お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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76:魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)

 イーロン。魚人族の彼はソラ達の仲間であり、濃いメンツが集まる商船で縁の下の力持ちだ。魚人という事もある為に非能力者であり続け、ソラ達だけでなく元・CP9達からも頼りにされている。

 

 能力者にとって海とは死地であるが、魚人や人魚にとっては文字通り水を得た魚状態となり本領発揮される。魚人は元々人間の十倍の腕力や身体能力を持つ。そこから更に当社比30%増しで強くなる魚人が如何に異常かよく理解できるだろう。覇権種族の強さの一端を見せつけられる。覚醒したルッチであっても、水が多い場所ではイーロンに勝てないと言わせる程だ。

 

 逆に言えば魚人にとって水場がない場所では常時デバフ状態に近いが、いつまでも弱点を克服しないなどあり得ない。イーロンは、ソラとホタルの為、魚人島の為、ケイミーの貞操の為・・・彼はこの二年間で鍛え抜いた。そして、強くなる事に貪欲であるソラにアドバイスをされて、彼は新しい魚人空手を開発する。

 

 Bブロックの選手が一堂に会する。その中で異質な雰囲気を放つのが、魚人のイーロンだった。海楼石製の小手を装着しており、対能力者対策が万全だ。だが、その様子にソラは首をかしげる。

 

「イーロン。専用のフルアーマーは、何で置いてきた?」

 

「重量オーバーだと言われた。仕方ないから、小手だけだ」

 

 全身を海楼石製のフルアーマーを装着して戦うイーロンは、まさに能力者にとって最悪の敵だ。触れれば力が抜けて、掴まれればそのまま絞殺される。弾丸のような速度で突進してから寝技に持ち込む恐ろしさ。覇気で固めた防御を突破する事も簡単ではなく、遠距離で殺しきるか、攻撃をすべて完全回避しながら戦う必要がある。

 

「残念だったね。最高の状態で魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)を初披露できると思ったのに」

 

「そうじゃの。だが、甲冑がなくとも使えるから問題ない。それで、誰を殺したらまずいんじゃ?」

 

 このコロシアムでは、人が血を流して死ぬ様を見る事で興行収入を得ている。つまり、重武装の戦士がダラダラ戦う事を望んでいないから、そういう制限が設けられている。ルールである以上従うのが、ソラ達だ。

 

 ソラは、Bブロックの出場者を確認する。コロシアムの性質上、相手が殺す気でいるのだから、殺しても何の問題にもならない。コロシアムに出場する際に、死亡同意書にサインをしてこの場に出場しているのだから、例え王であってもここに居る以上、死はつきものだ。

 

「三人だ。リッキーという剣闘士。エリザベロー2世とダガマ。後は自由にしていいけど、バルトロメオは海賊だから確殺して欲しい」

 

「あぁ、分かった。それじゃあ、すぐに片づける」

 

 ソラの依頼を聞いたイーロンは、戦地へと赴く。Bブロックでイーロンを倒せる可能性があるのは、エリザベロー2世のキングパンチだ。あの威力は、ソラ達でも目を見張るものがある。ソラ達の誰であっても直撃を食らえば、立ち上がる事は出来ない。四皇ですらワンパンで沈めるという知名度は伊達ではない。

 

 Bブロックの血みどろの戦いが始まろうとする中、ソラ達に近づく一人の女性がいた。彼女の立ち振る舞いからルッチ達も少し警戒する。そこら辺にいる雑魚ではないと理解したが、ソラ達の能力者集団の暴力を前にしては羽虫程度だ。

 

 ソラ達に接近してきたのは、コアラという革命軍の女性。女がたった一人でソラ達に近づくとは、勇気を通り越して無謀とも言える。だが、彼女にも接触するだけの理由はあった。革命軍内部でもアラバスタの軍事同盟は有名だ。それこそ、いつか手を組んで世界政府を打倒できないかと思っている人も居るレベル。

 

「初めまして、少しお話いいですか?」

 

「魚人空手の師範代級か。人間の女性でよくぞ、そこまで鍛えた物だ。賞賛に値する・・・で、所属と要件は?」

 

 コアラは、魚人空手の使い手だと見破られた事に驚いた。何処にでもいる女の子を装ってソラに近づいて親密になろうという安直な作戦だったが無駄に終わる。コアラ自身、世間一般的に可愛い部類にはいる女性である為、ハニトラの心構えもある。

 

 ルッチ達は既に、コアラが下手な動きをすれば粉々にする構えを終えていた。ソラとコアラの会話の場に、第三者が割り込む事があれば彼女を真っ先に殺す。それこそ、革命軍のNo.2が現れたなら即座に敵対行動とみなされ、コロシアム外で戦端が切られる。

 

「怖い、怖い。ごめんね、一人でコロシアムを観戦するのが怖かったから近くの人に話懸けたかっただけなの・・・はははは」

 

「もう一度だけ、聞く。所属と要件は?後、仲間がいるなら動かないように伝えてください。この場に貴方の仲間が割り込めば、貴方を殺します。早くしてください、私は仲間の雄姿を見るので忙しいんです」

 

 ソラは、コアラに何の価値も見出していない。その目を見たコアラは、ヤバい奴に話しかけたと理解した。世間をにぎわすビビの付き人として新聞に写る事があったから、彼を通じてビビと接触できるチャンスだと思ったが、ソラに接触したのは失敗だったと理解する。

 

 コアラは両手をあげて敵意がない事を示す。

 

「革命軍所属のコアラ。ある調査でドレスローザに来ています。アラバスタの軍事同盟の方が居たので話しかけました。それ以外の意図はありません」

 

「そうですか、ドラゴンさんには二年前にローグタウンでお世話になりました。次に会った時は、貴方のワンピースも預からせてもらうとお伝えください」

 

 コアラは、来た道をそのまま戻った。海賊や賞金首でなかった事が彼女の命が助かった一番の要因だ。ソラは、イーロンの活躍を応援する。

 

・・・

・・

 

 Bブロックの試合では、大歓声が上がっていた。人間の死に様を見る為に集まるような、心の底に汚い物を抱えた連中にとって、安全地帯から見るコロシアムはさぞ楽しいものだろう。

 

 魚人は、元々人間の十倍以上強い・・・その中でも上澄みの一人であるイーロンは、ジンベエとも良い勝負ができるだろう。全身を覇気で強化したイーロンが繰り出す殺人的な甲冑格闘(アーマークラシオン)

 

「弱い。弱すぎる・・・そう思うだろう、ハックとやら」

 

「イーロン、お主の話は魚人の中でも有名だ。どうしてだ!! 戦意を失った者まで殺す必要などないだろう!!」

 

 ハック・・・彼は、革命軍としてこの場に潜入している魚人空手の使い手だ。イーロンの暴虐を見るに見かねていた。武道家として、イーロンに挑む事を決意した。

 

「儂は、海賊や賞金首をゴミ程度に思っている。儂が殺した連中は、こちらを殺す気でいた連中だ。手を抜く必要などあるまい。それに、こちらが強いと分かると掌返しなどもってのほかだ。そういう連中は、この場で息の根を止めておかねば後々面倒になる」

 

「それでもだ。強い者がそれでは、ダメなんだ。強者は弱者を助ける義務がある。お主の程の実力者がそれでは魚人空手の恥じゃ」

 

 イーロンの左手には、死んだ剣闘士が握られていた。首の骨をへし折られて絶命しており、治療して助かるレベルを超えている。イーロンは、ソラからSDGsという新概念を教えられており、敵対勢力の有効活用をする。

 

「儂は、コロシアムで勝利してメラメラの実を持ち帰ると約束した。だから、立ちはだかるなら死んでもらう。ソラによって魔改造され生み出された魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)を見せてやろう・・・人間は、60%は水分だ。魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)は、殺した相手の水分を絞り出し戦う」

 

「それは、死者への冒涜だぞ!!」

 

 イーロンが死体を圧壊させた。そして、絞り出した水分を掌で凝縮する。イーロンが軽く手を振るうと圧縮された水分が"打ち水"で解放された。本来ならハックを狙うべきだったが、威力が高すぎて人的・物的被害を回避するために大空へと向けて放たれる。雲を貫きはるか遠くまで飛んでいく威力にハックは冷や汗が出る。

 

「魚人空手の真髄は、周囲の水分を操作する事だ。魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)でもそれは同じ事だ」

 

「受けて立とう」

 

 イーロン相手に真っ向から立ち向かう革命軍所属の魚人ハック。イーロンに触れた場所から水分を絞り取られ攻撃に利用される。組み敷かれれば、渇死は不可避だ。

 

 

 数分後。

 

 Bブロックのリングに立っているのは、イーロンとバルトロメオだけだった。リングにはおびただしい血と死体の山が出来ていた。僅かに生き残った者達は、イーロンに蹴り飛ばされて外壁にめり込んだ者達だけ。

 

 コロシアム側はこの惨状を盛り上げる為、イーロンを持ち上げまくる。賞賛の嵐で観客達がドン引きするのをどうにか回避していた。コロシアムの運営や司会を任されている男は、有能だ。

 

 勇敢に挑んだハックは、数手しか持たずイーロンに組技を喰らって全身の水分を抜かれてしまう。その水分は、次の攻撃へと使われてしまい渇死していた。

 

「おぃおぃ、俺っちには何をやっても無駄だぜ」

 

「儂は、そうは思わん。バリアが強い事は認めよう。儂の魚人空手のいかなる技でも貫けまい。おそらく、いかなる()()()な攻撃も突破できないだろう。だが、このバリアも通過している物がある」

 

 イーロンは、バルトロメオのバリアを触って確認した。それは悪魔の実の能力だというのに海楼石の小手でも突破できない。となると、商船最強戦力のビビやホタルでも腕力での突破は無理だ。恐ろしいほど堅牢な防御力を見せられ、イーロンも賞賛してしまう程だ。実際、四皇カイドウの全力の一撃も防ぎきる性能をしているのだから、突破できないのは当然だ。

 

 正面から突破するには、能力を無効化するヤミヤミの実が必要になる。

 

「バリアが無敵だってのは常識だべ。早く諦めて、リングアウトしろ」

 

「バリアを作る条件も分かった。それに儂が調べた限りでは、光、音は通過している。ならば、十分だ」

 

 人魚族には、セイレーンと呼ばれる者がいる。音を使う事で人を誘導できる。その特異な能力で、海賊船を幾度も沈めた逸話がこの世には存在している。イーロンは流石に同じことはできないが、人間の可聴域を越える声を出す事は可能だ。

 

 リングを崩壊させ場外狙いもできるが、それでは生存するかもしれない。ソラからの要望が確殺であった事で、イーロンはその手で確実に海賊を葬るつもりだ。

 

 イーロンが深く呼吸する。そして、一点だけに集中して声を発した。その声は高周波となり、バルトロメオ以外には聞こえない。

 

■■■■■■■■■■■(キーーーーン)

 

「な、なんだべ!? この音は・・・おぉぉぉぉ!! 耳が痛い!! なんてひどい音だべぇぇぇぇ!! や、止めろぉぉぉぉ!!??」

 

 バルトロメオが高周波の音声から聴覚を守る為、人間の本能で耳を塞ぐ。その際に、指のクロスを解除してしまった。その瞬間を、イーロンは見逃さない。

 

「魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)・・・”ギロチン”!!」

 

「しまっ・・・。ひ、卑怯だべ。海楼石なんて」

 

 イーロンの太い腕がバルトロメオを完全に捕らえた。海楼石製の小手で掴まれたバルトロメオは、これで子供以下の存在になる。小手の表面には小さな棘のような物があり、人体の皮膚を突き破り出血を加速させる。

 

 バルトロメオの身体から血がどんどん抜け落ちて、ジタバタと暴れる海賊が生き締めされた魚の様にビクンビクンと最後に跳ねた。

 

「念のためだ、圧壊!!」

 

 イーロンが物言わなくなったバルトロメオを潰して小さくし、リングの外にあった水辺に捨てる。それを闘魚が美味しそうに食らいついていた。

 

『あ、圧倒的だぁぁぁぁぁぁ!! Bブロックは、謎の魚人イーロン選手の優勝です!! 素晴らしいぞイーロン選手!! コロシアム運営としてここまで血を見せられた戦いは初めてだ!! 次の試合も期待しているぞ!!』

 

 バルトロメオのなめ腐った態度は観客だけにならず運営にも嫌われていた。よって、それを一切の容赦なく一方的に殺したイーロンは、スター剣闘士並の評価を受ける。

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