パンクハザードの研究所内部で次々に隔壁が閉じていく。ソラは、この施設がアラバスタや軍事同盟各国より、かなり進んだ科学技術で作られていると理解する。それこそ、
「六王銃!!」
ソラが巨大な防壁を一撃で半壊させる。トラックが楽に通れるほどの大穴を開けた。前世を思い出すような科学技術を見たからか、実行したソラ当人もこれが人間があけた穴なのかと少し驚くほどだ。だが、上には上がいる。次の防壁にビビが軽く触れる。
ビビの手から緑色のカビが一瞬で広がり防壁を侵食し、金属がボロボロに崩れていった。これは、ベガパンクが対バイオハザード用に設計開発した特殊合金だ。それが、見る影もなく崩れ落ちていった。
「もう、ソラったら。破片を飛ばしたら危ないでしょう? 扉の向こうに子供達がいたら大変なので、扉の開放はスマートにお願いします。あと、冷気の力でカビの侵食が遅い場所があります。キノコ兵が倒されましたので、おそらく能力者が居ると思います。ルッチさん、お願いできますか? ビスケットルームと呼ばれていた場所です」
「あぁ、分かった。殺したら、シーザー・クラウンがいる場所に向かうぞ」
チ〇チ〇レーダーで男なら子供でも探せるが、少女は探せないのでソラも反省した。それを見て安心したビビは、ルッチに案内用のキノコを渡した。受け取ったルッチは、現場に急行する。彼は、歯ごたえのある敵と戦いたいと思っていた。鍛錬の相手が身内だけで、どの程度強くなったのか彼自身も定かでなかった。
唯一分かっている事は、この二年間、彼にとって人生で一番有意義な時間であったという事だ。毎日が充実しており、強くなった事を実感できる。
「ビビ。施設の侵食状況はどう?子供達の確保は?」
「施設の全貌を把握できていないので、自信はありませんが3割程度です。ルッチさんに向かってもらった区画以外に、もう一か所抵抗が激しい場所があります。キノコ兵が子供達を捕まえこちらに向かわせています。モモの助君というワノ国の子供は、おそらくいません」
カビで侵食した場所は、ビビのテリトリーだ。その気になれば、カビの中すら移動できる。現地に向かってビビが問題を処理する事は簡単だ。だが、相手の出方を見てみたいと彼女も思った。
数年前とは違い、ビビのカビは寒さを克服した。速度は落ちるが、カビが増殖を繰り返し地域を汚染する。無機物である鉄ですら彼女のカビを前にしては、紙切れみたいにボロボロになる。
「ビビのカビを抑えるか。流石は、元・ベガパンクの研究施設といったところかな。私は、地下に居るのがモモの助の可能性が捨てきれなくなってきたので確認してきます。無理はしないでください」
「ありがとう、ソラ。ソラも気を付けてくださいね」
ソラは、ビビと分かれて地下へと向かう。しかし、反応がある地下深くに向かうためのエレベーターが何処にもなかった。どこかに秘密の通路がないか必死に探して、ソラは時間を掛けてようやく、ゴミ捨て場へと繋がる道を見つけた。
・・・
・・
・
そのゴミ捨て場には、この施設から廃棄された廃棄物が大量にある。研究施設の廃棄物が溜まる場所だ。長居すれば命に係わる。それこそ、覇気が使えない子供が長期滞在していては、体にどのような影響がでているか想像もできない。
ソラは、弱弱しい反応がする方向へ向かう。距離を保ち、そこから声をかける。大事なワノ国の子供だ。丁寧に接する。
「そこにいるのは、ワノ国から来たモモの助君ですか?私は、ソラと言います。錦えもんさんからの依頼で貴方を助けに来ました。・・・どうしたんですか?そんなところに隠れて。どうぞ顔を見せて下さい」
「お主、本当に錦えもんの使いなのか?何か証拠はないか!? 」
竜の姿となったモモの助が少しだけ警戒心を解いて顔を見せてきた。こんなゴミ捨て場に、自分を探しに来るなど彼も疑うのは当然だ。
「証拠は難しいですが、錦えもんさんは私の商船を見てこう言いました。『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング号じゃねーか、完成度たけーなオイ』と・・・これが証拠にはなりませんか?」
「なんと!! お主の船は、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング号というのか!? ワノ国出身でござったか!!」
ソラは、船名一つでここまでワノ国の者の心を開かせる事に成功するとは思っていなかった。ビビが世界経済新聞の取材で、いつも船名を濁すから今度は代わりに応えてやろうと思った。これ程、素晴らしい船名は他にない。船名一つで、ワノ国の者達と一発で仲良くなれるとは費用対効果は最高だ。
「すみません。出身は、レッドラインのある場所ですが・・・私達の船の元・船長達がワノ国出身者です。色々と積もる話もありますが、ここを脱出します。捕まってください」
「拙者は、こんな姿だが・・・いいのか?」
悪魔の実の力の制御が正しくできておらず、変身状態が解除できていなかった。モモの助に的確なアドバイスはソラにはできないので、ルッチが合流した際に
「えぇ、しっかり捕まっていてください」
ソラが月歩で落ちてきた穴から脱出を目指す。
◆◇◆◇
ビビのキノコ兵を相手にシーザー自らが戦っていた。元・海賊の雑魚では、キノコ兵相手に殺されてしまい、従順な兵力が減ってしまう事を恐れたのだ。施設の運用には一定数の人間が要る。
自作自演で忠誠心を植え付けた兵士をまた集めるのは大変だ。損得勘定の結果、彼が出向いた。
「なるほどなるほど、このカビは今までにない新種だ。しかも、なかなか強いじゃないか。で、実験の結果どうだった?」
「はい、マスター。火炎放射器でもカビの侵食は止まりませんでした。液体窒素を使う事で、侵食速度が緩やかになる事を確認しております。キノコの兵隊は、異常です。マスターでなければ、対処ができません」
シーザーの予想通りの結果だった。
耐熱、耐寒、耐圧のどれに対しても類を見ないレベルで耐性を持っていた。だが、それは悪魔の実の産物であるから、ある意味当たり前だ。このカビやキノコ兵を止めるには、覇気が必要だとシーザーは理解した。それを実践する事で、カビの弱点を見つける。
だが、増殖速度を考えれば山火事をバケツで消化するようなものだ。
「
シーザーは、カビに対して更なる実験を試みた。それは、酸素を与えないとどうなるかだ。カビの繁殖で酸素は必要な物だ。科学的視点でいえば、これでカビが繁殖する事はない。
「マスター!! カビの侵食が止まりました!!??」
「さすがは、マスターです」
だが、悪魔的視点で言えば、違う。あらゆる状況を克服しようと自己増殖と自己進化を繰り返すビビのカビ。ビビが強ければ強いほどカビも強くなる。また、カビが強ければ強い程、ビビも強くなる。
弱点を克服しようと凄まじい速度でカビが世代交代して進化していく。数十世代を経て、カビは酸素を生み出すまで進化を遂げた。カビが対応できない状況を作り上げたシーザーだが、それがビビを強くするきっかけになってしまう。
「おや? 嘘だろ!? このカビ!! 自ら酸素を生み出してやがるッ!! ・・・よし、逃げるぞ。このカビは今の俺の手には負えない。サンプルが回収できただけで十分だ」
だが、振り返ると一体のキノコ兵から女性の手が出てきた。そして、足、身体、顔と、まるで元々キノコ兵の中に一人の人間が居たかのようだった。そこに現れたのは、『海賊狩りの王女』ネフェルタリ・ビビ本人だ。
「逃げ出すのは少し早いかと思います、シーザー・クラウン。貴方達には恨みも何もありませんが、野放しにしていると気分が悪い事件が多発するので死んでください」
「くっそぉーー !! カビに夢中になりすぎた!! だが、お前を殺せばこのカビも消えるんだろう!? 俺も
狂気のマッドサイエンティストであるシーザー。ビビ一人なら分があると考えていた。これ程までに高められた能力ならば、本体が弱いというのは定番だ。それこそ、自身を無敵だと過信した
だが、その過信が自分自身であったと知る時は近い。
ドレスローザ・・・一日でドフラミンゴの10年の計画が崩壊するはず。
関与するタイミングが難しい。
ビビが白い液体でソラとホタルをカピカピにしている時間ですべてが終わってそう。