お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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08:ローグタウン

 偉大なる航路(グランドライン)に入る前の準備は、怠ってはならない。ありがたい事に、入口の前にはローグタウンという場所があった。そこは、”海賊王ゴール・D・ロジャー”が産まれ、死んだ場所として有名だ。

 

 物流の拠点であり、偉大なる航路(グランドライン)への玄関口として栄えている。その為、少し前まではならず者達が集まる場所として最悪な治安であった。海軍は事を重くみて、自然系(ロギア)の悪魔の実の能力者をこの地に派遣する。最弱の海に派遣されたのはスモーカー大佐と呼ばれる海軍本部の実力者だった。

 

 ならず者達は彼が着任してすぐ逮捕されて牢屋に送られた。この地域の治安の要である彼の元にフル・T・兄妹が訪ねていた。その目的は、賞金首の換金と準備のため。

 

「お久しぶりです、スモーカー大佐。東の海(イーストブルー)で潰した海賊達の換金をお願いします。拿捕した海賊船は、港に停泊しております。後、ホタルもいるのでタバコの煙は止めてくださいね。女性に嫌われますよ」

 

「全く、港の方が騒がしいと思ったらそういう事か。港に汚い海賊の首と船を並べるな」

 

 スモーカー大佐は、煙を能力で引っ込めた。すごい事にタバコの悪臭まで綺麗さっぱりなくなっている。その能力を生かして、クリーニング屋にでも転職したら喜ばれるだろう。

 

「兄様。スモーカー大佐のアイデンティティを奪ってはいけません。ですが、ご配慮いただきありがとうございます。次は、偉大なる航路(グランドライン)になるので準備をしたいと思います。海軍御用達の造船所での整備と各種物資補給・・・後、海楼石を分けていただきたい」

 

「海軍は、お前達に対して用立てする義理はない。賞金と海賊船の代金を受け取ったら、自力で何とかしろ」

 

 海軍が海賊狩りに対して、便宜を図る理由などないと明言するスモーカー大佐。不甲斐ない海軍に代わり、遠い場所までゴミ掃除してくれた事については彼も感謝している。だが、軍事物資である海楼石まで欲しいとは欲張りすぎだ。

 

「残念ながら、それがあるんですよスモーカー大佐。善良な海賊狩りである私達は、モーガン大佐に賞金額の2割も奪われました。命がけの労働なのに、美味しいところだけ奪うのはどうかと思います。それに、自力で何とかしたら裏社会にお金が流れます」

 

 海楼石は表社会には出回りにくい。対能力者の秘密兵器とも言える物資で、海軍が海賊に対して優位に立つためには不可欠だ。これを正規ルートで入手しないとなれば、裏ルートで流れている高額な物を手に入れるしかない。そうなれば、裏社会がどんどん大きくなる。

 

 幸いな事にスモーカー大佐は、本当に正義感が強い男だ。ソラ達がモーガン大佐に賞金を横取りされた事も知っており、埋め合わせを考えていた。

 

「ちっ、嫌なところを突いてくる。どうせ、最初からその魂胆でモーガンの野郎に賞金の一部をくれてやったんだろう。だが海楼石は、貴重品で加工すら難しい品だ。おいそれと渡せるわけないだろう」

 

「それであっても、ご提供いただかないと困ります。このローグタウンで海賊達から押収した品の中にも少なからずあったはずです。能力者が蔓延る偉大なる航路(グランドライン)において、特攻兵器の有無は戦局を左右します」

 

 その通りだった。偉大なる航路(グランドライン)を目指す海賊達の中には、事前にしっかりと準備をしていた者達もいた。当然、悪魔の実の能力者への対抗策として海楼石を加工した武器を準備していた連中もいる。

 

 主に偉大なる航路(グランドライン)で海軍から略奪された物で、裏社会経由で流れた物だ。他にも海兵からの横流し品もある。

 

「押収品の中に海楼石で作られた武器がある、それを二つまでだ。それ以上は俺の権限では無理だ。後、船の整備と物資補給の代金も含めて、今回の賞金額でチャラにしてやる」

 

 アーロン一味の首と道中に潰した海賊達合わせて約6,000万ベリー。その金額で、全てが揃うならと、ソラは合意した。世の中、金で解決する事ならば金で解決すべきだ。

 

「助かります。船底に、海楼石を敷き詰めるのも忘れないでください。これからも良き関係でいられる事を祈っています。刀の手入れをしたいので、どこかご紹介していただけませんか?」

 

「お前達は、海軍を便利屋だと勘違いしてないか。まぁ、いいだろう。たしぎに案内させる」

 

 海軍も海賊狩り、海賊も男社会だ。数少ない女性同士の交流の場として、ソラは妹のホタルに同性の友達を作ってあげたかった。その為、以前に来た時もホタルにたしぎを引き合わせている。

 

 この目的は、スモーカー大佐も理解している。彼の直属の部下である女性に対して、多少配慮をして同性との交流を許している。それどころか、積極的にその場を作ろうとしていた。

 

「兄様、私は別に・・・」

 

 ソラの船の船員の中にも女性は数少ないがいる。だが、ホタルの友達的ポジションかといえば違う。憎き海賊を殺してくれる女主人にしか思われていない可能性があった。

 

「私は、スモーカー大佐ともう少し話がある。たしぎ曹長とお昼でも食べてから船に戻ってくればいいさ。後、これで好きな物を買っておいで」

 

 スモーカー大佐の部屋を訪れたたしぎがホタルを連れて町へと出かけた。人情家のスモーカー大佐は、たしぎに接待費としてお金まで渡している。

 

 残された男二人。

 

「飯でも食いに行くか?」

 

「奢りなら」

 

 スモーカー大佐は、ガキから金なんてとるかと言って食事をごちそうする。その食事中、ソラはたしぎ曹長をスカウトしていいかと言ったら、ぶっ殺すぞと激怒させてしまった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 ローグタウンにある創業200年を誇る武器屋「ARMS SHOP」。その店主であるいっぽんマツは、整備に持ち込まれた刀を見て息を飲んだ。

 

「は、初めて見た。大業物アマノムラムラ雲、業物ナイチンゲール」

 

「いい刀でしょう。ホタルさんとお兄さんの刀ですから、しっかり整備してください。後、私の時雨もちゃんと整備してくださいね」

 

 いっぽんマツは、どうにかしてこの刀を手に入れられないか考えてしまう。武器屋として目利きには自信がある彼だが、剣士としての実力はない。盗んだところで、待っているのは悲惨な末路。これを手に入れるには、合法的な方法しかない。

 

「この2本の刀をうっ」

 

 売ってくれと言おうと思ったが、店主の言葉が止まる。店主の眼前には、真っ黒になったホタルの指先があった。後、数センチ前に進めば鍛えていない人間なんてはじけ飛ぶ。

 

「たしぎさんの紹介だったから信頼して、お見せしたんです。ご紹介してくれた方の顔を潰すような行為はお勧めいたしません。たしぎさん、この店は本当に信頼できるんですか?」

 

「もちろんって言いたかったんだけど、自信がなくなってきたかも」

 

 老舗の武器屋としてあるまじき行為だ。

 

 客の大事な商売道具を軽い気持ちで売ってくれ。しかも、己の欲求のまま。自分だけが利益を得るような不平等な取引を持ち掛けようとしていた。実に浅ましい行為だ。

 

 すべてを見透かすような目でホタルに見られた事により、店主は我に返る。いつしか忘れていた武器屋としての大事な事を思い出す。

 

「すまんかった。俺に、その刀を整備させてくれ!! 金なんていらねー。見たところ、大業物は相当な血を吸っている。プロが整備してやれば今以上に輝く。業物の方は・・・あんまり痛んでないな。一体、何に使ってたんだ」

 

「やったぁ。じゃあ、私のもタダでお願いします。さぁ、浮いたお金でケーキでも食べに行きましょう。この先に美味しいお店があるんですよ。お姉さんがごちそうしてあげるから」

 

 ホタルは、たしぎに圧倒され、あれよあれよと連れ出された。美味しい物を食べ、買い物をして、年頃の女性らしい事を楽しんだ。途中、ならず者が刀や銃を取り出して、悪さを働く場面に出くわすなどイベントが盛り沢山。

 

 治安が良くなったと言われるローグタウンでも、海賊は紛れ込んでいる。人通りが多い場所でも刀や銃を取り出すレベル。これで、治安が良いと言われる。世が大海賊時代である事を思い出させる。

 

 優しい海軍は、街中で殺人未遂をしても逮捕するだけ。だから、海賊達がつけあがる。多すぎる海賊なんて顔も知られていない事もあるのだから、素直にお金を払って物資調達して出ていけばいいのに。

 

 だが、そんな連中も今日は運が悪かった。海賊狩りのホタルは、海軍とは違う。相手が銃の引き金を引くより早く、六式で相手を絶命させる。

 

 半日町を回るだけで、たしぎの三か月分の給料近く稼げてしまう。これには、たしぎも一瞬転職しようかなと考える程だ。ホタルが給与面や福利厚生面で海軍より良い条件を提示していたら、スカウトできていた可能性が高かっただろう。

 

 その日から、街中にいる海賊が激減する。命あっての物種であり、偉大なる航路(グランドライン)を目前にして死にたくない連中は早々にローグタウンを後にして出港した。

 

・・・

・・

 

 ソラ達は整備を終えた船と装備を持って、ローグタウンを出港する日がやってきた。だが、どうにも怪しい雲。天候次第では、出港をずらすべきだとソラは判断する。

 

 その一番の理由は、ナニかが接近しているからだ。

 

「これは珍しいな。上空にチ〇チ〇を感知した。飛行可能な悪魔の実の能力者か、それとも自然系か。反応は一つ。ホタルの方は?」

 

「兄様、私も上空にムラムラを感知しました。一人のようですね」

 

 単独でローグタウンに空から侵入できる能力者となれば、新世界レベルの可能性が高い。現状のローグタウンに駐在する戦力に対して、これから来る存在は過剰戦力だ。

 

 そうなると、どの勢力がローグタウンに来たのかが悩みの種だ。4皇傘下の者達は、わざわざこんな場所までこない。海軍は集団行動が基本でこの線も薄い。残るは、革命軍となる。

 

「恐らく革命軍かな。あっちは放置して、向こうの方を潰そうか。未来に役に立ちそうな男が一人いる」

 

「そうなのですか?あまり強い感じがする人はいませんが・・・」

 

 ソラが指さすのは、時計台の方角。町の方から、ルフィ、バギー、アルビダという言葉が聞こえてきており、賞金首が向こうから来たとソラの船員達は喜んだ。出立前に、最後のボーナスタイムを楽しむ事にしたソラ達。

 

「イーロンとワズキャンは、バギーとアルビダの海賊船を沈没させておいて。物資は後からゆっくり回収しよう。私とホタルで、町にいる海賊を皆殺しにしておく」

 

 ソラは知っている。ルフィが運命に愛されており落雷で助かる事を。だが、同じようにバギーも運命に愛されているのだろうか。モーガニアのバギーとアルビダを生かしていく理由はないが・・・バギーは将来的に4皇になる男だ。

 

 バギー自身、自分の命より自分のワンピースの方に価値を見出している男がいるとは知る由もなかった。

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