天竜人が住む地であり、
誰もが、その様子を一瞬、デマ映像だと思い込む。だが、あまりにもリアルだった。仮にこれがデマだとしたら、聖地マリージョアを焼き討ちする映像を世界に放送しては、一族郎党死罪になることは確実だ。
しかし、この非現実的な光景を理解しろというのも無理な事だ。投影される映像で無傷の所を探す方が難しい状態になっている。その原因は、革命軍、軍事同盟、フルティン聖の三つの組織が、在庫処分のごとく爆弾を設置して一斉起爆された事が一番の要因だ。
革命軍は、インフラ破壊とシンボル破壊をターゲットにしていた。その結果、貯水施設の半壊、発電施設の半壊、食糧庫の全壊、医療施設の全壊、移動用ゴンドラの全壊という大惨事になる。周辺施設も爆発による影響で火の手が想像以上に早く回り、手の付けようがなくなっていた。
ソラ達は、天竜人の住宅100棟以上を半壊させた。そして、フルティン聖宅は跡形もなく消し飛んだ。その衝撃で周囲の家屋にも甚大な被害が出ている。特に、お隣さんにあったフィガーランド家にも被害が及び半壊してしまっていた。
フルティン聖は、パンゲア城の社交の広場、王族達の宿舎、
そんな状況であった為、ソラ達も想定外の被害を被った。
天竜人が住む場所は、炎で明るい。それを確認したソラは、自分がした事を振り返った。だが、火災が出るような爆弾の仕掛け方はしていない。これは、革命軍によるものだと結論付けた。そして、王族達がいる場所に爆弾を仕掛けた連中も革命軍だと当たりを付けた。天竜人と王族を一緒に葬れば革命は完遂できる。そいつらが一堂に集まる
ビビ達は、ソラを見る。
「革命軍は、声明の通り盛大な革命の狼煙を上げましたね。所詮は、テロリストです。革命とは、彼らにとって聞こえの良い言葉なだけです・・・やっている事は、テロそのもの。この惨状がそれを物語っています。神々の地には奴隷たちもいるはずですが、焼け死んでいるでしょう。ビビもそう思うでしょ?革命軍は、悪です」
「えっ!? ソラ・・・そうよね。これじゃあ、何人死ぬかわからないじゃない。許さないわよ、革命軍!!」
全部、革命軍が悪い。
実際、革命軍は聖地マリージョアに潜入して、護衛兵達を何人も殺害している。彼等の侵入を許した時点で同日の当番達は、後日死罪にされる。つまり、革命軍が間接的に罪もない護衛兵達を殺したのと同義だ。革命軍が天竜人達の性格を知らないわけでもあるまいし、これが想像できないはずもない。下手したら、親兄弟まで死ぬ事になる。
この状況にホタルも危機感を感じていた。
「兄様、それより王達を避難させましょう。私達に気づかれずに爆薬を設置したのであれば相当な手練れかブルーノ同様の能力特化タイプです。そうではなく、爆薬がある場所に宿泊させられていたとすれば、最初から罠に嵌められていたという事です」
軍事同盟各国の王達も多少の怪我をしているが、全員無事だ。優秀な護衛達が王たちを身を挺して守った結果だ。そして、彼等も業火に包まれている天竜人達の住居を見た。焼け焦げた臭いだけでなく悲鳴まで聞こえてくる。
鎖でつながれた奴隷たちは、逃げ遅れて焼け死ぬ。生きたまま焼け死ぬなど、地獄の苦しみだ。その様子もしっかりと映像電伝虫で世界に放送されていた。
だが、被害は奴隷だけには留まらない。これを機に逃げ出そうとする奴隷たちの反逆で天竜人達も少なからず命を落とす。死ねばもろともという考えで彼らを巻き込んで死ぬ連中も出てくる。なにより、この状況下で天竜人が死んでも革命の狼煙に責任を擦り付けられる。腕に自慢のある奴隷たちは、日頃のうっ憤を晴らすために天竜人に手をかける。
「状況が落ち着くまで、一時ブルーノの異空間で待機しましょう。異空間は、大人数が長期滞在する前提で用意はしていませんが、今のマリージョアよりマシです。待機組は、王たちの護衛もお願いします。私達は、天竜人達が心配なので救援に行ってきます。いや~、一人でも多くの天竜人を救いたいですね。ビビ、一緒にどうですか?」
「ソラ、顔が笑っていますよ。まぁ、私達も付いて行ってあげますよ・・・ソラ一人じゃ、何をやらかすか心配ですから」
王たちの安全を確保したソラ達は、軽く屈伸運動をしてから天竜人達の居住区・・・神々の地へと乗り込んだ。勝手知ったる庭のような場所であり、ソラが先頭を進む。
・・・
・・
・
怒号と悲鳴が響く神々の地。誰もが助けてと叫ぶ。天竜人の守りであるCPや護衛兵達が必死に瓦礫から救い出すが、助けた天竜人から死刑を宣告される人もいる。そうなったら、どうなるだろうか・・・・答えは簡単だ。そこには誰もいなかったという答えになる。確定した死を回避する為に、目の前の天竜人を殺した方が生存の芽があるという状況になる。
自らの力では、この業火から生きて出られないのに馬鹿な行動をとる連中が後を絶たない。こういう時、奴隷たちに良い目を見せている良い飼い主の天竜人だけが生き残る。
もしくは、チャルロス聖の様な異能生存体であれば何も問題ではない。彼は、業火に焼かれ、天井に押しつぶされ、自宅の倒壊に巻き込まれ、海軍大将藤虎の隕石の直撃を受けても軽い打撲のダメージを負う程度。そのまま朝まで寝続ける程の剛毅な男だ。
実際、この惨状を何とかする為に海軍大将藤虎は、火事の手がこれ以上回らないようにするため隕石で家を潰しており、偶然巻き込まれたチャルロス聖が居た事を知らなかった。それこそ、彼の実の妹であるシャルリア宮ですら「兄上様が、この程度で死ぬ事はありません」と、気にすら留めていなかった。
◇◆◇◆
この大惨事の張本人であるサボ。
想像の10倍以上の被害に開いた口が塞がらない。確かに、天竜人達を苦しめる為に画策した。だが、苦しめたいだけであって、今日この時に殺すつもりなどなかった。真綿で首を絞めるかのようにジワジワと衰弱させて、この世に金や権力ではどうにもならない事を理解させてから、民衆の手で嬲り殺しにさせる予定だった。
革命が順調に成功して、民衆が力を手に入れればそれが実現できる。
「俺が仕掛けた爆弾は、『ダイナ岩』だったのか?おかしいだろう。威力も範囲も!! 明らかに、俺が仕掛けていない場所でも爆発が起きているぞ。正直に言え、俺以外にも爆弾を仕掛けただろう?」
サボが集まっていた仲間に問いただす。そうすると、その場に居た全員がそう言えば・・・・とぼやく。
「やだ~、そういえば地中を掘っている時に~ガス管に穴をあけちゃったから埋めたわ。だって、この空間作る為に地中を掘っていれば当たり前よ~」
と、モーリーがとんでもない事を口にする。ガス漏れをしている場所に爆弾など、狂気の沙汰だ。よく燃えるのも当然だ。そして、神々の地に革命軍が潜む空間を作る為に、沢山のガス管に穴を開けていた。誰もガスの異臭に気づかなかったのは、無色無臭だからだ。人工的につけられたガス臭を天竜人が嫌うため、天然仕様となっている。
「よくわかったな、今回の爆弾は特別製にしておいた。革命の狼煙だという事だから、酸素に反応して爆発する小さな『ダイナ岩』を使っている。だが、ここまでの威力は出ないはず」
と、リンドバーグがとんでもない事を口にする。ガス漏れした場所で古代兵器にも匹敵すると言われる『ダイナ岩』を天竜人相手に使うなど、頭がおかしいレベルを超えている。馬鹿と天才は紙一重と言うが、こいつは馬鹿の方だ。
「お前等いい加減にしろ。俺は、こいつ等とは違う。各インフラ施設が爆弾で崩壊するようにカラス達に支柱を壊させていた。限りある爆弾を最大限に活用する為にな」
と、カラスがとんでもない事を口にする。その結果、食料、水、電気、ガス、医療、交通の全てを天竜人は失った。食べ物の恨み程、怖いものはない。特に、水まで失っては三日と持たない。
革命軍が革命の手本を示す結果になったこの状況・・・もはや、後戻りはできない。革命軍が知らぬ場所でその他勢力の力も合わさった結果、地図から聖地マリージョアが消えかねない状況になる。
「後戻りができないならば、進むまでだ」
革命軍・・・くまだけを救ってこの場から逃げる事を決定した。
もはや、奴隷は救えない。彼等は、この業火で死んだ。生きていたとしても天竜人達と少ない食料の奪い合いが起こるから、生かしておく方が天竜人の足を引っ張る事が出来る。
革命に犠牲はつきものだ。そう割り切る事が出来るやつらが、革命軍に居る。優しさで革命などできない。