社交の広場にいるソラ達の内輪に、ドンキホーテ・ミョスガルドが加わった。彼は改心して、天竜人の横暴を許せないという考えを持つ異端児だ。ドンキホーテ一族は変わり者が多い一族と言われており、その最たる例でもある。
しかし、ミョスガルド聖が持つ天竜人という肩書は非常に便利。天竜人に対抗できるのは天竜人だけ。その彼が、
何かをしてくる天竜人に対して殺害は許容されないが、自衛のための防衛なら死なない程度に何をやってもいいと許可される。おかげで、軍事同盟の雰囲気が明るくなる。天竜人というのは、やはり面倒な存在だ。それを撃退する許可をくれる同等の権力者が居るだけで気の持ちようが変わる。
許可などなくても能力で天竜人を切り捨てる頼もしいビビ一行もいるから、各国の王たちも王女を安心して連れて回れるという物だ。その頼もしい能力を持つソラには、妾でも愛人でも良いから数名位娶ってくれないかと国王たちは考え始めた。
そんな近づきがたい軍事同盟に接触を図る変わり者もいる。
「おやおや、懐かしい顔が居ると思えばあの時の王女さんじゃないか」
「Dr.くれはさん!? お久しぶりです」
ビビがかつて”麦わらの一味”の仲間として旅をした時に出会った世界最高峰の医者の一人Dr.くれは。あのチョッパーの師匠でもある為、腕は間違いない。ソラとしては、是非仲間に欲しいくらいだ。
Dr.くれはの声を目をつぶって聞けば、なぜか勝てる気がしないと思わせる謎の力がある。それどころか逆らってはダメだとさえ思ってしまう程だ。言葉に表すならば、戦闘民族を前にしている・・・そんな気持ちになってしまう。
ビビが懐かしい話に花を咲かせている最中、こちらを監視するカラスにソラ達は気が付いた。敵意はないが、動向を気にしているのがよくわかる動きだ。
これから一週間ある
・・・
・・
・
それから少しして、ソラとホタルは天竜門を出てこちらに接近してくる男をレーダーで捕らえた。人数は数名であり、一人だけ異常に強い反応を示している。遠目で確認できるくらいに近づいてきた男は数名の護衛と一緒にいた。
天竜人らしいシャボンのヘルメットは被っておらず、服装も他とは違っていた。何より違うのは、その顔つきだ。不潔感漂う天竜顔ではなく、清潔感があり、体格も痩せマッチョと言うにふさわしいだろう。
その雰囲気に気が付いたビビが天竜人を見て思った。
「あれが、フルティン聖ね。雰囲気は、確かにソラやホタルと似ているわね。・・・あれが、フルティン聖で合っているかしら?」
「えぇ、ビビの言う通りです。しかし、嫌な代替わりをしてくれます。あの身体は、モラクス伯父様。母の兄の身体です」
「兄様、ビビ。アレは、相当鍛えています・・・それにあの槍は、最上大業物。交戦する場合は気を付けてください」
フルティン聖の到来・・・ビビのその声を聴いた者達が一斉に彼を見た。一体、どんなキワ者が出てくるかと思えば、ただの美男子だ。これでは、つまらないにも程がある。それこそ、下半身に何も身に着けないで登場する位のインパクトがなければ、出落ち感もいいところだ。
名前負けしていると各国の国王たちはため息をついた。期待外れ感が凄まじい。これならば、チャルロス聖が実はフルティン聖だった方が幾分か面白かったと内心彼らは思っていた。だが、世の中言ってよい事とダメな事がある。分別できる大人の国王たちは、それを言わなかった・・・コブラ国王含み。
その雰囲気に負けずフルティン聖が口を開いた。
「どうした?父親が会いに来てやったのだぞ。もう少し、嬉しそうな顔をしたらどうだ?」
「それは無理があるでしょう、フルティン聖。血縁上そうかもしれませんが、貴方を父親だと思ったことは一度たりともない。それと、ホタルにそれ以上近づかないでください。ミョスガルド聖の名の元に殺しますよ。この
「えっ!? いや、あの殺しはちょっと・・・それに、フルティン聖はまずい!! 『ネロナ』家には、関わるなとドンキホーテ一家の教訓がある」
ここで
ソラ達が完全に天竜人を殺す気でいるのが分かったからだ。流石に、殺しはやめて欲しいと事前に伝えていたが、雰囲気がそれではなかった。ソラとホタルがフルティン聖の事を親の仇を見るような目で見ているが・・・若い男は、父親だと名乗っている。ミョスガルド聖には彼らの関係性が理解できなかったが、因縁があるんだろう程度には理解した。
「そうか、ならば分かりやすく取引をしてやろう。ソラとホタルを『ネロナ』家の天竜人として正式に迎え入れてやる。これで、アラバスタの軍事同盟と世界政府の繋がりは強固になる。無論、アラバスタ王家に婿入りでも嫁入りでも好きにしろ。天竜人としての特権も自由に行使させてやる」
普通では考えられないほどの大盤振る舞いだ。地位と権力だけをくれて、今まで通り生活もしてよいと言っている。これがまともな親なら褒められる。
「フルティン聖。私達には、天竜人にそこまでメリットがあるとは思いませんがね。一応聞いておきます。私やホタルに望む事は何なのですか?」
「この三つの中から選ばせてやる。①ホタルに私の子を産ませる、②ソラが私が選んだ女を妊娠させる、③お前達のどちらかの子供を一人差し出せ。どうだ、悪い条件ではあるまい。なんなら、お前達の母親の墓参りもさせてやってもいいぞ。
ソラとホタルの心は決まっていた。母親の記憶は既に薄いが、それでも大事にしてくれたという思い出がある。アレ呼ばわりされたら、頭に血が登るというものだ。
「お前の頭の中では、そうなんだろう。久しぶりに頭に来た。ビビ、ちょっと手を放してくれませんか?なんで、ホタルの事をイーロンが抑えてる・・・どうして?」
「ソラ、貴方らしくないわよ。落ち着きなさい。この公衆の面前で先に天竜人に手を出してどうするの。
ビビがソラの頬を叩いて、意識を切り替えさせる。軍事同盟として何か国もの運命を背負っているに等しいソラの立場。やすやすと天竜人を殴るなどナンセンスだ。やるなら、他責にできる場面で裏から行動する。それこそ、インペルダウンの時の様にやるべきだ。
人の眼はなくても映像電伝虫が無数に設置されている。
つまり、ソラが手を出せばそこだけ切り抜いた印象操作に利用される。結果的に軍事同盟はバラバラになり、ソラとホタルは責任を取らされて天竜人に従う道しかなくなってしまう可能性もあった。
真っ先にソラとホタルの暴走を止めたアラバスタ王家は、伊達じゃない。ビビがソラを止め、ビビの指示でイーロンがホタルを抑え込むという最善の行動。そして、コブラ国王が最前線に立つ。
「お帰り頂こう、フルティン聖。ソラ君とホタル君は、既に私達の
「ほぅ、私に向かって若造か。子供達から色々吹き込まれたようだが、剛毅な事だ。世界には知らないでよい事もある。知りすぎると早死にするぞ。
非能力者で王下七武海クロコダイルに真っ向からたてついた男にとって、フルティン聖もクロコダイルも大差はなかった。武力担当はビビ達である以上、コブラ国王が担当するのはそれ以外の事だ。
「やってみるかね?こちらも世界放送している電伝虫が多数ある。家族を守る為、一家の大黒柱として、この命を賭ける覚悟がある。もう一度言う、私の家族に手を出すな天竜人」
「コブラ国王。そのくらいでもう大丈夫です、落ち着きました。・・・フルティン聖。私とホタルは、天竜人にはなりません。私達と貴方では、価値観が違います。お引き取りをフルティン聖」
フルティン聖としては、最大限の譲歩した取引内容だった。ソラとホタルという才能を引き継がせるためならばと思っての彼なりの親心でもあったのだろう。だが、それを完全に拒否する。
「最初で最後の機会をやったというのに。天竜人に戻れずに哀れな末路を辿る元・天竜人もいれば、その機会を自ら捨てる元・天竜人もいるか。つまらん・・・権力、財力、暴力。このすべてを兼ね備える快楽が分からんとは、子供だな。――帰る」
フルティン聖が引き返していく。ソラとホタルは一安心するが、アラバスタ王家の身内となったソラとホタルは、今後
よって、ビビ達のやる事は決まった。
そう、
フルティン聖のイメージは、原神のモラクスになります。
不細工にしたかったけど、ソラとホタルとの血縁だと考えると・・・同作品から選びたかった。