海賊達は、目の前の暴力に対して劣勢だった。日頃、自分達こそが暴力装置であり、自由を謳歌する存在だと思っていた。だが、暴力とはより強い暴力によって潰される。
「”指銃”!!」
グチュリ
ソラの指が海賊の頭蓋骨を貫通し脳みそにまで届く。そのまま、指で脳みそをシェイクして殺していた。刀があれば首を落とすのだが、残念だがソラの手元には替えの刀はまだない。
世の中、名刀と言うのはそこらへんに落ちていない。だが、ソラには刀などなくても新しいオモチャがある。エッグヘッドから提供された最新型のパシフィスタマークIII50体とセラフィム2体だ。
パシフィスタマークIIIは、軍人たちの肉壁として便利に活用されていた。極めて高い耐久性に加え、バブルシールドという砲弾すら防ぐ最強の盾。海賊達をパワーで磨り潰すのには役に立っていた。大事な事だが、当たらないビーム兵器の出番はココではない。
「兄様。セラフィムへの命令は私が担当します。S-ホーク、”刀を貸しなさい。貴方は、スパスパの実でも十分戦えます”。S-スネーク、”貴方は、ビビに見つからないように海賊を石にしておきなさい”」
石化された海賊達の使い道は決まっていた。資源を大事にするソラ達は、無駄な事はしない。石化された者達は、事が終わり次第、スパスパの実で使いやすいサイズに切断されて、貧しい人が住む家の建築材料として無償提供される。
S-スネークのメロメロの能力で石にされた者達が戻る事はない。つまり、石材と言う大事な資源を生み出せる貴重な能力だ。ゴミから資材を生み出せる稀有な能力だ。これを有効活用しないなどあり得ない。
ソラとホタルは、セラフィムに関してS-ホークの事だけはビビにも教えていた。だが、S-スネークに関しては流石に教えなかった。理由は、ご想像の通りだ。
「新世界だというのに、顔も名も売れていない海賊は東の海以下とは嘆かわしい。ドンクリークより弱い海賊が多いとはね。海賊とは、船長含む幹部船員以外は、有象無象か」
「兄様の言う通りです。海賊は、勤勉さを嫌い、他者の成果を暴力で略奪したい者達が多くおります。対して、軍人たちは厳しい訓練を生き抜いた者達ですから差は歴然です」
ホタルが刀を振ると彼女を囲んでいた海賊達が海/賊に生まれ変わる。
ソラとホタルを狙っていた海賊達。天竜人でもあり、軍事同盟のトップ。だからこそ、二人さえ確保できれば、この戦争に勝利できる可能性もあった。ソラ、ホタル、S-ホーク、S-スネークの四人を同時に相手にして、援軍が来るまでに対処できれば勝ち筋はあった。
海賊達本人がどう思うかは別として、世間一般的に言えば今日死ぬ彼は幸せだ。
その理由は、一般人が苦悩するような勉学、労働、税金、老後といった悩みから切り離された世界にいるからだ。凡そ、考えられる犯罪行為の全てをやっていた。強盗、略奪、性犯罪、殺人。だが、それだけの事をしても海軍に捕まって死刑になる事は稀だ。つまり、今まで自由に生きてきた連中が、この世の理不尽な事を経験する事なく死ねる。これを幸せと言わずとしてなんと言うのか。
精々苦しんだのは、軍事同盟の連中に怯えた今この瞬間だけだ。
だからといって、インペルダウンのような監獄で拷問を長期間する事も変な話だ。人様の税金で犯罪者を生存させる。更には、脱獄の危険性もある。これ程、処分に困る世界のゴミはないだろう。
「ホタル。愛する
「そうですね、兄様。愛する
普段、自分たちが一方的に暴力で潰してきた民間人の気持ちを初めて理解する海賊達。弱い奴が悪いという事を常日頃から口にしていたが、我が身に降りかかる事で理不尽さを理解する。
◇◆◇◆
世界最強の剣士ジュラキュール・ミホーク。
彼は、片手に天竜人専用の通販雑誌を持ちながら海賊達を切り刻んでいた。初めての子育てであり、何が必要なのか全く分からない彼にとって、非常に悩ましい物だった。
「やはり、学校は必要か。おぃ、お前。子供に学校は必要だと思うか?」
「し、知らねーよ。おれ学校なんて行ってねーからな」
黒刀を首筋に当てられている海賊は、ミホークの質問に答えた。なぜ、戦場で学校の必要性を問うのか海賊には全く理解できなかった。勿論、軍事同盟の者達もミホークが参加している詳しい事情は知らないので、同じ質問をされても全く理解できない。
「なるほど。じゃあ、学校に行かなかったからお前は海賊になったのか」
「いや、関係ねーと思うぞ。学校行っていた奴も、海賊になったやつ見た事あるしな」
ミホークは、考える。
島に残してきた子供達が海賊になった場合、生きられる時間は短いだろう。どう考えても、島は監視されており海賊旗を掲げた瞬間に艦砲射撃の的にされる。軍事同盟のやり方は、この航海でミホークもよく理解した。
だからこそ、子供達には平穏に生きて欲しいとすら思っている。
「次の質問だ。お前が海賊になった理由を教えろ。そして、お前は何があれば海賊にならなかったかもだ」
「嫌な事を我慢してやりたくなかったからに決まってんだろう。金がなけりゃ、奪えばいい。海賊ならそれが出来た。それだけだ」
ミホークの質問に僅かでも寿命を延ばしたい海賊は素直に答えた。だが、海賊になるような連中は、欲望のまま生きたかったなど、真っ当な意見はない。
そこでミホークは、ある事を思い出した。
ソラとホタルの経歴だ。何処に出しても恥じないレベルになっている二人だが、最後は頭天竜人の食い物にされた。だが、考えようによっては、王族と結婚と言うウルトラCをやってのけた。
「これは、困るな。立派に育てても、誰と結婚するかでオチが決まってしまうか。もう、お前から聞きたい事は無くなった。懸賞金は、子供達の教育費として有効活用しよう」
「くたばれミホーク!!」
海賊の首が刎ね飛んだ。
ミホークは、それからも海賊達に問いを投げかけた。そして、海賊達に恐怖を与える。死に際に、世界最強の剣士がリアルパパ活をしており、子育て相談をしていると。嘘をつけば殺され、本当の事を言うと少し寿命が延びる。
そして、集められた情報はミホーク完全パパ活白書として、天竜人の通販サイトに並ぶ事になる。その利益はミホークのパパ活に役立てられる事になる。将来、民間にも普及し可愛い子供を海賊にしないための教科書になるとは、”鷹の目”の異名を持つミホークでも見通せなかった。
・・・
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バギーの元に届けられる悲報の数々。
既にお腹がいっぱいなのに、限界突破していた。四皇”千両道化のバギー”の元に集まってきた者達は、他の四皇大幹部のような圧倒的強者は存在しない。だが、巨人族も在籍しており、新世界でもそれなりに強い連中が多い。
バギーの部下が走って、彼の元に新しい情報を届けに来た。
「大変です、バギー船長!! アルビダさんが、裏切って軍事同盟への投降を目撃した者が!! ですが、投降の結果むなしく、アルビダさんはガープ中将に顔の原型がなくなる程ボコボコにされ、殺された模様です。こちらに向かっているという情報がありSクラスの新巨兵海賊団を向かわせましたが、おそらく長くはもちません」
「あのクソアマぁぁぁぁぁ!! 俺様が不利だと分かると、すぐに裏切りやがった。これだから、女海賊は信用できねーんだ。それで、いつになったら相手の幹部を討ち取ったって報告がはいるんだ」
戦争は数が重要だ。一人の強者でも倒せる数に限りはある。疲弊した所を囲めば倒せない者など存在しない。バギーの考えはまさにそれだ。
「いえ・・・その~相手に移動系の能力者がいるみたいで、一定時間ごとに休憩をとっているようです。軍人たちも同じく、負傷したらすぐに交代要員が何処からか現れているらしく手に負えません。後、新型パシフィスタも多数確認されました」
「くそ!! くそ!! くそぉぉぉぉぉ!!」
全てがうまくいかない。今まで、何となくで全てがうまく絡み合って回っていたバギーにとって、今の現状は何とも言えない。
「それと、ミホークですが・・・なぜか、海賊達に『なぜ海賊になったのか』、『どうすれば海賊にならなかったのか』と聞きながら殺しているようです。後、子供がどうとかいう情報も」
「意味が分からね~。分からな過ぎて逆に怖えーーよ。なんだよ、世界最強の剣士がいつから世界最強のパパになったんだよ。海賊にならない方法? そんなの簡単だ。ワンピースを手に入れる事だ。そう伝えておけ」
海賊達は、ワンピースを目指して海に出る。ならば、ワンピースを手に入れれば必然的に海賊になんてならない。
バギー船長にそろそろ王手を。