パンクハザードの研究施設。元・政府の研究施設だけあって、証拠隠滅の為に自爆装置はしっかりと完備されていた。シーザーが施設を使うようになり更にバージョンアップを重ねており、研究施設を完全に吹き飛ばすほどの爆発になっている。
自爆装置のスイッチを押す人間は、施設もろとも死ぬ事になるが・・・ビビは、キノコ兵にその任を託す。施設の爆発光景を眺めるソラ達は、海軍と一緒に最後の見回りをしていた。このようなクソ施設だ。製造した物を外部に輸出する為の大型の港があるはずだと予想している。
入念にパンクハザードの周りをまわっていると、海軍がタンカーを発見した。それには、ここで製造されたガスが満載しており、どう考えても海に沈めるの一択だった。ソラ達の商船には、魚人や人魚が乗船している手前、海に汚染物質をそのまま廃棄などできない。ビビのカビでタンカーを丸ごと浄化する。特に、ガスを無害にして海に流す事は大事だ。
これだけの大成果だというのに、スモーカー中将の顔はすぐれない。落ち込んでいるようにも見える。だからこそ、ソラは知らない仲でもないので、アドバイスする。
「スモーカー中将。貴方達は、別に弱くない。足りない物があるとすれば、殺す覚悟です。海兵は、海賊を捕まえても懸賞金がもらえません。それなのに無理に捕縛しようとするから、弱くなるんです。本来出せる力をセーブしなければいけないのは、良くない」
「俺は、海兵だ。正義の側は、例え悪であっても簡単には殺せない。法の下であいつらは裁かれるべきだ」
スモーカー中将は、一般的な建前を言った。海賊なんて死ねばいいと思っているが、立場上それは言えない。多くの部下達を抱える責任ある男になった事で、スモーカー中将は強くなったがこういう面で弱くなった。
「今のインペルダウンの状況で、それは無意味ですよ。中将以上の階級ならご存じでしょう?インペルダウンで一週間以上生きている囚人は、もはや誰も居ません」
「・・・まぁな。二度目の頂上戦争でお前等の軍事同盟が参加する条件でそれを世界政府が承認したからな。俺は、どうすればよかったんだ。麦わら達は、捕らえられない。ローにも逃げられる。正義がこれでいいのか」
揺らぐスモーカー中将。彼の信念は、どちらかと言えば海軍よりソラ達側だ。一人でも多くの市民を救いたいなら、海軍でも軍事同盟側でも同じ。組織の規模でいえば、圧倒的に海軍だから、より多くの民を救う観点でいえば海軍がいい。
しかし、現状海軍にいても自身の限界点が見え始めていた。年齢、立場、実力・・・そのすべてを鑑みてもスモーカー中将は、大将クラスにまで上り詰める事はない。
「スモーカー中将。海軍を辞めて、うちに来ませんか? 我々の元で貴方の力を存分に発揮しませんか? 私達なら貴方を強くできます。市民を守るという点でいえば、我々も海軍も同じです」
「ソラさん!! スモーカーさんを引き抜こうとしないでください。彼は、海軍中将なんですよ。スモーカーさんには、これからG-5を率いて平和を守る大事な仕事があるんです」
たしぎ大佐は、スモーカー中将にすべてを任せすぎている。彼がG-5を率いる・・・だから、彼の成長は止まる。使えない部下が多すぎで、その育成やなんやらで時間がとられる。ルフィとスモーカー中将の成長に大きな差が出た原因の一つだ。
「たしぎ大佐。この二年間、スモーカー中将は地位をあげる事に専念した。仮に、スモーカー大佐のままだったら、今より強かったでしょう。地位をあげる為、様々なしがらみがあったはず。特に、多くの部下を抱えた事で鍛錬の時間が減ったはず」
「そ、それは・・・そうですが」
たしぎ大佐にも覚えがある。G-5の海兵たちは、確かに他より強い。海兵としての誇りも持っている。だが、その反面トラブルが多い為、住民への陳謝や上層部への報告など書類仕事が大幅に増えていた。
しかも、中将ともなれば動くだけでも色々と面倒だ。大佐の頃には自由に行動出来ていたが、立場がそれを許さなくなった。
ソラがスモーカー中将に手を差し出す。その手を取れば、彼が望む未来への近道だろう。スモーカー中将が来れば、たしぎ大佐もセットで手に入る可能性があり、ソラ達にしてみれば美味しい限りだ。
だが、ソラとスモーカー中将の間に冷気が流れる。
並の冷気ならスモーカー中将もソラも気にしない。だが、覇気で覆ったソラの手を凍らせるレベルだ。敵意がない為、砕く事は容易だったがいきなり攻撃されてはソラ達も困ってしまう。
冷気の発生源を見ると案の定、元・海軍大将青キジがスカウトの邪魔をしてきていた。だったら、彼をスカウトしようとソラは誘いをかける。
「あまり、海軍から引き抜いているとサカズキに睨まれるぞ」
「元・海軍大将青キジ・・・クザンさん。まさか、こんな場所で会えるとは思いませんでした。では、海軍を退職された貴方ならお誘いしてもいいですよね。私達の旗の下で多くの民の幸せの為、力を使いませんか?海賊を根絶やしにするという理想に是非貴方の力が欲しい。だらけきった正義でしたっけ?それで問題ありません。自由出勤、自由退職、自由意思で戦いに参加。我々は、貴方を縛る事はしませんよ・・・ただし、退職時にはひと声かけてください。それが大人の礼儀です」
クザンがソラ達に加われば、この戦力だけで王下七武海を殲滅し四皇の一つは落とせるだろう。海を凍らせる事で戦えるフィールドをどこでも自由に作れる存在は、この大海賊時代では最強に近い。
「俺が、軍事同盟に? 悪いが、そういうのは海軍でお腹一杯だ」
「それなら仕方がありません。しかし、気が変わったらいつでもご連絡してください。これは、我々への直通番号です。商船の為、クザンさんが人、物、情報などが必要な場合はご連絡ください。海賊に身を落としていない限り、お取引いたします」
ソラは、クザンに名刺を渡した。
スモーカー中将の勧誘まであと一歩だったが、残念極まりないと思っているソラ。だが、クザンがいる以上、これ以上印象を悪くする気もなかった。
ソラが真面目な話をしている隣で、ビビがたしぎ大佐にピンク色の小瓶を渡しているのが見えた。男を繋ぎ止める作戦・・・ヤればデキるを伝授しており、たしぎ大佐が真っ赤な顔をしている。ビビは、よほどゾロの脳を破壊したいらしい。
あと数か月もすれば、禁煙するスモーカー中将が見られるのかとソラはしみじみ思っていた。彼からタバコというアイデンティティを奪うとは、実に悪い王女様だ。
◇◆◇◆
ソラ達がパンクハザードをぶっ飛ばし、次の目的地に向かっている最中。ドレスローザでは、ドフラミンゴが事の把握に努めていた。
彼の元に最後に届いた報告は、「海軍がパンクハザードにやってきて、”麦わらの一味”が連れ出した薬漬けの子供をローが治療している」「キノコが!! ご立派なキノコがぁぁぁ!! 『海賊狩りの
不幸な事に回線不良で一部音声が乱れてしまって、重要な部分が消えていた。そのおかげで、"麦わらの一味"と結びつけて考えると『海賊狩りのゾロ』がご立派なキノコという連想ゲームになる。
これにはドフラミンゴも「一体どういう状況だ?」と、ぼやくほどだ。
切り札の一つであるヴェルゴからの連絡もないため、ドフラミンゴは部下に現地確認をさせていた。最悪、施設はダメでもシーザーが無事なら問題ない。とにもかくにもシーザーだけがドフラミンゴにとって一番大事な存在だ。
ドフラミンゴの手元にある電伝虫がプルプルプルと鳴る。ドフラミンゴの電話の相手は、バッファローだ。彼は、グルグルの実の能力者で、プロペラ人間だった。空を飛べる彼は、島から島まで船なしで移動できる貴重な人材。
『俺だ。パンクハザードの状況は?』
『若。ものの見事に消し飛んでるよ。多分、自爆装置が使われたんじゃないかな』
ドフラミンゴは、あの施設に一体いくらつぎ込んだと思っているのかと頭が痛くなる。だが、今はそれよりもシーザーの安否だと思い出す。
『分かった。まずは、シーザーを探せ。
『若、ローの痕跡か分からないけど、氷山が真っ二つになっているよ。こんな事できるのは、オペオペの実しかないと思う』
ドフラミンゴの中で、ローが暫定裏切り者に昇格する。ヴェルゴは強者だが、ローと”麦わらの一味”、それに海軍を同時に相手にして勝てるとも思えない。仮に、ローが裏切り者だった場合、シーザーが無事である可能性が高くなる。
シーザーの価値を知っているからこそ、殺せない。ローは計算高い為、何かしらの交渉があるとドフラミンゴは連絡を待つことにする。それが裏切り確定の瞬間で、シーザー生存確定の瞬間だ。
ドフラミンゴは、それから一通りの情報収集を命令し電伝虫を切った。
「くっくっく、ローからの連絡が待ち遠しいとはな。俺をどう楽しませてくれるんだ」
まるで恋人からの電話を待つかのように、ドフラミンゴはローの電伝虫を見つめていた。だが、待てど待てど掛かってこないため、痺れを切らしたドフラミンゴは自ら電話する。
そういえば、氷の大陸にある八方水軍の財宝は、ブルーノがいたら楽々奪えるますよね。
さて、寄り道していくかな。