お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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32:ガープ中将

 水の都ウォーターセブンでは、エニエス・ロビーから生還した”麦わらの一味”を大歓迎する。住人の誰もが市長アイスバーグを助けた海賊に恩を返したいと本気で思っていた。その思いは島全体に伝わり、ルフィ達を歓迎する声はソラ達の元にも届いている。

 

 そして、連日の大宴会。住民全てが参加する規模にまで大きくなる。島中の食糧を食いつくす勢いだ。立場上、参加できないソラ達は、遠目で宴会を眺めて気分に浸った。

 

 ルフィ達は、宴会もよいが未解決の重大な問題がある。彼等がここまで乗ってきたゴーイングメリー号は、限界を迎えて廃船となった。その原因は、空を飛んだり、大波を強硬突破したりと船の耐久度テストをするような運用をしていた事だ。ここまで来れただけでも奇跡と船大工に言われている。

 

 これからのルフィ達の事を考えつつ、ソラ達も大きな問題を抱えている。仲間の一人であるイーロンの故郷である魚人島が近い。この後の島数を考えると多くの時間はない。

 

「魚人島で公募してみるかな。イーロンの後任が勤まる魚人が一人位は見つかるといいな。ホタル、何か名案はある?」

 

「難しいですね。イーロンさん程の魚人は、少ないでしょうね。王下七武海に魚人がいますが、海賊ですからね」

 

 ソラ達程の力があっても人員の問題は解決しにくい。頭を悩ましているとソラとホタルのレーダーに覚えのある強い反応があった。ソラとホタルは、刀を手にする。ここ数年の成長を見せる時が来たと。

 

「これは、こちらからご挨拶に伺います。ビビも連れていきたいのですが、イーロンとの組手の時間ですね。最近の戦績は、どうですか?」

 

「869戦0勝869敗です。でも、ここ最近はイーロン相手に時間いっぱい立っていますよ」

 

 評価できる根性だとソラは思った。覇気の継続時間も伸び続け、今では7分に達した。日に日に伸びる時間に、育てる方も楽しくなる。その成長を加速させるため、ビビは世界の上澄みを知る事になる。

 

「到着まで時間がありますので、ビビを入浴させて正装させてください。とりあえず、ルフィ達にも会わせると伝えてください」

 

「はい。兄様のスーツも出しておきますね」

 

 水の都ウォーターセブンに近づく海軍の軍艦が一隻あった。”麦わらの一味”がこの地にいるのは既に海軍も知っている。だが、バスターコールが失敗に終わったので、今は海軍も様子見をしているが、一部の者が独断専行してきたのがこの軍艦だ。

 

 独断専行が許されるほどの権力を持つ海軍の英雄ガープ中将。彼は部下達を引き連れてこの地に向かっていた。

 

 そのガープ中将にはソラとホタルも縁がある。久しぶりの再会に心が躍る二人。手も足も出なかった頃を思い出し、今の自分達が新世界でどれほど通じるか確認できると。

 

 ビビを筆頭に、ソラ、ホタル、イーロン、ワズキャンの戦力が揃って海軍軍艦を出迎える。アラバスタ王家のネフェルタリ・ビビとしての立場で海軍の英雄ガープ中将へ挨拶した。そして、そのまま流れでルフィ達のいる場まで同行する。これならば、ビビがルフィ達に会う事になっても可笑しくない。

 

 ガープ中将が軍艦から降りてきた。

 

 まさか、ドレスコードした王女が出迎えとなれば海軍中将として対応しないといけない。独断専行する男だが礼儀は弁えている。

 

「お初にお目にかかります。海軍中将ガープ様、私はアラバスタ王家ネフェルタリ・ビビと申します。以後、お見知りおきを。よろしければ、ご一緒させていただいてもよろしいですか?是非、海軍の英雄のお話を聞かせてください」

 

 海兵達から歓声があがる。美しいという賞賛の嵐だ。海賊に対して血も涙もない『海賊狩りの王女』として海軍にも知れ渡る彼女だが、今の彼女からはそれを察する事が出来る者はガープ中将以外いなかった。

 

「あぁ、構わんぞ。懐かしい顔もいる事だしな。ビビ王女だったか、苦労しているだろう。こいつ等双子は、頭のネジが何本も外れているからな」

 

「分かっていただけますか。そうなんです」

 

 ビビの中で、自分が常日頃感じる苦労を理解してくれるガープ中将への好感度が上がり続ける。ガープ中将は、ビビを可愛い孫娘程度に思ってくれていた。王族で若い女が苦労しているなと同情心から来る思いだ。

 

「ガープ中将。ソラとホタルさんから、夕食をご一緒したいと・・・どうですか?」

 

「まどろっこしいの~。何が目的じゃ、ソラ、ホタル」

 

「体裁は、大事だと思います。お久しぶりです、ガープ中将。新世界入りを前に、一手私達とお手合わせをお願いします」

 

「兄様も私もあの頃よりずっと強くなりました。信頼できる仲間も増えました。どうか、お願いします」

 

 ガープ中将は、一考した。この島にいる孫に会いに来たガープ中将にとって、ソラ達との出会いはおまけだ。だが、ローグタウンでモンキー・D・ドラゴンがソラとホタルに迷惑をかけた事もあり、息子がやらかした事に対して多少の責任を感じている。

 

「お前達、5人か・・・・・・ケガでは済まんぞ」

 

「殺す気でお願いします。ガープ中将」

 

 ソラは、ガープ中将が受諾してくれた事を喜んだ。全盛期を過ぎたとはいえ、ガープ中将は中将最強格。望んでいれば大将になれる逸材だ。そんな男から、手ほどきを受けられるのは海軍所属でも滅多にない。

 

「ガープ中将!! いいんですか。相手は、アラバスタの王女様と子供もいるんですよ」

 

「コビー。王女もあの双子も普通にお前より強いぞ。よくぞ、ここまでのメンバーを集めたもんじゃな」

 

 デカすぎるガープの声は、海兵達にも届いていた。『海賊狩りの王女』とは看板だけのお飾りでない事を知る。あんな綺麗な王女に殺されるなら海賊達も本望だろうという声も聞こえる。

 

 水の都ウォーターセブンを正装したアラバスタの王女様と海兵達が歩く姿は、明日の新聞の一面を飾るだろう。世紀の大事件エニエス・ロビーの崩壊でニコ・ロビンを取り逃がした結果、愛するクロコダイルを取り合う抗争が発生した事に対する謝罪を海軍英雄自ら行うと。

 

 ソラ達は、海兵と一緒に今世間を騒がす大犯罪者”麦わらの一味”と顔を合わせた。彼らの元気な姿を見る事が出来たビビは、安堵する。だが、ニコ・ロビンだけが凄く冷たい視線をビビに向けていた事だけは誰の目にも明らかだった。

 

 まさか、海兵達も今世間を騒がす王女と海賊が二人もこの場に揃うとは誰も思ってなかったので、一触即発の雰囲気にハラハラする海兵達。その異様な空間の中で、ガープ中将の子供と孫について明かされて、知らない者達は目が飛び出るほどの衝撃だった。

 

 

◇◆◇◆

 

 水の都ウォーターセブンにある離れ小島。海軍中将とソラ達が手合わせする場としては、手狭だが、仕方がない。近くに無人島があればよいのだが、そんな都合の良い物はない。

 

 コビーとヘルメッポ以外の海兵達は軍艦で待機しており、ガープ中将の雄姿を遠くから応援するスタイルだ。

 

 準備運動を終えたソラ達。ソラとホタルの刀も覇気を吸収し黒く染まる。

 

「ビビ、相手は格上だ。殺しても死なないと思って、能力を解放しても構わない。どうせ、この先の海に行けばバレるのも時間の問題だ。この訓練では、全てを使い学び吸収する。一分一秒が千金に値する事を理解してください」

 

「死なないでくださいね、ガープ中将。軽くご挨拶です。”(まが)れ”」

 

 海賊を殺すかの如く憎しみを込めたソラの能力。その声は、まるで呪言のようだ。衰えてしまったガープ中将のご立派が、思春期の中学生のように天高くそそり立つ。捻じ曲げられる万力に覇気で対抗する。

 

「バカみたいな攻撃をしおって!! ワシには、その攻撃は効かん!!」

 

「凄い、ソラの能力を覇気だけで弾いた。ホタルさん、私が補助します。”腐界降臨”」

 

 ビビを中心に広がるカビ。瞬く間に、離れ小島に感染域を広げ巨大なキノコが育つ。胞子を撒き散らし、周囲環境を汚染した。殺人カビ”グリーン・ディ”がガープ中将の肌に焼きつくようなスリップダメージを与えた。

 

自然系(ロギア)じゃと!! どこでそんなものを手に入れたんだ」

 

「兄様と私のとっておきです。驚いていただけましたか、ガープ中将。”流れ星”!!」

 

 キノコの陰からホタルが放った音速を超えた神業。ガープ中将の体を真っ二つにするつもりで限界まで覇気を込めた必殺の一撃だった。覇気で固めた両腕で防ぎ切ったガープ中将。彼の後ろには、ふるった刀の衝撃波で真っ二つになった海がある。

 

「当然、防ぐじゃろう。魚人空手”千枚瓦正拳”!!」

 

「嫌になる程堅いじゃん。僕の攻撃じゃぁ、抜けないかな~”千枚卸し”」

 

 イーロンの魚人空手とワズキャンの人間解体術が間髪入れずに襲い掛かる。そのどちらもガープの拳骨で相殺される。その光景にソラは、思わず凄いなと口にする。確実に殺したと思ったのに、防がれる。

 

「なかなか、やるの~。血を流すのは久しぶりじゃわい。訓練とはいえ、相手を殺す覚悟が出来るとは、お前達は恐ろしい事をしているな。はぁ~、お前さん達が海兵なら良かったのに残念でしかたがない」

 

「海兵だと、海賊を皆殺しにはできませんからね。”ポジションチェンジ”」

 

「流石は、武装色の覇気と見聞色の覇気を極めているガープ中将。兄様や皆と考えた億超えの海賊を殺す布陣だったのですが・・・まだ、削らないとダメみたいですね。”リビドー”」

 

 皮一枚程度の傷しか負っていないガープ中将だったが、この環境下ではビビの殺人カビが傷口からダメージがジワジワ浸透する。更に、性的興奮や股間の位置ずれも気になり覇気が緩まれば、ビビがキノコを生やして養分を吸収する。

 

「その思想は変わらないか、だがそれでよい!! お前達に本物の海兵の力を見せてやる」

 

「やはり、ガープ中将も覇王色の覇気を。お孫さんがそうだから絶対にそうだと思っていました」

 

 ガープ中将から迸る覇王色の覇気。気が弱い者なら意識を失うだろう。

 

 覇王色の覇気に反応してか、ビビもガープ中将に向けて覇王色の覇気を放った。天竜人の直系であり、本物の王だ。Dの一族に対抗するにはこれ以上の切り札はない。

 

「ソラ!! ガープ中将相手に長くはもちませんよ」

 

「ガハハハハ。よもや、『海賊狩りの王女』が本当にお前達の切り札だったとは。自然系(ロギア)に加えて、覇王色の覇気まで持っているとは。いいだろう、気に入った!! 」

 

 血湧き肉躍る感覚を覚えたガープ。片手間で潰せる様な有象無象の海賊などではない。本気で殴っても簡単に死なない者達。海賊達を滅ぼす一つの刃となる存在達を鍛える事に年長者は心が沸き踊る。目指すべきところは違えど、民衆にとってソラ達も海軍とは別の形の正義である事は間違いない。

 

 視覚で捉えられるレベルでガープ中将の覇気が黒い雷を放っている。一歩動くたびに、踏みつぶされたビビのカビが消滅する。ビビの覇気の質が、ガープ中将に劣っている証拠だ。

 

 その日、未来の海軍を担うコビーとヘルメッポはガープ中将が英雄と呼ばれる理由を知った。そんな中将でも”チ〇チ〇ビームソード”とか”ムラムラビームソード”という幼稚園児が考えた様な技だけはきっちり回避していた。

 

 本気になったガープ中将を前にソラ達は善戦したが、一人ずつ確実に潰されていく。ダメージディーラーであるビビを狙うガープ中将を止めるのは至難であり、彼女を守りワズキャンとイーロンが落ちた。六式も修めているガープ中将の身体能力に、ビビが対応できていない事が原因だ。

 

「ビビ王女の能力は、自然系(ロギア)でも上位だろう。それこそ、海軍大将を狙える能力だ。特に、持久戦においてお主を超える能力者は少ない。相手に寄生し、内部から食い破る。攻撃・防御・回避・支援のいずれにも優れたバランスが良いタイプだ。だから、今のうちに教えておいてやる。この手の能力者を相手にする時の方法を・・・ソラ、ホタル。防ぎきれよ、ワシの最大の一撃を見せてやる」

 

 ガープ中将の右腕に覇気が集中する。

 

 5対1で削ったはずなのに、今では3対1。ここまでの余力を残している事にソラは、まだ届かないかと悔やむ。これから繰り出されるガープ中将の必殺の一撃。どう考えても、王女や子供が居る場所に打つ技でない事は明白だ。

 

 殴られた痛みを堪えて、ソラとホタルはお互いの刀を構えた。それは、野球選手がバットを振るような構えだ。二人の覇気が同調し共鳴する。これが、二人が放てる最大の技。巨人達の技を参考にした必殺の一撃・・・その威力は、城を一撃で粉砕できるほどだ。

 

拳骨衝突(ギャラクシーインパクト)

 

「「覇城!!」」

 

 衝突する三人の覇気が、大爆発を生む。地面に根を張ったビビのキノコ達が、更地になる程だ。その崩壊の威力は、ウォーターセブンの建物にも被害が出る。

 

 最大の技同士の打ち合いの結果、ガープ中将とソラ、ホタル、ビビが睨みあう。

 

「満足したか、小僧ども」

 

「えぇ、海軍の英雄ガープ中将に血を流させたという結果に満足です。次までに、ビビをもっと仕上げて出直してきます。後一年、いいえ、二年でビビを完成させます。六式を極めさせ、大業物以上の武器を彼女に用意する。その時こそ、海賊達の時代を終焉させてみせます」

 

「私達の全盛期は、まだ先です。これからも兄様と一緒に更に磨きを掛けていきます。その時はまたお手合わせお願いします。ガープ中将」

 

「ソラ、ホタルさん。私の目標は、そこまで高くなくてもいいんですよ。それこそ、あれ(クロコダイル)を殺せる程度で」

 

 過剰な期待が寄せられている、ビビ。六式まで覚えさせられる予定だったとは、初耳だったのでこれ以上苦しい訓練から逃げたい気持ちで一杯だ。この世界に数えるほどしかない大業物以上を用意するとかも聞いていなかった。

 

 ビビがバロックワークス時代に使っていたオモチャのような武器なんて、この先の海ではクソの役にも立たない。効率よく海賊を殺し、能力の安定運用に武器を使う選択肢はありだ。実際、カイドウですらこん棒を持っているのがその証拠だ。

 

「分かっていますよ、ビビ。あれ(カイドウ)を殺せるように鍛えます」

 

「兄様と一緒にあれ(ビックマム)を殺せるように鍛えてあげます。貴方ならできます」

 

 その様子を見ていたガープ中将は、絶対に話がかみ合っていない事を分かりつつも面倒だったので突っ込まなかった。そうして、ソラ達とガープ中将との手合わせが終わる。中将配下の海兵達は、王女ですらガープ中将に殴られても立ち上がり反撃する根性がある事を知り負けずに訓練に励んだ。

 

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