どこで何を間違ったか理解できない”黒ひげ”。だが、四日目の夜明けを迎える為にも、”黒ひげ”は覚悟を決めて仲間だった者達を殺害する。体力、気力、能力、物資、人員など全てが減り続けて、もはや限界を超えた。
生き残る可能性に賭けるのは、当然の結果。
だが、”黒ひげ”とてタダでやられるつもりはない。軍事同盟の黒い噂は、彼の耳にも届いている。
曰く、捕らえた海賊に海賊狩りをやらせている。
曰く、捕らえた海賊で医療技術向上の人体実験をしている。
曰く、捕らえた海賊を生き埋めにして肥料にしている。
曰く、誰一人とて生きて帰さない。
噂が流れる以上、僅かに生存できる道がある事は事実。実際、軍事同盟も技術力向上や海賊をより効率的に殺すため、日夜頑張っている。特に、殺しの経験を積ませるために生きた海賊を殺す訓練は欠かせない。
「ゼハハハハハ!! お前等は、強かったぜ。流石は、俺が選んだ船長達だ。だが、俺はお前ら以上に強い。安心しろ、お前等の死が俺を未来へと導いた。必ず、あいつ等には報いを与えてやる。絶対にだ!! 」
軍事同盟の激しい攻撃と黒ひげ海賊団同士の殺し合いで、島の原型は消えた。残っているのは当初の島の2割ほどだ。海にいつ沈んでもおかしくないレベルとなっている。グラグラの実の能力で島が砕け、砕けた所に軍事同盟の艦砲射撃まで加われば当然の結果だ。
”黒ひげ”の足元には、仲間だった者達の死体が丁寧に並べられている。軍事同盟の連中が、死体が無くて信じるとも思っていないので原形が残されていた。ただし、そこにはクザンの死体はない。”黒ひげ”としても、それについては不安があるが・・・彼にも言い分はあった。ヒエヒエの実の元・海軍大将相手に手加減なんて出来ないので全力のグラグラの実を使ったら肉体もろとも粉砕して何も残らなかった。
”黒ひげ”の見聞色でもハチノスでの生存者は、誰も確認できない。島の外は、海。海上には多数の軍事同盟の魚人兵。この状況から逃げる事など、出来ない。よって、死亡したと確信していた。
ギュルルルルと”黒ひげ”の腹が鳴る。ここ数日、碌な飯が食えていない。泥水や腐ったパンを食べても美味いと感じるレベルだ。
「まずは、飯だな。俺を捕らえに来た奴を人質にして、船を確保。それから、有人島で一度体制を整える。やはり、小さい島はダメだな。同じ方法をやられたら手も足もでね~。地形的にワノ国もいいが、あそこはカイドウが邪魔だ」
黒ひげ海賊団が全員揃った状態だったならば、戦いを挑むという選択肢は僅かにでもあった。だが、今や黒ひげ海賊団は、船長である”黒ひげ”一人。この状態でカイドウに戦いを挑むなど無謀を通り越している。それどころか、この事が世界政府や海軍に知られれば四皇の地位から落ちる事は確実だ。
”黒ひげ”がこれからの事を考えていると海賊島ハチノスに上陸する一人の人影がいた。軍事同盟からの使者であり、”黒ひげ”が待ち望んでいた者だ。
軍事同盟内部でも海賊島ハチノスに上陸するのは誰が適任か、議論があった。そこで手を挙げたのが・・・。
「お初にお目にかかります。私は、ネロナ・ソラ。軍事同盟のトップ兼天竜人兼アラバスタの王配をやらせていただいております」
「おぃおぃ、マジかよ。俺様がいるこの場所に、天竜人本人が来るとか軍事同盟はどうなってやがる。あほなのか、馬鹿なのか?」
思わず本音を言ってしまう”黒ひげ”。”黒ひげ”程の存在を相手に下手な連中を差し向けては、人質にされてしまう。勿論、それはそれでも良いが・・・しかし、ソラは約束は守るべきだとも思っていた。
ビビが海賊に対して条件を出した。それを達成したのならば、こちらも約束を守らねば相手と同じゴミみたいな存在になる。
「いえいえ、ちゃんと考えていますよ。それで、船長達の死亡確認をしたいので、闇を解いてください。私の能力もそれが邪魔で足元の彼等の息の根が確認できませんので」
「・・・お前も能力者か!? 生存確認という事は、ムラムラの実か?違うな、チ〇チ〇の実の能力者だったのか。これは、お笑い草だな。あんな、クソみたいな実の能力がまさか天竜人だったとは、腹が痛いぜ」
”黒ひげ”は、勝ったと思った。能力者が相手ならば、ヤミヤミの実が有効活用できる。しかも天竜人だ。手を出す事で海軍大将が出てくるだろうが、この際そこは問題ではない。人質としての価値は最上位だろう。
「いいぜ、ほら。これで死亡確認できるだろう。ドクQ、ラフィット、ヴァン・オーガー。クザンは、グラグラの実の力で木っ端みじんになった。ジーザス・バージェスは、ドレスローザでお前達の仲間に殺された。どうだ?確認はできたか」
「”凶れ”・・・ちっ。確かに死んでますね。股間をねじ切っても、叫び声どころか顔色一つ変えないなんて。でも、クザンさんの死体がないですよね?お約束は、船長達全員の首を並べる事だったはずです」
ソラは、
「だから、言っただろう。クザンは木っ端みじんになったって。お前の能力なら、この狭い島に俺以外誰もいない事はわかっているはずだ。それで十分だろう・・・なぁ、天竜人」
「面白い冗談を言いますね。何が十分?約束を守らないならば、それまでです。私は、船長達の死亡をこの目で観測できたので来た目的は達成できました」
ソラが来た道を引き返そうとしたところ、”黒ひげ”がヤミヤミの実の能力を使う。引き寄せられたソラの首が”黒ひげ”の手に捕まる。
能力を封じる事が可能なヤミヤミの実。それは、海楼石と非常に近い特性を有している。その手に捕まれる事で能力が使用できなくなり、脱力状態になる。しかし、脱力状態になるが動けなくなるわけではなかった。
事実、ワノ国では海楼石に繋がれたキッドやルフィが大きな石を軽々と運んでいる。つまり、その状態に慣れてしまえば能力こそ封じられるが普通に動ける。日々の訓練が大事だが、通常・・・能力者は海楼石を嫌うので、そのような訓練を積むことがない。むしろ、危険なのでやらないと言った方が正しい。
だが、ソラ達は違う。ビビが夜な夜な純度100%海楼石の手錠をもって寝室で「くっ殺せ!! 軍事同盟には屈しない」プレイで鍛えたソラは、レベルが違う。
「よっしゃーー!! 取っ・・・!?」
ガチャリ
ソラが目にもとまらぬ速さで、海楼石の手錠を”黒ひげ”の手にかける。
「おや? 海楼石の手錠をかけられた位でここまで脱力してしまうとは、鍛え方が足りません。能力者である以上、弱点を克服する為あらゆる努力をする。貴方は、野心こそあるが能力頼りなところがあります。そして、天竜人である私に手を出した」
「俺がこんなガキなんぞに!!」
油断したなんて言えない”黒ひげ”。天竜人であり、こんな中性的な子供相手に掌の上で踊らされるなど海賊の沽券に関わる。だが、海楼石の手錠をつけられてしまった。この瞬間、”黒ひげ”はこの状況を打開するため脳をフル回転させる。
そして、逃げる手段を一つだけ思いついた。
懐にあったナイフでソラをつかんでいた腕・・・海楼石の手錠が付けられた手首をばっさりと切断する。実に豪快な脱出方法。だが、最適解だ。首のような致命的な場所でないならば切断して逃げる事が出来る。
「俺様は、ここでおわらねーーーんだよ!! 砕け散れ、クソガキがぁぁぁぁぁぁ!!」
「まだこれだけの力が!! 流石は、四皇。ですが、私より上に注意をした方がいいですよ」
”黒ひげ”は、最後の力を振り絞りグラグラの能力を使う構えをとった。だが、世界最強の一角といっても過言でない威力を誇るグラグラの実にも欠点は存在している。
ソラが海賊島ハチノスの上空を指さした。
そこには、遠目でも肉眼で確認できるほどに赤い雷鳴が迸る物体が観測できた。ペルの背から飛び降り、この場所に急降下してくるビビだ。覇王色の覇気を纏い、手に持つIXAにも覇王色の覇気が込められている。
その覇気は、カイドウにも迫る勢いがあった。
落下速度、”剃刀”による加速、覇気による加速などが加わる。迫る死に対して”黒ひげ”が咄嗟に標的をソラから落下してくるビビに狙いを変えた。
「なんだ、ありゃ!! 化け物かよ。”震破”!!」
ソラは、標的が変わった瞬間にその場を離脱する。既に勝敗は決した。グラグラの実は強力だ。だが、能力発動までに時間が平均して5秒程度かかるという欠点がある。最上位の化け物同士の戦いにおいて、能力発動まで5秒というのは致命的だ。
グラグラの能力が発動するより早くビビの覇気がすべてを突破する。
「まぁ、上を守っている間に下は無防備になるんですけどね。私を前にして覇気でのガードを消失させるのは自滅しますよ。念のため、ワンピースは預からせてもらいます。”チ〇ブルズ”!!」
能力発動中は構えて動けない”黒ひげ”。股間の違和感に気が付き、ソラの方に視線を送る。そこには、親の顔より見た大事な
「くそ!! くそ!! くそぉぉぉぉぉーーー!!」
”黒ひげ”の叫びが木霊する。
空から強大な覇気と共に落下してきたビビが黒ひげと衝突した。空を割り、大地を砕き、海すら割る。全てを葬る一撃となる。
・・・
・・
・
砂埃の中に見える女性の姿。血が付いたIXAを振ると風が舞い、周辺が綺麗になる。身体に大きな穴をあけた四皇”黒ひげ”の死体。ビビの殺人カビ”グリーン・ディ”が残っていた死体も食い散らかす。
それを見てソラも一安心して、ビビに駆け寄る。ビビの額には血が流れており、ダメージを負っている。ここまで磨り潰した四皇の最後の力でビビに傷を負わせるとは、恐ろしいとソラは思っていた。
ビビが血を流すなどあまり見れるような事ではない。
「ビビ!! 惚れなおしましたよ」
「ソラ。貴方の妻なんですから、このくらい当然です!! まだ、一人。されど、一人です!!」
四皇の一角を潰して、血を流しながらも立ち上がり次の四皇を処分する意気込みを見せる姿は、世界経済新聞に激写されていた。その美しく、強く、勇猛な女性・・・ネフェルタリ・ビビこそが、伝説のスーパーアラバスタ人だと知れ渡る。
その一方、ソラは懐にしまっておいた果実の状態を手で確認し、ほくそ笑んでいた。その姿も撮影されており、ビビ王女に惚れこんだ天竜人として合わせて掲載される。
世界に秩序が戻ってくると大きな見出しで世界に情報が拡散する。そして、大海賊時代の終わりの始まりであった。
◇◆◇◆
”黒ひげ”が絶命している頃・・・軍事同盟の軍艦にある牢屋には、泣いているガープが居た。その拳には、海楼石製のメリケンナックルが嵌められており、とある囚人を殴っていた。
「クザン、戻ってこい。今なら、儂が大将になった権力をフル活用して復権させてやる。分かったなら、頷け!!」
「
クザンは、ビビの空飛ぶキノコ兵からガトリング砲を撃ち込まれた結果・・・足場が崩れて海に落ちた。そして、このざまだ。ガープの鉄拳の説得が昨晩から続いており、未だに説得が終わっていない。
「クザン。お前は分かっていない。儂が取引して何とかお前の身柄は海軍預かりにしたが、世論操作は軍事同盟の得意分野だ。いずれ、お前の身柄について引き渡される事になる。そして、あいつらは約束をしっかり守る。つまり、バーソロミュー・くまの刑じゃ。サイボーグ化して、都合の良い戦力にさせられるぞ」
「インペルダウン送りも最悪だが。奉仕活動ってそういう事かよ。あいつらの辞書に人権って言葉はないのかよ・・・まぁ、ないよな。海賊に人権が無いのは、当然か。・・・後、俺のワンピースを返せよ」
元・海軍大将クザンが黒ひげ海賊団に加担していたという事実は世間でも大きな衝撃を与えている。
だが、海軍本部機密特殊部隊「SWORD」という実に便利な組織が存在している。非合法の行動を自己責任で行う海軍の闇を背負う部隊。つまり、経歴ロンダリングさせて実は「SWORD」所属で潜入任務でしたとすれば、丸く収められるという事実もある。
実際、最悪な世代の一人であるX・ドレークが「SWORD」の一人である。
「クザン!! 早く決めろ。間に合わなくなっても知らんぞ。それと腹を空かせていると思って、アツアツのおでんを用意してきた」
「空きっ腹にアツアツのおでんは拷問だろう。それより、俺のワンピースを返せよぉぉぉ!!」
クザンは、この牢屋に入れられた際にソラから「お前のONE PIECEは、預かった!」と言われていた。
「ワンピース、ワンピース煩い!! だったら、素直に海軍に戻ると言え。さもないと、ホタルにも能力を使ってもらって男色にしてやるぞ。そうなったら、儂やコビーがこの狭い牢屋で筋トレして汗をかきまくってやる」
「最悪な取引じゃねーか。おれは、屈しないぞ!!」
元・海軍大将として拷問に対し一定以上の耐性を持っている。
だが、特殊な性的拷問訓練を受けていた事はなく、堕ちるまで時間の問題だ。これを機に、海軍でも特殊な性的拷問訓練の導入可否が本格的に検討される事になる。
その事例紹介として、元・海軍大将でも堕ちる性的拷問と教科書に載ってしまう。
ワノ国編・・・到着頃には、終盤を想定しています。
具体的には、鬼ヶ島に突入した後か、原作で緑牛が到着したころ当たりを想定。