お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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89:革命の兆し

 阿鼻叫喚の地獄絵図。救いを求める声など、ソラ達には届かない。彼等は、この惨状に紛れて高速で移動を続けていた。

 

 神々の地には、天竜人、奴隷、憲兵など多数の者がいる。この大惨状の時ほど、人間の本質を垣間見るというのは本当の事だ。憲兵たちも災害救助と称して、天竜人の住宅から金目の物を懐にしまい込んでいる。しかも、この地にいる憲兵ともなれば、映像電伝虫の場所も把握しており、見えない位置での犯罪は多々発生。

 

 そして、彼等もこう叫ぶ。

 

「た、大変だーー!! 革命軍の爆弾が原因で天竜人が死んでしまった!! 火の手が回ってきて、もう駄目だーーーー!!」

 

 などと、白々しい演技もしっかりと行う。その様子は、映像電伝虫に残るように映し出されており責任転嫁もバッチリだ。神々の地で働く憲兵たちは、すべからく優秀であり、その才能を余すことなく発揮している。

 

 狂気とは伝染する。一人、また一人と・・・天竜人に日頃の恨みを晴らす者達が増えてきた。しかも災害に紛れて、映像が残らない為、物的証拠はゼロだ。その様子は、まるで世紀末のようであり、金や権力があっても誰も彼等を守ろうとはしなかった。

 

 だが、捨てる神がいれば拾う神もいる。

 

 五老星を筆頭に、神の騎士団が投入された。この大災害を何とかする為、イム様も懐刀を取り出したという事だ。そして、彼らにはある厳命がなされていた。この災害を招いた革命軍を捕まえろと・・・。

 

 海軍大将藤虎、海軍大将緑牛、五老星、神の騎士団・・・大盤振る舞いの戦力が聖地マリージョアに放たれた。

 

 その様子をしっかりと取材しておさめるモルガンズがいる。彼は、この世紀の大事件の現場に居合わせる事が出来た幸運を神に感謝していた。

 

「たまらねェな!!! このライブ感!!! さすが革命軍!! 俺たちにできない事を平然とやってのけるッ!! そこにシビれる!! 憧れるゥ!!」

 

 天竜人が殺される様子、奴隷たちが焼け死ぬ様子、神の騎士団達が暴徒を制圧する様子、革命軍の軍隊長達が戦う姿を写真に納めていた。それを使った世界経済新聞は、各国に衝撃を与えるだろう。

 

 天竜人とて、ただの人・・・殺せば死ぬ。その権力があっても適切な状況を作り出せば、誰にもとがめられず殺せるのだと。この日から、天竜人の横暴に頭を悩ます国家は、対天竜人暗殺組織を作り始める。

 

 革命軍のテロ行為や海上での難破といった自然災害に巻き込まれた感じで処分すればいい事に気が付いてしまった。

 

 

◆◇◆◇

 

 ソラは、ホタルと一緒に過ごした我が家・・・の跡地に着いた。そこにはきれいさっぱり何もなくなっている。それどころか、爆心地から少し離れた場所にあったご近所さん宅にまで被害が及んでいた。

 

 その地には、CP0に包帯を巻かれているフルティン聖が鎮座している。この爆発の中心地にして、多少のケガで済むとはやはり鍛えている証拠だ。変な仮面をつけた3名のCP0がフルティン聖を守るような形で囲む。

 

「フルティン聖、お逃げください。同数以上では、我らの方が不利です」

 

「実の息子が、父親の安否を確認しに来ただけではありませんか。護衛は、CP0が三人だけですか・・・」

 

 世間的にCP0は間違いなく世界政府の中でも上澄みだ。それが三人もいれば、億超えの海賊団ですら殲滅できる。だが、その彼等から見ても今目の前にいるソラ達の戦力はそれを上回ると判断した。

 

 ソラ、ビビ、ルッチ、イーロン、カリファ。

 

 本来、ソラとホタル以外はフルティン聖に対して恨みも何もない。だが、天竜人というだけで罪だ。なにより、恩人が殺して欲しいと言っているのだから罪ある人間ならば喜んで殺すだけの意気込みはある。

 

「いいや、この場であいつらを捕まえねばこちらもチャンスがない。覚悟を決めろ」

 

「フルティン聖。正直、あなたが私達に干渉しなければ、何もする気はなかった。だが、後の憂いを断つ為に・・・ここで殺します。将来、子供達の世代で貴方に迷惑をかけられては困りますので」

 

 ここでどちらかが消えても、全て革命軍のせいにできる。双方、千載一遇の機会である事は間違いなかった。当然、フルティン聖にも勝機があるからこその行動だ。CP0達は、全員が非能力者で鍛え抜かれた精鋭だ。海楼石も潤沢に準備しているので手錠さえかけてしまえば勝負が決まる状態にしている。

 

 そして、なによりフルティン聖が覚醒した能力者。黒い羽衣のような物がフルティン聖に現れる。覚醒した能力者になれる者など、数多い能力者のなかでもひとつまみだけだ。その隔絶した能力故に誰にも負けぬと自信が出てしまうのも当然だ。

 

「悪魔の実には、覚醒という次のステージがある。お前等は、知らないだろう」

 

「ねぇ、ソラ。覚醒ってそんなに珍しいものなのかしら?」

 

 ビビがフルティン聖の覚醒を見て呟く。

 

 珍しいかそうでないかで言えば、珍しい。それこそ、四皇の最高幹部レベルでもない限り、その域にまで達する人物はほぼいない。だというのに、ビビの周りにいる能力者が全員覚醒の域にまでいる事で誤解してしまっている。

 

 自然系(ロギア)の覚醒者としてビビは、その自覚を持った方がよかった。

 

「想定の範囲内です。肉体を乗り移る時点で、覚醒済みである事はわかっていました。しかし、私のチ〇チ〇の実の方が戦闘向きですね。今日は、私のコレクションであるワンピースをフル装備してます。貴方を殺す方が先か、私が殺される方が先か・・・」

 

「え!? ソラのチ〇チ〇の実って戦闘向けだったんですか!? 夜戦や子作り専門だと思ってました」

 

「戦闘向けとかおこがましいに程があるぞ、ソラ。戦闘向けとは、動物系(ゾオン)の事を言うんだ。超人系(パラミシア)のチ〇チ〇の実が戦闘向けとか異議がある」

 

「儂もビビとルッチの意見に賛成じゃ。お前さん、能力的に攻撃より補助向けじゃろう」

 

 ビビ、ルッチ、イーロンにとって、チ〇チ〇の実もタマタマの実も大差はないと思っていた。むしろ後者の方がその特殊性もある為、強いのではと思っている事は口が裂けても言わない。

 

 ソラ達が一斉に覚醒した能力を披露した。

 

「素晴らしい。その年で既に覚醒した能力を身に着けていたか。やはり、私の眼に狂いはなかった。お前達は、この600年で過去最高の出来だ。こんな事になるならば、丁重に育てるべきだった。過去に戻れるのならば、今からでもやり直したいほどだ。・・・その体、ぜひ欲しい」

 

「あげません!! ソラもホタルも、わ・た・し・のです!! ソラとホタルを物みたいに扱う人なんて、大嫌いです――”グリーン・ディ”!!」

 

 ビビの足元からカビが広がる。既に戦いは始まっていた。覇気の上からでも徐々に侵食してダメージを与える殺人カビ。その驚異的な威力を目の当たりにして、フルティン聖のビビに対する警戒度が一気に跳ね上がる。

 

「ビビは、私とホタルが育てた最強です!! 世間で言われている通り、性癖以外は完ぺきな女性です。確かに、フルティン聖もCP0も強い。しかし、我々の方が更に強い!! 私がこの大海賊時代で身に着けた技の数々・・・そのすべてをもって確実に殺す。ルッチ、カリファは、ビビのキノコ兵と一緒にCP0を抹殺。私とビビとイーロンでフルティン聖を殺す」

 

「こちらが二対三、ソラ達は三対一。分け方が不均等に思えるが、ソラ」

 

 ルッチは、別に文句を言っているわけではない。二対三でも十分勝てる自信があった。だが、それはそれ、これはこれだ。

 

 だが、ルッチが再度CP0を見た時、その数は一人減っていた。

 

「面白い事を言いますね。ルッチ、我々にはブルーノが居るんですよ。こうやって数を減らす事なんてわけありません。これで、同数です・・・ご不満でしたら、さらに減らしますが」

 

「不要だ。カリファも何だったら、彼方に加わってもいいぞ。CP0程度、一人も二人も変わらない」

 

「あら、ルッチ。私もソラとホタルに一緒に鍛えられたのよ」

 

 ソラ達は、あまり時間を掛ける事ができない。

 

 戦いが長期化すれば確実に海軍大将や神の騎士団が来てしまう。両者が激突すれば間違いなく、覇気が渦巻く。それに気づかない程、無能はいない。

 

・・・

・・

 

 家屋の倒壊が進み続けるソラ達の戦場。火災のおかげで避難済みで人こそいないが物的破損が凄まじい。両者は短期決戦を望んでおり、タダでは死なない連中ばかりだ。

 

「”(まが)れ”!!」

 

「いい加減に死んでください。”グリーン・ディ”」

 

「魚人空手”打ち水”」

 

 ソラ達の攻撃は、確実にフルティン聖を貫いた。それこそ致命傷を与えたと言えるのだが、何事もなかったように即座に復元される。だが、世の中に不死身なんて物は存在しないとソラは考えていた。

 

 致命傷になる攻撃を気にせず突っ込んでくるフルティン聖のおかげで、ソラとビビも傷を負っていた。覇気によるダメージは確実に与えているのに、不死的な特性を逆手にとって攻撃されては、ソラも困る。

 

「ねぇ、ソラ。やっぱり、親子って似るのかしらね。同じような事をやっている気がするんだけど」

 

「ビビ、マジカルワンピースは当面お預けですね。私とアレを親子と言うとか、頭天竜人ですか。そんなことを言っていると、ホタルと子供達を連れて家出しますよ・・・コブラお義父の所に」

 

 ソラの”チ〇霊箱”と同じくダメージをどこかに転嫁している雰囲気が確かにあった。実際、不死身にはからくりがある。

 

「くっくっく、やはり親子だ。考える事は同じだ。お前(ソラ)は自らのダメージをワンピースに転嫁しているだろう。それは、こちらも同じことだ。私は、自らのダメージを奴隷たちに押し付けている。魂の契約だ」

 

 この世には、悪魔に魂を売ってでも助かりたい、助けたいと思う人間は五万といる。その中から選び抜いた強靭な肉体を持つ者達と契約し、助ける代わりにダメージを押し付けていた。

 

「ねぇ、ソラ。悪役ってなんで自分で不死のからくりを言うのかしらね。だったら、簡単じゃない。イーロンが海楼石で能力を封じるか・・・その全てを殺すほどの一撃を出せばいいんでしょ?」

 

「何千人、何万人と契約しているか分かりませんよ。ビビ、何をしているんですか?カビを引っ込めて」

 

 ビビがIXAに覇王色の覇気を込める。そして、広がっていた全てのカビを一点に集めた。覚醒した自然系(ロギア)のリソースの大半を集めた事で、ソラですらアレを食らったら”チ〇霊箱”を突破されると思うほどだ。

 

 ビビが”剃”を使い、勢いに任せた一撃を振るった。空ぶった攻撃が地面に当たるとズドンという鈍い音と共に地面に地割れが生じて一部が消滅する。

 

「先ほどまでのカビが・・・まさか、切っ先に集めたのか」

 

「フルティン聖。あまり時間がないので避けないでくださいませんか。一撃で残機をすべて消し飛ばして差し上げますから」

 

 空気がきしむレベルでIXAの切っ先に覇王色の覇気と”グリーン・ディ”が集められている。この攻撃ならば、四皇にも十分ダメージがでる程だ。カイドウに膝をつかせるどころか、当たれば一撃でHPを二割ほど消し飛ばしそうな破壊力を持っている。

 

 状況の不利を悟ったフルティン聖。残機がどれだけあろうとも、ビビの一撃を食らえば死ぬ未来があった。この状況から脱する為にCP0達を犠牲にしようかと思ったが、彼等は既に生首状態。

 

「こちらは、終わったのに。まだ終わってないのか・・・手ぬるいぞ、ソラ」

 

「ルッチ。こちらは、残機持ちだったんですよ。既に5回は殺しましたが・・・ダメージを誰かに押し付けるタイプだったみたいです。本当に誰に似たんですかね。なんですか?ルッチ、そんな目で私を見るとカリファにマジカルワンピースを生やして、こちら側に引きずり込みますよ」

 

 ルッチとカリファは、大人の関係だ。そこに、ソラが異物を用意できる。その想像に寒気がしたルッチは「悪かった」と素直に謝る。

 

「数と質こそ力です・・・この世に死なないものなど存在しない。フルティン聖もそれに漏れなかった事を証明します。そうそう、最後だから一言だけ言いたいことがありました。私は、貴方の事が大嫌いですが、感謝していることがあります。貴方が居たおかげで、私とホタルがビビに会う事が出来た」

 

「そういう事で、ソラとホタルの安寧の為に私は修羅になるわ」

 

 フルアーマー・イーロンの弾丸タックルと魚人甲冑格闘(アーマークラシオン)、カリファのアワアワの実による支援攻撃、ソラとルッチによる覇気を使った六式。特に、全身海楼石のフルプレートを装着したイーロンの攻撃は、フルティン聖も何が何でも回避しなければ終わる。

 

 無理に避けた所を他のメンバーが殺しに行く。これに耐えられる海賊が居れば、ソラ達も会ってみたいレベルで酷い布陣になる。

 

 歴史を知りすぎているフルティン聖。彼の失敗は、全てが思い通りに進むと思ってしまった慢心だ。数百年続いたシステムであっても、たった一人の異物が混入しただけで破綻する。一度の失敗がすべてを崩壊させることなどよくある事だ。

 

 それを天竜人・・・フルティン聖が理解した時には全て遅い。性癖以外は完璧な王女のIXAがフルティン聖をズブリと貫いた。

 

 

◇◆◇◆

 

 翌日、聖地マリージョアが革命軍により焼き討ちされたニュースは、全世界に知れ渡る。モルガンズの手腕により劇的な写真のみが選び抜かれていた。

 

 業火に焼かれて死んでいる奴隷たち、革命軍の侵入を許した憲兵の処刑、暴徒に殺された天竜人の死体、崩壊したインフラ施設。

 

 新聞の見出しには、天竜人の死者23名・・・その中には、ドンキホーテ・ミョスガルド、ネロナ・フルティンの名が確かにあった。だが、これからも死者が増えるだろうと予想されている。

 

 陸の孤島である聖地マリージョア。移動のためのインフラが全て破壊されており、衣食住のどれも不足していた。それこそ、普段贅沢三昧の天竜人が一般人にも劣るレベルで生活をしている。

 

 世界会議に参加した国王たちも、ゴンドラが動かない以上帰国ができない。そして、この革命の狼煙に便乗して、各地で革命が勃発していた。

 

 その新聞を見た”麦わらの一味”。

 

「サボは、そんな事しねーーーよ!!」

 

 ルフィはそう信じているが現実は違う。

 

 サボの世間の評価は、革命軍No.2。ドレスローザでコリーダコロシアムに不正参加。”麦わらのルフィ”と”火拳のエース”の義兄弟、聖地マリージョアで憲兵を暗殺、聖地マリージョアを崩壊させた男・・・と言った感じで、事実だけで役満状態だ。

 

 おかげで、革命軍の軍隊長は全員10億超えの賞金額が即時に賭けられた。サボに至っては、20億という破格になっている。その結果、革命軍だけでなく彼等と縁のある”麦わらの一味”にも飛び火する事になる。

 

 例えば、立ち寄った島での住民の反応だ。焼き討ちされるのではないかと不安し、命だけは助けてくれと金や食料を献上されたり、ブルックが冗談でパンツ見せてくださいなんて言った日にはその場に居た女性たちが全員脱ぎだしたり、普段は値切るナミがこの時ばかりは定価どころか上乗せして購入しようとしたり、サンジが気に入った女が居れば差し出そうとするなどだ。

 

 海賊を楽しむ彼らとは異なり、海賊に近寄られる立場の市民にとっては洒落にならない。ルフィ達は、海賊と言う立場を思い知る事になる。

 

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