お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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118:黒足

 誰かが絶望した分、誰かが幸せになる。この世にある、幸せと絶望の総量は決まっている。誰かが夢を叶えれば、誰かの夢が潰える。それは、当然の事だ。

 

 一つの海賊団が大きな夢を叶える為に、何年も大航海を続けてきた。その結果、数々の野望と言う夢を潰してきた。その順番が、回ってきたにすぎない。その現実をサンジは知る事になった。

 

「くっそ、どうして誰も出ないんだ。ナミさん、ロビンちゃん、チョッパー、ウソップ、錦えもん!! どうなってやがる。誰かを捕まえて聞くしかねーな」

 

「やばい、逃げろ。あっちには軍事同盟の連中が一小隊いる。なんなんだよ、あいつ等いきなり現れて俺達は何もしてねーだろ」

 

 サンジの前を通りかかった百獣海賊団の者。彼は、仲間を犠牲にして何とか生き延びていた。だが、海賊の数より侍と軍事同盟の方が多くなった鬼ヶ島。大看板でも来ない限り、状況は改善できない。

 

 だが、頼みの綱の大看板も残すは”火災のキング”のみ。ロロノア・ゾロとの戦いで重傷を負っており手負いだ。ルナーリア族は、背中の火がある時はダメージ無効のチート能力が発動する。だが、火が消えているときに負ったダメージは、治療で回復するほかない。

 

 サンジは、潰れたゴールデンボールの痛みに耐えつつ、海賊の首根っこを掴んだ。その青ざめた顔を見た海賊は、サンジの事を逆に心配してしまう。男の大事なところからドバドバと血が流れた痕跡があり、ナニでも噛み切られたのかと勘違いしてしまう程だ。

 

「お前等が知っている情報を教えろ。俺の仲間は、今どこにいる?さっきから呼びかけているが、誰も反応しない。それに、気配も感じられねー」

 

「し、知るかよ!! それより、俺は死にたくねーーんだ。隠れないと殺されちまう。あいつ等、血も涙もねーんだぜ。捕虜になる為に投降した仲間をぶち殺しやがった。助けてくれよ、あんた強いんだろう」

 

 海賊の男がサンジに媚びへつらう。男にすり寄られて気分が最悪のサンジ。女なら大歓迎だが、むさくるしい男海賊なんぞ、早く全滅してしまえとすら思っていた。

 

「俺は、女しか助けねーよ。それより、ナミさんかロビンちゃんの居場所を教えろ。どちらか知ってたら・・・この手を放してやる。知らないなら、軍事同盟にお前を引き渡す」

 

「待ってくれ!! そんな事をしたらてめーも死ぬぞ!! 海賊なんだろう。確かに、女の居場所は知らねーが、侍たちなら軍事同盟の連中に連れられて行ったのを見た。あのクソ強い侍連中だ。その時に、少し聞こえたんだが・・・なんでも、モモの助とかいう奴が軍事同盟と取引をしたらしい。海賊達を根絶やしにする許可が下りたとかなんとか」

 

 この時、サンジの脳内に一つの言葉が浮かんだ。

 

 【裏切り】

 

 

 ワノ国で苦楽を共にし、カイドウとオロチの悪政から解放するため今日この日まで頑張ってきた。それなのに、軍事同盟と手を組んで海賊殲滅ともなれば聞き間違いと信じたくなる。

 

 現状を見る限り、百獣海賊団の話は信憑性があった。軍事同盟の者達は、海賊には血も涙もない対応をしている。だが、カイドウの傘下に加わった侍以外には、紳士の対応だ。治療に加え、支援も的確に行っている。

 

「おかしい。だったら、なぜ俺たちには何もしてこない。あのマリモを預けた時もそうだ。俺に危害を加えるチャンスはいくらでもあったはずだ。いいや、違う!! 俺を尾行しているのか!!??」

 

「頼む。俺も連れてってくれ。同じ海賊のよしみだろう」

 

 サンジの尾行をしていた女軍人。気配を消して、仲間への連絡を密に行う事が仕事。だが、練度が足らずサンジには少し前から気づかれていた。任務を変更し、別の方法で足止めをすることにした。

 

 ”麦わらの一味”の億超え海賊を相手にする事は、軍事同盟のルールで禁止されている。それは、戦うだけ無駄で、戦力を浪費するからだ。だが、手を出さなければ何をやってもいい。

 

「動かないでください、”黒足のサンジ”。一歩でも動けば、私は迷わずこの引き金を引きます」

 

「マジかよ。お前、自分の頭に銃口を向けて何やってんだ!! 死んじまうぞ」

 

 女性に対して、手をあげないサンジ。それを逆手に取り、自らの命を使う事で”黒足のサンジ”を確実に足止めする。場合によっては、このまま殺せる可能性まである究極の方法だ。

 

 だが、下手な覚悟では意味がない。本当に、海賊を殺せるなら自分が死んでも構わないという覚悟を持った軍人でなければならない。見聞色の覇気が使える者ならば、相手の本気などすぐに見破れる。

 

「覚悟決まりすぎてんだろう。わかった。俺は、君の望み通り一歩も動かない。だから話し合おう。何が君をそこまで追い詰めている。俺が、君の代わりに・・・」

 

「私の両親は、インペルダウンから脱獄した死刑囚に殺された。”麦わらのルフィ”が海賊の兄を助け出すために連れ出した海賊の手でな!! 私は生き残ったさ、女だったからな」

 

 サンジは、察した。

 

 サンジ自身は関わっていなかったが、”麦わらのルフィ”が起こしたかつてない大惨事。インペルダウンの死刑囚の大半は、四皇”千両道化のバギー”の元に今もいる者が多い。だが、あのノリに付いていけない連中は、一般人に紛れて今も犯罪を続けている。

 

「あぁ、それはその・・・なんというか、すまねぇ」

 

「堅気には手を出さない海賊みたいな事を言っているくせに、凶悪犯を世に放った。その被害者の事なんて知らぬ存ぜぬとは、海賊はやっぱり海賊だ。この苦しみが、お前達には理解できないだろう。・・・だから、ここでみんな死んで」

 

 海賊を殺したいほど憎い。その感情だけが、彼女の生きる原動力だ。だからこそ、軍事同盟の門を叩き、血のにじむような訓練に耐えた。そして、今回の四皇討伐にも志願した。

 

「俺たちの航海の裏で色々な事があったのは知っていた。見ないようにしてきた事は認める。インペルダウンの脱獄囚が暴れている事も新聞で知ってたが、海軍や軍事同盟に任せればいいやと思った事も事実だ」

 

「だろうね。そういう人の気持ちを踏みにじってきた海賊だから、ここで死ぬんだよ。私の時間稼ぎは、これでおしまい。後は、お願いします。ビビ様、ソラ様、ホタル様」

 

 女軍人が下がると、その場に到着したソラ達とご対面する事になるサンジ。

 

 なぞの老人達も連れているが、全員から半端じゃない重圧を感じサンジは冷や汗を流していた。嘗て、パンクハザードで戦った時とはレベルが違う。お互いに成長したとはいえ、相手も同じ分だけ成長する。

 

 煙草を吸いながら覚悟を決めるサンジ。

 

「出来れば会いたくなかったぜ、ソラ。妹は守っているんだろうな?」

 

「自信をもって当たり前ですと言えたらよかったのですが、ビビに手を出されました。私が知らぬ間にね。しかも、私がいない間に、私のベッドでも楽しんでいたみたいなんですよ。ホタルにお兄様ごめんなさいとかセリフを言わせながら。それを聞いたときは、ビビを本気で殺してやろうと思いましたよ。アラバスタの王女様は、一体どんな教育を受けてきたんですかね」

 

 ビビが無言でソラのすねを蹴る。ホタルが、ソラの脇腹を突いた。

 

「守れてねーじゃん。くっそ~、ビビちゃんとホタルちゃんのにゃんにゃんとか見てみてーよ。で、ナミさんとロビンちゃん。俺の仲間の状況はどうなってる?答え次第じゃ、俺はこの場で命を懸けるぞ」

 

「ルフィ、ゾロ、サンジの三名が無事です。フランキーの脳とブルックはベガパンク送りの刑です。他は、全て殺しました。安心してください。殺す前後に性的暴力を働く事はしていません」

 

 ソラは、この真面目な状況でサンジの為に準備してきた録画を見せつける勇気がなかった。ビビとしらほし姫のプロレス動画・・・出血死させる事が出来る秘密兵器だったが、五老星にもそれを見せるのはちょっといただけなかった。

 

「ははは、そうか。だったら、俺は仲間の為に本気でお前達を倒す」

 

「甘い、甘すぎる。倒す?我々は、【殺す】です。サンジさん、バラティエで食べた貴方の料理はおいしかったです。できれば、コックとして過ごして欲しかった」

 

 

「”悪魔風脚(ディアブルジャンブ)牛すね肉(クロッス)ストライク”!!」

 

「”嵐脚龍断(ろうだん)”」

 

 二人の足技が交差する。骨がきしむ様な威力でメキメキと嫌な音を立てる。遠くで緑の侍の足の骨が砕かれそうになった。対するサンジは、足の骨にヒビが入っている。元々、百獣海賊団との戦いで足にダメージが蓄積されていた事もあり、本気の攻撃にはリスクがある。

 

「やるな。足技で俺と互角かよ」

 

「いいえ、互角ではありませんよ。本来なら私の方は骨が折れそうでした・・・押し付けていなければ私の方がダメージが大きかったです。やはり、”麦わらの一味”の成長速度は異常です。だから、これから集団戦でやらせてもらいます。ビビ、ホタル」

 

「サンジさん。死に際に胸くらいなら触っても許してあげますよ」

 

「兄様が評価する男性ですからね。私も死に際に胸くらいなら許してあげます」

 

「お、俺はそそんな手・・・には、の乗らないぜ(ガクガクブルブル)」

 

 未練を残すと復活してきそうなので、これも作戦のうちだった。大人しく死ぬなら胸くらい触らせてもいいという。大人しく死なないなら、何も得ずに死ぬ。男サンジならどっちを選ぶだろうかという奴だ。

 

・・・

・・

 

 女を死んでも殴らない矜持。実に素晴らしい物だ。その結果、仲間が死ぬ事になっても後悔しないと、サンジはかつて言った。だから、美女二人に前後から刺されつつサンドイッチ状態で死ぬ事になったサンジの顔は安らかだった。




ワノ国編が長くなってきてしまった。


そして、『ONE PIECE FILM ABYSS』という存在しない映画版もそうだが、バギー編どうしようか考え中。
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