ソラとしては、一刻も早くこの研究所を消滅させて離れたい。その理由の一つが、ルフィの存在だ。偶然、彼が居ないからそこまで大きな問題にはなっていない。ナミは、こちらの立場も理解した上で配慮した発言をしている。
アラバスタの一件の真実を知るスモーカー中将は、ビビと”麦わらの一味”がある程度繋がっていると疑っている。だが、彼は律儀に知らないふりをしてくれている。その他大勢の海兵たちが知るべき真実でもない。
「ソラ。ホタル達もこの基地前に到着しました。子供達の衣服と食料、必要物資を提供しますね」
「あぁ、それで構わない」
ソラ達の商船が到着し、それを目撃した一人の男が驚愕する。生首だけでなぜか生きているワノ国の侍である錦えもん。彼は、ローにより頭部、胴体、下半身に三分割されてしまっていた。それぞれが島のどこかにあり、今探している真っ最中だ。
「拙者、ワノ国の侍で錦えもんと申す。あの船は、お主達の船でござるか?」
「ソラと申します。ご丁寧なあいさつ、ありがとうございます」
ワノ国の侍は、ソラとホタルの恩人だった者達の同郷だ。だからこそ、少しだけ態度が軟化する。
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング号じゃねーか、完成度たけーなオイ」
「も、もう知っている人はいないと思っていました。ありがとう、ありがとう。錦えもんさん」
ソラが思わず泣き出してしまった。
まさか、もう聞く事はないと思ったそのセリフに心の底から感動してしまった。ホタルもそのセリフを聞いたら泣いてしまうだろう。それ程、彼らにとって思い出深い言葉だった。今は亡き恩人たちの合言葉みたいな物だ。
「どうした、泣き出して!? しかし、この船は確かハセガワ氏の船だったはずでござるが」
「深い事情がありますが、簡潔に言うと海賊達に殺されてしまいました。私と妹が後を継いだ形になります」
錦えもんは、ソラの腰にある刀を見て察した。その刀は、ハセガワ氏の愛刀の一本。もう一本も彼の妹が持っていると状況を理解する。
「なんと!! あのハセガワ氏が死んだと申すのか。拙者、ハセガワ氏とは同郷故残念でござる。やはり海賊は許せぬ!! 絶対にだ!! ところで、お主達、拙者の身体をどこかで見なかったか?」
「残念ながら、見ていません。しかし、我々が錦えもんさんの身体を探すお手伝いをいたします。他にも、何か手伝いが必要な事はありますか?なんでもおっしゃってください。事が終わりましたら、是非商船でハセガワさんの話を聞かせてください」
ビビは、普段のソラを知るからこそ今の彼が気持ち悪いくらい親切にしていると思った。対価なしで人助けなど信じられない、と開いた口がふさがらないほどだ。アラバスタでは一国の王女が頼んでもタダでは助けてくれなかったのに、ココでは一介の侍・・・しかも、おっさん相手に親身になるとは、なぜか釈然としなかった。
「かたじけない。実は、息子のモモの助がこの島のどこかに居るはずなんじゃ!! 探してくれ。頼む」
「お任せください。では、年齢と性別を教えてください」
ソラは、錦えもんからモモの助の年齢と性別を聞いた。これにより、チ〇チ〇レーダーで探せる事が判明する。この研究所内で子供の男根を察知すればいいのだから、難しくはない。
「何名か候補がいます。一人は、なぜか研究所の地下深くにいます。ですが、反応からして
「妖術使いの事か?違う!! だが、お主なら場所が分かるのだな。拙者を連れてってくれぬか」
ソラも連れてきたいのは山々だが、錦えもんはローの能力で三分割された状態だ。残ったパーツが揃っていないのに、あちこち移動するのは良くない。
ソラは、錦えもんの首をここまで持ってきていたサンジを確認した。彼は、子供を助けたいと言う男気ある錦えもんに心を打たれ、連れ出してきた。身体が揃うまで、探し続ける責任を果たすつもりでいた。
「錦えもんさん、それは不義理になります。子供は我々が責任をもって助けてきますので、ここでお待ちください。スモーカー中将、海兵たちを使って彼の体を探してください。”麦わらの一味”と協力して、人海戦術で頼みます。これで、貸しを一つ帳消しにしてあげます」
「まて、お前等は何処に行くんだ。この研究所は、広いぞ」
広いと言っても、一国を超えるサイズでもない。それならば、制圧などビビにとって簡単な事だ。
「ビビ。ゴミは皆殺し。使えそうな物資だけ回収する方向で行きましょう。キノコ兵で勝てない相手は、我々の誰かが行く方向にします」
「ソラとホタルさんの為、手早く終わらせます。・・・早く終わったらご褒美くださいね。”腐界降臨”!!」
研究所内部にカビが侵食しキノコが生え始めた。瞬く間にカビが研究所の床、壁、天上、通気口へと侵入して施設を汚染し始める。成長したキノコが人間大のサイズになると、手足が生えて自立歩行する。
一体一体の強さは、
多少足が遅いのが難点だが、それを補うレベルで強かった。
「えぇぇぇ!! ビビは能力者なの!? 一体、アラバスタで別れた後に何があったのよ!?」
「ビビちゃ~ん♥ 王女様にキノコか・・・なんて素晴らしい能力なんだ! ふぅ~、人妻子持ちでなければ、ヤバかったぜ」
ナミとサンジが驚く。彼らもビビが能力者だったとは初見だった。
しかし、それ以上に驚いていたのはスモーカー中将だ。
だからこそ、ソラからの勧誘の話が脳裏を横切る。
『ビーー! ビーー!』と、研究所内にバイオハザード警報が鳴る。どこかで細菌兵器が漏れ出したと警告が鳴っていた。当然、ビビのカビが原因だ。
「ビビ。”グリーン・ディ”でも使ってる?」
「使いませんよ。そんなことしたら、子供たちまで殺してしまうじゃないですか。使うのは、助け出してからです」
つまり、この状況にシーザーが気が付いた。それを理解したソラは、ビビのカビカビの実を相手に世界最高の科学者がどういった方法で対処するか楽しみだった。並の能力では、ビビのカビに勝てる者はほぼいない。科学方面での対抗策を理解し、ビビが克服した時、彼女は更に進化する。
◇◆◇◆
シーザーは、ローが帰ってこないため入口付近の監視カメラを確認した。その映像に、彼も一瞬目を疑った。王下七武海として名をあげている男が、スモーカー中将に捕まっている。それも、無傷で。何があったか映像を巻き戻して確認したら、民間人と報告を受けていた4人がどう見ても民間人でない事が判明する。
「おい!! こいつらの何処が民間人だ!? よく見ろ!! 『海賊狩りの王女』とその従者、元・CP9のロブ・ルッチだろう!! この程度のメンバーくらい覚えてろよ!! それでも、お前等は元海賊かよ!!」
「そう言っても、俺らは学がないから・・・すみません、マスター」
使えない駒は、所詮駒でしかなかった。シーザーは、こいつらに期待したのが馬鹿だったと理解する。こうなると、今からでも逃げ出す方がよいか考える。この研究所の重要性は高いが、シーザーの命と比べれば安いと判断できる。
逃げ出そうかと思ったら、研究施設で広がる何かをシーザーは発見した。壁からキノコが生えて、人型になり自立歩行する。科学者としての血が騒ぎ、それが何か知りたくなったシーザーは、近くにいた部下に襲わせたが返り討ちにあい、部下が殺害される。
「なるほど。それなりの戦闘力はあるようだ。このキノコの発生源は『海賊狩りの王女』か!! 能力からして
シーザーは、自身の研究にビビの能力が必ず役に立つと信じ、彼女を生け捕りにしたいと考えた。短時間でキノコが人間大に巨大化する。それを人間にも応用できないか、是が非でも捕まえたい。
よって、檻に閉じ込めて催眠ガスを使う事を検討した。その為、バイオハザード警報を鳴らし、防壁を降ろす。軍艦の砲撃にも耐えるほどの防壁であり、自慢の一品がカビで分解されてしまうなど、この時は想像もできていなかった。