハルⅡ「私の刃、貴方の装甲にぶっ刺してみます?」
ヤマト「…」
マズい、タイトルが『宇宙戦艦ハルシュヴァルト2199』になってしまう…。
因みにアルペジオ劇場版の『アシガラ』みたいに艤装がビームサーベルに変形して斬りかかる設計を入れようとしたけどそこは流石に没にしました。
そんなことしたら流石の沖田艦長も目玉飛び出る…。
アルペジオみたいなメンタルモデルを出演させる?
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あり
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なし