105:心のこもったプレゼント作戦
海賊島ハチノス。四皇”黒ひげ”のお膝元であり、海賊達が集まる場所だった。一度突けば、血の気盛んな海賊達がうじゃうじゃ出てくる事が由来である。だが、そんな島など、今は何処にもない。
完全勝利宣言がなされ軍事同盟達の各位は、喜びを分かち合っていた。アウトレンジからの四皇抹殺方法・・・これにより人的損耗をほぼ0に抑える事が出来る。金に糸目さえつけなければ、誰でもできるお手軽四皇抹殺方法として、世界に伝授される。
四皇”黒ひげ”を抹殺するのに軍事同盟が費やした費用は約200億ベリーになる。弾薬費、人件費、軍艦の整備運用費だけでこれだ。軍艦の製造費用を入れれば更に跳ね上がる。それだけの額を費やせば、四皇とて殺せるなら悪い事ではない。
むしろ、世界有数のゴミがこれで消えたとなれば安いともいえる。
その喜びが軍事同盟に伝わる。映像電伝虫で状況を確認していた軍事同盟参加国の首脳陣達もその成果に大満足だ。これだけの金を供出して、訓練を重ねて、何の成果も得られませんでしたでは、国王交代の可能性まであった。
今、軍艦では盛大な宴が行われている。勿論、これから第二第三の四皇を殺す必要もあるので、浮かれすぎてはダメだ。油断した時に狙われてしまう事こそ一番危険。今回一番頑張ったのは、軍事同盟の一般兵士達。艦砲射撃にせよ、補給にせよ、監視にせよ、その大半を担ったのが一般の兵士・・・つまり。一個人の強さで戦況を左右せずとも大海賊を殺せる証明。
よって、多少ハメを外して喜ぶ事にはソラも目をつぶっている。周辺監視は、役職持ちの仕事だ。つまり、ソラ達はこの状況でも浮かれる事なく冷静に次なるターゲットに目標を合わせる。
情報漏洩を恐れて、次のターゲットについてはソラしか知らない。情報とは知る者が多いほど、漏洩する。だからこその対策だ。
会議室に集まったビビ達は、次が誰になるかと発表を待っていた。そしてソラが、皆に告げる。
「知っての通り、四皇と呼ばれる存在は残り三人。”赤髪のシャンクス”、”千両道化のバギー”、”百獣のカイドウ”。次の狙いは、現在最悪の世代と呼ばれる海賊達が攻略中の”百獣のカイドウ”。我々が到着する際に、討伐されていてもよし。弱っていれば、その首を狩るだけです。”百獣のカイドウ”が終われば、”千両道化のバギー”です。何か質問は?」
「兄様。なぜ、その順番なのですか?私の予想では、初手で”百獣のカイドウ”だと思っておりました。物資などいろいろな面で一番余裕がある初手で討たなかった理由が分かりません」
ソラとホタルと少なからず縁があるワノ国だ。そして、”百獣のカイドウ”の元には、因縁の相手である大看板”疫災のクイーン”。これだけの条件があるにも関わらず、見送った理由。
「”千両道化のバギー”は、豪運で大所帯ではありますが、実力が微妙な連中の集まりです。正直言えば、陸上戦でこの部屋にいるメンバーが本気で挑めば5万人相手でも皆殺しできる可能性もあります。又、後回しにしても大きな問題にはなりません。むしろ、一か所にゴミを集めてくれているのでありがたいほどです。他には?」
「ソラ、私も質問したいわ。”赤髪のシャンクス”は、どうして見送ったの?一応、穏健派の四皇として、バランサー的な役割をしている事は知っているけど。その程度の理由で見送る程、ソラは甘くないわよね?」
ソラは、別に口止めされていないからいいやという程度の気持ちで、色々と教える事にした。知っていて損はないし、今さら知ったところで何ができるわけでもない。むしろ、天竜人という権威の庇護から逃げられなくなるのである意味ちょうどよかった。
「ビビ。”赤髪のシャンクス”は、私やホタルと同じく天竜人の直系です。さらに言えば、フィガーランド・ガーリング聖の実子で、本名はフィガーランド・シャンクス聖。それが彼の正体です。私は、幼い頃に実家の隣の家に足を運んでいた彼を何度か見た事があります」
「なるほどね。確かにそれなら今までの”赤髪のシャンクス”の行動も納得できるわ。頂上戦争の時に”百獣のカイドウ”を足止めしたのもそういう理由ね。世界政府と繋がる
世界政府の権力が何処に行っても繋がっている。むしろ、それだけ幅広く世界を監視して制御している手腕は流石だった。ベリーという世界共通の基軸通貨。その貨幣価値を担保して信用創造をしている。まさに、世界を牛耳るべくして牛耳っている。
誰も手を出せないレベルの巨大組織。
元・CP9のルッチ達でも知らなかった”赤髪のシャンクス”の正体。これが事実なら、全ては世界政府の掌で踊らされていたという事だ。何百年も体制を維持してきた組織は伊達じゃない。
そして、そんな衝撃的な事実を聞かされたルッチは気が付いてしまう。
「待て、ソラ。その事実、我々に聞かせて問題なかった奴なんだろうな?知ったから消されてしまうような情報ではないんだろうな?」
「口止めされていませんし、言いふらさなければ大丈夫でしょう。おそらく、五老星や元帥レベルの人なら知っている情報ですから問題ありません。それに、私の後見人は五老星ですよ。大丈夫、一緒に働く仲間を見捨てたりしません。私は、ここに居る皆さんの事が大好きですから。最後まで、海賊根絶をやり切りましょうね」
ちなみに、問題でしかない。世界の数名しか知らないような情報を知っている時点で消される可能性の方が高い。つまり、これはソラから事実上、裏切れば世界政府が消しに行くぞという警告も含まれている。
「ふん。そんな脅し文句など言われずとも、付き合ってやる。お前等、子供が海賊を根絶する為にあれこれやっているんだ。俺たち大人が何もしないなぞあり得ん。・・・だが、一発殴らせろ。それと事が終わったら休暇を寄こせ」
「まったく、ルッチの奴はツンデレじゃの~。ワシにも当然休暇をくれよ。恋人とバカンスに行く約束があるんじゃ」
ルッチを煽るカク。だが、そのカクの口から爆弾発言が出てしまった。このクソ忙しい職場で恋人ができている。CP9の仲間達は、信じられないとエネル顔で驚いている。
「おや、私が紹介した彼女と上手くいっているようですね。カヤ嬢は、病弱でしたが医師になり人の役に立ちたいと思っている素晴らしい人格者です。元・地方のお嬢様ですが・・・一心発起で軍事同盟の医師募集に手をあげてくれました。大切にしてあげてください」
「勿論じゃ。ただ・・・ワシの鼻をよく撫でるのが、ちょっとな~。これ以上長くなったらどうするんじゃ」
大事な部下の恋仲がうまくいくように、ソラとホタルの能力で後押しも忘れない。そのあたりのフォローはバッチリだ。配慮して二人の部屋は少し離れた場所にあり、防音と振動対策も完璧だ。ちなみに、船大工であった経験を生かしてカクが自腹で整備していた。
「人の趣味は色々です。あぁ、ご結婚する際は是非呼んで下さいね。二人の縁を結んだワンピースのキューピットとして、仲人も担当しますよ」
「やめい!! 天竜人でアラバスタの王配であるお前さんが、結婚式に参加したら皆が委縮するじゃろう。呼んでやるから、せめて一般人として参加せい」
ソラは、「喜んで」とカクに伝える。
軍事同盟は、この戦いに向けて二年準備してきた。そして、この船に乗っている人材も入念に口説き落とした人物ばかりだ。ソラは確信している。いずれ、ソラ達の前に立ちはだかる”麦わらの一味”。彼らと
だが、戦いとは、何も相手を物理的に倒す事ではない。心の支えを完全に砕き、立ち上がる力を削ぐ事も大事だ。”麦わらの一味”の戦闘員に対して、心へのダメージを与える為にソラが用意した手札がある。その名も『心のこもったプレゼント作戦』だ。
ルフィには、口の軽さゆえに死んだハンコック、レイリーの事を伝える。そして、ガープ中将をぶつける。
ゾロには、たしぎ大佐の子供の件を伝え、某剣術道場からお呼びした師範をぶつける。
サンジには、ビビが撮影したしらほし姫との夜戦動画をみせつける。
ウソップには、カヤ嬢とカクとの関係をみせつける。
ブルックには、海王類に囲まれるラブーンの映像をみせつける。
フランキーには、多数の罪状でインペルダウン送りにされ、拘留中の元・フランキー一家の映像をみせつける。
ソラの優しさが詰まったプレゼントを受け取る事になる”麦わらの一味”は、今頃鬼ヶ島でカイドウ討伐に向けて準備を進めている真っ最中だった。
ワノ国の始まり・・・あれ?
エッグヘッド編とかエルバフ編とか、細かい事はいいよね!!