お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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34:インスタンス・ドミネーション

 シャボンディ諸島の上空を目にもとまらぬ速さで駆け抜けるソラ達。

 

 この地において、海賊に人権が無いのは当然だ。犯罪者に人権が無い事には、ソラ達は大賛成だ。だが、罪もない魚人族や人魚族にまでその範囲を拡大するのは、やりすぎだ。アラバスタ王家の客人としての立場がある人魚のケイミーがその被害者となるのは、最悪の事態だった。

 

「兄様。イーロンは、こちらに来るのですか?」

 

「いいや、イーロンにはピーターマン達のアジトを教えた。イーロンの信頼に応えてケイミーは必ず救い出す。ホタル、ビビをこちらに渡して先行してください。あちらの方が若干、到着が早そうです」

 

 ビビを背負った状態でも、ソラと同じ速度で移動できるホタル。空中でビビの受け渡しが行われる。双子の二人は、ビビにも早く六式を覚えて活躍して欲しいと切に願っていた。だが訓練する本人に「人間が空を飛ぶなど非常識だ」という先入観があると六式習得は遠のく。

 

「分かりました。”剃刀”」

 

「凄い、まだ速度が上がるんだ。言っておきますけど、私が重かったわけじゃありませんからね」

 

 当()比2割増しで速度が速くなったホタル。妹がどんどん離れていく様子を、ソラは背中の荷物と一緒に見送るしかなかった。

 

「分かっている。だから、落とされないようにしがみ付いてください。兄だって意地があります」

 

「知ってますよ。アラバスタ王家の顔に泥を塗った狼藉者を捕らえに行きましょう。このままじゃ、ホタルさん一人の手柄ですよ」

 

 1GRのヒューマンショップに全力で駆け付けるソラ達。

 

・・・

・・

 

 ソラは、ホタルに遅れ90秒後に到着した。ヒューマンショップの少し手前で、麻袋を抱えた人攫い達が血を流して倒れている。その麻袋からはケイミーの顔が出ており、彼女は人攫い達がホタルの手によって粛清される様子を目撃してしまう。

 

 凶悪な面構えの大人達を捻りつぶす光景は、平和主義の人魚ケイミーにとって衝撃的だった。刃すら通さない強靭な肉体、手足を振れば鋭い鎌鼬が発生、空駆ける様子は天使のようであり、同性でありながらその強さと美しさにケイミーは憧れに近い感情を抱いた。

 

「素敵です、ホタルお姉様」

 

「頭でも打ちましたか、ケイミーさん。兄様も到着したので、イーロンに一報入れて帰りましょう」

 

 感極まったケイミーは、ホタルに抱きついて離れない。バタバタと尾びれを振っており、大型犬を連想させる。ホタルが頭をなでると、更にブルンブルン尾びれを振るっていた。

 

 ソラは、これをイーロンが見たら頭を痛めるだろうなと思っていた。

 

 ずるずると体を引きずって逃げようとする人攫い達。人魚という莫大な金を諦められない。その根性で砕かれた足を引きずってその場を離れようとしてる。他にも電伝虫を使って、彼らの仲間に連絡を取ろうとしている者もいた。

 

 同業他社を集めて、人魚をヒューマンショップに売りたいという欲が彼等を動かしていた。この際、取り分が多少減っても構わない。儲けが0になるより、ここは一致団結が必要な彼等だった。

 

 しかし、ソラ達がそれを見逃す事もなく、死なない程度に痛めつけた。

 

「5人全員揃っていますね。イーロンがお待ちかねですので持ち帰ります。電伝虫を使った良い掃除も思いつきました。よかったですね、ビビ・・・貴方の出番がありますよ」

 

「どうせソラの事だから、碌なこと考えてないでしょ。分かりますよ」

 

 ホタルがイーロンにケイミーを無事に確保した事を伝えると、安堵した声が漏れる。大事な姪っ子が無事だったのだから叔父としては嬉しい事だ。その会話を聞いていた人攫い達は、なぜか生きて海軍に引き渡されると生易しい事を思っているようだ。

 

 そのせいか、「釈放されたら覚えてろ!!」などあり得ない事を叫ぶ。どうして、ここまでの事をしでかして、生きて帰れると思っているのか。彼らの頭の中はお花畑なのだろうか。

 

◇◆◇◆

 

 ソラ達の商船にあるワズキャンの部屋。捕らえられた人攫い達が、縛られて転がっている。ピーターマンを筆頭にした今回の主犯グループの生き残り達だ。アジトを襲撃したイーロンが怒りのあまり手加減を誤って、運がいい連中は死ねた。

 

「恩に着る。アラバスタ王家の船に人攫いに来るバカなどいないという先入観がダメだった。それが原因でケイミーには怖い思いをさせてしまった。ところで、ケイミーはどこに?」

 

「気にしないでいいさ。ホタルが付き添っているというか、ホタルにべったりというかそんな感じです。私も警戒しておくので、船内なら大丈夫ですよ。じゃあ、お楽しみを始めましょうか」

 

 今回の誘拐事件は、アラバスタ王家ネフェルタリ・ビビ王女からソラにも疑いがかかっている重大な事件だ。もし身内に、こんな外道な行いをする者が居たら、死んでもらうしかない。

 

「じゃあメインディッシュは最後に残すとして、僕も本気を出しちゃうよ。これから僕が言う質問に答えてね。まず、君たちがどうしてケイミーちゃんを狙ったか」

 

 人攫い達は、これから何が行われるか全くわからない。だが、糸鋸を持ち出された時点で彼等は嫌な予感を感じていた。その糸鋸で、口枷をされた仲間の頭蓋骨がご開帳される。麻酔なしで死なないのはワズキャンの技術力の高さゆえだ。

 

 長い針を取り出して、脳をグチュグチュとかき回す。白目になり、絶叫し、泡を吹くが、人攫いは狂えない。

 

「あっあっ・・・か、金になる」

 

「それは、人間の風上にも置けないね。彼女が一体何をしたんだい?」

 

 ワズキャンの尋問は続く。脳に直接問いかけるという実に最適な方法だ。この光景を見せられた生き残った人攫い達は素直になる事だろう。

 

「何もして・・・ない。にんぎょに、人権ない」

 

「そうなの?僕からすれば、君達みたいな屑の方が人権がないと思うよ。で、この船はアラバスタ王家の王女様が乗船している事を知ってて襲ってきたの?なぜ?誰に言われて?」

 

 ワズキャンの尋問によりスムーズに事が運んだ。彼等は、シャボンディ諸島にくる船を監視しているらしい。海賊には人権が無いので、あわよくば売れそうな人材は攫ってヒューマンショップに売っている事が判明した。

 

 アラバスタ王家の王女が乗船している商船ともなれば、いい女も沢山いると考え監視していたら人魚を確認したので狙ったとの事だ。ヒューマンショップに売ってしまえば、後は世界政府の責任範囲で知らぬ存ぜぬを通す。これが、彼等のやり方だ。

 

 こんな恐ろしい程のバカによって、イーロンとワズキャンは出し抜かれてしまう。

 

「世の中、バカってすごいですね。誰もやらないと思った事をするから出し抜かれると・・・。イーロン、こいつらの処分はどうしますか?この場で殺すか、使い潰して殺すか、自由にしていいよ」

 

「そうだな、同じ空気を吸っていると思うだけで気分が悪くなる。だが、こういう場合、楽に殺してやるのは少し違う気がする。儂は、こいつらに苦しんで死んで欲しい。ソラならどうするんだ?ビビをこの場に連れてきているって事は、何か考えがあるんだろう?」

 

 ソラは、ビビの新しい力を見せる時が来たと目を輝かせる。

 

「使い潰して殺す。ビビ、新しい能力をお披露目する時です。やはり、ゴミにゴミ掃除をさせるのが我々海賊狩りの基本です。初心に帰る事・・・大事な事ですよね」

 

「本当にソラって、えっぐい能力を考え付きますよね。・・・”インスタンス・ドミネーション”!!」

 

 ビビが極小範囲に覇王色の覇気を放った。それに、カビの胞子を乗せる。意識を失うという事は肉体の制御が一時的に失われる事だ。そのタイミングで、カビカビの実の能力でタイワンアリタケが寄生し宿主を操り人形にする。

 

 ビビの覇王色の覇気で気絶しないだけの胆力があれば無意味な能力だが、気絶した有象無象のザコ達は一斉に寄生されて肉体の操作権限が奪われる。一度感染すると、首筋から根が深く伸びる為、無理に引き抜けば重度の障害を負う事に繋がる。

 

「まずは試運転も兼ねて、町中の人攫い達を攫ってきてもらいましょう。それから、賞金首の海賊船長と徐々にランクアップです」

 

「あまり難しい命令は出せませんからね。はぁ~、お父様になんて報告しようかしら。もう、悪魔の実の能力者だって隠し通せなくなってきましたよ」

 

 確かに、無理があるだろうなと考えるソラ。

 

 獲得賞金額がヤバすぎるし、ガープ中将との一件もあるので「無能力者です」とか言うと、逆に疑われる。説明責任はあるとソラは認識しており、だから正直に伝えようと思った。

 

「私が責任を取って説明しますよ。ビビを欲しいといって、航海に誘ったのは私です」

 

「ふふ、そうですよね。期待していますよ、ソラ」

 

 人攫い達は、その身に何が起こったかもしれずに、この世から死んでいくことになる。弱いと死に方を選べない、典型的な例だった。

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