サンディ島にあるアラバスタ王国。その玄関口に当たるのがナノハナと呼ばれる港町だ。外の海からの玄関口であり、活気に満ちている。ソラ達は上陸を果たしたが、大きな問題があった。
その問題は、アラバスタ王国で発生している内乱よりも、彼等にとって深刻だ。
「儂は、サンディ島には上陸しない。お前等、儂が魚人だと忘れてないか?魚人の儂が砂漠の国で活動できるわけがないだろう」
「困りましたね、兄様。イーロンさんが不在では戦力が減ってしまいます」
海から上がろうとしないイーロン。よほどこの土地が嫌いなんだと理解した。今まではどこに行っても水が潤沢にあり、海もそばにあった。だから、イーロンも気にせず上陸していたが、ここではそうはいかない。
覇気まで使える強大な力を持つ魚人と言えども、砂漠地帯の気候に勝てない。これが現実だった。戦力の分配との事で、船の守りはイーロンとワズキャンに任せて陸に上がる事にしたホタルとソラ。
「分かりました。では、船の守りをお願いします。それと、海軍を見かけたら首の換金を頼みます。お土産は、買って帰ります」
「兄様、参りましょう」
商船の皆は、ソラとホタルを快く送り出した。二人がいない時間・・・息抜きの時間は船員達にも必要だ。多少の羽目を外す程度は、問題ない。ナノハナに上陸した船員達は、英気を養う。買い物など個人的に欲しい物だって彼等にもある。
船に戻ったイーロンは、小さくなるソラとホタルの背を見つめていた。その傍らには、ワズキャンがいた。
「ワズキャン、二人が心配なら付いていけばいいだろうに」
「僕たちより強い二人を心配する必要あるのかな。まぁ、身の心配よりトラブルに首を突っ込まないかという心配だよ」
このアラバスタで起こっている問題を知っている。だが、それでもソラはアラバスタに上陸すると決めた。この地にも確かに海賊はいる。今までとは格が違うとびっきりの海賊・・・王下七武海のクロコダイル。
懸賞金こそ取り消されたが、世界政府の名の元で海賊行為を合法的に行う事が出来る存在だ。海賊行為に違法も合法も存在しない。等しく悪である。
「ワズキャン。一つ賭けてみるか?ソラとホタルがアラバスタの問題に首を突っ込むか、否か」
「イーロン。それって賭けになってるの?じゃあ、僕は、首を突っ込む方に賭けるよ」
それだと賭けが成立しないだろうと笑う二人だった。
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食事というのは各国の食糧事情や歴史が大きく関わる。長い歴史の積み重ねの結果できた料理は、ソラとホタルの胃を満たすのに十分な味だった。飯屋の治安や雰囲気を見る限りでは、比較的平和に見えるアラバスタ。
現国王の治世がその表れに思える。だが、それだけではなかった。このアラバスタ王国には、王下七武海の一人であるクロコダイルがいる。彼が近隣の海賊達を血祭りにしたおかげで、航路から来る海賊達は減る一方。実に良い事だ。
民衆の中では英雄クロコダイルと言われるまでに至ってしまう。その手腕もあり、アラバスタ政府や世界政府、海軍からもクロコダイルへの信頼はあつくなる。アラバスタ王家と双璧をなす程にクロコダイルへの信仰が浸透してしまっていた。
「海から海賊が来ない事で港町だというのに平和ボケしすぎだな。海賊だって来るときは来るというのに」
「兄様。お客様みたいです」
ソラ達が座るテーブルに相席してくる男女のペア。見た目は海賊みたいだが、強面の海軍スモーカー大佐。そして対ゾロ特攻兵器となりつつある、たしぎ曹長だった。彼等はローグタウンでの大失態の後、”麦わらのルフィ”を追いかけてきていた。
「お前達の船が停泊していたから、いるとは思っていた。相席するぞ」
「こんにちは。ソラさん、ホタルさん。お変わりないようで」
スモーカー大佐は能力で店中のタバコの煙を抹消する。取引相手への気配りは忘れない。
この地は、スモーカー大佐が自由に権力行使ができるローグタウンではない。更に、海軍支部もないため、使える伝手は今の彼にとっては大事な物だった。
海軍は、組織で動けるから強い。指揮系統を守る限り、上層部が責任を取って対処してくれる。だが、独断で行動するスモーカー大佐を助ける事は上層部はしない。いざとなれば責任を持たせて切り捨てられる。
「お久しぶりになるのでしょうか?スモーカー大佐。まさか、
「俺を年寄り扱いするな。こんなきな臭い国でお前達は何をやってる?まさか、反乱軍とかいう連中に武器を売りに来たんじゃねーよな」
スモーカー大佐の発言に、ソラとホタルが少しイラっとしてしまう。海賊狩りを知らぬわけではないのに、死の商人扱いとか言い過ぎだ。海の平和の為、仲間を集めて命を懸けてゴミ掃除をしているのに、その発言はいただけない。
「スモーカー大佐!! 麦わらの一件で苛立ちすぎです」
「そうだった。すまねぇな、少し気が立っていた。今度、別の形で詫びをする。ところでだ、”麦わらのルフィ”を見なかったか。3,000万ベリーの賞金首だ」
勿論、ソラ達は知っている。この国にいる事もその理由も。今後の目的もおおよそ知っていた。だから、お世話になった大人に正直に教える事にする。ソラの指先が飯屋の一角にある席を指さした。
そこには、麦わらを被った男が、うめぇーーうめぇーーって言いながら、常人の何倍もの食事を一人で食らいつくしていた。まさに、食べつくし系男子のお手本だ。
「スモーカー大佐。美味しいところだけ奪っていくのは、どうかと思いますよ。私達は、海賊狩りで生計を立てているんです・・・お分かりですよね?貸し一つです。後で、逃げられましたと言っても貸しは貸しですからね」
「いいだろう。たしぎ!! 捕まえるぞ」
まだ食事もしていないのに忙しいスモーカー大佐。ソラとホタルは、ルフィを狙っていたわけではない、本当に偶然同じ店で食事になっただけだ。それを、貸しという形でスモーカー大佐に売った。
ソラは、今この町で彼を捕まえる事は出来ないだろうと分かっていた。ソラのチ〇チ〇レーダーとホタルのムラムラレーダーには、強い反応がある。新世界の4皇幹部級の強い反応だ。
その男は、白ひげ海賊団二番隊隊長”火拳のエース”。
ナノハナを駆け回る”麦わらのルフィ”と海軍達の鬼ごっこは、バロックワークスにも確認されており、クロコダイルの元に情報が伝達される。
◆◇◆◇
ソラは、夕方になりナノハナに停泊しているスモーカー大佐の船にやってきた。その手には、今朝まで生きていた新鮮な賞金首が4つある。商船として活動している以上、仕入れに使うお金は当然必要になる。
それに、幾ら破格の値段で”麦わらのルフィ”達が首を卸してくれるとはいえ、お金がないから買い取れませんでは契約した立場としてよろしくはない。いつでも、必要な時に、必要なお金はあるべきだ。
「4名の首で7050万ベリーをお願いします。スモーカー大佐」
「いつもいつも、バカみたいな額を集めてきやがる。たしぎ、確認して手続きをしてやれ。それと、お前等に確認したい事がある。俺とたしぎ、お前達全員で”火拳のエース”を捕まえられるか?」
「白ひげ海賊団の二番隊隊長である”火拳のエース”。彼の懸賞金は5億5,000万ベリーだった記憶があります。それを、生け捕りにしろというのですか?」
ルフィに逃げられたスモーカー大佐。途中で”火拳のエース”が邪魔に入らなければ、ルフィ達はスモーカー大佐に捕まっていただろう。
このレベルの海賊を狩れば、
「スモーカー大佐。彼等は、一般人・・・じゃありませんでした。一般の海賊狩りなんですよ。大物の海賊を捕らえるのは我々海軍の仕事です」
「たしぎさん、別に構いませんよ。正直にお答えしますと、この場にいる海軍の皆様と兄様含む私達船団員が総力を挙げても生け捕りはできません」
ソラの商船で戦えるのは、ソラ、ホタル、イーロン、ワズキャンの4名くらいだ。この場にいる海軍で戦いになるレベルは、スモーカー大佐とたしぎ曹長の2名程度。1対6と数の上では有利な戦いに思える。
「ホタルの言う通り、
「そうか、変な事を聞いた。気が付いていると思うが、この国は内乱状態だ。それに、きな臭い。特別な用事がなければ、早めに出航しろ」
少し冷静になったスモーカー大佐。流石に、年下の子供に”火拳のエース”を生け捕りにするため、命を懸けろなど言えない。胡散臭さで言えば、ソラとホタルの商船も大概だがなと彼は思っていた。
「
「か弱いって言葉を一度辞書で調べろ。たしぎ、お前が面倒をみてやれ」
海軍に同行させて貰うお礼として、海兵達にお酒と食料を配った。話の分かる海軍と仲良くしておく事は、この世界で生き残る大事な術だ。最終的に海軍か海賊のどちらかを頼らないといけない場合、選ぶのは海軍一択だ。
それに海軍ならば、海賊を根絶やしにしたいと思っている志が高い人もいるだろう。そういった人に勧誘するためにも、お付き合いは大事だ。
ルフィ達とは、別口で行動をします。
スモーカー大佐と一緒が一番!