お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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133:修羅場

 四皇”千両道化のバギー”の喉元にまで狂気の老兵ガープ中将が迫る最中、最後の四皇も修羅場を迎えていた。その理由は、世界経済新聞で世に広まったファッション海賊”赤髪のシャンクス”という記事が原因だ。

 

 シャンクスが「バギーにけじめを付けに行く」と言い出したが誰も船を出港させない。本来、バギーが知るはずもない情報を知っている事に対してシャンクス自身も不安しかなかった。何処まで知っているのか、何故知っているのか、誰から聞いたのかなど。知りたいことは山ほどある。

 

 だが、とりあえず、バギーを自分の手で殺さない限り不安はぬぐえなかった。シャンクスの中でのバギーの評価は、無駄に幸運に恵まれ、生存本能が高く、生命力がある。つまり、高評価だ。だからこそ、過去にシャンクスも船に誘った経緯もある。考え方次第では、”百獣のカイドウ”より戦いにくい相手だ。実力ではなく、取った行動が結果的に全てバギー自身の良い方向に作用する。それこそバギー自身がラキラキの実の上位互換みたいな存在だ。

 

 一刻も早く不安な目を取り除きたいシャンクスは、必死に仲間を説得する。

 

「なぁ、ベック。言いたい事は分かる。だが、今は一刻を争う。バギーをこの手で殺さなければならない。アイツが持つ情報は、それほどまでに危険なんだ、分かってくれ」

 

「だろうな。だが、落ち着け。俺たちも、色々と聞きたい事があるんだ。シャンクス・・・いいや、シャンクス聖と言った方がいいか。詳しく説明してくれなきゃ、船は出せねーぜ。これは、皆の総意だ」

 

 赤髪海賊団のメンバーも”赤髪のシャンクス”がどういった存在なのか薄々は気が付いていた。

 

 シャンクスの仲間が、その事に最初に気が付いたのは頂上戦争の時だ。カイドウを足止めし、聖地マリージョアルートでのマリンフォード移動。前者はまだしも後者は通常では不可能だ。世界政府が四皇を聖地マリージョアを何もなく通過させるはずもない。

 

 裏取引があったにせよ、その詳細は船員達にも明かされていない。その時から、シャンクスが天竜人という疑惑があった。だが、天竜人の権限がはく奪されて一般人になる事例など考えられなかった。ソラとホタルという実例が表世界に現れるまでは・・・。

 

「落ち着けよ、ベック。俺は、ロジャー海賊団に幼少期からいたんだぞ。そんなはずないだろう」

 

「そうだな。だが、幼少期に天竜人の地位をはく奪され、返り咲いた者達(ソラ、ホタル)もいた。過去の身分がどうなど、意味はない」

 

 シャンクスも流石に説明に詰まる。

 

 地に落ちた天竜人が返り咲いたソラとホタルという実例が存在している。その上でシャンクスを取り巻く状況、世界経済新聞の情報をつなぎ合わせれば誰でも検討は付く。さらに言えば、軍事同盟が赤髪海賊団を後回しにしている事もあり、シャンクスの状況は世界政府の上層部と何らかの深いつながりが存在している事を示していた。

 

 

 

 この時、赤髪海賊団の誰も気付けていないが、この状況もバギーの豪運により導かれていた。

 

 バギーの目的は赤髪海賊団を軍事同盟との戦いに巻き込むことだ。だが、シャンクスはバギーの味方ではない。万が一、バギーの思惑が実現してしまえば、バギーの首をもって落とし前を付ける。そして、「この戦争を終わらせる」とかいう展開まであった。

 

 赤髪海賊団の内輪揉めにより、バギーの寿命は確実に数時間長くなった。

 

◆◇◆◇

 

 死体、死体、死体・・・・。どこを見渡しても海賊の死体ばかり。その死体に腰を掛けて休憩するガープ中将。彼が待っているのは、ブルーノのお迎えだ。

 

 圧倒的な強者であっても、疲労は避けられない。定期的に休憩、食事、治療が必要だ。それに、潰した海賊船から物資を回収する軍事同盟の部隊も同時に送り込まれる。海賊の見落としはないか、殺しそびれはないか、徹底した確認作業が行われる。

 

 ガープは、電伝虫で確認を入れる。軍事同盟が用意したガープ専用の通信兵が対応する。

 

『今の合計は、幾らじゃ?』

 

『15億2500万ベリーです。ご参考までに、ミホークさんの合計獲得金額は、9億4200万ベリーになります。後、手頃な賞金額は、まだ沢山おりますので期待しております』

 

 数時間の稼ぎとしては、誰もが耳を疑う金額だ。この場に、新世界のゴミ達が集まっていたことで実現できた。ガープも少し前までは海賊の事を悪い人間だと思っていたが、今では金額でしか数えなくなっていた。

 

 人は、ある境を超えたら壊れる。孫息子を救うため、ガープの倫理観は完全崩壊した。だが、その姿にソラとホタルは賞賛する。若い海兵にも見習って欲しい。これこそ海兵が海賊を潰す理想の姿だ。

 

 誰も海賊の生け捕りなど望んでいない。海賊なんて死ね。できれば、苦しんで死ね。生きている事すら不愉快。同じ空気を吸う事すら嫌だ。という、海兵時代に市民から上がってきた要望の数々をガープは思い出す。

 

 当時は、それでもインペルダウンで苦しめた方がいいだろうという考えだった。彼の孫息子も海賊であるため、万が一の場合もありその主張に乗っかっていた。

 

『無論じゃ。15分の休息後、バギーを殺しに行く。儂一人で殺しに行きたいが、そういう考えがダメだと理解しとる。そのような行動をすると、なぜかこちらに不都合が起こって取り逃がす事になる。だから、ミホークとビビも連れて三人で殺す。賞金は、儂が4、ミホークが3、ビビが3の割合じゃ。居場所の提供者が儂だから多少多く貰うぞ』

 

『ガープ中将。このような事態に備えて、ソラ聖から金より海賊の命を多く狩り取って欲しいとの事で、懸賞金を辞退する旨の連絡を受けております。その為、ビビ様の分はお二人に等分してお分けいたします。ミホーク様とビビ様にもご連絡を入れますので、ブルーノ様の異空間で少しお待ちください』

 

 ガープは、かつての教え子であるソラとホタルの成長に感心する。人が望む物を望むだけ与え、気持ちよく仕事ができる環境を用意する事に全力投球する姿勢。ガープ本人も完全に二人に乗せられている自覚はあった。

 

『出来過ぎた教え子じゃな。ソラとホタルに伝えておけ、海賊は必ず皆殺しにするとな』

 

『伝言を承りました。ご武運をガープ中将。我々、軍事同盟の者達は、一日でも早い海賊の根絶を望んでおります』

 

 軍事同盟の筋金入りの海賊嫌いは本物だと電伝虫越しでもガープに伝わる。

 

 ガープの近くにブルーノの異空間の扉が開く。その扉の先には、専門のスタッフが待っておりガープから武器や防護服を預かる。そして、簡易シャワーを浴びて疲労を回復させるマッサージまで行われる。

 

・・・

・・

 

 軍事同盟と開戦し数時間が経過したバギー。彼が抱えていた兵力は既に2万人を下回る。当然、海賊の数が減っても軍事同盟の特記戦力たちが誰も潰れていない為、これから加速度的に海賊達が不利になる。

 

 逃げ出す場所もない海の上であり、この殲滅速度が続くとエルバフに着く前に確実に四皇”千両道化のバギー”はこの世からいなくなる。

 

「どうしてこうなった!! 俺はただ、海賊をやっていただけじゃねーか。村を襲い、金品を巻き上げ、暴行、殺人、人身売買、テロ行為、反政府組織への悪事指導・・・どれも海賊なら当たり前じゃねーか。それなのに、ここまで徹底的に殺すことはねーーだろ」

 

「控え目にいってバギー船長、残当ではないでしょうか? 革命軍や反政府組織への支援要請は全て断られました。むしろ、最後まで抵抗して可能な限り軍事同盟を疲弊させて欲しいとの事です」

 

 海賊派遣業では、散々世話をした連中がバギーの危機となると掌返し。一瞬にして、離れていく。これが世の理だ。

 

 そんなバギーにも仲間はいた。東の海から一緒に付いてきたモージとカバジだ。新世界に入り、この二人も成長を遂げ覇気を扱えるレベルにまでなった。それこそ、ココヤシ村に居たアーロン一味の海賊レベルとなら良い勝負ができるだろう。

 

「あの野郎どもぉぉぉ!! あれだけうまい汁を吸わせてやったのに、俺のピンチには助けにこねぇぇってのか。後で覚えてやがれ。ここを乗り切ったら、絶対に復讐してやる」

 

 その時、バギーの生存本能が警告音を発する。警報レベルは最大。嫌な予感がした方角をバギーが確認すると何もないはずの場所に謎の穴が開いていた。その向こうから何食わぬ顔で四皇”千両道化のバギー”がいる最深部に足を踏み込む化け物たち。

 

「なんじゃ、ゴミが数人程度しかおらんな。しかし、革命軍とも繋がりがあったとはな。儂の息子が世話になっているようだし、追加で情報を吐かせて殺してやる」

 

「止めておけ。こういう輩は、長生きをさせるとろくなことにならん。俺に斬らせろ。頂上戦争では斬り損ねたからな」

 

「これが、ソラとホタルがローグタウンで取り逃がした海賊なんですか。・・・本当に、この程度のレベルで何で生き残っているのか、謎です。安心してください、しっかり殺しますから」

 

 バギーの目の前に集う世界最高峰の個人戦力。

 

 頭天竜人と呼び声の高い伝説のスーパーアラバスタ人のネフェルタリ・ビビ。

 

 伝説の海兵にして、息子は革命軍の総司令官、孫息子は海賊歴二年程度で四皇になりかけた大海賊を持つ、モンキー・D・ガープ。

 

 世界最強の剣士にて、無自覚の光源氏計画遂行中のジュラキュール・ミホーク。

 

 この三人を同時に相手にして勝利する事が出来れば、バギーが海賊王内定でも誰も文句は言わない。

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