「バラバラ緊急脱出!! バラバラ緊急脱出!! バラバラ・・・」
豪運だけで四皇にのし上がったバギーだったが、年貢の納め時が来ていた。ミホークの斬撃だけならば、肉体をバラバラにする事でギリギリ回避できる。だが、肉体をバラバラにしてもそれを結合させる時間を与えられなければジリ貧で負ける。
能力には、限界が存在する。特に未覚醒の能力者であるバギーでは、肉体を分割できる数も多くはない。それなのに、ミホークの斬撃を回避する方法にビビは若干驚いていた。世界一の剣豪の斬撃を見てから回避しているだけでも実はすごい事だ。
「へぇ~。でも、ミホークさん。遊ばないでいただけますか?事前に、お伝えしておりましたよね?バラバラの実の能力は足を起点にしていると。足だけは、地に付けていないと能力が発動できないんです」
「分かっている。だが、剣士としての矜持が・・・」
何としても斬り殺したいミホークだった。だが、相性という物がある。覇気がこもった剣技だから、当たればバギーを即死させられるだろう。それが当たらないのであれば無意味。
「や、やめてくれ~!! 海賊を止める、止めるから!! なんでもする!! なんなら、お前達の下で働いたっていい。俺はこう見えて、大体なんでもそつなくこなせるぞ」
「じゃあ、儂の孫の為に死ね」
ガープがバギーの弱点である足に海楼石製のナイフを突き立てようとした。だが、それで殺してしまっては、ミホークに遺恨が残ってしまう。世界最強の剣士がバギーを斬り殺せなかった。
そういった思いを解消する為、ビビは折衷案を用意していた。
「こんな事もあろうかと、ソラから対バギー用の戦力を預かってきております。安心してください。ミホークさんの斬り殺したい要望とガープ中将のバギーを殺したい要望の双方を叶えてくれる・・・レオさん。出番ですよ」
「分かったのれす!!」
あらゆる物を縫い付ける能力であるヌイヌイの実の能力者であるレオ。トンタッタ族の立派な戦士だ。トンタッタ族は、まさに縁の下の力持ち。対海賊戦においても、その身軽さから潜入任務だけでなく、暗殺にも適している。
この小さい身体で人間と同レベル以上の身体能力、覇気。更には、悪魔の実の能力まである。下手をすればビビでも後れを取る。トンタッタ族が善性だった事にソラも本当に救われた。彼等の中に悪の心を持つ者がいたら、族滅も視野に入れる必要があった。
レオがバラバラになっているバギーを繋ぎ合わせる。能力の相性の問題から、縫い付けられた部位を更に分解する事はできない。能力の練度の差もあり、海楼石なしでバギーの能力は完全に封じられる。
「・・・軍事同盟は、本当に何でもありだな」
「ミホークさん。相手の能力に応じた対抗策を準備するのは当然です。だから、貴方もソラの罠に嵌められて無自覚の光源氏計画をさせられているんです。戦いとは、始まった時点で既に8割がた勝敗は決まっています。イレギュラーさえなければ10割勝ちますよ」
ビビの言葉に、ミホークは納得するしかなかった。
罠にはまっているのを理解しているが、罠から抜け出せない。そして、その罠も甘い罠だ。人が望む願望を全て叶えて、堕落した人生を送らせるような最悪極まりない罠。しかも、それを悪くないと思わせてしまう。
「そうだったな。バギー、頂上戦争の時に殺し損ねた。我々の未来のために、ここで死ね」
「くそがぁぁぁ、海賊がそんなに悪いってのか。俺たちのような、世間からはじき出された連中はどうやって暮らせっていうんだ」
バギーが最後の戯言を言う。
真っ当に働いてお金を稼ぐことを諦め、楽な方に進んだ。その結果がこれだ。
「じゃあ、私は今後そういう風な者達を強制労働するシステムを作ります。”インスタンス・ドミネーション”で世間からはじき出した犯罪者や予備軍含めてを強制労働させます。これで安心ですね。なかなか、良いアイディアをくれますね」
「海軍にも協力させる。犯罪者や予備軍は、寄生カビで強制労働させてやる。で、他に言う事は?細かい事は、ソラに任せればいい。奴は、こういうのが大好きだ。天竜人の権力とは、こういう時にこそ大きく活用すべきだ」
身の上を語っただけのバギーだった。だが、そこからヒントを得て、このような連中を根本から潰す政策を考え実行するだけの武力と権力と財力を有する化け物がそこにはいた。今でこそ、海賊は即時殺されるが、その発生を未然に防ぐ事も視野に入れられる。
「ガープ、てめぇ!! 人の心とかないんか。俺たち海賊だって同じ人間だぞ」
「過去ならいざ知らず、今の儂はお前等海賊なんぞ同じ人間とは思ってない。孫との第二の人生を送る為の年金程度にしか思ってない」
破天荒だが一定の常識があったガープが完全に壊れている。バギーでもそう感じる程に壊れてしまっていた。だが、壊れた原因は海賊だ。この狂気に堕ちた老人・・・それを先導したのが”海賊狩りの女王”と名高いネフェルタリ・ビビ。
バギーは、この場に居るビビをみて心底恐怖する。表舞台に登場して僅か二年程度で世界をひっくり返した女。武力、権力、財力の全てを持つ完璧だった・・・性癖以外は。
その時、ビビは思い出したかのようにガープにある事を伝える。
「ガープ中将。頭部を破壊しないでください。彼の背後に居た犯罪組織の連中や革命軍の情報をベガパンクさんが脳から吸い出してくれるみたいなので。本当に、科学ってすごいですよね。アラバスタにも彼等をご招待したいですよ」
「・・・止めておけ。あいつらは、エッグヘッドで好きな研究を好きなだけやらしておく事こそ世界平和に繋がる。ワノ国への出張など五老星どもがよく認めたなと本気で思っとるぞ」
狂気のマッドサイエンティスト・・・通称MADSの名に恥じない連中は、ガープですら警戒する。これから、セラフィム製造でお世話になるのだが、正直関わりたくないのが彼の本音でもある。
「そうですか。そこらへんは、ソラとホタルに相談して決めます。・・・じゃあ、殺しちゃいましょうか。ちょうど、別部隊もロードポーネグリフの確保も終わったみたいですから。”千両道化のバギー”、運も実力のうちですが鍛えなさすぎです。バギー弾程度で死ぬような軟弱者はココにはいませんよ」
「はぁ~、思い起こせば東の海で麦わらに出会った時から俺の運命は狂ったんだ。だが、存外楽しい人生だったぜ。だがな、ワンピースがある限り海賊の夢は!! ロマンは!! 決して終わらねーー」
嘗て海賊王がワンピースを世界に示したように、今後の世界ではビビが世界にワンピースを示す。それで時代が塗り替わり、いつしかロジャーのワンピースは忘れ去られる。誰もワンピースが何なのか知らない、よってワンピースがナニであっても問題ではない。
「遺言は、聞いた。あの世で、他の者達にもよろしく伝えろ」
「嫌だね、ミホーク。お前が来た時に告げやがれ」
黒刀がバギーの首を切断する。本来、バラバラの実で回避可能だが、ヌイヌイの実の能力で回避不能にされていた。刎ねられた首からは、血が噴水のように吹き出す。その首をビビが拾い上げ、映像電伝虫に見せつける。
四皇”千両道化のバギー”最後の姿。これで三人目の四皇が死んだ。命を賭けて夢やロマンを追いかける連中でも、流石にこれには恐怖しかない。一回の遠征で四皇をほぼ壊滅させるだけの戦力を有する軍事同盟。彼等が今後も海賊を根絶やしにすると宣言をしている。
山奥に隠れても、便所に隠れても、何処に居ても必ず見つけ出して殺す。
バギー傘下の海賊達もそのニュースを耳にして絶望する。唯一の希望であったバギーの死。四皇という立場への信頼感は絶対的であり神聖視すらされていた。だが、あっけなく死んだ。
この場にいた海賊達は、バギー船長ならきっと何とかしてくれるという謎の信頼感があった。今までもそうだったように、これからもそうだと信じている。海賊達は、現実を知る。ガープ、ミホーク、ビビと言う世界でも10本の指に入る化け物たちによる蹂躙がどのような物かを。
◇◆◇◆
”赤髪海賊団”・・・半壊。半壊で済んだのが奇跡のレベルだった。四皇”千両道化のバギー”の死亡放送がなされている最中、最後の四皇である”赤髪のシャンクス”もこれからの時代に備える必要がある。
シャンクスとベックの物理的な話し合いの結果・・・見事、ベックを半殺しにしてシャンクスの説得で皆が和解する。
「皆も薄々気が付いていると思う。略奪も行わず、上納金も受け取らず、堅気の者達に被害を出さない弱小海賊団を傘下にしていた。だというのに、なぜ今まで航海を続けられたのか。我々には、スポンサーがいる」
シャンクスが神妙な顔つきで皆に言う。
悪事を働かず数十人規模以上の海賊団を何年も維持してきた。金銭が生じる労働は全くしていないのに、町の酒場では金銭を支払い、積み荷も金銭で購入。何処にその金があったのか、誰もが疑問だった。
世の中にある海賊の宝だって限界がある。既に取りつくされている。
赤髪海賊団員達も察する。しっかりと配られる給料。だが、出所は船長の財布からという謎の事態。いつしか、誰も突っ込まなくなった。航海して、飯も食えて、満足感まであれば、誰だって細かい事は気にしなくなる。それが海賊ってやつだ。
「船長!! やっぱり、天竜人だったんですか?」
「やっぱりって・・・。そうでなければ、色々と辻褄が合わないだろう。世界政府からも間もなく正式に発表される事になっている。黒ひげ、カイドウ、バギー。王下七武海のほぼ全てが殺された。俺は、お前達に死んで欲しくはない」
仲間に死んで欲しくないというのは、シャンクスの本音だ。
本気で軍事同盟と殺し合えば、主戦力の半数を道連れにして大損害を与える事は出来るだろう。だが、決して勝利する事は出来ない。軍事同盟は、対海賊殺害に特化した集団だ。痛み分けにできたとしても、海軍や神の騎士団といった後詰め戦力もある。
四皇が手を組んでいない時点で、勝ち目など最初からない。
シャンクスを海賊王にしたいという思いが船員には、あった。だが、それを本人が望んでおらず、ファッション海賊をしていた。その証拠に、ロードポーネグリフの中身も記憶しているにも関わらず、王手をかけずに何年ものらりくらりしていた。
「船を降りたい奴は、降りて構わない」
これをもって赤髪海賊団の解散の合図となった。シャンクスは最後に大事な事を付け加える。今後も海賊を続けるなら、助命はできないと。
そして、人々は知る事になる。全ては天竜人の手のひらで踊らされていた事を。海賊、軍事同盟、海軍の重要ポジションの全てに彼等の手が伸びている。数百年の間、世界を牛耳っている者達がどれほど強大なものかを認識する。
大海賊時代の終焉が告げられた。
バギー編もおしまい!!
そして、エピローグへ・・・と思っています。