お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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131:ウン

 ソラ達は、ビビが放った強大な一撃が落ち着いた頃に、ブルーノのドアドアの能力で海賊団の船に潜入を果たす。正面からは、ビビ、ガープ、ミホークの三人。船団の船尾からはソラ達と元・CP9達。正面から挑むのがたった三人だけだが、正面を任せる事に誰も不安に思わなかった。むしろ、邪魔にならないようにしなければとすら思っていた。

 

 世界最強の女、世界最強の老兵、世界最強の剣士。異色の組み合わせだが、敵対する海賊達に取ったら絶望感は凄まじい。

 

 だがここで大きな問題が発生する。海賊船は、悪臭という言葉が生易しいレベルになる程、最悪を極めていた。どのレベルかと言うと、海賊を根絶やしにしたいというソラの心を折るレベルであり、一歩踏み込んだソラがブルーノの異空間に引き籠ったほどだ。

 

 鼻を塞ぎ、嘔吐を我慢して戻ってきたソラを見た軍事同盟の者達は、何事かと驚愕する。まさか、ガス兵器が使われたのかと皆が動揺する。覇気を極め、悪魔の実を覚醒させた男であっても我慢できないのかと。

 

 そして、ソラはパンクハザードで回収した防護服の着用を義務付ける。

 

「海賊船は、過去に類を見ない程の惨状だ。これは、きっと海賊達が我々の襲撃を察知して仕掛けた罠に違いない。・・・やめろ、ルッチ!! 動物系(ゾオン)のお前が防護服なしで一歩踏み込めば死ぬぞ」

 

「俺は、鍛え方が違うからな。そこで見ていろ」

 

 ルッチがブルーノの異空間から一歩外に出た。その瞬間、ソラがドアの締め忘れはダメだと思い、扉を閉じようとしたら鬼の形相でルッチが戻ってきた。鼻を抑えて、吐き気を必死に我慢する様子は、日頃冷静沈着なルッチからは想像もできない。

 

 人獣型になっていたら、ルッチはやばかったかもしれない。それ程までの悪臭だ。

 

 人糞、ゲロ、腸汁に加え色々な液体が垂れ流しの状態の雑魚海賊達が放置されている。そこに海水も加わり生乾きとなる事で世界最悪に近い臭いになっていた。海賊なんて元から不衛生の奴も多い事も合わさり、現場は最悪だ。

 

 この悪臭の中でも動けている海賊達は、丸一日かけて鼻が馬鹿になっている。そして、生死をかけた航海でもある為、脳のリミッターが悪い意味で外れている。

 

「だから言ったでしょう。ヤバいって・・・ビビ達にも念のため、防護服を渡しておきましょう。流石に、バギーの旗艦や主力の海賊船はそこまでではないかもしれませんが、この匂いは酷すぎる」

 

「あぁ、そうだな。おぃ、ブルーノ。次に送り込む時は、もっと綺麗な船にしろ。あの腐った船は、イーロン達に頼んで海中から沈め・・・たら、魚人達に迷惑だからグランドラインで風化するまで漂流させてるように依頼しよう」

 

 この時、ソラは気が付いてしまう。海中から船を沈める作戦を実行すると、この船に満載されている汚物みたいな者達が海に流れ落ちる。そして、海中に居る魚人達に死ぬほど迷惑が掛かってしまう。

 

 それは許される行為なのか、そうでないかと言えば完全にダメだ。逆の立場で言えば、この汚物を頭からかけられて許せるかという事になる。不可能だ。完全に関係に亀裂が入る。

 

「”千両道化のバギー”は、ウン()に見放されないようだな。これだから、ウン()命を味方に付けてる奴は嫌いなんだ」

 

「対動物系(ゾオン)として、これほど有効な攻撃はない。少し侮っていた・・・動物系(ゾオン)は、悪魔の実の能力者でも一番数が多いからな。相手もこちらを研究済みということか」

 

 ソラとルッチの中で、バギーへの評価がうなぎ登りになる。

 

 だが、それであっても殺す。問題となるのは、防護服の数だ。流石に、全船員分は無いため、選ばれた者達だけが突入する事になる。100人分程度しかない防護服。ソラ達を筆頭に、着替えた者達から再突入を果たす。

 

「では、緑牛さん。初手で海賊船を全て連結させてください。木造船の為、モリモリの実の能力範囲内でしょう。”月歩”で海賊船を渡り歩くのもいいですが、面倒ですからね」

 

「まったくしゃーねーな。いいぜ、必要な養分は海賊船にいるゴミ達から強制的に貰うわ!! 大地が無くても海賊船は木造だからな・・・俺って最強じゃねーか」

 

 大将緑牛。彼の言う事にはソラも完全同意する。これほどまでの人材を海軍がスカウトしたのは、素晴らしい。海の上では、弱体化されるかと思われるが海賊船と同化する事で、実質無敵に近くなれる。

 

 海賊船ごと壊せば倒せるだろうが、海の上でそれは自滅を意味する。

 

・・・

・・

 

 軍事同盟と四皇”千両道化のバギー”が開戦した。

 

 バギーとしては、早すぎる開戦。本来ならエルバフに到着して、四皇”赤髪のシャンクス”を強制的に巻き込んで戦う予定だった。それが無理ならば、エルバフにいる巨人達を巻き込んでゲリラ戦も考えていたほどだ。

 

 だが、現実は違った。

 

 部下たちから上がってくる報告の数々。変な防護服に身を包んだ者達が乗り込んできている。「大至急援軍を」とか「海賊船の木々が伸びて船同士が連結されて逃げられない」とか。この逃げ場がない海の上でどうしろという報告ばかりだ。

 

 バギー傘下の海賊でも億超えの海賊は、一定数存在している。当然、そういった者達は今という時にこそ活用すべきだ。バギーが「お前ならできる、期待している」というエールと共に送り出すが誰一人生存報告を寄こさない。

 

「おぃ!! 状況はどうなってやがる!? 流石に一人二人は殺したんだろうな。こっちには、まだ5万を超える兵力がいるんだぞ。武器だって、十分用意してやっただろう。早く状況を連絡しろぉぉ」

 

「ダメです。バギー船長。船団前方より現れたミホーク、ガープ、頭天竜人の誰も止められません。アイツら化け物です。海賊達を虱潰しに皆殺しにしています。海賊船自体は、壊されていないので・・・なんか効率が悪い殺し方をしています」

 

 ミホークとガープは、船を沈めたら誰が賞金首だったか判別が出来なくなるので、しっかりと映像電伝虫で録画してから確実に殺していっている。また、海に居る魚人達への汚物が満載された船を沈めたら迷惑が掛かるからという配慮だ。

 

 だが、ビビは少し違う。懸賞金なんてどうでもいいため、カビカビの能力を最大限利用している。国土汚染すらできる殺人カビ”グリーン・ディ”。それを閉鎖空間で使う事で強靭な覇気使いしか生き残れない。生き残ったら、ビビが直接殺しに行く作業ゲームとなっていた。

 

「バッキャロー!! それでも、殺すんだよ。でなけりゃ俺たちが殺されるって言ってんだろう。使える手はなんでも使え。・・・って、アルビダの奴はどこ行きやがった?さっきから姿が見えねーが」

 

「あれ?バギー船長と一緒にいたんじゃ」

 

 バギーがいた場所から忽然と姿を消していたアルビダ。

 

 四皇となったバギーがいる場所は、安全地帯だったのは過去の話。今では、一番の危険地帯となっている。女の勘で、ここにいると碌な事がないと判断し早々に退散する事を決め込んでいた。

 

 どうやって逃げるかという課題が残る。だが、アルビダには考えもある。彼女は女だ。女だからこそ、出来る方法ってのもある。美貌もある為、それを大いに活用する気でいた。

 

 

◆◇◆◇

 

 ガープは、ソラから伝えられた言葉を心に刻み、一心不乱に海賊達を皆殺しにしていった。

 

 『逃げるやつは皆海賊だ! 逃げないやつはよく訓練された海賊だ!』という、素晴らしい言葉。ガープは、海軍に戻ったら教え子達にもそれを教えるつもりでいる程にこの言葉が気に入っていた。

 

「最近の海賊は、気前がいいの!! こんなので2000万ベリーなんじゃから。脆い、脆すぎる。合計1億8500万ベリーか。まだまだ、足りんぞ」

 

 切断した海賊の首を映像電伝虫に記録させ、しっかりと証拠を残すガープ。彼を止められる程の海賊なんて世界でも数え切れる程しか残っていない。その数える程しかいない海賊の殆どを保有しているのが赤髪海賊団だ。

 

 海賊達にしたら味方の血で全身が真っ赤に染まりつつあるガープは、恐ろしい存在だ。ソラ達から言わせてもらえば、これが本来あるべき海兵の姿だ。

 

 そのガープの元に懸賞金500万ベリーのアルビダがやってきた。海賊船には似合わない美人だが、彼女も経歴だけを見れば凄まじい。だが、ガスマスクを装着しており肉体美でしか容姿を判断できない。

 

「こりゃ、酷い殺し方だね。海軍の英雄ガープも堕ちたね~」

 

「儂は忙しい。要件を言え。10秒時間をやる」

 

 アルビダは、無造作にロードポーネグリフの写しをガープに渡す。その重要性を海軍も把握していると彼女は知っていた。それこそ、海軍中将ともなれば知っていなければおかしい。

 

「ロードポーネグリフの写しか~。へ~、で?」

 

「司法取引さ。そいつの現物がある場所に案内してやる。だから、私を軍事同盟で保護して欲しい。それと、新しい身分もね」

 

 ガープは、血みどろになっているブレードナックルを掃除しながらアルビダの話を聞き流す。その間も、周囲の生存者確認を怠る事はない。油断と言う言葉は、今のガープには存在しない。

 

「で?敵の数と配置は?」

 

「なんだい。ロードポーネグリフだけじゃ足りないってか?いいよ、教えてあげるさ。私を保護してくれたらね。バギーの居場所だって知っている」

 

 ガープが満面の笑みをこぼす。

 

 その顔を防護服のガラス越しにアルビダも確認してしまった。その顔は、狂気に纏った老人の笑顔と言うほかない。女だから配慮される、女だから捕まっても最悪死なない、女だから・・・という淡い希望を持って海兵のガープに取引を持ち掛けたのは彼女の失敗だった。

 

 ガープの覇気を纏った鉄拳がアルビダの腹部を強打した。死なない程度に手加減する事の難しさをガープは理解する。殺す方が何倍も楽だが、今回は情報を言わせる事が大事だ。伝説の海兵ガープ中将による伝説の尋問術が始まった。

 

 アルビダは、バギーを捨てて逃げ出した事でバギーの豪運から見放される。バギーを裏切らなければ、もう少し長くこの世界で過ごせただろう。

 




男女平等の社会っていいよね。
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