対能力者特攻兵器である海楼石。海楼石による脱力感は、訓練によってある程度緩和される。だが、能力の無効化という特性は、脅威だ。ルフィが得意の打撃もガープは同等の打撃で応戦可能であり、海楼石製のメリケンナックルの打撃の衝突でルフィの能力が解除される。それだけでルフィは一方的にダメージを負う。
伸びきった腕が突如能力解除され、通常の筋肉に戻る。離れた瞬間に再びゴムの特性を得る。これを繰り返す事で筋肉疲労が蓄積し、いつしか限界を迎える。激痛を堪えて応戦する事になるルフィ。
そこに大将緑牛の能力による攻撃も加わる。伸びきった腕を掴み抑え込む。その上でエネルギーを吸収する。防御と支援に徹した緑牛を倒すのは、大変だ。鬼ヶ島で殺した海賊達から生命エネルギーを吸収して無限に再生する。更には、余剰のエネルギーをガープに譲渡する事で、無尽蔵の覇気が使えてしまう。
ギア4を使用しているルフィでもガープを攻め落とせない。何十年も海軍の英雄として強者と戦い続けてきた経験が、数年程度しか海賊をしていないルーキーに負ける事などない。
「ルフィ!! お前は、やり過ぎた。一端の海賊として、新世界で生涯を終えるならまだよかった。だが、四皇に手をかけワンピースを目指しては、世界政府とてお前を危険視する。諦めろ、そうして海軍に戻ってこい。一言、お前の口からswordの一員だと言えば全てが丸く収まる」
「嫌だよ、爺ちゃん。俺は、ここまで仲間と必死に来たんだ。それに約束したんだ。モモの助とワノ国を救うって」
一国を救う。立派な行いだ。アラバスタを救い、ドレスローザを救い、ワノ国を救う。英雄と呼ばれるに相応しい行いだ。だが、ルフィの立場が海賊である為、海賊同士の縄張り争いに過ぎない。
アラバスタは、クロコダイル。ドレスローザは、ドフラミンゴ。ワノ国はカイドウ。全員、名のある大海賊だ。そもそも海賊なんて者がいなければ誰も不幸にならなかった。不幸になったとしても、確実に海賊が治めるよりマシな結果だっただろう。
「お前の行動は、もう意味をなさない。いい加減にしろ。儂は、お前を失いたくないんじゃ。この数百年の間、どうして世界政府の体制が崩壊していないのかと考えた事があるか? ロックス時代に、儂たちがいたように・・・お前の時代は、天敵となる者が必ず存在している」
「カイドウかシャンクスの事だろう。俺が全員ぶっ飛ばす!!」
ガープも海軍の英雄と呼ばれる前に、世界政府の理不尽な体制に嫌気がさしたことが何度もあった。反旗を翻そうとも考えた事すらある。だが、実際に行う事は無かった。世界経済や世界情勢を考えれば、世界政府という存在は必要不可欠になっている。
世界政府を潰して一番喜ぶのは誰かといえば、犯罪者達だ。
長い目で見れば世界政府は、まだまだ必要な存在。腐った天竜人の数名くらいは闇に葬って問題ないが、政治機能がマヒするのはダメだ。天竜人は馬鹿な連中も多いが、自分たちの地位を確立しつつギリギリの悪事を働く事に関しては天才的な才能を秘めていた。
「ルフィ、目の前の敵ばかりに目を向けていると死ぬぞ。軍事同盟によって、ハンコック、レイリー、黒ひげが既に死んだ。その縁者も全てだ。次のターゲットがカイドウ含む鬼ヶ島にいる
「どういうことだ、爺ちゃん!! モモの助が俺たちを裏切ったっていうのかよ!!」
ガープの右ストレートがルフィをぶっ飛ばす。覇気と海楼石によりゴムの特性が無効化され、ルフィの顎を砕いた。殴り飛ばしたからといって攻撃の手を止めるガープではない。相手が立ち上がるまで待つような紳士的なファイトをしている場面ではなかった。
「そうだ、ルフィ。この荒れ果てたワノ国を再生できるだけの力が軍事同盟にはあった。ワノ国の民の為、軍事同盟の手を取った。国家元首は、国益を最優先に考える。国政とはそういう物だ。思い出せルフィ・・・アラバスタの事、ドレスローザの事を」
「嘘だぁぁぁぁぁ!!」
アラバスタでクロコダイルから国を守った結果、どうなったか。一時は匿ってくれたが海軍が来たため、すぐに国外逃亡する事になった。その後、何の支援もない。
ドレスローザでドフラミンゴから国を守った結果、どうなったか。一時は匿ってくれたが海軍が来たため、すぐに国外逃亡する事になった。その後、何の支援もない。
つまりそういう事だ。便利に使うだけ使って、後は海軍に睨まれると面倒だから早々に出て行ってくれとなる。このまま、カイドウを倒したとしても同じ末路になる。
もちろん、”麦わらの一味”がそれで構わないなら問題でもなんでもない。
「現実を見ろ、ルフィ!! ルフィ、海賊を止めろ。今なら、お前だけは儂が何とか救ってやれる。こう見えて、爺ちゃん英雄じゃからな。それに、下準備も整えた。儂を信じろ!!」
「ふざけんなよ、爺ちゃん。俺の仲間は、簡単にはやられねーぞ。ここまで、何年も一緒にやってきたんだ。負けるはずねーだろ」
ガープは、心を鬼にする。
「たったの二年と数か月じゃろう。その短い期間でよくここまで来たと褒めてやる。だがな、短い。圧倒的に短い付き合いだ。長い人生における二年と数か月だ。やり直せルフィ。儂ならお前に新しい道を用意してやれる」
「爺ちゃん、できねーーよ。それじゃあ、仲間を裏切る事になっちまう。俺は、約束したんだ。あいつらと一緒に・・・」
「ルフィ、お前の仲間は死んだ。海賊だったんじゃ、そういう事もある」
「・・・・えっ、嘘だろう。爺ちゃん。だって、ゾロはすげーーつよいんだぞ。サンジだって、ジンベエだって」
ルフィは知っている。こういう場面で、ガープが冗談なんて言わない事を。だが、今まで苦楽を共にしてきた仲間が簡単に死ぬはずはないという思いもあった。
「死んだ。お前達が乗ってきた海賊船もだ。お前達は海賊なんじゃ。理解しろ。海賊をやるという事はいつ殺されてもおかしくない。今までが異常だったんだ。カイドウに捕まった時、インペルダウンでマゼランの毒にやられた時、クロコダイルにやられた時・・・助かったのは運に恵まれただけじゃ」
「・・・」
何も言えないルフィ。確かに、運に恵まれた。あの時、仲間がいなければ死んでいた時は沢山ある。
「仲間の不幸は、分かる。だが、これが現実だ。ルフィ、お前はあいつらに勝てると100%断言できるのか?お前の後ろにいる者達に」
「・・・ビビ、ソラ。アラバスタの軍事同盟の奴らじゃねーか。海軍じゃねーのか」
ルフィが後ろを向いた瞬間、ガープが海楼石の手錠をかけた。この瞬間を待ってましたと、コビーも足、手など考えられる場所全てに海楼石の手錠をかけた。海楼石製の口枷まで嵌められて雁字搦めにされる。
「ルフィさん、貴方の為です」
「ダメだぜ、俺ら相手に隙を見せるなんて。念のため生命力を吸っておくからな。ガープ中将には、一定以上回復させないように常時養分を吸うように言われてんだ」
緑牛の能力で、ルフィの手の甲に木の根が張った。それは、余剰分の栄養を全て吸収し育つ木だ。無理に引っこ抜けば、身体の神経がズタボロになる。だが、全身麻痺の障害と生涯付き合う覚悟があれば抜ける。
「なんでだよ、何でこんなことをするんだよ。俺たちが何をやったっていうんだ。答えろよ、爺ちゃん」
ルフィの問いにガープは答えない。代わりに、ソラがその場にやってきて代弁する。
「海賊をやっていただろう。お疲れ様です、ガープ中将。残るカイドウですが、ローとキッドが余命を使い切ってから、我々全員で制圧しトドメを刺します。それまで、ルフィは貴方が何もできないように抱きしめていてください。約束通り、私が五老星と調整します。可能な限り、努力しますが・・・覚悟は、しておいてください。良くて幽閉、悪くて処刑。希望するならベガパンク送り刑で記憶と経験の人格リセットも可能かもしれません」
天竜人との面倒ごとを引き受けるソラ。その対象には、五老星も含まれる。ガープは一言ソラに『頼む』と言い残し、ルフィを押さえ続けた。ルフィは、又も運命に助けられたことに気が付いていない。本来、彼もここで死ぬべき人間だった・・・だが生き残った。それだけでも奇跡だ。
ワノ国編終了まで後数話。