お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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119:大剣豪

 海賊達の戦い方で一番多いのは、刀剣の類を使う方法だ。なぜ銃のような兵器を多用しないかと言うと、命中率と弾の問題だ。実際、海軍が使っている銃の命中率は酷い。使用者も承知の上かもしれないが、十発に一度でも的に当たれば御の字と言うレベル。

 

 それ故に、軍艦一隻に匹敵するパシフィスタも、例に漏れず命中率が悪かった。ターゲットを捉えてビームを撃っているのになぜか外れる。頂上戦争において導入されたパシフィスタは、酷い命中率だった。

 

 よって、そんな命中率が悪く、残弾も気にしないといけない兵器なら、刀剣の方が優れているという統計的なデータがある。

 

 軍事同盟でもこの結果を強く受け、対海賊戦において剣術使いとの訓練は必須だった。そこで、ソラが直々に勧誘して、シモツキ村で暮らす剣術道場「一心道場」の師範であるコウシロウを雇い入れた。

 

 先祖の故郷であるワノ国を海賊から取り戻す為、嘗ての教え子であるロロノア・ゾロに引導を渡す為にここまでやってきた。海賊とは、ロマンあふれる男の夢みたいな職業だと、少し前までは思われていた。だが、現実はタダの犯罪者であり、海軍や軍事同盟が根絶やしにしている。

 

 東の海(イーストブルー)の田舎にあるシモツキ村でも徐々に海賊になる現実が浸透してきているが、まだ甘い夢を見ている子供は多い。労働と言う勤勉さから逃れ、好きな事を好きなだけやりたいという危険な思考。そして、大海賊の幹部にして3億を超える懸賞金首ロロノア・ゾロが道場出身者だと分かると、子供達が海賊になる為に剣術を教わりに来る。

 

 剣術を覚えた子供達が海賊になる事は、同時に子供達を屠畜場に送り出すのと同意義。海軍は、逮捕して更生を促す可能性がある。特に子供ならば、未来を考えて更生施設行きだ。だが、軍事同盟は違う。今でも悪なのだからこれ以上悪になる前に殺してしまうという血も涙もない対応をとる。

 

 よって、海賊に憧れる子供なんていたらダメだという意見を持つ大人として、コウシロウは弟子に引導を渡しに来ていた。

 

 軍事同盟からの連絡でコウシロウは、ロロノア・ゾロが居る場所に走る。ワノ国を支配している百獣海賊団を斬り捨てながら、一人、二人と絶命させる。今宵の彼の剣技は、磨きがかかっている。肉体は衰え始めたが、今日ほど絶好調の日はない。

 

 その闘気に当てられ、ゾロは昏睡状態から覚醒する。己に向けられる明確な殺意。名のある剣豪がまだいたのかと。ケガの治療はされておらず絶不調。それに加え、足の骨にヒビが入っており折れる寸前。ぐるぐる巻きにされた包帯から脱出する為に、残っていた力を大きく消費してしまった。

 

「あぁ~くそ。まゆげ、包帯を巻くなら治療もしておけってんだ。どうやら、俺が狙いってわけか。軍事同盟にも骨のある奴が、まだ居たんだな。・・・って、おぃ!! その刀は、俺のだろう。返せよ」

 

 ゾロの手元にあったはずの三本の日本刀。そのうちの一本が奪われていた。奪われた刀は、和道一文字。それがゾロの敵の手に握られている。

 

「ロロノア。君は、大きく強くなった。嘗ての門下生が、今では大海賊の大幹部。私の門下生の中でもそこまで強くなったのは君が初めてだ。だからこそ、私がこの手で君を止めなければならない。海賊に憧れる子供は増やしちゃいけないんだ」

 

「あぁ?誰だよ。門下生って俺のこと・・・を!? 先生!!??」

 

 ワノ国の鬼ヶ島で出会うはずがない師匠との出会いにロロノア・ゾロも混乱する。何かしらの悪魔の実の能力で幻覚を見せられているのか。それならばと、強靭な覇気で催眠を解こうとしたが無駄に終わる。

 

 これは、催眠術とかではなく現実だ。

 

「今の私は、軍事同盟の剣術顧問だ。そして、ロロノアに引導を渡すためにここまで来た。今のロロノアと私の実力差を埋めるために、ソラさんより秘密兵器を預かってきている。満身創痍の君だが、勝てる可能性を高める為ならなんでもする。中身を知っているが、間違いなく効く・・・私だって、脳が焼かれたんだ」

 

「なんだ?封筒に入った手紙か?俺がそんなのを見た程度で力が衰えるとでも思っているのか。なめすぎだ。どっかのコックじゃねーんだぞ」

 

 ゾロは、警戒しつつコウシロウから渡された封筒を開けた。

 

 恐る恐る中身を引き出すと、最初に文字が見える。『私達、結婚しました』というありふれた物だ。だが、ゾロの本能がそれ以上先を見るなと止める。侍としてここで引けば敗北。ブツを引き出すとそこには、スモーカー中将とたしぎ大佐が式場でキスするシーンの写真が入っていた。更には、たしぎのお腹が若干大きくなっており・・・そこに矢印がかかれて『妊娠中。子供の名前はくいな』と、書かれている。

 

 これは夢でも幻でもない現実だ。

 

 ソラが縁のあるスモーカー中将に素晴らしい結婚式を挙げて欲しいと色々手を焼いて準備した。そして、信頼を得たソラが子供の名前を決めさせてもらうまでに至る。なんせ、ビビが渡した薬が原因で出来てしまった関係であり、その感謝の気持ちを込めて名付け親になった経緯があった。

 

 ゾロの中で何かが崩壊する。女なんて、武士道の中では不要だと斬り捨てていた男が、今この写真一枚で心の中の何かが壊れる。足元がふらつき、目の前が真っ暗になる。ただでさえ、体調が悪いこの状況では完全に悪手だ。

 

「ロロノア、君は強い。だが、強いだけでは世の中勝てない事もある。最後に立っていた者が勝者だ。この状況になった時点で勝機はない・・・その証拠に、気が付いていないだろう?」

 

「何をだ!! おれは、まだ負けてもないぞ」

 

 ゾロは、握っている刀の違和感に気が付いていない。既に、刀の一本をコウシロウが持っている。それなのに残り二本が無事なはずはない。敵の獲物を奪うのは、当たり前だ。トンタッタ族の盗みのテクニックは、ルパンにも引けをとらない。実際、ドレスローザでは、五体満足だったゾロから三本の刀を盗んだ手際だ。

 

「私は!! 子供達の未来を守る為、ロロノアを討つ!!」

 

「上等だぁぁ!! 例え、刀が一本なくても二本ある。三本目は奪い返せばいい」

 

 ゾロに残された二本の刀。それは、刀身部分が外され、代わりに竹を刀身に似せ色塗した偽物だ。柄の部分だけが本物だが、気が付いていない。

 

 ゾロの精神が通常状態だったならば、重量の違和感に気が付くだろう。肉体も心もボロボロにされたゾロは、コウシロウが持つ本物の和道一文字しか目に入っていない。まだ、刀が二本手元にあるという錯覚をさせる事が大事だ。手元に何もなければ、落ちている武器を拾うかもしれない。それでは、ダメだ・・・偽物を持たせる事で敵を油断させる。

 

 コウシロウは、軍事同盟の剣術顧問になり覇気を学んだ。顧問でありながら、様々な事を吸収し学ぶ姿勢は素晴らしく。頼れる大人として、軍人たちと成長してきた。

 

 コウシロウは、人生で一番の絶好調。ゾロは、人生で一番の絶不調。実力の差がある二人だったが、この時コウシロウの強さはゾロを上回る。

 

「「奥義!!・・・・」」

 

 弘法筆を選ばずとあるが、限界がある。竹と大業物の切れ味は、ゾロであっても補え切れない差があった。衝突する二人の刀、勝敗は一瞬で決する。

 

 相手を殺すための剣、相手を倒すための剣。その覚悟と武器の差が明白に出る。

 

 コウシロウの胸元に×印の傷が大きく残り血が噴き出す。竹の刀で名刀を相手にここまでのダメージを負わせるゾロの腕前は、世界最強目前だ。だが、ゾロの方はずるりと身体が斜めにずれ落ちる。胴体が真っ二つになる彼の死に様は剣士の最後にふさわしかった。

 

「肉体とメンタルの双方を崩していなければ、死んでいたのは私の方だったかもしれません。剣士の戦いとは、場外戦も含むんですよ。来世では、覚えておいてください。我が弟子よ・・・」

 

 倒れこむコウシロウ。彼が手放した刀を手に取る老人。その老人がゾロの残る二本の刀身を持っていた。誰だかわからないが、ソラの傍にいる老人に対して関わるとろくな事にならないと察して、黙って刀を譲る事にする。

 

 コウシロウは、ゾロが死ぬと同時に近くにワンピースが転がっている不思議な光景を見た。そのワンピースには、ロロノア・ゾロと書かれていた。

 




さて、残るは船長クラスのみ。
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