10:ミスリード
規定航路しか存在しないため、海賊達は餌が来るのを口を開けて待っているだけで獲物が飛び込んでくる。海賊業が流行るのも納得できてしまう。逆に、海賊狩りにとっても同じことができる。
ソラ達のような商船を狙う輩は非常に多い。この
今日も元気な海賊達は、自分達の船の床に額を擦り付けて命乞いをしていた。40名程度の中規模の海賊団。
「
「兄様。商船を装って近づいてくる連中です。当然かもしれません」
海賊旗を掲げず、騙し打ちをしていたゴミ達。相手が強そうだとわかると、
「助かりたいですよね? では、教えてください。貴方達が知るこの周辺で海賊をしている者達の事を」
「助けてくれるなら何だって教えます。俺達も詳しくは知らないんですが、バロックワークスとか名前を書いた旗を掲げているゴロツキ連中なら次の島に沢山います。賞金首がいるかまでは・・・」
拍子抜けもいいところだと、ソラ達は肩透かしを食う。バロックワークスとかいう企業は、表向きには存在していない。秘密結社のはずだが、堂々と船の旗に記載するのはどうなのだろうか。実は、同じ名前の別企業なのかとソラですら疑ってしまう。
「非常に残念です。貴方達に賞金がかかっていれば良かったのですが」
「じゃあ見逃してくれるんですか!?」
希望が見えた海賊達は、拝み倒したかいがあったと内心喜んだ。所詮は、ガキが率いている商船だ。大人が頭を下げれば、こんなものよと。
「いいえ、賞金がないならこの場で皆殺しにするだけです。ホタル、イーロン、ワズキャン・・・各々、新しい技や修行の成果を存分に実験していいですよ。海賊達は、我々の糧になってくれるそうです」
「因果応報。貴方達から学ぶ技術もなさそうなので、早く死んでください」
「儂は、お前たちに恨みはない。だが、海賊は大嫌いなんでな」
「僕も君達には恨みもないんだけど、海賊だからね。当然、殺される覚悟でやっているんだろう?」
ソラ達を襲った海賊団。今まで彼らの手によって死んだ人達への手向けとして、彼らの阿鼻叫喚が届くことを祈る。彼らの帳簿にはヒューマンショップに捕らえた者達を売りさばいた履歴もあった。
人間が人間を売りさばく。
増え続けるゴミを掃除しつつソラ達は、
・・・
・・
・
ソラ達は遠くにサボテン島が見える所までやってきた。見ず知らない場所にいきなり行くような事はしない。港で囲まれたら不利だ。仮にソラが逆の立場だった場合、港に爆弾を仕掛けて海賊団を丸ごと焼却する。
よって、ここで偵察に選ばれるのはイーロンだった。いつものことながら魚人が有能すぎるので困るソラ。彼が魚人島についたら実家に帰るとか言っているのでなんとか引き留める策を考えないといけない。
「イーロンが戻り次第、私とホタルが出る。いつも通りに罠をしかける。翌朝に掃除する手はずで」
「はい、兄様。ところでバロックワークスなる組織は、どうしますか?」
「皆殺し。海賊行為を海賊旗なしでやっている。中身は海賊と一緒だからね。ただし賞金首なら、ワンピースを没収して少しだけ長生きさせる」
4つの海より海賊が多いここでは、ゴミ掃除をするゴミの手は沢山あって良い。能力者であれば更に良い。対能力者の訓練にも使える。捨てるところがない存在だ。
兄妹が会話している処にイーロンが偵察から戻ってきた。
「全く、ワンピース、ワンピースって。儂もなんだか、ワンピースが本当にソラが言う物に思えてきてしまう事に悲しくなってきた。まぁ、そんなことはいい。サボテン島の連中は、既に何者かに半殺しにされておった。傷口から恐らくそんな時間は経っていないだろう」
イーロンの報告にソラもホタルも首をかしげる。
到着予定の島は、バロックワークスという連中が占拠していた。だが、何者かによって島民全員が半殺しにされている。これらを行った犯人はその場にもいないときた。
「まだ息があるとか、誰かは知りませんが適当な仕事をしていますね。生きているなら私とホタルの能力で強制的に覚醒させられるので問題ないでしょう」
「その通りですね。イーロンさん、お願いします」
生死の最中でこそ人は、子孫を残そうとする本能がある。そこを刺激できるチ〇チ〇の実とムラムラの実。強制的に覚醒させ、最後の命を燃やし尽くす。
船上でなく陸地である為、運よく正気を取り戻せれば逃げられるだろう。
闇夜に紛れて海上から放たれたチ〇チ〇ビームとムラムラビーム。この二つの悪魔のビームが重傷を負った住民達の体を無理やり動かし症状を悪化させた。男も女も本能を解放し、大惨事となる。
◆◇◆◇
ソラ達がサボテン島に上陸する前、別口からバロックワークスの社員が調査に来ていた。裏切り者と発覚したミス・ウェンズデー達の行方やMr.9とMr.8の確認をするために。調査員は、鼻が曲がるような強烈な匂いを感じ取った。
その異臭がするのは、彼らの目的地であるウイスキーピークだった。
「酷い有様だな。一体、何がどうなったらこうなるんだ」
「とりあえず、生存者を探すぞ」
社員同士で殺し合い。男も女も裸で倒れており、凄まじい行為だったと想像できるほどの惨状だ。垂れ流れている糞尿に白い体液。今すぐにでも帰りたい調査員だったが、上司に報告をする必要もあり耐えていた。
秘密結社であるバロックワークスは、上下関係は絶対だ。上に逆らうなら死ぬ可能性もある。特に、今回は社長命令での調査であり末端の調査員に拒否権はない。
「誰か~、誰か生存者はいないか!! 俺たちはバロックワークスの調査員だ!!」
「生きている者が居たら返事をしてくれ!!」
ウイスキーピークの町中を声を上げて、調査員は回り続けた。一時間経過しても誰一人として息がある者が見つからない。しかし僅かだが、この大惨状の手がかりを見つける。
「この手配書は、”麦わらのルフィ”!?」
「この恐ろしい惨状に何か関係しているに違いない。すぐに上司に連絡をいれる」
地獄絵図の状況を調査員は、上司に正しく報告した。話の分かる上司は、すぐにそこを撤退して、アラバスタに戻るように指示を出す。ウイスキーピークは放棄する事が、バロックワークス上層部で即座に可決される。
この報告をきっかけにバロックワークス内部では”麦わらのルフィ”の情報が共有される。ゴムゴムの実の能力者ルフィ、海賊狩りのゾロ、コックのサンジ、泥棒ネコのナミ、ウソップなどのメンツが割れていた。この中の誰かの悪魔の実の能力で引き起こされた事件だと思われてしまう。
判明している事実だけを並べると当然の事だった。
ウイスキーピークにある死体の死因となったのは刀傷の悪化が原因。それにより、海賊狩りのゾロに嫌疑がかかる。
異常なまでの性事情があった事から料理に薬物の混入も疑われた。それにより、コックのサンジや調合が得意なウソップにも嫌疑がかかる。
そして、唯一の女性である泥棒猫のナミは、海賊・・・男を手玉に取る事で有名だったので雰囲気を盛り上げた陰の立役者と推測される。
これらすべてが合わさり、あの惨状ができたというのがバロックワークスの見解だ。手配当初から3,000万ベリーの大物は伊達じゃないと囁かれる。