お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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29:最後のチャンス

 海賊が人様が苦労して稼いだお金を奪い取り、そのお金で船を修繕して次の航海へ向かう。船大工達には罪はないが、それを快く思わないのが被害者の心情だ。よって、罪は清算する必要があった。

 

 水の都ウォーターセブンで船の修繕を行っているのは、合計4つの海賊団。その一つの満月海賊団。偉大なる航路(グランドライン)出身の典型的な海賊だ。多少強い能力を得たため、それを武器に海賊達をまとめ上げてきた。

 

 ソラ達も暗黙の了解を理解している。水の都ウォーターセブン内部では、例え海賊であってもお金を払う限りお客様だ。それがあるから、ここは略奪される事がない。だが、そこを一歩でも出れば当然、何でもありだ。

 

「まさか、船の支払いもしっかり行い出港するタイプだったとは。横暴な性格だと情報にあったが、金勘定はきっちりする派だったみたいです。”(まが)れ”」

 

 ソラが前方を進む海賊団に対して、能力を使った。そびえ立つバベルの塔が万力でへし折られる痛みを知った海賊達。出港の悲鳴がウォーターセブンにまで届くほどだ。

 

「イーロンさん、船の側面に取り付いてください。兄様に続いて、私とビビが船に上がります。”ムラムラビーム”」

 

「ソラ、ホタルさん。これ、私が出る幕ありますか?」

 

 ホタルの能力により、性的興奮が臨界点を突破した海賊達は思考能力が低下して弱くなる。だが、女と見れば寄ってくるのでビビは好きではなかった。接触すれば殺人カビの絶対防御で並の相手ならあの世行き確定とはいえ、股間を膨らませた海賊に触られたくはないのは当然だ。

 

「ありますよ。私達の教えがビビにどれほど伝わっているかの確認ができます。それに、この程度の海賊ならビビ一人でもお釣りがくると分かってきましたよね?」

 

「そんな事は・・・あるかもしれません。二か月前なら100名近い船員を抱える海賊なんて私一人じゃとても無理でした。でも、今では苦労しないかな」

 

 ビビは、それこそ今なら憎いクロコダイルの顔面に右ストレートをぶち込めるんじゃないかと思っていた。覇気で強化した腕なら自然系(ロギア)も殴れる。それに、人体の壊し方についても、ワズキャンから教わっている。素の力がない分、どのように補う事でそれを解決させるかも。

 

 ソラ、ホタル、ビビの三人が海賊船に上がると、彼等は前かがみになってナニを抑えて涙を流していた。敵襲なのに動けぬ苦しみ。

 

「船内は私とホタルで殲滅する。上にいる連中は任せましたよ、ビビ」

 

「兄様。最近、ビビの覇気の継続時間が5分まで伸びました。兄様と一緒に特別訓練をする日が楽しみです」

 

 仲の良い兄妹が街中を歩くかのごとく、海賊船の内部へゴミ処理に出かける。それを見送るビビは、全く楽しみでない特別訓練が実現しない事を切に願うばかりだ。だが、鍛え上げられたビビの視力がトンデモナイ場面を捉えた。

 

 ウォーターセブンにある離れ小島みたいな場所に停泊しているルフィ達の船。そして、そこでルフィに決闘を申し込み敗北するウソップを目撃してしまう。

 

「嘘よ!! なんで、ルフィさんとウソップさんが仲間割れをしているの!? 一体なにがどうなっているのよ!! いけない、このままじゃソラとの賭けで負けちゃう!!」

 

「『海賊狩りの王女』!! 死ねぇぇぇぇ!!」

 

 アラバスタを救った仲間達の決闘に理解が追い付かないビビ。彼女の背後には、気合で立ち上がり、ビビに切りかかろうとする海賊がいた。実に勇敢な男だ。声をあげずに、ずぶりと刺せばチャンスはあったかもしれない。

 

 ビビは海賊を見ずに攻撃を避けながら反撃し、裏拳が海賊の顔にめり込む。それと同時に殺人カビ”グリーン・ディ”が海賊に感染し、物言わぬ存在へと変貌を遂げさせる。特攻をかけた海賊の死に様に、目撃した海賊達は恐怖した。

 

 触れただけで相手を殺せる『海賊狩りの王女』・・・これが、獲得賞金額4億ベリーを超える女の実力だ。

 

「邪魔よ!! あぁぁ、もう何でソラの言う事がこんなにも的中するのよ!! 見聞色の覇気でも限界はあるでしょ!! ふざけないでよ!! ・・・私があそこに割り込んで仲裁をすれば、取り持てないかしら?」

 

「能力者だぁぁ!! 全員助かりたかったら海に逃げろ!!」

 

 能力者相手に戦いを挑むより、海に逃げた方が助かると計算した海賊達。ウォーターセブンがそこに見えているのだから泳げば助かると思っているあたり甘い考えだ。この船の周囲にはイーロンが待ち構えており、水に飛び込んだら最後…水中で魚人空手を食らってバラバラだ。

 

 海に逃げれば魚人が待っており、行き場を失った海賊達は望みを賭けてビビに挑んだ。触れれば死ぬが、その前に刺し殺せばいいと。しかし、この二か月で血尿が出るくらいの厳しい訓練を積んだビビの体術は格段にレベルが上がっていた。

 

 海賊達は、大人数である事、顔が凶悪な事、武器を持っている事、相手が反撃してこない事を前提として活動していた連中も多く鍛錬が足りていない。そんな連中に後れを取るようなビビではない。彼女は、戦う王女様だ。

 

 その日の夕方には、無数の海賊の首が海軍支部に持ち込まれ、整備された新品状態の海賊船が中古ショップに並び始める。

 

 

◇◆◇◆

 

 アクア・ラグナの接近警報が鳴り響き、ソラ達は大人しく造船所に避難をしていた。嵐の日に好き好んで外に出る気はない。今現在、ルフィ達の嫌疑が晴れ、嵐の中で大奮闘していようとも、岩のごとく動かない。

 

 ”麦わらの一味”との関係が今後バレた場合の被害は、非常に大きい。海軍所有の司法の島であるエニエス・ロビーに殴りこみに行く連中だ。軽い気持ちで関われば、大惨事が待っている。

 

 だというのに、ルフィ達が第二ドックにいるソラ達に面会に来た。ルフィ、ナミ、ゾロ、チョッパーが雁首揃えてきた。船長としてルフィがソラ達に頭を下げる。

 

「頼む。力を貸してくれ!!」

 

「ホタル、イーロン、ワズキャン・・・人払いを」

 

 船大工にすら見られたくない状況だ。ソラは頭を悩ませる。まさか、この状況で声をかけられるとは想定していない。この非常にまずい状況の打開策を必死に考えていた。ビビは、”麦わら一味”の仲間だ。そして、ニコ・ロビンも”麦わら一味”の仲間。時期的に入れ替わりに近い状態だが、ルフィ達にはそんな事は関係ない。彼等にとってすれば、ビビもロビンも等しく大事な仲間である。

 

 ビビにとって、ニコ・ロビンという存在はバロックワークス時代のオフィサーエージェントであり、クロコダイルの相方だった程度の認識。顔を知っているとはいえ”麦わら一味”の仲間として顔合わせしたのが先日のロングリングロングランドだ。

 

「同じ船長として伺います。ルフィさん、簡潔に事情を説明してください。私に何をしてほしいのですか?」

 

「ビビ。副船長の私としては、それ以上ルフィ達の言葉を聞くことを勧めません。貴方達もそれ以上ビビに話す事は彼女を巻き込む。アラバスタ王家ネフェルタリ・ビビ王女の立場が危ないという事を理解していますか?彼女は、国民1000万人の命を背負っているんです」

 

 ビビがルフィ達ではなくソラ達との旅を選んだのは、彼女の立場の問題が大きく関係している。ルフィが現時点で4皇みたいな立場の海賊だというなら、ビビとの関係がばれてもねじ伏せられる。

 

 ソラは、理屈は通じないだろうと半分諦めている。ナミとゾロは関わる事でビビに不利益が発生する事を理解しており、その上でも黙認を貫いた。つまり、それ程までに事態は逼迫しているという事だ。

 

「ロビンを取り戻すため、力を貸してくれ」

 

「ですが、この嵐では船も出せません。どうしましょう、ソラ」

 

 ビビに交渉を代わってほしいと助け舟を求められ、ソラが彼らに対応する。あちらの仲間と言う立場がある以上、強くは出れないビビ。更に、こちらでは船長という立場がある。

 

「ルフィでは話にならない。急ぐ必要がある。ナミさん、条件を。メリットとデメリットも」

 

「えぇ、分かったわ。アラバスタ王家として、ビビの力で時間を稼いで欲しいの。知っていると思うけど、ロビンはバロックワークスのクロコダイルの右腕だったわ。だからこそ、貴方ならエニエス・ロビーに対して、ロビンと話をしたいと言って時間を稼げるはずよ」

 

 絶妙にできそうな事を言ってくるナミに、ソラは苛立ちを覚える。

 

 バロックワークス幹部で唯一取り逃している賞金首であるニコ・ロビン。他のオフィサーエージェントの首をすべて上げたビビが、彼女を気にして話をしたいと言っても不思議じゃない。

 

 実現できる範囲で効果的な時間稼ぎだ。しかも、直接面会をしたいと言えば、叶うかもしれない。アラバスタ王家の影響力は、健在だ。

 

「メリット、デメリットは?」

 

「メリットなんてないわ・・・私達に貸しを作る事くらいよ。デメリットは、ありすぎてわかんないわよ」

 

 ”麦わらの一味”に貸しを作れる。これは、今現在の価格としてはゴミだろう。だが、あと数年もすれば、その価値は計り知れなくなる。それが分かっているからこそ、ソラはつらい。

 

「エニエス・ロビーから生還する保証がない。リスクだけ背負ってリターンが合わない」

 

「俺は必ず、ロビンを連れて帰ってくる。だから、頼む。時間を少しでもいいから稼いでくれ」

 

「ソラ、お願い。ルフィさん達の力になってあげたいの」

 

 生還を確実にするため、ソラ達が隠れて政府機関に乗り込んで暴れるには、かなりのリスクがある。そもそも海軍は正義側で、海賊は悪側だ。しかし、「はい、分かりました」と言って、ほいほいと海賊のお願いを聞いていては、海賊を根絶やしにするという商船の立場が危うい。

 

「最近、海賊の首が届いていない。先日のデービーバックファイトの一件でも、随分と舐められました。そして、数日程度しか経っていないのに、今度はハイリスクの依頼だ。貸しとは別に、これからいう事を三つ飲めるなら、ビビがエニエス・ロビーに掛け合って2時間、いや3時間稼ごう」

 

 ソラは、条件を提示した。

 

 1.半年以内に3億ベリー相当の海賊の首を持ってくる事。

  2.ホタル、イーロン、ワズキャン、ビビが助けを求めたら手を貸す事。

 3.死んでもビビとの関係を喋らない事。

 

 本当なら今後仲間に入る者達のワンピースと言いたかったソラだが、この先仲間になるサイボーグや骨はワンピースを持っていない。チョッパーのワンピースもないが、動物のアレは必要性がないと思っていた。

 

「でも、それだとアンタは入ってないじゃない?」

 

「お前等に頼るなら海軍を頼る。スモーカー大佐にも貸しを作っているからな。だが、保険は必要だから、仲間が求めた時は手を貸してくれればいい。分かったら、さっさと行け。急がないとロケットマンでも追い付けないぞ」

 

「サンキューな、ソラ。ところで、何でお前がロケットマンの事を知ってんだ?」

 

「物知りなだけだよ、ルフィ」

 

 聞きたい答えを聞いたルフィ達は、飛び出していった。これから彼らは、ロケットマンという暴走海列車で仲間を助けに行く。

 

「兄様、追いかければ今からでも”麦わらの一味”を殺せますが、どうしますか?」

 

「ホタルさん、ルフィさん達を信じ・・・いいえ、ソラと私を信じてください」

 

「えぇ、兄様の事を信じているわ。でも、これで兄様の予想がすべて的中したって事よね、ビビ。あなたが救われる最後のチャンスだったのに残念ね」

 

 この瞬間ビビは、完全に忘れていた約束を思い出した。彼女はルフィ達を引き留めるどころかエニエス・ロビーへ向かう手伝いをしてしまっていた。つまり、ソラとホタルの特別訓練が今夜から始まる。

 

「さようなら、私の安眠。・・・特別訓練は、エニエス・ロビーに電話してからにしてください。後生だから」

 

「えぇ、勿論よ。今晩が楽しみねビビ。兄様の期待を裏切らないように本気で頑張らないと、干からびて干物になるわよ」

 

 ビビは震えた手で電伝虫を取った。

 

 アラバスタ王家として、アラバスタで狼藉を働いたバロックワークスの生き残りであるニコ・ロビンと話したいと。ビビは、今夜の特訓を回避する為、何としても時間を稼ぐ必要があった。出来る事なら朝まででも話したい気分だ。

 




ルフィ達って滞在時間の割には、問題を起こすレベルがすごい。

未来の事だけど、ドレスローザ編ってあの世界だと1日の出来事だったとか。
ドフラミンゴが10年越しの計画を僅か1日で崩壊させるとか、敵側にとったら悪夢ですよね。
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