124:賢王キャロット
ワノ国では、カイドウ討伐と国土回復を祝福している最中、光月日和が起こした狂気の大事件が発生。その結果、軍事同盟が即刻出航したというニュースに理解が追い付かなかった。
現実は、民衆が理解するより早く事態は動く。驚く民衆がいる最中、軍事同盟は全艦がワノ国を後にする。残された者達は、不幸な行き違いの事故だったというほかない。
そして、今後の方針を決める為、会議に集められた赤鞘達とモモの助、ヤマト、キャロットのメンバー。この失態を埋める為には、恐ろしい労力が必要になる。
だが、このクソ重い会議の中、ヤマトがハキハキと意見する。こういう時、この底抜けの明るさだけは頼りになる。
「簡単じゃないか、僕が軍事同盟で働く代わりに、ワノ国の土壌と水源を元通りにさせればいいんだろう。今追いかければ間に合うだろう」
「ヤマト!! いいか、絶対に・・・あれ? 意外といけるんじゃないか、その案。ソラ達は、今後も海賊達を根絶やしにするんだろう。ヤマトという戦力は、大看板級だ。それに、ワノ国にカイドウの娘がまだいるという事は国民に知らせていない。この状況で、ヤマトの存在は爆弾」
モモの助は、一瞬ヤマトが天才かと思った。
今の今までしれっと、モモの助側にいるがヤマトをワノ国が素直に受け入れるはずもない。カイドウの娘であり、百獣海賊団とは無関係といっても国民感情は受け付けない。それに、このムチムチの身体だ。絶対に、良い物を食わないと育たない・・・つまり、ワノ国の国民が貧困で飢えている時に栄養がある物をたらふく食べていた事になる。
餓死した子供を持つ親、餓死した親を持つ子供・・・今のワノ国には、そのような者達がたくさんいる。その者達から見てヤマトは許せるか? 絶対にNoだ。
赤鞘達は、モモの助を止める為、口を挟む。そして、思っていた事を口にした。モモの助の家臣である錦えもんが矢面に立つ。
「モモの助様!! ご決断をするには早いでござる。それに・・・拙者たちは、そのヤマトという者の事をまだ信用しておらぬでござる。ソラ殿達が、殺していない事から海賊ではなかったのは理解しておりますが、カイドウの娘。この度の戦にて、ヤマトがどのような働きをした? 結果的に、百獣海賊団の誰も殺さず、モモの助様に近づいて生き延びた卑しい女にか見えぬでござる」
「はぁ~~!! 僕がそんな卑しい女に見えるはずないだろう。僕は、ルフィを守る為、カイドウと一戦交えて、モモの助を助けたんだぞ。それに、僕は男だ」
生物学的にどう見ても女。無理だ、不可能だ。今のワノ国でヤマトを受け入れる事など不可能。それに、あのデカパイと服装で男で通るはずがない。
「そうか、すまなかった錦えもん。少し冷静になってきた。日和の一件で国民が動揺している。ここでヤマトの件がばれると、大惨事になる。ヤマトは、暫くこの城から出るでないぞ」
しぶしぶ了承する、ヤマト。
そして、ワノ国の今後を考えた会議は、深夜まで続いた。やはり、鎖国している現状では、この状況は改善しない。国外からの技術や知識を取り込む事で自力で国土を改善するしかないという結論に至る。
その為、どの国と国交を結ぶか。本来なら軍事同盟が理想的だったが、今は無理だ。白羽の矢がたったのが、モコモ公国。理由は、赤鞘に国王が在籍しているからだ。だが、別の問題がある。一国の国王が他国の臣下の一員では、対等の関係ではない。どう見ても属国だ。
モコモ公国の2人の王イヌアラシとネコマムシは、ワノ国では赤鞘として知られている。つまり、彼等が今さら国王であったとなっては関係に支障が生じる。よって、キャロットが新国王として君臨することになった。
突然、流れで国王に指名されたキャロットは困惑する。だが、彼女も覚悟を決めた。
「よし、私に任せて!! 頑張ってみるよ。じゃあ、早速だけど、モモの助君。自力で国土を改善するにしても技術や資源がないよね。外貨を稼ぐ方法ってあるの?ワノ国って独自通貨を使っているでしょう? まずは、外貨がないと人も物も技術も手に入らないよ」
「鬼ヶ島からわずかに回収した物くらいでござる。武器弾薬の類は全て、消えていたでござる。おそらくは、軍事同盟が既に回収していたと思っている。で、お主に何か考えはあるのか?」
キャロットは、外の世界で色々と学んだ。ゾウを出て、ナミやロビンから仕入れた知識を総動員する。そして、一つの最適解にたどり着く。
「あるわ。モコモ公国がワノ国に
「・・・お主、見た目にそぐわぬ
モモの助は、電伝虫でソラ達に連絡する。それは、彼らが国を去って丸一日経過していた。
・・・
・・
・
ソラは、電伝虫を手に取った。
『おや、お早いご連絡ですね。どうされましたか?モモの助君』
『先日の件は、済まなかった。ワノ国としての対応とモコモ公国新国王キャロットがソラと話したいと言っておってな。日和については、難病で長期入院が決まった。死ぬまで治らない難病と医者からも言われたから二度と日を拝む事はない。残された国土改善については、キャロット国王から聞いてくれ』
ソラとしては、国家元首としては落第点だが、妹を大事にする兄としては満点をあげたかった。許すかは別として。また、ソラは非加盟国のモコモ公国などあまり興味はない。正直、どこにある国かもさっぱり理解していない。
『私が、モコモ公国の国王キャロット!! よろしくね』
『こちらこそ、キャロット国王。私は、ネロナ・ソラです』
早く話が終わらないかなと思い、ソラはつまらなさそうにしている。
ソラは、船に乗船している五老星を近くの海軍支部に送り届け、聖地マリージョアに帰ってもらう仕事がある。クソ強い五老星たちを連れまわして、残る四皇潰しに使いたいが、彼等は仕事を終えたら帰るらしいので、仕方がなかった。
『モコモ公国にある赤いポーネグリフと引き換えに、ワノ国再興に力を貸して。できるでしょう?ロビンやナミが、興味を持っていた品だよ。きっと、軍事同盟の人なら欲しいよね?』
『・・・引き受けましょう。ですが、上司と相談が必要なのでお待ちください。後ほど、こちらからおかけいたしますので。どのような支援が必要か、纏めておいてください。漏らさず、正確に』
ロードポーネグリフを取引に、ワノ国の再興。そんな条件を五老星に伝えたら、二つ返事で受け入れる。だが、この事実を面倒だからと隠蔽できるはずもない。
ソラは、旗艦に乗船している五老星に話を持っていく。そして、ピーター聖は、疲れ切った顔をしていた。どうして、次々問題を持ってくると。しかも、断れない内容ばかりで胃痛すら感じ始めている。
考えようによっては、世界政府が探していたロードポーネグリフが一国の復興で手に入るのだから好条件だ。金や物資で解決できる問題なら、世界政府のお手の物。
取引相手にとっても、古臭い石を渡すだけで相手から数百億ベリー相当の支援を引き出せるのならば最高の切り札だ。どの道、石の使い道もわからず興味もない品だ。思い切った行動に出れるキャロットは賢王だ。しかも、ワノ国への貸しとしており、永遠に利子で国が潤う。
ピーター聖がソラに指示した。
「ソラ聖。その件、君の采配で相手の条件を全て飲んで構わない。勿論、君達には残る四皇討伐の仕事があるのは知っている。だから、君が飲んだ条件を全て、我々世界政府が解決させる。その為に、特別な者達を派遣する。あらゆる分野に精通したプロだ。彼らの手にかかれば、土壌、水源だけでなくスマイルの被害者も治療できる・・・ベガパンクのサテライト達だ」
「承知しました。では、ロードポーネグリフの回収は・・・はい、最優先ですよね。分かりました、案内役のキャロット国王に迎えを出します。回収後は、五老星の皆様に軍艦をお渡しいたしますので、聖地マリージョアまでお帰り下さい」
ソラ達は、冷凍保存している死傷者や重傷者を乗せた船も一緒に帰す方向で考えていた。戦える戦力と船が減ってしまう。残る四皇をつ潰すのに些か不安が残るので、チラチラと五老星に目で訴える。
「分かっている、ソラ聖。二つ目のロードポーネグリフが回収できれば、こちらからも戦力を回そう。サテライト達を送るついでに、ロールアウトしたばかりの新型パシフィスタ50体を君の傘下に加える」
「パシフィスタですか・・・ロックオンしているのに、なぜか狙いが外れる高額なオモチャですよね。信用できる戦力なんですか?」
ソラは、軍事同盟でも使用しているパシフィスタの性能を思い出した。攻撃力は確かにあるが、命中精度がクソ過ぎて、雑な攻撃にしか使えない。対海賊船には、それなりに使えるが、色々と問題のある兵器だ。
「・・・・・・わかった。セラフィムも2体つけよう。威権順位3だ」
「今の間がちょっと気になりますが、承知しました」
モコモ公国国王キャロットを迎えに行くペル。空を最速で移動できる彼の能力は、素晴らしい。王となり責務を全うするキャロットの面構えは、相応しい物になっていた。
モコモ公国は、莫大な不労所得を今後ワノ国から得る。
ワノ国は、世界政府から狂気のマッドサイエンティスト・・・サテライト達による土壌、水源改善だけでなく、スマイルの副作用治療も行われる。
世界政府は、ロードポーネグリフを手に入れた。
軍事同盟はパシフィスタとセラフィムという新しい戦力を手に入れた。
ロードポーネグリフを手放す決断力、キャロットは見た目に反して計算高い。その賢王キャロットの提案で、モモの助はヤマトを正妻として娶る事になる。当然経歴は隠して、光月ヤマトとして・・・これで産まれてくる子供は間違いなく強者だ。光月家の体制が崩されることはない。
どうせ、ヤマトがカイドウの娘だと知っているのは、その場にいる赤鞘達くらいだ。百獣海賊団は、全員殺害されており真相を知る者は誰もいない。ワノ国の為、光月家の為という名目でヤマトを納得させていた。
不労所得でモコモ公国を潤すため、ワノ国に潰れてもらっては困るキャロットは、身に着けた知識を大いに活用していた。
次は、ミホーク、ルフィあたりの予定。