128:地獄の始まり
四皇”千両道化のバギー”。彼が根城にしているカライ・バリ島には、新世界で今もロマンに憧れ海賊を続けるろくでなし達が大集結してきていた。集結した海賊達の総数は、7万人に届く。今は亡き四皇”百獣のカイドウ”率いる百獣海賊団を超える世界最強の大海賊団になっていた。
王下七武海がほぼ死に絶え、四皇も半分が死んだ。特に、世界最強の生物として名高い”百獣のカイドウ”の死は、新世界で生きる海賊達にとって衝撃的過ぎた。アレが死ぬことなど誰も想像できないレベルだ。
だが、死んだ。殺された。
新世界に居る海賊達は選択を迫られる。海賊を続けるか、隠居するか。新世界で海賊をやっている連中は、凡そ数千万以上の懸賞金が付けられている。何処に隠れても顔が知られている可能性があり、見つかるのも時間の問題だ。
その結果、新世界の海賊達が身を寄せたのが四皇”千両道化のバギー”の所だ。裏社会から多額の支援もあり、革命軍とも繋がりがある。まさに、海賊達の最後の砦と言うにふさわしかった。
また、四皇”千両道化のバギー”は、同じく四皇”赤髪のシャンクス”とも旧知の仲である事で知られている。つまり、上手くいけば新世界に残る全海賊勢力と軍事同盟の真っ向勝負という構図ができる。これなら海賊勢力にも勝機は十分あった。
バギー自身も己の命が掛かっているため、本気で四皇同士の同盟を望んでおり、シャンクス相手に頭を下げるどころか、靴を舐める覚悟があった。
だが、特使を出したのに四皇”赤髪のシャンクス”の返事は、芳しくなかった。
「なーーーにーーー!!?? シャンクスの野郎が同盟を断っただと!? どうしてだ!! アイツの所は、シャンクスの船以外は碌な戦力がいないはずだ。俺たちからの対等な同盟をどうして断るぅぅぅ!? こちらは七万の兵力に加え、裏社会からの潤沢な資金と革命軍からの技術提供や情報だってあるんだぞ」
「はい。バギー船長は、納得しないだろうと言い。電伝虫を預かってきました・・・直接、話をつけると」
バギーは部下から電伝虫を受け取り、シャンクスの所にかける。
現状はどう考えても海賊に不利だ。各個撃破されている状況であり、軍事同盟のやり方は海軍とは違い殺しが前提である。その為、容赦ない戦い方をしてくる。傘下の海賊や命を守る為にも同盟は決して悪くない。
バギーは、シャンクスと同盟が結成できるのならば、元・四皇”ビッグマム”が保有していたロードポーネグリフを渡してもよいと思っていた。元・ロジャー海賊団の船員である者ならばその価値を理解しているはずだ。ワンピースを目指すものとして、なくてはならない代物。
『お、バギーか。久しぶりだな、そっちは色々と大変そうだと聞いているぞ』
『バッキャロー!! お前は、この状況を本当に分かってんのか!? 王下七武海がほぼ壊滅、四皇も”黒ひげ”と”カイドウ”が死んだんだぞ。あの化け物連中がこうも短期間で!? そして、次は、俺が狙われてんだよ!!』
同じ四皇であるシャンクスとて無関係な話ではない。バギーが死ねば、次はシャンクスの番になる可能性は高い。勿論、その際は軍事同盟も相当疲弊している。立て続けに大物を潰しており物資や兵力も限界近くなっているだろう。
『そうか、大変だな。まぁ、頑張ってくれ』
『おぃおぃ、頑張ってくれってお前の傘下の海賊団は、弱くて有名だろう。だから、こうして声を掛けてんだよ。俺の傘下には、今は7万の兵力がいる。質もまぁまぁだ。俺は、お前の力を高く評価しているんだぜ。だからこそ、対等の同盟を組もうってんだ。勿論、ただじゃねーぞ。ビッグマムが持っていたロードポーネグリフをお前にくれてやる』
ロードポーネグリフなんて代物は、記載されている文字さえ残しておけば不要だ。バギーにとっては既にいらない為、それを餌に四皇が味方に付くのならば安い物だ。
『それなら問題ない。記憶力は、いい方だからな・・・昔、ロジャー海賊団にいた頃に見た物を覚えている。当然、メモだってある。傘下の海賊団は、軍事同盟が四皇を一人落とした段階で、解散させた。今じゃ、懸賞金になっていた奴が俺の船に乗船している程度だ』
『解散させてる?だったら、おかしいぜ。なぜ、黒ひげ、カイドウ、俺、シャンクスの順だ。普通なら、弱い方から潰していく。確かに、お前は強い・・・だが、集団戦をしてくる軍事同盟の精鋭達を纏めて相手にできる程じゃね~はずだ。それに、この状況になっても同盟を頑なに拒む。まさかと思うが、お前は世界政府、軍事同盟と取引・・・』
その瞬間、電伝虫が切られた。
バギーの嫌な予想は、ほぼ核心をついている。当然、今の会話を聞いていたバギーの部下たちも察してしまった。四皇”赤髪のシャンクス”は、世界政府や軍事同盟と密約がある。その為、無傷なんだと。
そんなことは常識的に考えて・・・あり得てしまう。
白ひげ海賊団と海軍の頂上戦争では、シャンクスがカイドウを足止めするファインプレイを行った。他にも、新世界に居たはずのシャンクスがマリンフォードに向かった方法も謎だ。魚人島を経由せずに移動するなど、聖地マリージョアルートしかない。
世界政府が聖地マリージョアルートを四皇に使わせるかと言えばNoだ。
「シャンクスの野郎。海賊の風上にもおけねーだけじゃなく、ロードポーネグリフの情報を全て持ってやがる。ワンピースに王手をかけているのに、何年も動かずこの世界をただ見守っていやがったのか。気に食わねぇ!! 何様なんだよ!!」
「ば、バギー船長!! 軍事同盟の偵察に向かった者からの連絡が途絶えました。おそらく、ココから三日の距離です」
この時、バギーの方針は、決まった。
「俺様を甘く見るなよシャンクス!! てめーが調停者気取りなら、巻き込んでやるぜ。一人勝ちになんて絶対にさせねーーからな。全海賊に告げろ・・・俺たちは、これから四皇”赤髪のシャンクス”がいるエルバフに向かう。同盟を拒否しやがったから、巻き込んでやるぜ。これでお前も死ぬか生きるかだ。俺の悪運が強いか、お前の運命が強いか勝負しようじゃねーか」
「さ、流石バギー船長!! 最高に格好いいです。早速、全軍を移動させる準備をします。今なら、軍事同盟の射程に入る前にギリギリ間に合います」
四皇”千両道化のバギー”。軍事同盟にとっても、シャンクスにとっても一番望まない選択肢を選ぶ。単独で軍事同盟と殺し合いに発展すれば、双方に甚大な被害がでる。
このタイミングでの四皇”千両道化のバギー”の大移動は、軍事同盟にも大きな方針転換が求められる事になる。四皇を各個撃破するスタイルでの行動であり、四皇を二人同時に相手にするだけの余力は今の軍事同盟でも厳しい。
◇◆◇◆
ソラの手元には、四皇”千両道化のバギー”が四皇”赤髪のシャンクス”がいるエルバフに全軍移動しているという情報が入ってきた。その為、ソラは今後の方針を決める必要があった。
四皇同士の同盟が結成されれば脅威だ。シャンクスの実力は、カイドウと真っ向から勝負できるスペック。ワノ国で弱った状態のカイドウではなく、パーフェクト・カイドウと戦える実力者だ。
正直、二人の同盟を相手にしては今の戦力では足りない。だったら答えは簡単だ・・・合流される前に海上で潰す。この世界では、海賊のくせになぜか海戦が苦手な海賊が多い。砲弾は当たらないし、相手の船に乗り込むまでは手の出しようがないというおまけ付きだ。
だが、念には念を入れる事にする。
「イーロン、ケイミー・・・バギーたちの進路にバラムツの魚群を追い込んでくれ。魚人にはわからないだろうが、あの魚に含まれる油は地上で生きる人間には吸収できない。だが、その味は人間にとっても旨い魚だ。7万もの大軍だ。食料消費を抑える為、必ず現地調達する」
「わかった。魚人部隊を連れて魚群を進行方向に追い込もう」
ソラ達は軍艦であり、海賊船より多少足が遅い。シャンクスとの合流を阻止するためにも次なる一手が必要になる。
「いつも通り足止めに行くよ、ペル。逃げ場がない海賊船を地獄に変えてくる」
その夜、ソラとホタルを乗せたペルが四皇”千両道化のバギー”率いる大海賊団の上空を通過した。海賊達は、大量に手に入ったバラムツを酒のつまみにして大宴会。四皇の同盟結成の前祝いをしている。
そして、「ムラムラビーム!!」「チ〇チ〇ビーム!!」という阿保みたいな幻聴を多数の者が聞いた。それからが地獄の始まりだ。四皇の威厳を地に落とすため、映像録画部隊も配置しており、全世界に四皇”千両道化のバギー”率いる大海賊団の醜態が放送される。