Bブロックの勝者イーロンが控室に戻ると皆が道を開けた。彼の行く手を阻むなど、愚か者だ・・・だが、世の中には、そういう事を平気でやる奴がいる。イーロンと同じく一般枠で飛び入り参加したルーシーこと”麦わらのルフィ”だ。彼は、メラメラの実が目的である為、Bブロックでの出来事を歯を食いしばって見ていた。
「あれは、やりすぎじゃね~か。お前の実力なら、全員を戦闘不能にしてリングアウトにもできただろう」
「それがどうした。ルールに則り正々堂々戦ったまでだ。儂がお主の言う事を聞く道理はない。お前さんだって、このコロシアムで覆面が認められているから顔を隠して出場しておるのだろう。儂はメラメラの実を持ち帰ると約束しとる。止めたければ、実力で止めてみるんじゃな」
イーロンは、これから懸賞金付きのゴミを抹殺した証拠映像をコロシアムから受け取る必要があった。その証拠映像で懸賞金を受け取る必要がある。億単位の懸賞金をドブに捨てては、商船に帰った際に袋叩きにされてしまう。
次からは、しっかりと首だけは残す事を忘れないようにしようとイーロンは強く思った。
「メラメラの実は、俺が手に入れる。お前達には絶対に渡さね~からな」
「そうか、ならば勝ちあがる事だ」
イーロンは、ソラと違いルフィを高く評価していない。
ソラが止めなければ、息の根を止める事に何の躊躇も彼はしない。魚人島にとっても、”麦わらの一味”は邪魔だ。この二年で魚人や人魚の地位は飛躍的に高くなり、軍事同盟各国では何処でも歓迎される。人権は勿論、地上に住む場所と仕事まで手に入れられた。
それを崩壊させる可能性があるのが”麦わらの一味”だ。
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イーロンは、運営側からダビングした映像を入手した。ドレスローザの国民の大半が、イーロンが懸賞金付きの海賊を殺した事を確認しているので、海軍が振り込まないという事はないだろうが、念には念を入れておく。
ドレスローザには、海軍支部がない。よって、換金作業は後日になる。
誰もがイーロンを避けるが、ルーシーに負けず彼と接点を持とうとする女性が居た。ピンクの髪で純白下着が腰巻と胸巻からはみ出ている。着ている方がエロく見えるこの国の元・王女レベッカその人だった。
「ないわ~」
「えっ、なにが!?」
イーロンが思わず本音を言ってしまった。面積が少ない服装に理解があるイーロンでもレベッカの服装は可笑しいと理解できる。純白の下着が絶妙に見えており、性欲溢れる男達がいるこの場でよく無事だと正直驚くばかりだ。
そして・・・ビビがこの場に居なくてよかったと、彼は思っていた。今まで抱いた王女の数はギネス記録であり、その誰も抜けないような記録を更に更新する事になるところだったと。ソラとホタルの二人だけでは足りない、底知れぬビビ王女にイーロンは尊敬と畏怖を抱いている。
「あの~Bブロック優勝おめでとうございます。決勝で優勝した場合、メラメラの実を私に譲ってもらえませんか。お礼は必ずします」
「儂がお前さんに便宜を図る理由はない。それに、他人に譲る気ならそもそも出場などせん。己の実力を理解し、交渉するのは自由だが・・・最低限交渉のテーブルに乗せられる物はもっているべきだ」
時価総額が不明なメラメラの実。その価値は最低限数億ベリーは下らない。それこそ、”麦わらの一味”なら10億ベリーの値段でも買うだろう。
「あります。選手たちからイーロンさんがアラバスタの軍事同盟の方だと聞きました。でしたら、ビビ王女に・・・わ、私を捧げます。メラメラの実を食べて、ドフラミンゴを
「儂には判断できん。だが、お主はその身一つ。こちらは数億ベリーは値段が付くだろうメラメラの実だ。それが等価だと言いたいのか?ドレスローザは、王下七武海ドフラミンゴが現国王だ。元・王女のお前さんにどれほどの価値がある?」
とても釣り合わない取引だ。ドフラミンゴを討伐した後という条件がこっそりと追加されている事は、彼女が無自覚で行っていた。レベッカの実力では、
「だ、ダメですか?」
「ダメだ。儂達は、お前さんの事を大事に思う男から土下座してまで懇願されている事がある。レベッカには手を出さないでくれと。その為に、その男は事がすべて解決してから我々の為に生涯働くとまで宣言した。男同士の約束を違える気はない。そして、メラメラの実を譲る気もない。頼むなら他のブロック優勝者に頼むんだな」
レベッカは、Aブロックの優勝者は無理だと理解している。Bブロックも無理となれば、Cブロック。そして、自らが出場するDブロックで何とかするしかない。そして、彼女はCブロックでルーシーという底抜けの明るさを持つ存在に心惹かれる。
それから順当に試合は進んでいった。当然、Cブロックに出場した
この決勝戦・・・メラメラの実が景品となる一大イベント。各ブロックの優勝者が特設リングに入場する。熱い声援が送られるがレベッカに対しては、ブーイングの嵐だ。
イーロンは入場選手を確認し、一つだけ物申したいことがあり司会に尋ねる。
「ギャッツ殿。コロシアムのルールで一つ確認したい事があるが、よいか?」
『おや~、Bブロック優勝者の魚人
「各ブロックの優勝者しかココにはいないはずだが、一人違うやつがいる。替え玉受験は許されているのか?選手交代が許されるなら、儂もやってもいいのか?」
Cブロックの優勝者にして、決勝戦で競うべき相手だったルーシーが偽物だ。しかも、それに気が付いているのはソラ達だけであるという謎。雰囲気も違えば、背中に鉄パイプもある、どう見ても別人なのに誰も気が付かないのは、ホビホビの実にも負けないレベルの世界改変現象が起きている。
『ダメに決まっている!! そんな事をコリーダコロシアムでやれば即失格!! 言い訳無用だ~!!』
「Cブロックの優勝者ルーシーの中身が違う。胸の傷もペイント、体格も違う、声も違う、髪の色も違う、鉄パイプなんて今まで持ってなかった、衣服も違う。事前の重量チェックで体重の変わっとるはず・・・お前等は、何をチェックしている? 儂は、この試合の異議を申し立てる!!」
この時ルフィは、ドレスローザで仲間を助ける為に革命軍No.2のサボと入れ替わっていた。サボは、ルフィと義兄弟の誓いをした亡き”火拳のエース”と同じく兄の一人だ。
『それは本当でしょうか!? 我々の眼には、どこからどう見ても・・・あれ? ルーシー選手ですよね? あれ? あれ? どういう事でしょうか、今まで私の眼には彼が確かにルーシー選手に見えていましたが、確かに違和感があります!! というか、別人ですこれは!!』
「おぃ、酷い事するな。こっちにだって、都合ってものがあるんだ。それを大事な場面で暴露は止めてくれよ、イーロン選手。こちらは仲間を一人お前さんに殺されてイライラしてんだ」
「イライラしているのは儂のセリフだ。正当な方法でメラメラの実を手に入れる為にコロシアムに出場したのに、横から奪う気なら容赦しない」
囲まれるサボは不利を悟った。メラメラの実の所在が分かるまでは大人しくコロシアムで戦うつもりだったが、もう無理だ。
『え~、コロシアムの責任者ディアマンテ様より「盛り上がるからヨシ!」とのお言葉を頂きました。・・・えっ、本当にいいんですか? 「文句があるならリングで白黒を付けろ」とのお言葉です』
「へぇ~、話が分かるやつじゃん」
「儂は納得しとらん!! これだから、海賊は嫌いなんじゃ。ルールや約束を平然と破る。だが、そっちがその気なら儂にも考えがある」
ドンキホーテ・ファミリー側からしたら、メラメラの実は永久的な優勝賞品として誰にも渡すことなく、金の成る実として君臨し続けて欲しいと思っていた。だから、偽ルーシーの出場も許した。本物が偽物に試合を託すと言う事はそれなりに期待できる証拠だ。
このままイーロンかジーザス・バージェスに渡すくらいなら、少しでも後から奪い返せる可能性がある存在に渡す方がマシという結論だ。