シャボンディ諸島の大混乱。港では沢山の海賊船が燃え、怒号が響く。海賊に殺された人攫い達の死体が無数に転がっている。だが人攫いや賞金稼ぎを殺しても、連れていかれた海賊船の船員は帰ってこない。
海賊達は、シャボンディ諸島に人攫い達がいる事実を知っている。海賊に人権は認められておらず、ヒューマンショップに売りさばいている事実も知っている。その為、油断なく警戒していたが、イナゴの大群のように押しかけて船員を奪い逃げ去られるとは想定していなかった。
そのせいで攫われた海賊達は合計300人を超えた。賞金稼ぎ達による襲撃も合わさり、いくつもの海賊団が新世界入りを諦める事になる。だが、海賊達の絶望は終わらない。一時間毎の頻度で人攫いが舞い戻ってくる。その際は、なぜか、攫われた海賊達が海賊を攫って行くという悪循環だ。
海賊にとっての悪循環は、ソラ達にとっては好循環だ。
「”チ〇ブルズ”」
「”インスタンス・ドミネーション”」
攫われた海賊達は、ソラにワンピースを奪われ、ビビに操り人形にされる。”チ〇霊箱”として、海賊のワンピースが利用されソラの残機が増える。億超えの海賊達もいるので、保険は大事だという事で準備を怠らない二人だった。
「海賊達もバカじゃないはず。こちらの拠点もバレたと思いますので、次の場所に移動しましょう」
「レーダーに反応があったんですね。数が少ないなら、ここで仕留めておきましょうソラ。億超えに徒党を組まれる方が危険です」
細かい内容が指示できないゾンビ兵達は、億超えの海賊にも手出しをしていた。その報復として、幹部クラス以上がこちらに向かってきている。メリットとデメリットを天秤にかけたソラは、この場で向かってくる海賊を殺す事にする。
「分かりました。では、この場にいる海賊達に私が紛れ込みます。雑魚海賊を装って、致命の一撃を与えます。ビビは、堂々と黒幕を演じて一斉に飛び掛からせてください」
「・・・なんか、姑息ですね。私だって強くなっているんですから、たぶん大丈夫です」
罠とも知らずに飛び込んでくる海賊。
・・・
・・
・
“大喰らい”ジュエリー・ボニー。彼女は、懸賞金1億4,000万ベリーの大物だ。そして、珍しい女性船長として、その恵体に惹かれた船員も数多い。身体の割にはどこか幼い感じがある彼女のギャップに惚れこんだ変態な船員達と彼女はここまで航海してきた。
目の離せない娘みたいだと思っている船員もいる。そんな彼等が攫われたとなれば船長として、相手を叩き潰す覚悟で彼女は乗り込んできた。町の情報屋達に大金を支払い正確な情報を入手し、人攫いの親玉ピーターマンがいる場所にたどり着く。黒幕のビビがそこで待っているとは知らずに。
ボニーは、王座の椅子に座る謎の人物を目にする。黒いローブに身を包み覆面までしている。分かるのは体格から女性であるという事だけだ。
「どういうことだ。ピーターマンは男だって話だぞ」
「こちらも話が違いますよ。4人って聞いていたのに5人。なんで、唯一の女性船長がくるんですか」
黒幕の雰囲気を頑張るビビ。だが、ソラから聞いていた話と違う事に文句を言っていた。女性に対して、雑魚雑魚になる不能改め無能になるチ〇チ〇の実だという事でソラをからかってやろうと、ビビは仕事の終わりが楽しみだった。
「どっちでもいいか、お前が人攫いの親玉か。絶対に許さねぇーからな!!」
「ふ~ん。意外と良い船員に恵まれたようですね。私は、今まで海賊の被害にあった沢山の女性達をこの目で見てきました。貴方からは、彼女達から感じた女性特有のあれを感じない」
船長である彼女自身が強いから、船員の誰も彼女に手を出せていない。他にもボニー海賊団内部での紳士協定という物が存在している。抜け駆けは禁止というやつだ。そう聞くと良い海賊団に思われるが、1億を超える海賊だ。当然、今までの航海で色々とやらかしている。特に、食事に関してはルフィに匹敵するほど食べる彼女だ。食費は馬鹿にはならず、海賊らしく略奪も行っていた。
「ごちゃごちゃうるさい。悪魔の実の能力で、こいつ等全員を操っているんだろう。だったら、お前をボコボコにして解除させてやる。お前等、いくよ」
「いいえ、貴方には無理です。チェックメイト」
ビビが指をパチンと鳴らすと、周囲で膝をついてビビに頭を下げていた海賊達が一斉にジュエリー・ボニー達に襲いかかる。雑魚海賊になど負けない者達を連れてきた彼女だったが、そこにソラが紛れ込んでいる。
ソラは、彼女の背後を取る。
「バーソロミュー・くまに会えずに死ぬことになるのは運命でしたね」
「なんで!! それをっ!!」
ジュエリー・ボニーが振り向くと、そこにはソラが両手を突き出していた。見よう見まねで訓練している六式の奥義。
「六式奥義”六王銃”!!」
衝撃を拳から発生させ人体を内部から破壊するこの技。ゴム人間であっても、臓器にダメージを与える事が出来る究極の技の一つ。その覇気が乗った一撃は、ジュエリー・ボニーに致命傷を与える。
骨は折れ、肺に肋骨が突き刺さる。脊髄にもダメージが残り、生涯自分の足で立つ事が不可能なレベル。それでも死ななかったのは、超新星と呼ばれるルーキーだった証明だ。
「嘘だろう、ボニー船長が一撃で・・・!?」
「お、俺たちは海賊をやめる!! だから、ボニー船長を助けてくれ!! お願いだ!!」
彼女の仲間は、直ぐに投降の意志を見せた。だが、そんな時間稼ぎに応じるほどソラもビビも甘くはない。この投降をする真似事は、ジュエリー・ボニーが回復する貴重な時間を稼ぐための物だと当然気付いている。
仮に彼の投降を認めたとして、ジュエリー・ボニーが無事ならば直ぐに海賊に再就職する。海賊とはそういう連中だ。親の顔より見た芝居にビビもため息が出ていた。海賊をやめるのでしたら、ついでに人生も辞めてもらう。出来るだけ多くの海賊を道連れにして。
「一撃で死ななかっただけ、割と誇ってもいいですよ。私もあれを食らうと暫く立てませんから・・・ジュエリー・ボニー配下の貴方達は、まだ使い道があります。”インスタンス・ドミネーション”!!」
「ビビ、予定変更です。全て”グリーン・ディ”で処分してください。そして、こちらも同じく処分です。彼女の存在は、見つかると厄介になりそうなので首もいりません」
ソラは、ジュエリー・ボニーの処理を依頼した。王下七武海バーソロミュー・くまの娘である彼女を殺したのがバレると後々問題になる。換金するより、この場には誰も来なかったと、今回のシャボンディ諸島の大事件で行方不明になったとする方が得策だと判断する。
「分かりました。”グリーン・ディ”!!」
「予想より、海賊の動きが早い。嫌な予感がします。ビビ、集めた海賊達も全て頼みます。証拠隠滅の為、ここも焼き払います」
ビビがソラの指示に従いせっかく集めたゾンビ兵達も全て処分する事になる。そして、用意していた火薬に火を付けた。これですべては闇に葬られる。
ソラの直感は正しい。この場所が割れるのが早すぎた。町の情報屋達は、億超えの海賊達に人攫い達や賞金稼ぎ達の情報を売りつけている。情報は鮮度が命。だから、ここにも続々と船長クラスの海賊が現れる。
億超えの海賊達が徒党を組んで、人攫い達の拠点を訪れた時にはそこは業火に包まれていた。焼け跡からは、連れ攫われた海賊達の船員の骨が僅かに見つかるだけで何の手掛かりも残っていない。
人攫い達は全滅し、賞金稼ぎ達は一時の金を得るが報復で痛い目を見る。そして、海賊達は甚大な被害を受けた。
◇◆◇◆
ソラとビビが証拠隠滅を図っている頃。
協調性のかけらもない海賊達だが、シャボンディ諸島の一件で痛い目を見た。一人一人は弱いが、数が多い。また、人攫いのプロが船員を攫って行く。攫われた海賊もなぜか人攫いに加担し始める謎の状況だ。
同時に町中の賞金稼ぎがここぞとばかりに首を狙ってきており、海賊達も疲れ切っていた。
だが、この可笑しな状況は当然、悪魔の実の能力が絡んでいると直ぐに当たりを付ける。この世の不思議な事は大体、悪魔の実が原因だ。
このままでは新世界に着く前に、大事な船員が減った事で出発が遅れる。それだけに留まらず、海軍本部が目と鼻の先だ。海賊がいつまでも長居するような場所でもない。そこで、新世界に行くまでのわずかな期間・・・人攫い達と賞金稼ぎ達の問題を解決するまで手を組んだ海賊達。
「ボニー海賊団は、声をかける前に突っ走りやがった」
「そりゃ、死んだな。どこのどいつか知らねーが、舐めた真似しやがって」
「占いでも凶と出ている。生存率0%だ」
集まったのは億超えの
「だが、他にも先走った連中もいる。俺等ほどじゃないが、5,000万ベリー程度の中堅海賊団が4つ程、『海賊狩りの王女』の所に向かっていった」
「ガープと引き分けたとかいう悲劇のNTR王女一行か?あいつ等が今回の一件に関わっているのか」
「分からんな。占いでは、
王女一行ではない、あの一団はソラ一行だ。正しい情報がなければ占いも成立しない。ホーキンスの占いの精度はヤバいため、ソラとしては彼を早めに殺しておきたいと思っていた。
賞金稼ぎ達への報復も当然行われていた。ここに参加していない億超え達が、皆殺しに向かっていた。
「刀を使う女のガキと魚人の二人を相手に全滅だ。生存者は誰もいない」
「ガキに興味はねェ」
「やめておけ。関わると碌な事にならない可能性が85%だ」
『海賊狩りの王女』は、そんな化け物たちを従えているという事になる。新世界を目指す海賊達の障壁となる事は間違いないと誰もが思っていた。億超えのルーキー達の中では、ビビの実力は王下七武海級となる。
そんな実力者にわざわざ喧嘩を売る必要はない。シャボンディ諸島の特有の人攫い問題に実力ある王女が絡んでいるとは、誰も思わなかった。
ゾロさん、悪いけどクソ天竜人をぶった切ってくれ。