海賊は、『モーガニア』『ピースメイン』に分類できる。
モーガニアは、海賊らしい海賊だ。海の無法者と呼ばれる連中は、これに属する。己の欲望のため、行く先々で略奪を行う。略奪品は裏社会に流れてしまう。その裏社会は、略奪品を正規品より安く販売する事で綺麗なお金を手に入れるという構図まで出来上がっていた。裏社会にとっては、モーガニアは商品の大事な仕入先になっている。
正義の看板を背負う海軍はモーガニアを許していない。無法者達に賞金を懸けて、海賊狩りが無法者の首を落とす事に期待している。世界の防衛機構である海軍であっても、広い海を完璧に守る事はできない。
ピースメインは、善行を行う海賊というのが似合うだろう。己の独自の正義感で行動する者が多い。その正義感を貫くため、強く折れない心を持つ。その結果、世界政府、海軍へ与える影響力が大きい為、賞金が掛けられている。そもそも、海賊行為が禁止されているのだから、そこを上手に対応すれば彼らは商人や海賊狩りに分類されるだろう。だが、それでも彼らは海賊を名乗る。
本日、ソラとホタルは仲間を連れて、特別な男に会いに来ていた。『モーガニア』『ピースメイン』にも属さない特別な存在。しかし、ソラの仲間達は、誰もこれから会う男の事を信じていない。船長であるソラの言葉を信じないとは、酷い船員達だ。
皆を納得させるために、ソラはこの地にいる大物の存在を伝えたが誰も信じてくれない。血を分けた妹ですら、兄の言葉を信じる事が難しいほどだ。イーロンなんて、そんな男がいたら鼻からスパゲティを食べてやるとまで言う程だ。
「ソラ、現実を見ろ。56皇殺しを達成したとか、ワンピースの存在より非現実的だ。”白髭エドワード・ニューゲート”、”ビックマム”、”百獣のカイドウ”、”赤髪のシャンクス”が現4皇なんだ。儂の知る限り、直近の入れ替わりもない。そんな化け物を56回も殺した奴が生きているなら世界は終わっている」
「兄様の事を疑うつもりはないのですが、これは流石に信じられません。それに、山賊のわりに高額な懸賞金というのも胡散臭いです。どこの誰が賞金を払ってくれるんですか?念のため、海軍に確認したら山賊?と聞き返されましたよ」
イーロンとホタルが、当然の疑問をぶつけてきた。ソラもそんな気はしないでもない。だが、夢を見たっていいじゃないかと思っている。だが、本当に56皇殺しの可能性もある。その証拠をソラは持っていた。
「疑う気持ちもわかる。だが、これは実際に起こった話だ。この地には、”赤髪のシャンクス”がいた。その彼に対して、56皇殺しのヒグマさんは、酒場で”赤髪のシャンクス”の頭を酒瓶で殴ってケガをさせた。それも、彼の仲間がたくさんいる場所で、誰に止められることもなく!! 4皇がここまでコケにされたにも関わらず、ヒグマさんは煙幕一つで無傷でその場を立ち去ったんだ。同じ事ができる4皇がいると思うか?」
「兄様、それは皆が夢を見ていたのでは?そういう悪魔の実があっても不思議ではありません」
まだ、兄を信じようとしない妹にソラは立ち向かう。
イーロンは、白髭を遠目で見た事があるため同じ事が現実的に可能か考えたが不可能だと判断する。
「覇気を持つ4皇やその部下達だぞ。簡単に悪魔の実の術中にはまるはずがない。更に続きがある。”赤髪のシャンクス”は、近海の主に片腕を食いちぎられた。イーロン、確認だが・・・4皇が
「ない!! 不可能だ。天地がひっくり返ってもない。まさか、そのヒグマという男が”赤髪のシャンクス”の腕を奪ったのか!? 」
「その通りだ。私は、そう考えている。多種多様な悪魔の実がある為、ヒグマさんが何かしらの能力で長寿になっており、本当に56皇殺しをやった可能性もある」
ソラは、ヒグマこそイム様ではないかと思っている。だが、その事を軽々しく口にしない。イムの名前を知っているだけで、間違いなく高額賞金が掛けられる。下手すれば、バスターコールされる事もある。
それから三日ほど、村に滞在したが結局目的のヒグマは、現れる事はなかった。村人達からもその存在だけはしっかりと認識されている。だが、彼が現れたのは”赤髪のシャンクス”が来た時だけだと判明した。
その日以来、山賊の存在は消えたかのようになくなっている。
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ヒグマに会えなかった事を悔やむソラ。だが、時は金なりともいうため、
ターゲットの犯罪歴をソラは仲間内に配る。
同じ魚人であるイーロンとしては、同属の恥だとも言える内容だった。だが、同属の恥というなら、人間の恥は際限がないので辞めて欲しいとソラは思っている。
「20の村を制圧し、身代金を要求。更には、住民の殺害。航海士としての才能があった女の子を強制加入。海軍のネズミ大佐との癒着・・・まるで、モーガニアのお手本みたいな海賊です」
「兄様、海軍と癒着があるのは面倒ですね。こちらも、誰かに同行を依頼しますか?」
下手をすれば海賊狩りからピースメインに早変わりさせられる可能性もある。身元を保証するため、善良な海軍兵士が居て欲しいところだ。
ホタルの心配も理解したうえで、今回戦闘に参加するワズキャンが口をはさむ。
「別に問題ないんじゃない? いざとなれば、ガープ中将にでも取り次いでもらえばいいしさ。その為に顔つなぎもしていたんでしょ。大丈夫だよ、僕の勘が正しければいつも通りにやれば、いつも通りの結果さ」
「ワズキャンの勘は当たるからね。グランドラインにいる魚人が
「普通は、同じ魚人を相手にさせないように配慮するところじゃないのか?」
「同族殺しができないような半端者は、私の船にいない」
その通りだと、全員が納得する。海賊であれば女子供であっても、皆殺しだ。悪の芽は弱いうちに摘むべし。それが、海賊狩りの鉄則だ。
◆◇◆◇
アーロンパークと呼ばれる場所。そこは、魚人海賊であるアーロン一味の根城だ。この場所は、昨今海賊達がなぜか押し寄せてきた。そのおかげで、ご自慢の五重塔や壁の一部がボロボロになっている。
アーロン一味の首を狙ってきた者達は、全員が必死の形相だった。刺し違える事も厭わない根性ある海賊達のおかげで、アーロン一味は少なからずケガを負っている。誰もが、己のワンピースを取り戻すため、高額の首を狙うしかなかった。弱い海賊が淘汰され、居場所が明確な海賊を狙うのは理に適う。
もちろん、勝てればだが・・・。
「まったく、どうなってやがる。海賊が海賊を襲って何になるんだ。そんな暇があるなら、略奪でもしろ」
アーロンパークに並べられている海賊達の生首。魚人相手には、
「た、大変です。アーロンさん、また港に海賊がきました」
魚人海賊団の一人であるシオヤキが慌てて報告に来た。人数が少ないアーロン一味にとって、数の暴力とは存外馬鹿にできない。覇気を習得していないため、刀や銃で攻撃されたら傷がつく。
「また来やがったのか、次はどこのどいつだ?」
「それが、よくわからねーんだ。麦わらを被った野郎とその仲間達。それとナミが居やがった」
この時、アーロンが気が付いた。この海賊襲撃事件の真犯人が誰なのか。いつか裏切ると思っていたが、そういう方法を使ってくるとはアーロンとしては姑息で大嫌いだ。
「はははは!! 歓迎してやるよ。人間って奴は、姑息だよな。海賊達を俺らに嗾けて弱ったところを狙わないと勝てないんだからな。なめるな、人間風情が!!」
切れ散らかすアーロンの怒りを受け止める事になる”麦わらのルフィ”一同は、ソラとホタルの事を恨んでも罰は当たらないだろう。