海賊達を殺すという行為。人の命を奪うのは、この時代で必ず役に立つ。大事な局面での躊躇がなくなる。一瞬が生死を分ける場面で相手に配慮などしてしまうと逆に命を落とす。よって、ソラの船にいる船員は、全員が殺しの経験者だ。
だが、ゴミとは言え人を殺す事は、知らないうちにストレスを溜める事もある。適度なストレス発散が大事。海を航海する船上で楽しめる事など少ない。どこぞの海賊達には、女子供をお楽しみの道具にしているゴミもいるが、そんな連中の真似事をするような輩は彼の船にはいない。
そこでソラが一番力を入れているのが食事だ。ソラは知っていた。前世の世界では空母や潜水艦の乗組員がおいしい食事を食べる事を何よりの楽しみにしていた事を。だからこそ、食事に対する拘りは、すごい。
臨時収入もあったので、
「素敵なお嬢さん、お食事はいかがでしたか?」
「えぇ、素晴らしい味でした。ありがとう、
ホタルは、本日の食事に感謝した。普段では、味わう事ができない一流の味。そして、兄から聞いていた本物に会えたと。
「あれ?自己紹介したっけ?」
「いいえ、兄様からお話を聞いていただけです。いかなる状況でも決して女性に暴力を振るわない紳士な方だと。万が一の場合には、貴方を頼れば大体解決してくれるとも聞いています」
サンジが一緒に食事をしていたソラの方を見た。だが、お互い初対面。見ず知らずの女性から無駄に高評価を得る事に不慣れだった彼は少し不気味に思った。
「大変おいしい食事でした。大勢で来たのに、歓迎してくれた事に感謝します」
「おぃ、待てって。もしかして、どっかで会った事あるのか?」
「今日が初対面ですよ。ですが、近い将来また会うかもしれません。貴方が、ピースメインである限り優先度は低い」
ソラは、全員分の食事代金を支払い次なる場所を目指す。
サンジの存在を確認した事で現在がどの時間軸なのかを正しく把握する。その時代に必ずそこにいるはずの人物というのは、役に立つ。これから先の展開が読みやすくなる。
この
おいしい食事で英気を養った仲間と共に、もう一人の目標に会いに行くソラとホタル。潮風に当たりながらホタルは、のどかな海を眺めていた。こんな平和が続けばいいのになと。
「兄様。どうして、彼を料理人に誘わなかったのですか?料理の腕も実力も悪くなかったようでした」
「無理だよ。彼の運命は、決められた男の下で料理人になる。それに、うちの船にも似たようなのがいるじゃないか。あっちが綺麗なサンジなら、こっちは汚いサンジが」
そんな噂をしていると、おやつのドーナッツを焼いた男がやってきた。船員達のモチベーションを維持する大事なコック。彼こそ、ソラの船に乗船しているコックであり、汚いサンジと呼ばれる男。
「ワズキャンさん、いつもありがとう。ごめんなさいね、兄様も貴方の事を悪く言っているつもりはないのよ。いつもの発作みたいなやつだから」
「知っているさ。船長は、僕の事をなんだと思っているんだろうね。どこにでもいるコックなのに」
「お前のようなコックがどこにでもいてたまるか!!」
汚いサンジこと、ワズキャン。コック兼拷問担当だ。彼の手にかかれば、口が堅い海賊でも素直になる。非能力者だというのに、かなり強い。魚人のイーロン同様に頼るになるのだが、ソラだけは彼の事が少し苦手だった。
・・・
・・
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おいしい料理を堪能したソラ達は、二日かけて海軍支部がある島へと到着する。そこは、シェルズタウンと呼ばれており、海軍大佐モーガンによる恐怖政治が行われている。酷い事に最弱の海と呼ばれる
治安維持を名目にやりたい放題だ。一応、対海賊には抑止力として働いているので、誰もが見て見ぬふりをする。
そんな場所に、ソラとホタルによって海賊達の首が多数持ち込まれる。その合計金額は5000万ベリーを超えた。ゴミを使ったゴミ掃除の成果だ。海賊狩りとして正当な対価を海軍に要求していた。
「全部で5200万ベリーになりますので、お支払いをお願いします。モーガン大佐」
「ほほぅ、確かに手配書通りの海賊達だ。全員首だけだがな」
こちらの粗を探しているモーガン大佐。だが、賞金首は『DEAD OR ALIVE』が基本。首だけで持ち込まれる死体も当然ある。体も一緒だと場所も取るし、腐りやすい。生首を冷凍保存していた方が長持ちする。
腕っぷしだけで大佐の地位に上ってきたモーガン。彼の実力は、
「新世界を目指して鍛えている私達を相手に武力行使は、お勧めしません。我々は、海軍と敵対しているわけではありません。それに、貴方の恐怖政治を邪魔する気はありませんので、賞金額の2割。それで手をうってください」
「いいだろう。俺の邪魔をしないのであれば、お前達がどこで何をしても俺には関係ない事だ。すぐに賞金を持ってこさせる」
腐った海軍には、それに準じた対応をする事が一番手早く仕事が終わる。こんな大佐でも居ないよりマシなのが事実だ。己の権力を脅かす者が海賊なら我先にと殺して回る。それがモーガン大佐にはできた。
ソラとホタルは、しっかりと2割引かれた賞金を持って海軍支部を後にする。その時、海軍支部の中庭には、一人の男が縛られていた。
「あれが、兄様の目当ての人ですか?」
「そうだ、ホタル。彼が縛られて何日目か聞いてきてくれ。水と食料を渡せば素直に教えてくれるだろう」
人間は、水を飲まなかったら三日で死ぬというのに強靭な精神力で生きている化け物のような男。彼こそ、緑のカイドウと言われる規格外生命体である大剣豪ロロノア・ゾロだった。
◇◆◇◆
町の住人を正義感で守った為、海軍に縛られているロロノア・ゾロ。モーガン大佐の息子であり親の権力を使って、威張り散らかすゴミのような存在が原因でこのような事態になっていた。
彼の息子が町に狼を放った事が全ての原因だ。その狼が住人の女の子を襲いそうになったので狼を切り殺した。それだけの罪で、ゾロは捕まってしまった。一か月、この場に磔にされる事で罪が帳消しになる。
「へぇ~、そうなのね。でも、たぶんそれは無理よ。あっちの柱の陰からこちらをみているゴミみたいな男が貴方が言うヘルメッポなら死ぬわよ」
「そうかよ。だが、俺はここを動かねー。飯と水は感謝するがな・・・それにしても、いい刀持ってんな~」
ホタルの目から見てもヘルメッポは、約束を守る男には到底思えない。その腐りきった根性が彼の身から触れて出ているのを感じていた。それに、ヘルメッポの視線がいやらしい事をホタルは感じ取っていた。
「あげないわよ。これは、大業物アマノムラムラ雲というのよ。同じ海賊狩りのよしみで助けてもいいけど、仲間になる気ある?」
「まだ、
その言葉が聞けただけでホタルには十分だった。
つまり、あと一週間もすれば、”麦わらのルフィ”がここに来る。それから全てが始まるというわけだ。