花の都近くにまでやってきた軍事同盟。彼等が最初に行ったのは、この国のトップである将軍への挨拶と海賊を駆逐するという事後報告だ。軍事同盟は野蛮人ではないので、しっかりと筋を通す。
別に、『ダメだ』とか『嫌だ』とか言われても軍事同盟は気にしない。そこに海賊が居るのだから、問答無用で殺して回る。一応、人様の国で狩りをするのだから挨拶だけはしておくという体裁を整える事が目的だ。
しかし、ソラ達が将軍の住む城に行ったが、国を治めているオロチ将軍は不在。それどころか、後ろ暗い存在の海賊達が人間の通り道を横行闊歩していた。綺麗好きなソラ達は、花の都に居た海賊達を土に返す。当然、火祭りという年一の楽しみが、狂気に満ち溢れる。
狂気とは伝染する。
普段は強くて手も足も出ない海賊達が、ぼろ雑巾のように殺されていく。助けを求めて住民にすがろうとするが、全員逃げて誰も海賊達を助けはしない。海賊の日ごろの行いが全ての原因。同じ人間であれば多少の情も沸くが、誰もそのような感情を抱かなかった。
ソラ達が花の都の火祭り改め
ソラに締め上げられた海賊がお決まりのセリフを言う。
「カイドウ様が来られたら、お前達なんか!!」
「”手銃”。大丈夫ですよ、地獄で海賊団を再結成できるように全員そちらに送ります」
ルッチ直伝の六式応用技を使うソラ。人間が開発し、長い年月かけて洗練させた体術は素晴らしいと実感していた。ソラの手によって貫かれた海賊は、心臓を抜き取られて絶命した。ドクンドクンと脈打つ心臓・・・どんなに汚い人間であっても中身は変わらない。不思議な物だとソラは思っていた。
「兄様、鬼ヶ島に攻め込みますか?かなりの人数がおります。ブルーノのドアドアがあれば、繋げられますが・・・」
「見て見て、ソラ!! あの空飛ぶ島!! すごいわね・・・あれだけの建造物を浮かせながら”麦わらの一味”含む最悪の世代と戦っているんでしょう? それに、尋常じゃない覇気がここまで伝わってくるわね。あれが、地上最強の生物”カイドウ”」
ソラは、上空にある鬼ヶ島を確認した。そこからは、今も激しい戦いが繰り広げられており、覇気を纏った攻撃を地上からでも観測できるほどだ。軍事同盟も殴りこみ共闘すればカイドウを確殺できるだろう。だが、それでは困るのがソラの本音だ。
海賊との共闘を望んでいない。共倒れこそ望ましい。
しかし、戦いで弱っている”カイドウ”に出会えるチャンスは、今後無いかもしれない。また、漁夫の利を狙いすぎて全てが破綻してしまうかもしれない。地上最強の生物の回復力も伊達じゃない。それに加え、死闘によるレベルアップも考えられる。
「迷います。今、鬼ヶ島には打倒カイドウに命を懸けた侍達もいます。彼等が居なければ、鬼ヶ島下部にある火薬庫に火をつけるだけで大半を殺してカイドウにもダメージを与えられる。海賊達はいくら死んでもいいけど、侍は少し困ります。海楼石を輸出する最大の
「承知した。その間、我々で鬼ヶ島にある火薬庫から物資を略奪しておく。次の四皇との戦いに備えて軍備強化は必要と判断した。だから、終わったら休暇が欲しい」
海賊相手に火事場泥棒も厭わない軍事同盟。
ソラは、ブルーノの判断に満足していた。海賊達から殺しの道具を奪うのは当然の事。だが、それだけでは足りないので、ソラは追加注文を加える事にした。
「休暇と言わず、嫁とアラバスタでの貴族の地位までお約束しますよ、ブルーノ。それと、軍事同盟の者達にも四皇配下の海賊達をその手で殺す機会を与えたい。ドアドアの実で少しずつ、こちらに連れてきて順次処分してください。幹部級でもない限り全方位から六式を使えば殺せるでしょう」
今回の作戦に参加した命を捨ててでも海賊を殺したい5000人の兵士達。やっと鍛えた肉体が使える時だと、歓喜の声が上がる。ブルーノのドアドアの実・・・有能すぎる故に味方であった事をソラは天に感謝する。
ブルーノ嫁候補には、コブラ国王の外交能力の末、様々なタイプの亡国の姫が用意されていた。今現在、炎帝サボのおかげで各地で革命が盛り上がっている。亡国の姫が量産されており、力がある軍事同盟への亡命の話も多い。その中には、エレジアにお住いのアシュラ男爵みたいに左右で髪の色が違う美しい歌姫もいるとかいないとか。
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ソラ達は、ブルーノの能力で鬼ヶ島のある場所まで移動した。そこには、鬼ヶ島が花の都に落ちるのを必死で防ごうとしているピンクの竜・・・光月モモの助が居た。そして、その竜の上には、ソラ以外にも客人がいる。鉄の棍棒を持つ大女であり、”カイドウ”の実の娘であるヤマトだ。
ソラはヤマトを確認してその実力を測る。軽々と持ち上げているように見える鉄の棍棒だが、重量は200kg近い。立ち振る舞いは素人同然だが、肉体スペックはソラ達を上回っている。”カイドウ”の実の娘というだけで、強さは保障されていた。
更に、
「何者だ!! “カイドウ”の手下・・・にしては、違う気がする」
「初めまして、私はネロナ・ソラ。君達と戦いに来たわけではありません・・・海賊を根絶やしに来ました。モモの助君とは、パンクハザードで会った事があります。覚えていますか?」
「同じく、ネロナ・ホタルと申します。お見知りおきを」
「ネフェルタリ・ビビよ」
ヤマトの警戒は薄れない。突然、空間に穴をあけて現れた第三勢力。
敵ならば倒すだけ、味方なら喜ばしい事だと彼女は思っていた。”カイドウ”が根城にするワノ国で海賊を根絶やしに来たなど妄言を吐くのだから、それだけの準備と覚悟と実力が備わっていると判断できる。
ヤマトの実力は、百獣海賊団の大看板と同格以上。その彼女から見ても突然現れた三名は強いと感じられる程。だからこそ、ヤマトはモモの助の判断を待つ。
「おぉ!! ソラではないか。安心しろ、ヤマト。この者達は、味方だ。よもや、このような場所で会えるとは嬉しいぞ。ところで・・・なんでお主達がここにいるのだ?それに、どうやって現れたんだ?」
「仲間の能力で連れてきてもらいました。そちらも忙しいようなので、手短に用件をお伝えいたしますね。我々は、海賊を根絶やしにする為、ここまで来ました。今回のターゲットは四皇”百獣のカイドウ”と
百獣海賊団ではなく、現地に居る海賊全てという事にモモの助は若干引っかかる事があった。だが、今はそんな事を気にしている場合でもない。鬼ヶ島が花の都に墜落してしまっては甚大な被害が出る。彼は、なんとしてでも鬼ヶ島を遠ざけたい。
その為に、ジュクジュクの実の能力まで使い、モモの助は大人の姿になった。結果、カイドウに匹敵するサイズの竜にまでなった。
「まぁ、それは分かった。だが今、回答しないとダメな事なのか?拙者、見ての通り忙しいでござる。できれば、ソラ達にも手伝ってもらいたい。お願いできぬか。お主達の力があれば、打倒カイドウも実現できるであろう?」
「何を言っているんだ、モモの助君!! カイドウは、ルフィが必ず倒してくれる。こんな、ポッと出の奴らに頼むなんて認めないぞ。それに、こいつ等はなんか胡散臭いんだ。僕の勘は当たるんだから」
ソラ達の事を指さして胡散臭いと言うヤマト。
実際、戦い終盤で百獣海賊団が弱った頃に現れた。このままいけば海賊・侍同盟だけの力でカイドウ討伐が実現できるかもしれない矢先に来たのだから、当然の事だ。
「じゃあ、別に構いませんよ。モモの助君に話を持ってきたのは、次期将軍候補筆頭である君に筋を通そうと思ったからです。許可がないなら、勝手に処分して回ります。しかし、モモの助君が正式に許可を出してくれるのならば全ての戦果は君に差し上げます。ワノ国の未来を背負う事になる君が我々軍事同盟と手を組んで海賊を根絶やしにして平和を取り戻したとなれば、国民も安泰でしょう」
モモの助は、どのみち許可有無にかかわらず海賊を殺して回るソラ達を止める事は出来ないと判断した。パンクハザードやドレスローザの一件でソラ達の実力は知っており、その戦力が居れば最悪”麦わらの一味”が敗北しても”カイドウ”を滅ぼせると考えた。
ワノ国の将軍としての決断が求められる。一時の事ではなく、国の未来を見据えた回答。そして、一番利益を生む答えは何か。ワノ国の国民にとって何が喜ばしいかを。
”麦わらの一味”は、”カイドウ”を倒したら次の航海に旅立つ。そうすれば、残されたワノ国はどうなるのか。そこが重要なポイントだ。長く付き合っていくならば誰の手を取るか。四皇カイドウという守りが消えるワノ国、残されている荒れ果てたワノ国の大地、国民すべてを支える事が出来ない桃源農園。
綺麗ごとだけでは、国家は回らない。
「ソラよ。お主達に許可を出したとして、他に何が提供できる?」
「良い考えです、モモの助君。私達からは、ワノ国の土壌改善、飲料水の確保、食料の提供が可能です。モリモリの実とカビカビの実があれば、実現できます。勿論、海賊の根絶やしに率先してご協力いただけるのでしたら、我々も全力で取り組みます。侍の戦闘力は高く評価しております」
どのみち許可の有無に関わらず勝手に行動するのならば、軍事同盟から引き出せるものは引き出そうという大人の考えに至る。モモの助は、身体だけでなく心も大人に成長していた。
「止めるんだ、モモの助君。ルフィなら必ずカイドウを倒す。だから、こんな奴らに許可なんて出すんじゃない」
「ヤマトさんでしたか。カイドウを倒す?面白い冗談ですね。我々は、カイドウを殺しに来たんです。倒すとか甘い事を言ってどうするんですか?強くなって復活してくるなんで御免被ります。さぁ、モモの助君・・・
「ソラ、拙者はお主達の事を信じているぞ。(ルフィ達を含むカイドウ討伐に協力してくれた海賊以外の)海賊を根絶やしにする事を許可する」
選んでも選ばなくても結果は変わらない。ならば、得る物を選ぶのは当然だ。
ソラは、笑顔になる。
「モモの助君。君は悪くない。悪いのは全て海賊です。どうか、貴方はワノ国の行く末だけを気にしてください。ゴミ処理は我々の得意分野です。それと、許可を出した以上、敵対行動は止めてくださいね。我々は共に手を取り合って海賊を滅ぼす仲間なのですから」
ソラは、今の映像を軍事同盟全体に連携させる。そして、モルガンズへのリークとプロによる映像編集した物がワノ国中に放送される。未来のワノ国将軍モモの助が、海賊の根絶やしを実行するため海外勢力である軍事同盟に許可を出したと。更に、綺麗な大地や飲める水源が戻ってくるだけでなく、食料も提供されるとなれば喜ばない民はいない。
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軍事同盟の軍艦の中で静かに時を待っていた男が立ち上がる。
今この瞬間こそ、孫を救える最後のチャンス。近い将来、海軍大将となるのもこれが目的の一つだ。その結果、天竜人の犬に成り下がる事も受け入れる所存だった。それに、天竜人との面倒な事は全てソラとホタルが請け負ってくれる。
海楼石製のメリケンナックルと海楼石製の手錠。
「コビー!! 分かっておるな。儂らがこの船に来た理由。殺す気でやらねば止まらぬぞ。大丈夫じゃ、簡単に死ぬような鍛え方はしとらん。儂も殺す気でやる」
「僕なんかでルフィさんの相手が務まるでしょうか」
自信がないコビー。だが、そのような事では本来の力も発揮できない。
「コビー、お前は儂の弟子だ。未来の海軍を支える希望だ。出来る。やれ!! いいか、ルフィの口から”SWORDの一員だ”という言葉を引き出す事が大事だ。それでも軍事同盟の連中は納得しないだろうが、そこは儂が何とかする」
「そんな無茶苦茶な~」
ガープ中将は、ルフィの経歴ロンダリングを終えていた。海軍に一時入隊して除隊。その上で、SWORDの一員であったという事に仕立て上げていた。後は、本人の口から実は海兵ですと言わせるだけだ。
四皇”カイドウ”を討伐し、四皇”バギー”の討伐に参加させれば今までの問題もギリギリ打ち消せる。
軍事同盟に同行した海軍大将緑牛、中将ガープ、大佐コビーの三名がドアドアの能力を経由して鬼ヶ島に乗り込んだ。