そのおかげもあり、ソラとホタルにとっても良い訓練になっている。命の取り合いでこそ人は成長する。磨き上げた技術で迎え撃つ。その戦いの中でビビも
「ビビ。過信して回避もせず殴られた結果がこれです。暫くは、顔の痣を残して教訓としてください」
「ソラさん、ごめんなさい」
カビ人間のビビを殴った男は、非能力者だ。だが、拳に覇気を集める事が出来るレベルには強い男であり、ビビは判断を誤った。覇気での強化が間に合ったから、あごの骨にヒビが入る程度で済んだ。
その痛みにも耐えながら、男に爪傷から殺人カビを感染させて殺した事は褒められる。与えた傷口から爆発的に感染させる事もできるようになっている。やはり、
「謝るなら、油断しないでください。ホタルを見てください。剣術、格闘術、六式などなんでもありで相手を効率よく殺しています。ぜひ参考にしてください」
「兄様、甘いです。ハッキリと言います。自分を無敵と勘違いしてきた
反論の余地がないビビ。慢心ゆえの油断だった。
たった二か月。されど二か月というべき時間で進化といって差し支えないほどの成長を見せたビビ。誰も商船で彼女の船長としての実力を疑う者はいなかった。おかげで、『海賊狩りの王女』のトータル獲得賞金額は、4億ベリーを突破してしまう。
アラバスタへの航路に来る海賊達が減るおかげで周辺海域でも安全になったと実感できるようになってきた。
周辺の雑魚は減ったが、遠くにいる強敵は健在。彼らが動く前にどこまで鍛えられるかが勝負だった。だからこそ、ホタルもビビの慢心に注意した。新世界の化け物達は、
プルルルル
商船に備え付けられた電伝虫が鳴く。麦わらの帽子をかぶった特別製であり、誰が掛けてきたか一発で分かる。アラバスタを出港して初めての電話であった。
『一介の商船に何のご用事ですか?』
『あら、元気そうじゃない。ナミよ。ちょっと物が入用でね~。賞金首は無いけど、ベリーと黄金はあるわ』
トラブルメーカーの”麦わらのルフィ”一味がこの二か月であげた首がないとか異常事態だと、聞いていた誰もが思った。ソラ達には、砂糖に群がる蟻のように海賊達が押し寄せているのに酷い差だ。
『頑張って海賊の首をあげてください。では、どこで取引をしますか?こちらは、ウォーターセブンの手前位にいますよ』
『そう。だったら、ちょっと戻ってきて。ロングリングロングランドって島で会いましょう。ビビーーー!! 聞こえてる?元気にしているよね。会ったら色々と話したい事があるから待っててね』
ソラは、ビビに会話しても構わないと伝える。
『ナミさんもお元気そうで良かった。こっちは色々ありましたが、なんとかやれています。私も色々とお話したいです』
彼女も色々と話したいこともある。だが、盗聴の危険性もある。最小限の会話だけにして、後は会ってから話す事になった。
食欲魔人であるルフィの為、大量の食料を用意する。ソラ達の船には、無限に食料を製造可能な設備がある。カビカビの実の能力者であるビビが居る限り食料に困る事はない。栄養バランスは悪いが、空腹で餓死するより遥かにマシだ。
「ビビ、最下層に行きますよ」
「・・・えっ!? あのキノコを出荷するんですか」
ビビ王女が育てたキノコ達。自分達では絶対に食べたくないが、事情を知らない者達からすれば関係ない。様々な検査から人体に影響がない事もわかっている。自然に生えているキノコと同じだ。
・・・
・・
・
ソラとビビは、防護服に身を包んだ。ソラの商船にある最下層に入る。ここは、誰も近寄りたがらないワンピース保管庫だ。厳重に管理されたワンピース達が保存され管理されている。
壁一面に綺麗に並べられるワンピース。ここに長居したら精神がやられそうだと誰もが思う。だが、今では更に酷い事になっていた。ビビの能力開発と実益を兼ねて、ここで大量のキノコを栽培している。
本来、菌床などで栽培するキノコだが、カビカビの実の能力者がいれば全ての問題を能力で解決できる。菌床の代わりにされたのが、ソラが蒐集したワンピースだ。
『カビカビの能力には、無限の可能性がある。モルガンズが次に取材に来た時には、王女様のキノコ畑としてお見せしたいほどですよ』
『そんなことしたら私が命を懸けても殺しますよ、ソラさん』
ワンピースからの排泄物をカビが吸収、そして綺麗な水に変える。淀んだ空気すらカビが浄化する。そして、ワンピースに寄生したキノコ達が宿主から栄養を奪って、すくすくと育つ。
『あっちのご立派なマツタケは、クロコダイル産だ。栄養を随分と吸い取ったようだ。ついでに、ご本人に送りつけてやろう。貴方直筆のラブレターで、これが貴方の新しいワンピースよとでも書いてね』
『・・・意外と、ありかもね。怒りのあまりクロコダイルの脳内血管が切れて死にそうだから、やってみようかしら』
ビビは、ご立派なマツタケをねじり取った。遠くで想像を絶する痛みで悶絶している元王下七武海がいる。
それからも、二人は育ったキノコ達を収穫していく。何も知らない買い物客が、アラバスタ王家の船で栽培されたキノコだと真実に騙されて買っていくことになる。原価が0円で儲けしか出ない楽な商売だ。
ここには、ビビとソラしかいない。だから、ビビは聞いてみた。以前からずっと気になっていた事がある。
『ねぇ、ソラさん。私が船長室に住む事になって、船員の皆が何故か憐れむような眼で私の顔を見るんです。そこで私なりの仮説を立てたんですが、聞いてもらえますか?』
『広くて風通しもよく、立地の良い部屋でしょう。専用の広いお風呂もあるし何か不満がありましたか?』
それは本当だった。風通しもよく専用の洗い場まであった。大人が3人は入れるほどの広さがあり、商船自慢の特等室だ。それをビビが船長になる為、改築して明け渡した。
『このワンピース。私が来るまでどこにあったんですか?風通しがよく、広い洗い場まであるのにソラさんの寝床は別だと聞きました。しかも、船長室は壁も床も特別性でした。当初は、私の安全を考えてくれたのかと思いましたよ』
『君の様な勘のいい大人は嫌いですよ』
そう、これらのワンピースは船長の私物という事で船長室に保管されていた。今、ビビが寝泊まりしている部屋は、数か月前までワンピース保管庫だった。
ビビの足場からカビが広がりキノコが成長していく。彼女から発せられる威圧感は、まさしく覇王色の覇気だった。
『初めてですよ。王女の私をここまでコケにしたのは。ボコボコにして、
『良い覇気です。ですが、認識が甘い。このワンピースに囲まれた場所では、私の生存能力は
イトイトの実が無機物を糸に代えて操作が出来た。ならばチ〇チ〇の実だって生やせるのは道理だ。ソラはキノコに養分を吸われる恐ろしさを理解し、ビビは・・・男の弱点を強制的に曲げられる痛みを知った。
ボコボコにされたビビのギブアップで双方が能力を解除し和解したが、この一件から「ソラさんにさん付けなど上等すぎる」との事でソラへと呼び方が変わる。
・・・
・・
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ロングリングロングランドに到着したソラ。取引相手の到着を待っているが、彼等は来ないので暇を持て余していた。
「兄様。ここの果物は食べられるみたいなので、後で積み込みましょう。商品になりそうです」
「そうですね。最近はキノコ料理ばかりで、流石に飽きてきました」
「次はリンゴ味のキノコでも作る挑戦をしてみましょうか、ソラ」
集めてきた長細いリンゴにキノコを生やすビビ。倒されるたびに強くなるとは、本当に戦闘民族の血でも引いているのではないかとソラは思っていた。
「ビビ、食べ物で遊ばないでください。それより、大勢のお客さんが近づいてきています。兄様、立場上ビビと"麦わらのルフィ"一味との関係がばれたらまずいと思います」
「そうだね。見られた以上、生きて返すつもりはないさ」
ソラ達がいる場所に接近してくるルフィ達とフォクシー海賊団。
フォクシー海賊団は運がいい。総額一億ベリーを超える”麦わらのルフィー”とトータル獲得賞金額4億ベリーを超える『海賊狩りの女王』を同時に相手にできるのだから。
ビビとソラの仲がちょっと良くなったかもしれない。