悪魔の実の能力は、特性と理解度が大事だとソラは考えていた。一例をあげれば、
つまり、能力者がこうあるべき能力だと自覚し、強く思う事で能力は進化を遂げる。だからソラもホタルもそれを最大限に活用し、能力を次のステージへと進めた。
ソラは能力開発において、極めて高いレベルの才能があった。だからこそ、近い将来に最悪の世代と呼ばれる海賊達の技をオマージュできた。その一つとして、オペオペの実を参考にした、”(ラブホ)ROOM”と”チ〇ブルズ”。そこに新たにワラワラの実を参考にした”チ〇霊箱”が加わった。
ワラワラの実は、ダメージを他人に押し付けることが出来る。実に恐ろしい能力だ。これは、呪いの藁人形的な感じで能力を解釈した結果に誕生した。同じ原理で、集めた
その実証実験に付き合わされるイーロン。
「本当に良いのか?覇気を使ってなくても鼻くらいはへし折れるぞ」
「当然です。どの程度のダメージ量まで一般ごみで耐えられるか検証しておく必要があります」
世の中、怖い者知らずはいる。海軍にエスコートされたソラ達は、安全にレインディナーズを目指して川を上流へと昇っていた。そこに世紀末を連想させそうな砂漠の盗賊団が現れる。水も食料も金もあるが、海軍がいる場所に襲い掛かるとは世も末だ。
海軍もピンからキリまでいるから、盗賊団の行動も分からないでもない。生活が懸かっていて盗賊団も引けなかったのだろう。けれどもスモーカー大佐がいるのに攻めてきたのはご愁傷様としか言いようがない。だが、スモーカー大佐はいい機会だからとソラ達に出番を譲った。ソラという海賊狩りがどれほどの者か、海兵達に教える事にしたのだ。
30人近くいた盗賊団は、僅か数分もせず見るも無残な形にされた。ソラ、ホタル、イーロン、ワズキャン・・・誰も返り血を浴びていない。だが、盗賊達は半殺しにされており完全に戦意がへし折れていた。
「たしぎ、よく見ておけ。これが
「はい、スモーカー大佐」
たしぎが、ソラ達を観察している。
なぜか、イーロンと呼ばれる魚人がソラに対して殺人的な威力の魚人空手を使った。瓦を1000枚近く粉砕しそうな威力がある正拳突きで、魚人の身体能力を考えれば死亡は確定レベル。
だが、死んだのは彼等のそばで半殺しにされていた盗賊団だった。30名もいたのに20名近くが泡を吹いて絶命している。一体、ナニを見せられているのか、たしぎには理解できなかった。
「儂の正拳突きを無防備で食らって無傷とは、凄い能力だな」
「今はダメージだけだが、いずれは悪魔の実の負荷を押し付けられるように鍛えるつもりだ。いずれは、この能力で海を克服する」
人知を超えた悪魔の実の力を見た海兵達。悪魔の実の能力者と戦う無謀さを理解する。
・・・
・・
・
レインディナーズの町は、クロコダイルが治めている。英雄クロコダイルがいる事で住人達は、日々快適な生活を送っていた。水不足にも悩まされない。人が多く集まる事で物流も盛んで商売も繁盛する。何も知らない人達からすれば、クロコダイルが住む場所に足を向けて寝られないといった状態だ。
この町の一番のメインは、カジノだ。
人々に夢を売る場所といえば聞こえがいい。一攫千金を狙えるのは本当だ。それに夢見て、アラバスタ中から人が集まっている。だが、ギャンブルとは胴元が必ず勝つ。その儲けでバロックワークスを運営していた。
「兄様。あまり、ギャンブルで勝ちすぎると目を付けられます」
「そうだった。4負けて6勝つ程度にしておくよ」
見聞色の覇気の訓練もかねて、ブラックジャックで一儲けしていたソラ。相手の心を読んだり、少し先の未来でカードが分かる相手に勝てるのは同じレベルだけだ。ディーラーが許容する範囲でちょっとだけ勝つ風に収めるようにしてた。
ソラとホタルは、他のテーブルでもギャンブルを楽しんだ。適度に負けて適度に勝つ。子供二人がギャンブルで一喜一憂する様子は、ご年配には人気が出ていた。途中で、ギャンブルの極意を教えてやろうとかいう見知らぬ人まで現れてしまう。
そんなお小遣い稼ぎも終わりが近づいてきた。
身に覚えのある反応を捉えたソラとホタル。町中を走り回り、スモーカー大佐に追われるような形でカジノのVIPルームへ案内されていった。そして、地中の方へ落下したと思ったら、反応が消える。
「反応が消えましたね。海にでも落ちたのでしょうか」
「
この線から対能力者用に潤沢な海楼石があるとみて間違いなかった。実際、ソラとホタルのレーダーも海楼石相手には利かない。裏を返せば、反応が消失する場所に海楼石があるとも言い換えられる。
「先ほどちらりと見えましたが、青い髪の女性。彼女がネフェルタリ・ビビ王女ですか。兄様好みの女性ですね」
「そうだよ。彼女の祖先は、世界貴族の中でも特別の一人だ。800年前に世界政府を創設した”20人の王”の一人、ネフェルタリ・D・リリィの子孫。祖先が天竜人になる事を拒んだと言われている」
ホタルは、兄が知るうんちくに興味はあまりない。唯一の肉親が珍しく好みの女性という事を否定しなかった。
「ちなみに、どのようなところが気に入ったのですか?」
「綺麗な顔の下には、敵対者にどこまでも冷酷になれる恐ろしさを秘めている。特に、アラバスタの真実を知った今の彼女が抱える闇は実にいい物だ。内に秘めたクロコダイルへの恨みが伝わってくる」
ホタルは、あぁ、そういう意味かと納得した。類は友を呼ぶではないが、ソラ達の船にはそういう闇を抱えた連中ばかりいる。だからこそ、強い絆がある。
ソラとホタルは、騒動に紛れてカジノの地下へと向かった。
◇◆◇◆
ルフィ達とスモーカー大佐は、海楼石の檻に閉じ込められていた。レインディナーズの町で別れたビビもバロックワークスに捕まり、クロコダイルの前へと連れてこられる。そこでクロコダイルの計画を知る事になった。
馬鹿正直に自分の計画を自慢げに話すクロコダイルは実に滑稽だと、ソラとホタルは気配を消して高みの見物をしていた。だがユートピア計画という壮大な作戦に、長い年月をかけた事は褒められる。
正直に言えば、英雄という立場を上手に使い、ビビ王女と結婚する方向にシフトした方が計画はより早く完結しただろう。クロコダイルとて、この方法は当初検討した。だが、ビビ王女との結婚生活がどうしてもイメージできずに諦めた経緯がある。
すべての作戦を知ったビビ王女。彼女は、椅子に縛られているにも関わらず必死にもがく。
「止めるのよ。止めるのよ。まだ、間に合う。ここから東へまっすぐアルバーナに向かえば・・・!!」
その行動をあざ笑うクロコダイル。
間に合う、向かえば、など全ては希望的観測だ。クロコダイルもそれを分かっている。万が一に備えて、何重にも罠を仕掛けている。だからこそ、王女が苦しむ様を見て笑っていられる。
悪役のお手本のような男であり、ソラは彼に感謝した。人間の負の感情を育てる天才かと。その憎悪が決して自らの喉元に届かないため、幾らでも相手を煽る事が出来る。
クロコダイルは実に楽しそうに、ルフィ達とスモーカー大佐の檻のカギをバナナワニと言われる大型の爬虫類に食わせた。檻のカギを手に入れて仲間を救うか、仲間を見捨てて今すぐ東のアルバーナに向かって反乱を止めるか、と。
国のため、国民のため、仲間のため、必死に頑張ってきたビビ。その全てがクロコダイルという男の手によって崩壊しようとしていた。仲間も、国民も、国も全てが彼女の手から零れ落ちる。
クロコダイルはトドメとして、牢屋がある部屋ごと徐々に水中へと沈める。魚人とは違い、人間は水中では生存できない。恐怖を与えつつ確実に殺すには良い方法だった。
八方ふさがりのビビ王女。何をするにも力が足りない。イガラムがいれば、ペルがいれば・・・たらればでは、何も解決しない。
「この状況を変えられるなら、悪魔にだって魂を売ってやる」
ビビの本音だ。仲間を、国民を、国を救えるのならば差し出せる物は差し出す。覚悟を決めた。
神は見捨てても悪魔は見捨てないとは、世界の真理。
コツンコツンと、階段を降りる音が響く。同じ部屋にいたのに彼等二人に気が付いた者は誰もいなかった。ソラとホタルは、微笑みながらルフィ達とスモーカー大佐、ネフェルタリ・ビビ王女の前に現れた。
「神は見捨てても悪魔は見捨てない。それが、世界の真理です」
「ネフェルタリ・ビビ王女。兄様が言った言葉は覚えていますか?我々海賊狩りは、いつでも仲間を募集しております。平和な海を取り戻す事に興味がありましたら、いつでも我々の門を叩いてください」
最高のタイミングで現れる双子は、悪魔そのものだった。