ソラ達はサボテン島の中心に流れる川からウイスキーピークに上陸した。既に生命反応が無い為、無人の町だ。後から来る可能性がある海賊達に残す物資など何もない。武器や重火器の類はすべて回収。金目の物など、何一つ残らない。
ソラの船員達は手際よく物資を集めた。これらの物資は、欲しがる人の元へ手間賃を乗せて売る。安く仕入れて高く売る。これぞ、商売の鉄則。人海戦術のおかげもあり、30分ほどで回収を終えた船は次の町へと出港する。
だが、ソラとホタルのレーダーに生命反応。川から流れてくる人間が一人。今にも死にそうな鼓動であり、何もせずともこのまま海の藻屑となる。船の上から、ホタルが流れてくる者を確認した。
「兄様。女装した変な男性が流れています」
「どうせ、バロックワークスの誰かだろう。イーロン。生存者だ、殺しておいて」
刀を振るうのも面倒だった二人は、海の仕事人であるイーロンにその任を任せる。仕方ないという雰囲気でイーロンが飛び込もうとした瞬間、川を流れる男が覚醒した。
「私は、アラバスタ王国護衛隊長イガラム。通りすがりの者よ、どうか話を聞いてくれ」
必死の形相で商船の側面にへばりついた。残された最後の力をふり絞っての行為。この際、海賊でも悪魔でもいい。今を生き残りアラバスタへの道を開く事こそ、彼の生きる意味。
「で?それが今、何か意味をなすのですか? 我々は航海を急がないといけないのですけど。それとも、我々が貴方を救うメリットを何か提示してくれるんですか?」
「兄様が興味を持つのは珍しいですね。彼も恐らくバロックワークスの一人かと。尋問ならワズキャンを呼びましょうか」
双子の目を見たイガラムは、ぞっとしそうになる。人間を人間と見ていない。アラバスタ王国の護衛隊長といっても、まるで意に介さない。どんな人生を歩んだら、ここまで壊れるのかと思ってしまった。
イガラムは、生き残るため腹をくくる。今が彼の分水嶺。ここで、しがみつかねばアラバスタに生きてたどり着ける可能性は低い。
「アラバスタの
「別に順調に航路を進めば、アラバスタに到着する。アラバスタなら金次第で
イガラム。生存への細い糸を手繰り寄せた。しかし彼は、大事なワンピースをチン質に取られてしまう。そして、ソラと約束する。毎年100名の犯罪者の首を天に捧げると。
◇◆◇◆
ルフィ達の航海は、波乱に満ちている。
その輪に加わるアラバスタの王女であるネフェルタリ・ビビ。彼女は、ルフィ達ならば、アラバスタを救えると本気で思い始めた。だが、ルフィ達を理解し始めたが、彼女でも分からない事がいくつかあった。
「ねぇ、ルフィさん。どうして、Mr.5やMr3達を捕まえて檻に入れているの?彼等は能力者だからあまり意味があるようには思えないけど」
「さぁ、しらね。俺は、ぶっ飛ばすだけでいいと思っているんだが、ナミがな~」
いくら庶民派王女であるビビでも、敵対してきた能力者と同じ船で移動するのが危ない橋だと理解している。彼等には、海軍が懸賞金をかけている。でも、3,000万ベリーの懸賞金のルフィ達が海軍に持っていけるかといえば無理じゃないかと思っていた。
一部の大海賊は、縄張りとして守る代わりに金銭を貢がせるシステムがある。これは、天竜人に収める天上金システムとほぼ同じだ。名前が変わっただけの物だ。大海賊が守るか、海軍が守るかしか違いがない。
ここで、ビビは気が付く。この船ってどうやって運営しているの、と。ビビとカルガモが増えた事で色々な消費が増えた。しかし、この船は略奪行為などは行っていないので、本当にどうやって運営しているのか不思議に思い始めた。
「こら、ルフィ!! こいつらが逃げ出さないように体の半分は海に沈めてなさいって言っているでしょ。こいつらは大事な資金源なんだから。それとも、明日から飯がなくてもいいの?」
「まったく、こえぇぇ。じゃあ、お前等は大人しくしとけよ~」
ビビは、今まで自分を殺しに来ていたバロックワークスのオフィサーエージェント達が生きたまま海水に沈められギリギリで生かされている状況をみて、ルフィ達も海賊だなと理解した。でも、不思議な事じゃない。殺しに来た相手を殺さずにしているのだから、十分優しい。
「ナミさん、その黒電電虫は?」
「そういえば、ビビには教えてなかったよね。とある商船にお取引の電話よ。あっちも
・・・
・・
・
ナミは、ソラ達が同じ航路に来ていたことを黒電電虫経由で知った。あのリトルガーデンを抜けたのかと驚いたが、実際は
ルフィ達とソラ達が会うのは、アラバスタにあるナノハナから少し離れた場所だった。
檻に入れられて海面に常に漬けられていた懸賞金付きのオフィサーエージェント達。ギリギリの食事を与えられたので生き残れていた。そして、オフィサーエージェント達は、ソラ達の手に渡る。
イーロンが彼らを受け取るとソラは、彼らの懸賞金額の
「どうしました?金額は、
「アンタ、何で私達が捕らえた賞金首の合計金額を事前に知っているのよ」
ソラ達にはイガラムという情報源がある。ビビと一緒にバロックワークスに潜入した王国護衛隊長という立派な情報源だ。だが彼は情報をしゃべった後に気力が尽き、怪我の治療のため船医が面倒を見ている。かなりの重症だったので、暫くは眼を覚まさないだろう。
「海賊狩りですから。それに、命を助ける代わりに情報を提供してくれた人もいたので、ある程度は察しています。しかし、少し見ないうちにお仲間が増えたのですね。特に、そのトナカイは素晴らしい」
「えっ!? 俺の事を素晴らしいとか言った? なんだ、褒めても何もでねーぞ。これは、俺が試作したお肌がきれいになる美容液だって」
医療技術を持ち、動物との会話も可能。更には、無限に生え変わる体毛。
「トニートニー・チョッパーさんが、私の船で働いてくれるのなら手伝ってもいいですよ」
「チョッパーは、俺の船の船医だぞ。勝手に引き抜こうとすんな!! ばーか、ばーか」
軽い冗談をいうソラ。だが、この冗談が本当になれば最高だった。結果は、分かっていたのでソラは別に落ち込まない。
しかし、ソラは少ししゃべりすぎた。勘のいいナミは当然気が付く。
「ちょっと待ちなさいよ、なんでアンタがチョッパーの名前を知っているのよ。それに、手伝うって私達が何を抱えているか、まるで知っているみたいじゃない」
「情報提供源がありますから。では、時間も惜しいので商売といきましょう。本日は、何をお求めですか?約束通り、定価で販売しますよ」
訓練用の能力者を破格の値段で、販売してくれたルフィ達に恩返しするのは当然。悪魔に売り払われた能力者は3名と非能力者1名。
彼等は、水平線を背に横一列に並べられた。
「能力を使ったら殺します。逃げようとしても殺します。攻撃しようとしても殺します。動けば殺します。ですが、耐えられたら見逃してあげます」
ホタルが彼らの前に立ち深呼吸し、腕に武装色の覇気を集める。同時に六式の鉄塊を使い腕内部までしっかりと覇気を行き渡らせる。黒い雷鳴がほとばしる。
「良い構えだ。まさか、魚人空手の呑み込みがここまで早いとはな」
「イーロン。ホタルに魚人空手を教えるとか聞いてないよ」
事のヤバさに一番早く気がついたのは、Mr.3。生存本能が人一倍強い彼。能力を駆使して身代わりを作り始めた。本人は溶けた蝋のようになり逃げようとする。だが、最初に警告されたはずだ。
「能力を使いましたね。”五千枚瓦正拳!!”」
拳から発生した衝撃刃が海をモーゼの十戒のように割る。拳を受けたMr.3の肉体は綺麗に首から下が消し飛んだ。何も残っていない。首からはだらだらと血が流れ落ちている。いつまでも残る頭部が、彼が本物であったことを証明していた。
「一瞬能力で硬化したが、ホタルの一撃には耐えられなかったか。イーロン、ワズキャン・・・私は、商談が終わったら試すから一人は残しておいてくださいね。さぁ、何が欲しいのですか?」
「水と食糧、衣服、医療品かしらね。とりあえず、うちの大飯食らい共が二週間食べれるだけは欲しいわね」
適用力の高いナミは、売った海賊達がどのような目にあっても知らない。分かっていて売った。売られた連中もそれなりの事をやっていたのだからと割り切る。これが海賊社会だ。
「承知した。姿を見せていない人の分も含めて、
席を立つソラ。取引成立した物資は、ソラの船員達がルフィの船に積み込む。立ち去るついでに、彼は立ったまま助けてくれと無言で訴えるオフィサーエージェントの首をねじ切った。
火拳のエースには、まだ勝てない。全員で襲っても勝率は5割というレベルを想定しています。