砲撃音が心地よい。長距離からの一方的な艦砲射撃。音速を超えて飛び出す弾丸の数々。着弾地点となっている海賊島ハチノスを消し炭も残らない程にするため、一切の容赦はしない。
この世の中に無敵など存在しない。悪魔の実の能力者は圧倒的な強者だが、致命的な弱点をいくつも背負う事になる。島ごと消し飛ばせば、生き残れる能力者はいない。
それに加え、四皇”黒ひげ”の悪魔の実は特殊だ。ヤミヤミの実は、能力を無効化できる特性ゆえか、肉体を闇に変換する事ができない。これにより、他の
流れ弾が悪い場所に当たれば致命傷になってしまう。ソラ達の艦砲射撃は、”黒ひげ”にとって最悪な攻撃だ。止む事がない砲撃が海賊島ハチノスに降り注ぐ。何の警告もなく非人道的な攻撃に甚大な被害を被った”黒ひげ”も苛立ちを覚えた。
「クッソ!! 一体、どこのどいつだ!! だが、俺様をなめるなよーーー!!」
夜のおかげでどの方角から砲撃が放たれているかハッキリとわかる。方角だけは分かる・・・だが、遠すぎる。グラグラの実の能力であっても射程無限の様なチートではない。有効射程もある。それに、下手にこの近くの地盤をひっくり返して島が水没すれば、自滅もいいところだ。
”黒ひげ”は、グラグラの実の能力で飛来してくる弾丸を防ぐ事に専念する。
大空に向けて何度も能力を発動し、砲撃から島を守る様子は傘下の海賊達からすれば頼もしいだろう。だが、注意すべきは空だけではない。地面からもビビの殺人カビ”グリーン・ディ”に加え、海賊の心臓を経由して”腐界降臨”で陣地を構築しキノコ兵を無限に送り込まれていた。
これは、まだ始まりに過ぎない。
クザンがティーチがいる部屋に飛び込んできた。この異常なまでの殺意マシマシの攻撃には、思い当たる節が彼にはある。予想よりだいぶ早い到着だと彼は思っていた。
「ティーチ!! おれは、カビの侵食を抑えに行く。このままじゃ、覇気がろくに使えねー雑魚共が全滅だ。ドクQの奴には、負傷した奴の治療にでも当たらせろ」
「クザン、無事な船は?」
この状況は、不利だ。圧倒的なポテンシャルを持つ”黒ひげ”の能力を使わせない。この小さな島では、相手の思うつぼ。もっとデカい陸地を持つ場所で戦わなければ、勝機は薄い。
「ね~よ、そんなもん。最初に潰された。俺の能力で海を凍らせる事も出来るが・・・次の島までは、無理がある。それに、海に落ちたら俺たちは死ぬぞ」
「ゼハハハハハ。そうだよな・・・面白くなってきた。いいぜ、やってやろうじゃねーか。お前達が痺れを切らせて乗り込んでくるまで耐えきってやるぜ」
絶対に乗り込まないソラ達と、絶対に乗り込ませたい”黒ひげ”達との根気の勝負が始まった。
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・・
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ソラ達は、相手に寝る時間すら与えない為、艦砲射撃を続ける。全力投球を初手で行ってからは時間差をつけて定期的に攻撃を続けていた。途中から”黒ひげ”がグラグラの能力をつかった迎撃を始めたあたりから、無駄な攻撃にならないように一定の間隔をあけた。
人間は、飲まず食わずで能力を無制限に使えるようには作られていない。
「ビビ、今の食糧庫と飲み水の汚染状況は?」
「既に、終わったわ。でも、クザンがいるから氷から水を生成されるので効果は薄いわね。それと、ヒエヒエの能力に防寒耐性を貫かれたわ。キノコ兵は、機能不全・・・”グリーン・ディ”は、世代交代を繰り返して島の6割を汚染した所よ」
ビビの能力をもってしても、未だに6割しか島を汚染できないとは。クザンのヒエヒエの能力の高さにはソラも嫌気が差している。本来ならすでに島全体を汚染して死の島にしていたはず。
だが、ポジティブ思考で考えるならば、ビビのカビがヒエヒエの能力を超えるべく進化を続けているという点だ。時間の問題。ジワジワと広がる殺人カビと艦砲射撃と飢えに恐怖しつつ過ごすといい。
「だが、念のための後押しは必要ですね。ビビ、ペルを一度引き戻してください。私とホタルを背負ってもらい島上空を通過します。人間は、死が迫ると子孫を残そうと本能が動くらしいじゃありませんか。島を地獄絵図にしてやりますよ」
「言うまでもありませんが、撃ち落とされないでくださいね。ソラとホタルがハチノスに落ちたら、私達全軍が乗り込みますよ。被害なんて度外視しますからね」
責任重大の任務を背負う事になったペル。
何が悲しくて、ビビの王配二人を連れて四皇が治めるハチノス上空を通過しないといけないのかと胃が痛くなってきていた。だが、ハヤブサの最高速度は時速300kmを越える。覚醒したペルの能力ならば更に速く、まさしく戦闘機だ。
その夜、謎のビームが海賊島ハチノスを襲った。男達は理性を失った獣のように交尾を始める。軍事同盟からの攻撃の手が止まらない状況だというのに、高いレベルの覇気使いしか対抗できず状況はより混乱を極め始める。
海賊島では男が男を性的に襲い始める見たくもない地獄になり・・・”黒ひげ”はある決断をした。ドクQにより、”女になる病”を流行させ、一部海賊達を女にする事で多少マシな地獄を作り上げた。
◆◇◆◇
軍事同盟が夜中に攻撃を始めてから、初めての朝を迎えた海賊島ハチノス。朝日が昇り始めて、被害状況が把握され始めた。”黒ひげ”の元に集められた被害報告。
「おぃ、近隣の海賊への支援要請はどうなった?」
「それが・・・これは原文そのままになります。『お前等が狙われている間に俺たちは廃業して逃げるわ』、だそうです」
新世界にまで軍事同盟が乗り込んできて四皇をぶっ潰そうとしている。つまり、事が終われば次なるターゲットは、野良海賊達。来るものを拒まない四皇バギーの元に行くという手もあったが、知名度の低い海賊は廃業して民間人として余生を過ごす決意を固めた。
軍事同盟と海軍が強い今の時代。海賊達にとっては時期が悪いというほかない。
「あの野郎ども。俺に世話になった恩を忘れやがって!! 事が終わったら、俺様直々にぶっ殺しに行ってやる。で、他は?」
「はい!! 食糧庫並びに水源は全滅です。また、人的被害も甚大です。男も、女にされた男も・・・色々とガバガバにされて、人間として終わっており再起不能です」
本当に酷い事件だ。
”黒ひげ”は、ソラとホタルの能力の一端を受けたが、覇気で解除することに成功している。だからこそ、分かる。あれに対抗できるだけの覇気を持つ者は多くはない。しかし、そのおかげで”黒ひげ”は、軍事同盟に居る能力を二つ知る事が出来た。
「そいつらは、性のはけ口として放置しておけ。チ〇チ〇の実とムラムラの実の能力者がいる以上、また同じ事をやられる可能性があるから治療しても無駄だ。まさか、あんなクソみたいな実を食った馬鹿が世の中に居るとは思わなかったぜ。軍事同盟には、頭がぶっ飛んだ能力者もいたものだな。ゼハハハハハ」
「ティーチ船長。こんな非常事態に冗談を言っている場合じゃありませんよ。そんな下ネタみたいな悪魔の実なんてあるはずないじゃないですか。それより、謎のカビが広がり続けています。クザンさんが何とか氷漬けにしていますが、徐々に適応しているみたいで、ティーチ船長の能力で消してくれと依頼がきています」
”黒ひげ”は本当の事を言ったのだが、誰もイロモノの悪魔の実を信じてくれない。
通常時なら誰に口きいているんだと殴り飛ばすが、こんな部下でも覇気が使えてソラとホタルの能力を解除できるほどの逸材だ。少なくなった部下を自らの手で減らす程、愚かな行為はない。
「ちっ、仕方ねーな。俺も休ませろよ。夜通し能力を酷使して疲れてんだぞ」
今この瞬間も飛来する砲弾を撃墜する為、グラグラの実の能力を使い続けていた。終わる事がない泥沼の戦いに、海賊島ハチノスは徐々に磨り潰されていく。