お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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14:三つの願い

 クロコダイルの策略に乗せられ術中にはまり、手詰まり感が漂うところに助けの船として現れたソラとホタル。ここは歓喜の声を上げるべき場面のはずだが、思いのほか静まり返っていた。

 

 ソラは、ここで己の行いを振り返ってみた。よもや、黒幕だと疑われていたのではないかという不安。どこにでもいる可愛らしい双子の子供が黒幕など、あろうはずがない。今まで、陰ながらルフィ達をサポートしていたつもりでいるソラ。

 

 商人として、金と物資の都合をしていた。海賊にとっては、ありがたい存在だったはずだ。例え、ワンピースがチン質であったとしても。

 

 今も沈みゆくこの部屋の寿命は長くはない。あまり水中につかると、ソラとホタルでもどうしようもなくなる。そう、悠長な時間はビビだけでなく彼らにもない。

 

「おい、ふざけんな!!ビビは、俺達の仲間だぞ」

 

「そうよ。ビビが断れないタイミングでその選択を迫るのは、酷すぎるわ。でも、私達は助けてね。お金なら、なんとか払うから」

 

 ルフィとナミが精一杯の反論を行う。この状況をなんとかしない限り、クロコダイルを止められないのも事実。今この状況を変えられるのは、覚悟が決まったビビだけだ。彼女が、一言仲間になるといえば、全てが丸く収まる。

 

「貴方達の失態に付け込むような形になったのは、申し訳ないと思っています。ですが、私達ならば貴方達を助ける事ができる。口ではなんとでも言える。だから、私は行動で示す。どんな願いでも三つ叶えてみせます。全ての願いが叶えば、貴方が我々の仲間になる。これでどうですか?」

 

「本当にどんな願いでも叶えてくれるの?願いを叶えてもらっても仲間にならないかもしれないのよ」

 

 ビビは、ルフィ達の仲間だ。強い絆が確かにある。別に強い絆がもう一つあっても良い。ルフィの仲間でありつつ、ソラ達の仲間であっても問題はなかった。

 

「どんな願いでも叶えてみせます。それに、”麦わらのルフィ”の仲間であっても構いませんよ。我々の仲間にもなっていただければ十分です。貴方には、素晴らしい才能がある。それは、『王の資質』と呼ばれる物です。私なら、その才能を磨き鍛える環境を用意できる。だから、貴方が欲しい」

 

「兄様の言う通りです。力なき正義は、世迷い事です。力ある正義は、正義たる資格があります。・・・兄様、勧誘だったのに口説いてどうするんですか?」

 

 ソラが誘いの手をビビに差し出す。

 

 ルフィ達に出会う前ならば、この手を取る事も出来ただろう。だが、ビビは、ルフィ達を信じている。しかし、今を乗り切らねば未来はない。たらればで未来が良くなるはずもない。

 

 何かを得るには何かを失う。それは、当たり前のことだ。都合よく、いいとこ取りは出来ない。

 

「私が、この場にいるみんなを助けてと言えば、助けてくれるの?」

 

「・・・みんなとは、檻の中にいる人全員でいいですか?みんなの定義を教えてください。檻の中の人達に限定してくれるならすぐにでも」

 

 みんなが世界のみんなだとか、言われたら困るのでしっかりとソラは確認した。約束を守る気だからこそ、その範囲と達成条件を明確にする。これは、商売でも大事なことだ。

 

「それでいいわ。反乱軍と王国軍との戦争を止めてと言ったら貴方は止められるの?誰も死なずに・・・」

 

「ビビ王女。貴方は、自分が何を言っているか理解していますか?反乱軍と王国軍は、各々30万人です。完全には、無理ですね。ですが、犠牲を最小限にして戦争を止める事はできます・・・多少、人の尊厳を破壊しますけど、命があれば御の字でしょう」

 

 王国軍は動かないため、狙うならば反乱軍だ。彼等がアルバーナに攻め入らねば戦争は事実上起こらない。結果的に回避可能になる。当然、反乱軍内部で内輪揉めが発生するだろうが、王国軍に被害がないため事実上最小の被害だ。

 

「手段は任せます。戦争が止められ、被害が最小限なら。最後に、クロコダイルを・・・いいえ、これはルフィさん達を信じます。イガラムにもう一度会わせて」

 

 ビビの願いは、三つ揃った。

 

 1)ルフィ達をこの場から救う事

 2)王国軍と反乱軍の戦争を最小限の犠牲で止める事

 3)尊い犠牲となり死んだはずのイガラムに会わせる事

 

 全ての願いを叶える事を前提に仲間になるとビビは誓う。奇跡でも起きない限りできない事を願ったのだ。仲間になる事が対価なら安い。

 

 この時、ルフィですら三つ目の条件がえげつねーーって思っていた。彼らの目の前で爆発に巻き込まれて死んだ人に会わせるなど不可能。最後に達成できない条件をいれる。

 

「ビビさんは、顔に似合わず腹黒いですね。その条件で引き受けます。後で、約束の反故は許しませんよ。・・・兄様、クロコダイルがこちらに戻ってきそうです。早めに終わらせましょうか」

 

「分かった。じゃあ、牢屋を開ける」

 

 ソラは、懐からピッキングツールを取り出した。海軍の牢もそうだが、漫画みたいに単純な鍵であるため、子供でもピッキングの練習をすればすぐに開錠できる。泥棒もお手の物なナミなら、道具さえあればすぐに覚えるだろう。

 

 その様子をみるルフィ達。こんな簡単に開錠できるなら、今までの苦労は何だったんだと残念そうな顔をしている。

 

 ガチャリと音がして開いた扉からルフィ達とスモーカー大佐が解放された。

 

「よし、まずは一つ目の願いを叶えました」

 

「嘘。鍵って必要なかったの?私の苦労って一体・・・」

 

 こんな子供でも開けられる牢に苦戦して、クロコダイルに笑われていたと思うとビビの漆黒の感情がどんどん育つ。

 

 海楼石の影響から解放されたスモーカー大佐だが、流石にこの場で暴れるような事はしなかった。クロコダイルが戻ってくる前に全員が脱出する。これなら、ソラ達を頼らずともルフィを解放できたのではとビビは思った。

 

 実際、出来ていただろう。しかし、クロコダイルに対しての強い憎しみで思考力が低下していた。

 

「サンキューな。でも、ビビはやらねーぞ」

 

「それは、ビビ王女が決める事ですよ。我々は、契約に基づき行動するだけです」

 

 悪人ではないのでルフィもソラ達に対して、強くはあたらない。彼女に危害を与えない事を本能で察していた。仲間の思いを尊重するのも仲間の務め。自分が出来ない事をソラ達が行うのだから、ルフィも一定の評価をしている。

 

「アンタ達が、どんなに強くたって叶えられない願いだってある。思い通りになんてならないんだから」

 

 イガラムが死んだと思っているナミは強気に出る。ビビは大事な仲間だ。その彼女が、ソラ達の仲間になる事はなんだか気持ち悪い彼女だった。カジノを抜けてレインディナーズの町へと逃亡に成功するルフィ達。

 

・・・

・・

 

 町の外に出るとスモーカー大佐は、煙のように消えていた。流石に現職の海軍大佐が海賊と一緒に助けられましたでは、世間体が悪い。

 

「ここまでくれば、安全ですね。では、一つ目の願いを達成した事にサインをいただけますか?ビビ王女」

 

「えぇ、分かったわ。じゃあ、二つ目のお願いを早速お願い。急がないと間に合わない」

 

 書類にサインするビビ。早々に戦争を止めてくれという願いを叶えるため、ソラとホタルも本気を出す。下手な乗り物に乗るより走った方が早い。

 

「えぇ、ですがその前に三つ目の願いを叶えておこうかと。言い忘れておりましたが、イガラムさんは、ウイスキーピークで死にかけていた所を助けました。私の船で治療中です」

 

「嘘よ、だってイガラムは私の前で」

 

 嘘と言いたくなる気持ちはわかる。だが、それでは死んでいて欲しかったと聞こえてしまう。この場合は、喜ぶべき場面だ。

 

 電電虫を取り出したソラは、仲間にイガラムへと取り次いでもらう。いまだに、その状況が信じられないビビ王女。バロックワークスには、マネマネの実で相手を模写する事ができる能力者もいるので、ソラ達を完全に信じるわけではない。

 

『イガラム。イガラムなのよね!?』

 

『ビビ様。本当にビビ様なのですね。ご無事だったのですね。大体の状況は、この船の方から聞きおよびました』

 

『イガラム、貴方だと信じたいの。だから、私とあなたしか知らない事を何か言って』

 

『分かりました。バロックワークスに潜入した際、三日三晩寝ない監視任務がありました。その際、狭い部屋だったので、音がしないオナラに気づかないふりをしました』

 

 確かに、その場にいた誰も知らない秘密だった。だが、これを認める事がビビに出来るだろうか。認めてしまえば、オナラをしたことを認める事になる。

 

『イガラム、貴方はいい家臣だったわ』

 

『ビビ様。何故過去形なのですか?他にも私しか知らない情報が!! そう、お赤飯を・・・ブチリ』

 

 ビビは、無言で三つ目の願いを叶えた事を認めるサインをした。それが全てを物語っている。家臣としてのイガラムは、この時に死んだ。これからは、ただのイガラムとして彼は過ごす事になるだろう。

 

「ルフィさん、クロコダイルが間もなくこちらに来ます。兄様と私がいない状態では、勝てないでしょうから逃げる事を推奨しますよ。それとも、私達でクロコダイルを殺しましょうか?」

 

「いらね。あいつは、俺が絶対にぶっ飛ばす。お前等は、早く戦争を止めてこいよ。ビビが悲しむだろう」

 

 クロコダイルに対しては、ルフィも頭に来ていた。絶対にこの手で倒すと誓っている。助けがあれば勝てるだろうが、男の矜持がそれを許さなかった。

 

「では、私とホタルはアルバーナに向かう反乱軍を止めて見せましょう。ビビ王女から出来る限り死人は出さないという条件もありますから、薄く広く能力を使いますよ。責任は、取ってくださいね」

 

「えぇ、ネフェルタリ王家の名に懸けて、この戦争を止めてくれるならば全てを認めます」

 

 女日照りの反乱軍達。王家に対しての鬱憤も溜まっていることだろう。それをスッキリさせてあげる事で進軍を止める。30万人もいるのだから、精魂尽き果てるまで同じ釜を食った仲間同士で楽しむ事になるとは、この時誰も予想できない。

 

 クロコダイルとて、反乱軍がいつまでたっても来ない原因がナニか分からず混乱する事態が待っている。




誤字脱字修正や感想本当にありがとうございます。
ビビ王女の未来は明るい?かもしれない。

ソラ達の船にいれば、ルフィ達のワンピースもあるからいつでも仲間と会える。
これは、一緒に旅に出てくれる可能性も高いわ。
ビビ王女の要望はすべて叶えてやるぞ。
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