ルッチは、愕然としていた。元・王下七武海という事もあり、仲間内から強者6人を揃えてきた。四方八方からの猛攻で確実にジンベエを削り殺そうとしていた。だが、最後に功を焦ったケイミーが前に出過ぎた。
咄嗟にイーロンが壁となったが、海楼石製のフルアーマーをねじ切りった。その代償に、ジンベエの胸部には、ワズキャンが”手銃”で穴を開け内部から丸焼きにしてトドメを刺す。見事な最後だった。
「おぃおぃ、冗談だろう。イーロンの片腕を持っていきやがった。大至急医療班を呼べ」
「イーロン叔父様!! 御免なさい、私が前に出過ぎたから」
慌てるルッチ達。最後に大きな痛手を残して死んでいったジンベエにワズキャンは敬意を表した。その死に顔は、最後にやってやったぜと言う風であり、軍事同盟の戦力を確実に削いだ。
フルアーマーをパージしたイーロン。ねじ切られた腕を抑えて、痛みを我慢していた。すぐにチユチユの能力で集めた回復力が投与される。痛みが和らぎ少し落ち着くイーロンだが、失った腕は簡単には戻らない・・・普通ならば。
「気にするな、ケイミー」
「でも、叔父様の腕が・・・」
拾われたイーロンの腕。外科手術で接合も可能だろうが、リハビリの年数が相当必要になるだろう。綺麗な切断ではなくねじ切られた事によるダメージは、想像以上だった。しかし、この場に居るワズキャン以外が忘れている事があった。
「ねぇ、イーロンがタスマニアオオガニの魚人なの忘れてない?あれ?見た事なかったけ?昔は、僕やソラ、ホタル相手に組手していた時に腕の一本をもぎ取った事もあるんだけど」
「いや、だからなんだというんだ。仲間の腕が取れたんだぞ!! それでは、まるで生え変わるみたいじゃないか」
ルッチが珍しく声を荒立てる。彼は、仲間の負傷に敏感だ。嘗て、エニエス・ロビーの一件で負傷に対するトラウマがある。
イーロンが、「むむむむ、はぁぁぁぁぁぁ!!」と力むと細い腕が生えた。その神秘の様子に事情を知らない皆は、開いた口が塞がらない。多種多様の魚人が居る中で、再生力を持つ魚人も多く、タコの魚人などが有名だ。悪魔の実の能力なしで、このような事が可能であり、覇権種族と言われる要因だ。そして、ソラが絶対にイーロンを逃がしたく無かったのも、この強さで再生能力もあり、非能力者で海では無敵に近いからだ。
「全く、鍛え直すのにどれだけ掛かると思っとる。まぁ、腕の一本でジンベエを殺せる隙が作れたのなら安いもんだから、気にするな。過去にも、取られた事はある。・・・蟹鍋にして喰うか?」
「はっ!! もしかして、私にも再生能力があればホタルお姉様に食べてもらえるんじゃない。刺身にすれば行けるかも・・・ふふふふ。そうすれば、ホタルお姉さまと一心同体」
ルッチから見ても、手遅れだと感じるくらいの狂気。ケイミーのヤバさは、今まで任務で出会ったどの女よりヤバいと察した。この際、無理を承知でルッチからソラに提案を持っていこうと考えた。ホタルにケイミーを抱かせろと・・・ワンピースを自在に操れるソラならば出来る。ケイミーがホタルの子供を妊娠でもすれば落ち着くだろうと。
手遅れとなった大事な姪っ子を見つめるイーロン。歴戦の戦士でもあるイーロンが泣きそうな顔でワズキャンやルッチ達を見ていた。その顔は、助けてと言っていた。確かに、ジンベエより強敵だなと誰もが思う。
「我々も連名でソラとホタルにも頼んでやる。この状況はまずいからな・・・た、多分大丈夫だろう。魚人達と仲良くする事はソラとホタルにとっても、良い事のはずだ」
「助かる、ルッチ」
いつの日か、覇権種族の天竜人が誕生する可能性が爆誕する。
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その頃、ソラは突然ワープしてきた五老星と一緒に鬼ヶ島を観光していた。立ちふさがる海賊達を殺しながら。五老星の第一の目的は、ロードポーネグリフの回収。そして、第二の目的は、ゴムゴムの実の確保。第三の目的は、カイドウの抹殺。
「サターン聖。あの地上に見える船が我々の旗艦です。倉庫に例の物を収納済みです。中身は、誰にも見られないようにコンテナに入れており、現在隣接させている軍艦に移し替えている途中です。中身を確認次第、船員含め軍艦ごとお持ち帰りください。船員達は軍人の為、パンゲア城にいる兵士のような振舞はできませんのでご容赦ください」
「構わん。現地の兵士には、これから飛び降りて着地する旨を連絡しておけ。他の四人は、残りの人を担当する事になっている」
サターン聖が鬼ヶ島からパラシュートナシのダイブを決行する。実力者である事は雰囲気でわかっていたので、ソラは気にせず地上にいる部隊に連絡した。敵襲だと思って、攻撃をしてしまえば反撃で軍事同盟の兵士が死にかねない。
それから、ソラは五老星達を連れて鬼ヶ島内部で強い反応がある場所に進んでいく。その際、ナス寿郎聖が持っている刀が目に入った。同じく刀を扱うソラとホタル。
「ナス寿郎聖。最上大業物の閻魔、大業物和道一文字を持つロロノア・ゾロに興味はありますか? なぜか”黒足のサンジ”が、軍事同盟の兵士がいる場所に負傷し昏睡状態の彼を置き去りにしていったという情報があります。名刀は、その価値を理解し、実力ある方が保有すべきだと思っております」
「ふん。五老星を顎で使う気か、食えん男だな。行き掛けの駄賃だ。直々に殺してやるから案内しろ」
刀の情報を教えただけで率先して、強敵ロロノア・ゾロを殺してくれるのならばと、ソラは遠慮なく情報提供を始めた。他にもいろいろと厄ネタはある。
「実は、この先にフランキーというサイボーグがおります。彼は、ウォーターセブンの優秀な船大工に代々継承されるPLUTONの設計図を託された男でした。設計図は、燃やされておりますが、サイボーグ故に色々と覚えている可能性も・・・」
「そういうのは、サターン聖の仕事だな。いいだろう、後見人の私が処理しよう。全く、新人の天竜人の癖に、五老星を顎で使うなど前代未聞だぞ。君たちが成果を出していなければ、こんな事はしないからな」
使える戦力は五老星であっても使う。
それに、一対一で戦わせようなんて思っていない。数の暴力で押し潰す。その為、ソラ達も当然参加する。だが、五老星の中では、ソラ達の実力は不透明な事もあるだろう。これから行動を共にするうえでお互いに実力は知っておくべきだ。
「最後に、まだ五老星の皆様に報告していない事があります。ビビとホタルの悪魔の実についてです。これから共に戦う事になる上で、実力を把握されていた方がいいと思っております。ビビ、ホタル・・・」
「出力は5%位に抑えておきますね。”
ピーター聖は、止めろ――――と言った顔をしている。
そんな軽々二つ目の能力を得ましたなんて、驚く他ない。今まで、二つ目の能力は絶対に不可能と言われていた。唯一の例外が、”黒ひげ”だった。しかし、その例外を通常にしてしまう裏技を見つけてしまった、ソラ。
「あ、後で報告書を提出したまえ。君たちの後見人になった事を今日ほど大変だと思ったことはないよ。で、ホタル宮の方も二つ目を手に入れているんだろう?」
「私の方は、ビビに比べれば些細な物ですよ・・・トキトキの実の亜種です。数秒だけ時を止められる。それだけです。ビビのように直接的な攻撃力は皆無ですよ―”ザ・ワールド”!!」
ホタルが誰も認識できない時間の中で、五老星達の胸元にあった万年筆を全て回収する。敵であったら恐ろしい能力だが、味方ならば頼もしい能力だ。インターバルや止められる時間などの詳細は、伏せられた。
介護老人を連れまわす若者の様な構図。ソラ達が先導し、ターゲットがいる場所に進み続ける。ドタドタと大きな足音を立てて接近してくる大男がやってくる。天竜人みたいなカブトムシのような髪型をしたサイボーグ・フランキーその人だった。
「どけどけどけーーー!! 俺は、仲間を探しているんだ。道をあけろーーー!!」
「あれがフランキーです。店長・・・じゃなかった、ピーター聖。最初は、私達にやらせてもらえませんか? 真偽は定かではありませんが、大看板”疫災のクイーン”の実子の可能性があります。いわば、怨敵の子供にして私達が大嫌いな海賊なんです」
五老星達は、フランキーと言う海賊を少し憐れむ。
タイミングが悪いにもほどがある。このメンバーを前にして戦いになるとすれば、それこそ四皇レベルしか残らないからだ。
「あぁ、構わんよ。しかし、野良サイボーグともなれば、ベガパンク送りの刑でも良かったんだがな。好きにしたまえ」
インペルダウン送りの更に上を行く、ベガパンク送り・・・片道切符の地獄行き。世界政府においても、今となっては全容が把握出来なくなってきた場所だ。平和目的と言う免罪符の元で何でもやる集団だ。
金と物資を与える事で、それに見合った成果を出すが、お近づきにはなりたくない筆頭候補。フランキーは、死ねる幸せに感謝すべきだった。ソラ達が海賊を根絶やしにしたいと思う優しい心がなければ、ベガパンク送りにされていたのだから。
麦わらの一味・・・少数精鋭だが、数多いな。