地獄の始まり。ビッグ・マム海賊団の第二波として4万以上の兵力があったが、どんどん潰されていく。海軍の英雄ガープ中将単騎の恐ろしい戦闘力もそうだが、王女ビビ率いる軍事同盟側も負けてはいなかった。
CP9の中で最弱だったカリファの戦闘力は、エニエス・ロビー時点のルッチに匹敵する。アワアワの実の能力で海賊船全体を包み、持ち上げる程の能力に至っていた。持ち上げられた海賊船は、そのまま限界高度に達した所で海面に叩きつけられる。
「”シャボンカッター”!!」
「ふざけた能力だが、女一人だ!! 全員でやっちまえ !!」
カリファの周りには浮遊するシャボン玉が高速回転していた。それらは鋭い刃となり、岩すら貫通する弾丸となる。軌道は直線でなく、カリファの思うがままだ。アワアワの実は戦闘力がない使いにくい能力だと彼女自身も思っていたが、ソラからの能力指導で戦闘力が格段に上がった。能力の元ネタは、この世界では誰も知る事がない奇妙な冒険のアレだ。
大きなシャボンを作れば、それこそ軍艦ですら一刀両断できる。
「これだから海賊は嫌いなのよ。悪いけど時間がないの、焼け死んで頂戴・・・”シャボンレンズ”」
虫メガネの原理を利用し、上空に展開したシャボン玉で太陽光を収束させる。海賊船には一瞬で火が付く。消火すら間に合わず、次々に燃え広がるだけでなく、太陽光を海賊に当てる事で海賊達も焼け死ぬ。
能力の可能性を示唆してくれたソラに、カリファは尊敬の念を抱く。己一人では、ここまで能力を活用できなかったと。
一仕事終えた所で、カリファの元に空間が開く。ブルーノのドアドアの実による空間移動だ。カリファはその空間を通じて次の海賊船をつぶしに向かう。その空間内部には休憩スペースや物資まで準備されている。
ブルーノもソラの元で能力開発を受けていた。ドアドアの実は、無限の可能性がある。そこは、彼しか出入りできない異次元だ。この能力も参考にされたのは、某ハンター漫画だった。能力開発において、やはり参考があると指導する側、指導される側も具体性が見えて形にしやすい。
「迎えに来た。次の船に案内する」
「ありがとう、ブルーノ。それにしても、便利な能力になったわね。”
利便性ではCP9で間違いなくトップとも言える能力へと進化している。何処でも無条件に出入りできるだけでなく、強制的に扉から引き込む事もできるようになった。
「あぁ、そうだ。カリファはこれで二隻目か。ルッチは既に5隻沈めている」
「流石ね。こっちも負けてられないから次に行くわ。頼んだわ」
想像以上の成果をたたき出すCP9達。彼等を切り捨てた世界政府にソラは感謝していた。今の彼等が”麦わらの一味”と再戦した場合、勝敗はCP9達に軍配が上がるだろう。
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ソラの手から海賊の返り血が滴り落ちる。ビッグ・マム海賊団傘下の海賊船長を殺したところだった。心臓を貫かれた海賊船長は絶命しており、その船員だった海賊達が恐怖する。海賊船の船長と言えば、一番腕っぷしが強いか、カリスマ性がある奴だ。
新世界で一端の海賊をやっていた自負がある海賊達は、子供に圧倒されるなど想像もしていなかった。世の中には幼少期のビッグ・マムのような化け物がいるのも事実だが、そんな子供はめったに現れないから化け物なのだ。
「船長の懸賞金は、8,000万ベリーだぞ!! こんなガキにやられるなんてありえねぇーよ!!」
「何が不思議なのですか? 私の方が強かっただけです。ですが、貴方達は運がいい。今日は私のような子供だけでなく、大人の女性も来ておりますよ。ねぇ、ビビ?」
甲板に降りてきたビビ。月歩で船と船の間を移動し、ここまでたどり着いた。そこにいるだけで存在感があるビビに、海賊達は一歩後ろに下がる。まるで、四皇の目の前に立つような恐怖を感じていた。
海賊達は、ビビの眼が自分たちを同じ人間だと見ていない事を察する。道端の石ころを見る目であり、眼中にない。
「ソラは仕事が早いですね。覇気で抵抗できそうな者は残っていませんので、後は任せてください。”インスタンス・ドミネーション”!!」
「最前線で力が使えないと困るので、6割は余力を残してくださいね」
ビビの能力と覇王色の覇気を併用した技でカビの操り人形となった海賊達が、乗ってきた海賊船を破壊し、同じ釜の飯を食った仲間同士で殺し合いを始める。最後には海に帰り、魚の餌となる。母なる海に海賊すら返すビビの優しい能力だ。
「当然ですね。ソラ、残りはどの程度ですか?」
「チ〇チ〇レーダだと・・・直径5km圏内に、13隻。少し離れているからイーロンの迎えを頼もう。それまで、一休みしよう。少し冷静になる時間が必要です」
ソラは、ビビの手を取り海賊船の中へと足を運んだ。命のやり取りをしていると子孫を残そうという本能が働く。いわゆる興奮状態に近くなる。冷静な判断力が必要な場面では致命傷になる。よって、一度スッキリさせておこうという判断だ。
「ソラ、ホタルにばれちゃいますって。ムラムラレーダーで把握されているんですから」
「でも、そういうの好きでしょ?急ぐので、我慢しないでくださいね」
ばれるも何も、毎晩特別訓練をしている時点でばれている。それどころか、ホタルから「ビビをお願いしますね」とソラが頼まれていた。そうでなければ、妹の服を借りてビビの部屋に女装して行くなどしない。
堕ちた王女は、ソラに手を引かれて海賊船の人目がない場所に移動した。血と硝煙の匂いがなければ、迎えに来たイーロンが異臭に気が付いただろう。ビビは匂いをごまかす為、更に気合を入れて海賊を殺しまわる。
◆◇◆◇
ガープ中将の船では、海軍本部との連絡を密に行っていた。彼等もビッグ・マム海賊団の第二波を警戒しており、場合によっては作戦の変更が必要だ。だからこそ、海軍本部に報告する海兵も状況を詳しく把握するのに務めていた。
数万を超える大兵力が居たはずなのに、残っている海賊船の数が激減している。
「嘘だろう!? 残り7隻だけ? 後は、全て海の藻屑にされたとか信じてもらえるのか…?」
「はっはっは、真実をそのまま伝えれば問題なかろう。それにしても、もっと時間が掛かるかと思ってたが楽に片付いたわい。電伝虫を貸せ、ワシが報告してやる」
ガープ中将は、電伝虫を使い作戦本部に連絡した。
『こちらガープ、こちらガープ。後方にいたビッグ・マム海賊団の大半は掃除した。そっちはどうじゃ?聞こえとるか、センゴク』
『そんな大声ださんでも聞こえとるわ。後方にも数万の兵力が居たはずだぞ。討ち漏らしされては、最前線が混乱する。大丈夫なんだろうな?』
『大船に乗ったつもりでいて大丈夫じゃ。あいつらは、海賊を殺す事にかけては海軍より数段うまい。捕らえるなんて生ぬるい事はせんからな』
『ならば、そのまま海軍本部に向かってこい。背後からビッグ・マム海賊団を奇襲しろ。こちらは、拮抗中だ。サカズキ達も戦っているが、三味線を引いているような気がしてならん。あいつ等が本気なら最高幹部の一人や二人などすぐに打ち取っているだろうに』
センゴクは、軍事同盟との約束は当然知っている。後方を軍事同盟に任せており、最前線は引き受ける事になっている。だが、手が空いたなら使うのは当然だ。後で何か追加要求はされるだろうが、ここで勝たねばそもそも約束すら守れない。それは、軍事同盟側も望むことではない。
その結果、多少の要求は増えるだろうが、四皇”ビッグ・マム”をこの場で滅ぼせるのならば安い出費だ。
『あいつ等を連れて行くのは、構わん。だが、既に読まれていたようじゃな。今から言う条件を即刻承諾しろ、センゴク。三つだ。1つ、インペルダウンの囚人達を頂上戦争後に全員処刑。2つ、聖地マリージョアルートを海賊に開放。3つ、天上人が奴隷にしている軍事同盟参加国の犯罪歴のない者の解放』
『1つ目は、確約できる。だが、2つ目、3つ目は調整が必要だ。努力する・・・これでいいか?』
それで十分だと思いガープ中将は、通信を切った。
孫と近いような年齢だというのに、世の中色々な奴らがいるなとガープ中将は物思いにふける。今もどこかで・・・いいや、それどころかこの戦場の何処かにルフィが居そうな気配すら感じていた。
だからこそ、ソラの事をガープ中将は気にかけている。なんか孫の気配を感じるな、と言った感じで。