お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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16:腹黒王女

 クロコダイルは、アルバーナにやってきて困惑していた。既に、反乱軍との戦争が始まり佳境を迎えているはずの時間なのに、反乱軍の影も形もない。代わりにある物といえば、王国軍からの盛大なクロコダイルコールだった。

 

「「「我らが白き平和の象徴クロコダイル!! クロコダイル!! クロコダイル!! 万歳」」」

 

と、言った感じで鳴りやまぬ歓迎ムード。アラバスタにおいて、王家と双璧をなすレベルで信頼を勝ち取っていた事もあり、歓迎される事に不思議はなかった。もしかしたら、これから来る反乱軍相手に戦力として期待されているのではとも彼は考えた。

 

 オフィサーエージェント達との連絡が取れない。Mr.1やMr.2が簡単にやられるはずがないと信じつつもクロコダイルは不安を覚え始めた。目線で、ニコ・ロビンに訴えるも知らないわよ、そんな事といった感じで取り合わない。

 

 アルバーナを歩くだけで、王族並みのVIP待遇。

 

「どうなってんだ、これは?」

 

「気になるなら聞いてみればいいんじゃない。私は、別に興味ないからいいのよ。それより、早く目的を達成しましょう。この雰囲気なら案外簡単に案内してくれるんじゃない」

 

 理解できない歓迎程困る事はない。何か裏があるのかと勘ぐってしまう。だが、それならそれでこの雰囲気に便乗させてもらおうと計画に修正をいれるクロコダイル。臨機応変に対応できるのは彼の強みだ。

 

 王宮へと進むクロコダイルを丁重に案内する王国軍兵士達。彼等は、近い将来自分が仕える王になるだろう男に精一杯のおもてなしをしている。武力、権力、財力の全てを持ち合わせた男であるクロコダイル。兵士達の憧れになる。

 

「クロコダイル様が王になられる日が楽しみです。どうか、我ら王国に栄光を」

 

「クロコダイル様。貴方ほど優れた方はおりません。どうか、ビビ王女と共にアラバスタに平和と繁栄を」

 

 歓迎され、王と呼ばれ、称賛され、気分が良くなるクロコダイル。こういう従順な国民なら生かしておいてもよいだろうと思う程に。その気分の良さといえば、レインディナーズでルフィ達に色々と邪魔されたことなど忘れそうになる程だ。

 

「くっくっく、案外何も知らないバカな民から賞賛されるのもいいものだな」

 

「あら、貴方って性格悪いのね。でも、いいの?理由はわからないけど、貴方とビビ王女が結婚するような雰囲気がしているわよ」

 

 美女と野獣。本当に物語として広まりそうよねと思わず言いそうになったニコ・ロビン。だが、口は禍の元であるため、堪えた。

 

「俺が結婚?バカ言うな。力のない正義を口にするガキと結婚なんかできるか。お前は、オフィサーエージェント達と合流して事態の把握をしろ。分かったら俺に連絡を忘れるな」

 

「分かったわ。でも、妙な空気よね」

 

 この時、王国軍達には知らされていない真実がある。それは、ビビ王女がカルガモに持たせたバロックワークスの正体や目的が王や側近達には伝わっている。だが、その秘密は今となっては王国軍兵士は誰も信じないだろう。

 

 単独でビビ王女のために、反乱軍を止めた英雄が卑劣な悪行に手を染めているなど信じる余地はない。むしろ、悪の組織を意図的に運営して、悪者を一網打尽にするつもりだったと思われてしまう。それ程までに、クロコダイルへの信頼はあつい。

 

 クロコダイルは、コブラ王との直接面談へと向かう。状況が呑み込めないが、王下七武海としての実力がある。一人でアルバーナを沈める事ができる男だから彼に不安はなかった。

 

・・・

・・

 

 ビビ王女一行が必死の思いで駆け付けたアルバーナ。それが見える所にまで戻ってきた。遠目で見ても火の手が上がっておらず、戦争の雰囲気は皆無。ソラ達があの状況から反乱軍を止めて戦争を回避したのかと、驚くばかり。

 

 自分より年下の子供が二人で戦争を止めるなど、眉唾物だと思っていた。だが、彼等は約束を守った。川岸に停泊していたソラの船を見つけ、イガラムとも合流を果たしたビビ一行は間もなくアルバーナに到着する。

 

 ビビ一行の前に三つの影がある。手を振る汚いサンジ風の男性ワズキャン。彼からは何か得体の知れない恐怖を感じてしまうのは人間の性だ。彼の両脇には、ソラとホタルがサインをもらうべく契約書をチラつかせていた。

 

「ねぇ、ゾロ。あの三人を切り倒せたりできる?」

 

「ナミ、お前なぁ~。仮にも約束を守った相手に何て事を考えてんだ。強い相手と戦う事に異論はねぇが、何もしていない子供を切るような外道じゃねーぞ」

 

「いくらナミさんの頼みであっても俺は、女は蹴らねェ。ソラとワズキャンって野郎なら、どうしてもって言うなら戦うが・・・逃げる時間が稼げるか微妙だぞ」

 

 ナミはビビの事を気に入っている。当然、仲間としてこのまま海賊をやってほしいほどに。だが、ビビの事情は複雑だ。

 

「いいんですよ、ナミさん。ソラさんとホタルさんは、私との約束をすべて守りました。これで私が約束を守らなかったら、あのクロコダイルと一緒じゃないですか」

 

 ソラ達は、ナミの発言が聞こえている。契約を無効にするため、そこまでやるとは流石汚い海賊だ。本気でないが、それを口に出したらだめだ。だが、今は気分がいいのでソラは聞かなかった事にする。

 

「ビビ王女と皆さん。お待ちしておりました。契約に基づき、最小の被害で反乱軍をチン圧し、戦争を回避しました。その為、多少の事をしましたがビビ王女の名の下で全てを許されたので、戦後の処理をお願いします。サインは、ここにお願いしますね」

 

「戦争は回避されたのですね。被害はどの程度・・・」

 

 ソラは、頭の中で計算を始めた。現時点での死者は、2,000人程度だ。30万人を相手にその程度の死者なら十分最小限だ。だが、問題は今も続いている狂気の宴。三日三晩、やり続けた場合死者は万に届く。後遺症や記憶が鮮明に残る事も加味すれば半数くらいは将来的に深い心の傷が残るだろう。

 

 大事なことだが衛生面的に最悪な環境なので、色々な病気が反乱軍で広がる。本来、使うべきでない穴に息子を格納したのだから当然の結末だ。

 

「現時点で2,000人程度です。王国軍が急いで彼らの治療に当たれば、一万未満で死者は収まるかと。反乱軍だけの死者だけで済み、この程度で済んだのですから約束を守ったと言えるのではないでしょうか?」

 

「その通りですね。ソラさん、ホタルさん。戦争を止めてくれてありがとうございます。貴方達がいてくれて本当に良かった」

 

 ビビは、ソラが用意した契約書にサインした。たった数日で全ての願いを叶える双子。だが、可愛い顔をした双子だが彼等が引きずっているMr.2の生首は出来るだけ見ないようにしている。

 

「兄様。クロコダイルがアルバーナに入りました。我々の仕事はここまでだと思います」

 

「そうだね。では、全てが終わったら会いにまいります。後、これはサービスです。アルバーナでは、クロコダイルが歓迎され王宮に招待される。そして、オフィサーエージェント達も健在ですので、気を付けてください」

 

 ナミ、ゾロ、サンジ、ウソップ、チョッパー、ビビの六名。これから合流するであろうルフィも入れれば、クロコダイル達を打倒できるとソラは考えていた。死にかけた経験が主人公たちを強くする。戦闘民族並みに成長する彼等に追い抜かれるのは遠くないだろうとソラとホタルは思った。

 

「ソラさん、ホタルさん。私達は仲間ですよね?仲間を見捨てたりしないんですよね?」

 

「兄様。ビビは、腹黒王女です」

 

 契約書を指さす、ビビ。

 

 王女でありながら、王国護衛隊長を連れ出し、バロックワークスなる秘密犯罪組織に潜入する行動派王女様だ。そして、したたかだ。この時代を生き残る為、使える手は使う。

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