ソラは、取り返しのつかない事態に頭を抱えていた。
「許さんぞ、革命軍!! これも全部お前等が聖地マリージョアを襲撃した結果だ。一体、どれだけの人間を苦しめれば気が済むんだ。それとビビにも責任の一端はありますからね。いい事してくれるなんて言うから本気を出しちゃったじゃないですか」
「誰もそこまで本気を出すなんて思わないわよ。それに、そんな伝手があるなんて知らなかったのよ」
その叫びがブルーノの異空間で響く。その場に居る軍事同盟の王族達からは、「残当だな」と答えが返ってくる。本当なら、ホタルも同じように叫びたい気持ちがあった。だが、兄であるソラが取り乱しているのだから逆に落ち着く。
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全ての原因は、数日前に遡る。
革命軍による聖地マリージョア焼き討ち事件から半日が経過して、天竜人達は大事な事に気が付き始めた。住む家を火事で失い、食料もない、電気、ガス、水道といったインフラ整備も崩壊している。つまり、どうやって暮らせば良いかだ。
聖地マリージョアsideには、奴隷、憲兵、使用人、天竜人。世界会議参加の王族sideには、付き人、王族。それなりの数が死んだとはいえ、人間はまだ多数いる。この人数が一日で必要とする物資をどう確保するか、大きな課題だった。
だが、ソラ達には何も関係ない事だ。断崖絶壁の上にある聖地マリージョアに来た道を降りて帰る事も可能。だからこそ、ブルーノの異空間に皆を収容して、この場から脱出を図ろうと考えた。王族が自分の足で昇り降りするよりも、かなり早く地上に到達できる。
既に世界会議での最低限の話し合いは終わっており、王下七武海制度の廃止は決まっている。よって、用事はないので、帰ろうと思った矢先の事だった。
「早く、子供を探すだェ。まだ、見つからないのかェ」
「あの子はまだ二歳ザマス!! 早く、見つけないと死刑ザマス」
比較的被害が少ない王族達が居る場所まで避難してきた天竜人達。ココの方が少ないながら食料もあるし、状況がマシなのは事実だ。
子供を置いてくるバカな親が居る事にソラは心底嫌気がさした。ソラは、善人では無い。無償の愛など持ち合わせていないが・・・この大惨事の状況で子供が見つからないという状況を見捨てる程、人間腐っていない。
同じ子供を持つ親として、ここで見捨てれば人間としてワンランク下がってしまう。それこそ、天竜人と同レベルに。誰もがそう思ってしまった。普段、天竜人が嫌いな王達ですら、天竜人の癖に子供を見捨てない親とか嫌な物を見せてくれると思った。天竜人は、腐った人間の手本でなければ、ダメなんだ。僅かでも普通に見える一端を見せるのは止めろと思う。
ソラは、これを見て・・・不良が雨の日に気まぐれで捨てられた子犬に傘を差し出すアレに似ていると思った。普段はクソなのに、一瞬だけ普通の事をしただけで聖人にも思えてしまう錯覚。普段から真面目に生きている奴が一番偉いというのに、効果抜群だ。
分かっている。分かっていても、ソラは見捨てる事が出来なかった。
「ビビ、ホタル、みんな・・・・・・ちょっと、帰りが遅くなるけど我がままを許して欲しい」
「兄様。それが人間である証拠です。それに反対する人なんて、いませんよ」
ホタルもそれには賛成した。見て見ぬふりをして自分たちだけ脱出した場合、軍事同盟の立場は悪くなる事は明白。なにより、この後に訪れるであろう食糧難・・・食べ物の恨み程怖い物はない。自分たちだけ脱出して、何事もないように飯を食っているところがリークされれば相当な恨みを買う。
「ソラ君、ホタル君。君たちの力は、今こそ大盤振る舞いすべきだ。それに、恩とは安く売りつけて高く回収するものなのだよ。まぁ、そこら辺はビビの方が分かっているだろう。ドラ娘だが、しっかりと教育はしていたつもりだ。後の事は、気にせず
コブラ国王は、一時の感情に流されるのではなく長期的に物事を考えている。天竜人達がこれを恩に感じるか、当たり前と感じるかは別問題だ。しかし、五老星レベルともなれば、常識も備わっている。
それに、モルガンズもいる手前、大きな功績を残せば闇に葬る事は出来ない。マスゴミすら利用するつもりで、ニュースを書かせる気でいる。
「分かりました。ビビ、人を使うのは得意でしょう?この場にいる全員を好きに使って、この状況を打破してください。私もそれに従います」
「恩を安く売りつけて、高く回収する最善策。気が進まないですが、お父様がそういうのならば本気を出しますよ。ソラ、ミョスガルド聖を探して連れてきてください。天竜人という肩書を最大限利用します」
ソラは、チ〇チ〇レーダーで周囲数キロ圏内の気配を探った。一度出会った事がある人物なので、生きていれば確実に捕捉できるのだが・・・どこにも見当たらない。
「残念なお知らせです、ビビ。おそらく、彼は既にこの世に居ません。革命軍に巻き込まれたとみて間違いないでしょう」
「最悪です。ソラ・・・シャルリア宮や昔の伝手をまだ使えますよね?我々が神々の地で堂々と救助活動する為、後ろ盾には数名の天竜人が欲しいところです。本気を見せてくれたら、後でいい事してあげます」
ソラにとって、出来るか・出来ないかで言えば可能性はあった。かつての太客達や店長。頼れるか・そうでないかで言えば、頼れると言うのがソラの答えだった。伊達にワンピースの専門家をやっていたわけではない。シャルリア宮を経由すれば、元客たちともコンタクトを取る事は可能だった。
ビビは、カビカビの実で
ソラは、昔の伝手を頼り天竜人の権威を取り込み、後ろ盾を確保する。
ホタルは、ムラムラの能力で天竜人含む暴れそうな連中の性的欲求をコントロールして、常時賢者モードにして落ち着かせる。
ワズキャンは、メラメラの実の能力で火を確保し、食事、風呂、暖房などを提供する。
念のため連れてきていたマンシェリー姫のチユチユの実の能力でけが人を治療する。
他の者達は人命救助に当たるなど凄まじい働きを見せた。
三食食べれるのはキノコだけだが、食えないよりマシだ。その恩恵は天竜人だけでなく、奴隷にまで及んでいた。ただし、元犯罪者の奴隷や元海賊の奴隷は、恩恵を受ける事はできない。例え、大災害であれど罪人に恩恵など与える程余裕はないし、むしろ口減らしの為、率先して処分されていく。
そんな活動をしていれば、五老星の元にも報告が届く。ビビ産の高級マツタケなど市場に出回る頃が滅多にない珍味を大量に献上させられる。何より求められたのは、チユチユの実の能力とカビカビの実の能力を併用して作られた特性ペニシリンだった。
三日三晩、人命救助に力を入れた事により・・・当然の結果が待っていた。
ソラとホタルがパンゲア城に呼び出される。常識的に考えて、軍事同盟のトップはビビである事から、普通ならそっちを呼びつける。もしくは、その親であるコブラ国王が妥当な線だ。だが、呼び出されたのはソラとホタル。
五老星達が居る場所に連れていかれるなど想像もしていなかった。農務大臣ピーター聖が代表となり、ソラとホタルに言葉をかける。
「この度の救助活動や物資提供ご苦労だった。我々としても、手間が省けた。それと、事実確認をしたい・・・お前達二人は、ネロナ・フルティン聖の実子で間違いないのだな?」
「その通りです。幼い頃は、フルティン聖の家で暮らしており、次世代の肉体として育てられました。私とホタルは、幸いな事に悪魔の実の能力者になった事で身分をはく奪され、今の状況です」
一般人が五老星に呼び出されるはずもない。つまり、呼び出された時点で、ソラとホタルの身元も割れている。嘘をつくより真実を述べた方がマシだ。五老星の手元にある資料とも相違がないため、二人の言葉を信じた。
「そうか。世界経済新聞でフルティン聖が死んだのは知っているな。死因は、天竜人を狙った革命軍の仕業だろう。では、本題だ。今回の革命軍の非道な大惨事に対しての救助活動及び天竜人への貢献、ネロナ家存続の為、特例で天竜人への権威を再び与える。おめでとう、ネロナ・ソラ聖、ネロナ・ホタル宮」
「・・・えっ!? いいえ、ありがとうございます、
「ありがとうございます。五老星の皆様。兄様と一緒に若輩者ですが、精一杯務めさせていただきます」
正直、ソラもホタルもふざけるなと思った。
だが、断れる雰囲気ではない。軍事同盟の有用性を見せつけた結果、五老星もこいつ等逃がさないという事になる。血筋も天竜人である事から、その事実を大いに利用された。世界政府と軍事同盟は、ずぶずぶだと思われる。
任命式が終わり、ピーター聖を残して部屋を退場していく五老達。
「ソラ聖、ホタル宮。君達の後見人は、私が引き受けた。それとソラ聖、公の場で店長はやめたまえ」
「失言でした、ピーター聖」
ピーター聖の表の顔は、五老星。裏の顔は、ソラが嘗て務めていたClub Gardenの店長だ。
そして、今に至る。
世界会議編も終わり?の予定です。
さて、王下七武海・・・今までの行いに対しての罪を清算してもらいましょうか。