この世界の住人は、一生を島で過ごす人間も数多い。その理由は、航海に危険が伴うからだ。海王類といった化け物級の海洋生物がいるおかげで、島で一生を過ごした方が安全な可能性すらある。
そんな退屈な人生に強烈な刺激を与えたのが、海賊王ゴール・D・ロジャーだ。彼の言葉で人々は海へと向かう。彼が残した"ひとつなぎの大秘宝 ワンピース"を目指して。彼が死んでから20年以上も経過しているのに、ワンピースにたどり着いた者は誰もいない。
まさに停滞した20年だ。そのおかげで、様々な憶測が飛び交った。
ワンピースは、存在しない説
ワンピースは、航海した仲間説
ワンピースは、海軍が隠している説
人の数だけ、ワンピースが存在する。実際、海賊王の仲間が存命しているのに、なぜワンピースを取りに行かないのかといった多くの謎がある。
ソラとホタルは、武器の手入れをしながらワンピースの存在を考察するネタ話をしていた。
「では、兄様にとってワンピースとは何なのですか?」
「ひとつなぎの大秘宝・・・人を繋ぐ大秘宝と考えれば、チ〇チ〇の事じゃないか。男と女を繋ぐ事で子供という大秘宝が産まれるのだから、嘘とは間違っても言えない。事実、ゴール・D・ロジャーですら子供を持つことで人が変わったと言われている」
ソラは我ながら素晴らしい推論だと考えたが、ホタルやそれを聞いていた船員たちがため息をついた。このような結論になるのは分かっていたが、妹の・・・それも女性の前でそこまで言うかと呆れられる。
「兄様、人前でそれはセクハラになるので言わないでくださいね」
「TPOは弁えているよ。・・・・・・で、ホタルも気が付いたと思うが、恐らく目標だね」
ソラとホタルは、殺すべき海賊達の気配を察知した。
気配から大規模である事を理解する。この規模の人数が海の上におり、性欲を溢れさせていればこの二人の能力で居場所など手に取るように分かる。事前に情報屋から手にいれた
「クリーク海賊団。規模や総合賞金額も悪くない。この規模ならば、トップであるドンクリークを幹部船員で殺せる可能性も十分ある」
「イーロンさん。私の感覚では、五キロ先に性欲を溜めた男性が多数います。闇に紛れて海底から偵察をお願いします」
覚醒したムラムラの実の能力者は、伊達じゃなかった。そのレベルで感知できるとは、男性にとっては恐怖。同じ船員達から感じる劣情に対して寛容なのがせめてもの救いだ。
だが、同じような事はソラにも可能だった。男根が海上で密集しているのが分かる。流石にこの距離からの操作は難しいが、大体の方角は分かっていた。
「儂は魚人島出身だから能力者はそれなりに見てきた。だが、お前達ほど酷い能力者には会った事が無い。男社会の海賊にとっては、本当に最悪な能力だ。海賊に同情する心は持ち合わせていないが、同性という観点でいえば同情する余地はある。お前ら二人揃えば、本当に海賊を根絶やしにできそうだ」
悪魔の実は、食えば大体強くなれる。だが、フル・T・兄妹が食べた悪魔の実は、悪い意味で特別だ。戦闘力が爆発的に向上する事はない。しかし、付与される能力が異次元に酷い。
「当然だ、イーロン。私とホタルが必ずこの海に平和を取り戻す」
「兄様や私のような不幸な子供がこれ以上増えないために、私達ができるだけの事をします」
肉体の鍛錬、能力の鍛錬など出来ることは全てやってきた。海賊の情報を集め、対海賊用の毒ガス兵器まで仕入れている。海賊の賞金には、生存onlyという事もある。だから難易度が跳ね上がる。賞金より殺す事を優先すれば、難易度は大きく下がる。
これこそ最善を尽くすということだ。
フル・T・兄妹にも当てはまる事だが、悪魔の実と海賊という職業の相性の悪さはすさまじい。悪魔の実の能力者は、取り返しのつかない弱点を負う。海賊なのに海を泳げない。一部例外を除き、悪魔の実を二個食べると即死。海楼石という特攻兵器を食らうと能力が使えないだけでなく、赤子のように弱体化。
これほどまでの弱点を抱えるからこそ、魚人族や人魚族とは仲良くしておく必要がある。船底に穴でも開けられたらそれだけで能力者はおしまいだ。
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夜になり、周囲の視界が真っ暗になると同時にソラとホタルが動く。小型のボートを魚人のイーロンが引っ張り、クリーク海賊団の近くまで移動する。能力が届くギリギリの範囲からそれは行われた。
「チ〇チ〇ビーム!!」
「ムラムラビーム!!」
海賊団を丸ごと飲み込んだ最悪のビーム。その効果はすぐさま現れる。海賊団から感じる淫の気を遠くにいても感じ取れた。
「なぁ、いつも思うんだがその技名を言わないとビームは撃てないのか?」
「撃てたら言っているわけないだろう。本当にこの謎システム辞めて欲しい。相手に手の内がバレてしまうから嫌なんだよ。そういうイーロンだって、魚人空手を使う時に叫んでいるだろう」
「はいはい、バカやってないで帰りましょう兄様、イーロン。明け方には、全てが終わっているでしょうし」
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夜が明けた。各々が得意な得物を手に、クリーク海賊団を狩りに行く。
遠目でもはっきりわかるレベルで、海賊船が何隻も燃えていた。海上には略奪品だと思われる食糧などが散乱している。後で、イーロンが必死で海底も含めてかき集めることになる。おかげで、いい加減新しい魚人を雇ってくれと彼は眼で訴える。
「志を同じくできる魚人がいれば、考えよう。それじゃ、乗り込むか。生存者は、15名ほどだ。思ったより死んでくれたな」
「兄様、クリークはどうします?」
ホタルは、大業物アマノムラムラ雲を取り出した。大業物に恥じない切れ味で、そこら辺の鉄ならばスパスパ切れる。使える物はなんでも使う為、剣士というわけでもない。あった方が効率よく海賊が殺せるからだ。
「私がやろう。鬼人のギンは、任せたよ」
ソラの男根センサーとホタルのムラムラセンサーでは、微弱だが他の者より強い反応を示すものがあった。そいつらこそ、この船団の幹部であることを示していた。
フル・T・兄妹がクリーク海賊団に乗り込んだ先に広がる、この世の地獄絵図。汚い尻を丸出しで血や糞尿、白い液体を垂れ流して死んでいる死体が転がっている。海賊達は己の尊厳を守るため、幹部達を相手に立ち向かったのだろう。それが手に取るようにわかる。
むろん、無勢に多勢であり、幹部とて無傷ではない。そもそも、精神に異常をきたすレベルのムラムラ状態だった為、正しい思考ができていない。つまり、普段は食らわない攻撃もくらってしまっている。
鼻が曲がるような悪臭が充満しているが、覇気で鼻を守っている二人には耐えられるレベルだ。
これ以上ない悲惨な死にざまがあふれている死体の山の上には、野獣と化したクリーク海賊団の船長であるドンクリークが全裸で勃っていた。文字通りの意味で。
「大海賊団の船長が無様。滑稽です。今の貴方の姿を被害者の皆様にお見せしたいほどです。まだ、私が敵だと認識できるレベルで意識はありますか」
「GAAAAAAAAAAAA」
まるで、獣のような雄たけびを上げてドンクリークがソラに襲い掛かる。新しい獲物を見つけたかのような嬉しそうな顔だ。彼の性欲は、まだまだ未消化。船内の獲物は、ほぼ使い物にならなくなっており、新しい餌にありつけたと彼は喜んでいた。
ドンクリークが捕まえようと飛び掛かるが何度も紙一重でソラは避け続ける。六式の一つである紙絵の訓練材料として扱われているとも知らずに、ドンクリークは必死に追いかけた。あと一歩、あと一歩でと思わせる事で獣は頑張り続ける。
それが20回を超えた頃には、流石にこれ以上は訓練にもならないとソラは判断した。
「知能が低下した
ソラが言葉を発するとドンクリークのご立派がボキという音を立てて90度横に曲った。まるで、骨折したかのような音と折れ具合に男性なら思わず前かがみになってしまう。覚醒した超人系の能力者は、多彩な攻撃が売りである。
この凶悪なダメージで獣とかしたドンクリークも一瞬我を取り戻したが、何もできない。痛みとやらかした惨状で心が死に絶える。その一瞬の空白の時間。
指銃がドンクリークの脳天を貫いた。確実に脳を破壊することで人間は死ぬ。